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天との断絶、魔王が決断いたしました
18、女神の敗北 1
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消えて行く光と熱。吸収されて行く音と共に周囲の喧騒も消えていく。天の軍勢は呆気に取られて戦意を削がれ、闇の軍勢は益々戦意に火がつき今すぐにでも天の御使に飛びつき、食い荒らさんばかりの勢いだ。
そしてもう一つ、天の軍勢の戦意を完全に削いでしまう存在がイグショールを中心に数名囲んでいるのだ。
「な…………」
光の弓を持ったままの御使の腕が震えている。
「なぜ…貴方様方が………」
『なぜ?』
周囲にいる者達の声は、まるでどこか遠くから響いてくる様な声だ。
『この状況を見て、まだなぜと?』
どうして天に属する者達が、イグショールを守る様に周囲を囲んだのかルアンにもわからない。しかし周囲を見渡せば、かろうじて瓦礫の残骸が残っていた様な地上は全ての物が吹き飛ばされ、見渡す限り土が剥き出しとなった荒地と化している……
ジワリ……自然に涙が滲む。ここにはもう、あの立派な王城も大神殿も綺麗な街並みも、それどころか人が住んでいた形跡さえも、全て消失して何もない…
『お前達は、この地を護るもの…』
「さ、左様です……」
周囲を囲む者達は目の前の御使達と姿は同じ。けれども雰囲気というのか、眼力というのか、湛え持ち周囲に放つ意志も矜持も力さえも段違いに違う事がわかる。
『ではこれは?何とした事だ?』
これ、もう視界にも入れたくはない地上の崩壊………
「そ、それは、それは奴らが!!」
『魔族?』
この後に及んでも、魔族は一切地上には手出ししていないのに…
『天の使いが冗談か…?まさか、光の技が魔の物だとでも?』
「しかし、しかし!女神様は魔を望まれません!!」
だからそのため仕方なく…!
天の使い達の言葉はただただ苦しい言い訳としか聞こえてこない。
『望まぬ……なればこそ…女神は動くべきであったのだろう?』
「!?」
響いてくるその声音に天の使い一同は完全に動きを止めた。
『証言者を出そう。』
パチン…天の御使が指を鳴らすと、そこにはもう一人の遣いが現れた。その者は人間と同じ服装で、一見すると騎士の様に見える。だが、それぞれ同じ特徴を持つ姿をしているのでルアンには区別がつかない。
「御前に……」
騎士の姿の御使は空中で膝を折って平伏した。
『お前が見た物を言いなさい。』
「はい。此度の現状に………魔族は、関係しておりません……」
なんとも苦しそうではあるが、天の御使が魔族の味方をして証言している。
『では、お前が見てきた魔族は一体何をしていたのだ?』
「……はい……家を作り、人々を助けておりました………」
『助けた…?魔族が?』
少しだけ眉を上げ、驚いた様な表情を見せる。この天の御使は無表情かとも思ったのに人間味もあるらしい。
「はい……理解、し難いことではありますが……魔族は人間もこの世も害してはおりません……」
『うむ……良き答えだ……』
すぅっと細められる青い瞳には慈愛が溢れている様な色合いに変わり…ずっと優しく見える。
『では、これは如何したことだ?』
「それは……それは……」
『言いなさい。』
従順な天の御使も言葉を濁す…
「…………女神様の……御技にございます………」
カッ………!!!
極小さくなってしまった声で御使がそう答えると、天からは間髪入れずに雷が落とされる。
雷鳴の後に聞こえるシュウウという音と何かを焦がす煙に匂い…平伏している御使を狙ったと思われる落雷を受けたのは、何と虎の姿のカーペだ。御使を庇う形で直撃したのだろうか。棘が生えた虎の背中が半分ほど消失していた。
「カーペ君!?」
非常に素早くまた強いカーペ君しか見ていなかったから、その姿が恐ろしくてつい声を上げてしまった。
「大丈夫だ。」
それなのに平然とイグショールは構えている。当のカーペも苦しがるでも痛がるでもなく、御使の側に待機する。
『優しいことだな?魔族の心配など…少しばかり、其方の様に学んで欲しかったのだが…』
静かな慈愛の視線をルアンに向けてくる御使はどこか少しばかり悲しそうだ。
「ふん…遥か昔から変わらんだろう?」
懐かしむ様に語る御使の言葉をイグショールは鼻で笑い言い捨てた。
『…………そうであったな……』
ふぅ…と御使はため息だ。
『そうであったから、其方との関係にかけたのだが……』
「あれは矜持が高すぎる。我は捧げる心を尽くしたぞ?」
ズキンッ……イグショールと御使の会話…イグショールが女神に…その時の話だが、今はそうじゃないだろう…?今は…
知らずギュッとイグショールの服を握りしめてたら、フフとイグショールは軽く笑ってギュウっと抱きしめ、おまけとばかりに頬擦りまでしてきた。
「これ以上を求めるのならばルアン。其方の姿あられも無い姿を天の神々に晒すことになるぞ?」
これ以上…?天の神々?晒す!?
