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First Contact 海へいこう!
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隣からは、じきにスースーと規則正しい寝息が聞こえ始めてきた。
同じように寝転がっていた翔子は、ピョコンと上半身を起こすとまどろんでいる浩司を見下ろした。
艶やかな黒髪。長めの前髪が瞼や頬に掛かっているのを、指先でそおっと払う。
(うわっ結構睫毛ながいー! 鼻筋もすうっと通ってて、白いわけじゃないのに肌のキメも細かくて。アップでも十分鑑賞向き~っっ)
などと不埒なことを考えながらじっと見つめるものだから、あまりのあからさまで邪な視線のせいか、浩司は指先で頬をかきながら僅かに眉根を寄せた。
肩幅は割とある。肉はキュッと引き締まっていて、決して痩せすぎではないのだが、余分な肉が一切ついていない。そこそこに鍛えられているらしき均整の取れた体つきは、もろ翔子の好みどんぴしゃりだった。
(いいなぁ~。触ったら起きちゃうかなぁ)
ちらりとウォルターを見遣るとぽーっと遥か遠くを眺めている様子。
(駄目だぁ、我慢できんっ。いいよねっ。えーいっ)
つつぅ、と何も羽織っていない浩司の胸に指を這わせた。
「んっ……」
浩司は僅かに首を振った。嫌がっているときの素振りだったが、手を止めてじっとしているとまたすぐに寝息を立て始めたので一安心する。
(可愛いーーっっ!!)
もう我慢が出来なくなった翔子は、調子に乗って脇腹や腰の辺りにも指で触れて、何だか知らないが色々と確認してご満悦だ。
「やめっ」
突如がしっと手首を掴まれたかと思うと、ぐっと引っ張られた。
形勢は逆転し、あっという間に翔子はシートの上に仰向けになり、その上に両手を押さえつけている浩司の影が落ちてきた。
「お・ま・え・なぁ……。安眠妨害だっつーの!!」
寝入りばなを起こされれば誰でもそうなるように、浩司は大変に不機嫌そうだった。しかも半分目が据わっている。
そんな顔すらも怖いよりカッコイイと判断してしまうらしく、翔子は笑み崩れていた。
「いやん。なんかこの体勢ってエッチぃ~」
「なに? そぉんなにエッチなことして欲しいわけ?」
普段なら絶対に言うはずのない台詞だった。
それを十分知っているウォルターはおやと思ったが、この状況を楽しんでいるらしく敢えて声は掛けない。それどころかまるでそ知らぬ風に視線は海に向けたままだった。
「やんっ。さっきから態度で示してるのにぃ」
完全に冗談だと思っているのか、翔子は軽く受け答えしている。出会ったときのシャイっぷりから見て、浩司は見てくれは良いけれど女性経験に疎いと判断しているらしい。
聞き耳頭巾のウォルターは、心中で首を振る。
(おいおい、あれはマジで意識飛んでるって。浩司の寝起きの悪さってハンパじゃないからなぁ。素面だったら今そんな体勢とってないって。
確かに浩司は『女の子』苦手だけど、それは会話とか付き合いが苦手なだけであって……。
でも面白いからほっとくけどな)
すうっと浩司が身を屈めた。
「人前に出られないような恥ずかしい体にしてやるよ」
ぼそりと翔子の耳元に囁き声が落ちる。
(あ……やっぱ、いい声だぁ……。)
言葉の意味よりもその声にとろりと溶かされ、放心状態に陥る翔子。その首筋に浩司が舌を這わせた。
「ん……」
そのまま軽く歯を立てて吸い上げる。
「あっ、やっ……」
あれよあれよと言う間に、首から鎖骨にかけてキスマークのオンパレードが出来上がってしまった。
「一週間くらいは消えないぜ?」
満足した浩司はにやりと不敵に笑い、そのままコロンと横に転がった。
あっという間に聞こえ始めた寝息を耳にしながら、ほてり始めた体を持て余して翔子は呆然としていた。
同じように寝転がっていた翔子は、ピョコンと上半身を起こすとまどろんでいる浩司を見下ろした。
艶やかな黒髪。長めの前髪が瞼や頬に掛かっているのを、指先でそおっと払う。
(うわっ結構睫毛ながいー! 鼻筋もすうっと通ってて、白いわけじゃないのに肌のキメも細かくて。アップでも十分鑑賞向き~っっ)
などと不埒なことを考えながらじっと見つめるものだから、あまりのあからさまで邪な視線のせいか、浩司は指先で頬をかきながら僅かに眉根を寄せた。
肩幅は割とある。肉はキュッと引き締まっていて、決して痩せすぎではないのだが、余分な肉が一切ついていない。そこそこに鍛えられているらしき均整の取れた体つきは、もろ翔子の好みどんぴしゃりだった。
(いいなぁ~