「なっ…!な……なっ……」
なにを言い出すのかとフルフルとルアンは身悶えしながら、顔をこれ以上ないと言うくらいに赤くして急いでイグショールの口を閉ざす。
フフ……と優しい笑い声が御使の方から聞こえた様な気がした…
そしてもう一つ、天の軍勢の戦意を完全に削いでしまう存在がイグショールを中心に数名囲んでいるのだ。
「な…………」
光の弓を持ったままの御使の腕が震えている。
「なぜ…貴方様方が………」
『なぜ?』
周囲にいる者達の声は、まるでどこか遠くから響いてくる様な声だ。
『この状況を見て、まだなぜと?』
どうして天に属する者達が、イグショールを守る様に周囲を囲んだのかルアンにもわからない。しかし周囲を見渡せば、かろうじて瓦礫の残骸が残っていた様な地上は全ての物が吹き飛ばされ、見渡す限り土が剥き出しとなった荒地と化している……
ジワリ……自然に涙が滲む。ここにはもう、あの立派な王城も大神殿も綺麗な街並みも、それどころか人が住んでいた形跡さえも、全て消失して何もない…
『お前達は、この地を護るもの…』
「さ、左様です……」
周囲を囲む者達は目の前の御使達と姿は同じ。けれども雰囲気というのか、眼力というのか、湛え持ち周囲に放つ意志も矜持も力さえも段違いに違う事がわかる。
『ではこれは?何とした事だ?』
これ、もう視界にも入れたくはない地上の崩壊………
「そ、それは、それは奴らが!!」
『魔族?』
この後に及んでも、魔族は一切地上には手出ししていないのに…
『天の使いが冗談か…?まさか、光の技が魔の物だとでも?』
「しかし、しかし!女神様は魔を望まれません!!」
だからそのため仕方なく…!
天の使い達の言葉はただただ苦しい言い訳としか聞こえてこない。
『望まぬ……なればこそ…女神は動くべきであったのだろう?』
「!?」
響いてくるその声音に天の使い一同は完全に動きを止めた。
『証言者を出そう。』
パチン…天の御使が指を鳴らすと、そこにはもう一人の遣いが現れた。その者は人間と同じ服装で、一見すると騎士の様に見える。だが、それぞれ同じ特徴を持つ姿をしているのでルアンには区別がつかない。
「御前に……」
騎士の姿の御使は空中で膝を折って平伏した。
『お前が見た物を言いなさい。』
「はい。此度の現状に………魔族は、関係しておりません……」
なんとも苦しそうではあるが、天の御使が魔族の味方をして証言している。
『では、お前が見てきた魔族は一体何をしていたのだ?』
「……はい……家を作り、人々を助けておりました………」
『助けた…?魔族が?』
少しだけ眉を上げ、驚いた様な表情を見せる。この天の御使は無表情かとも思ったのに人間味もあるらしい。
「はい……理解、し難いことではありますが……魔族は人間もこの世も害してはおりません……」
『うむ……良き答えだ……』
すぅっと細められる青い瞳には慈愛が溢れている様な色合いに変わり…ずっと優しく見える。
『では、これは如何したことだ?』
「それは……それは……」
『言いなさい。』
従順な天の御使も言葉を濁す…
「…………女神様の……御技にございます………」
カッ………!!!
極小さくなってしまった声で御使がそう答えると、天からは間髪入れずに雷が落とされる。
雷鳴の後に聞こえるシュウウという音と何かを焦がす煙に匂い…平伏している御使を狙ったと思われる落雷を受けたのは、何と虎の姿のカーペだ。御使を庇う形で直撃したのだろうか。棘が生えた虎の背中が半分ほど消失していた。
「カーペ君!?」
非常に素早くまた強いカーペ君しか見ていなかったから、その姿が恐ろしくてつい声を上げてしまった。
「大丈夫だ。」
それなのに平然とイグショールは構えている。当のカーペも苦しがるでも痛がるでもなく、御使の側に待機する。
『優しいことだな?魔族の心配など…少しばかり、其方の様に学んで欲しかったのだが…』
静かな慈愛の視線をルアンに向けてくる御使はどこか少しばかり悲しそうだ。
「ふん…遥か昔から変わらんだろう?」
懐かしむ様に語る御使の言葉をイグショールは鼻で笑い言い捨てた。
『…………そうであったな……』
ふぅ…と御使はため息だ。
『そうであったから、其方との関係にかけたのだが……』
「あれは矜持が高すぎる。我は捧げる心を尽くしたぞ?」
ズキンッ……イグショールと御使の会話…イグショールが女神に…その時の話だが、今はそうじゃないだろう…?今は…
知らずギュッとイグショールの服を握りしめてたら、フフとイグショールは軽く笑ってギュウっと抱きしめ、おまけとばかりに頬擦りまでしてきた。
「これ以上を求めるのならばルアン。其方の姿あられも無い姿を天の神々に晒すことになるぞ?」
これ以上…?天の神々?晒す!?
「なっ…!な……なっ……」
なにを言い出すのかとフルフルとルアンは身悶えしながら、顔をこれ以上ないと言うくらいに赤くして急いでイグショールの口を閉ざす。
フフ……と優しい笑い声が御使の方から聞こえた様な気がした…
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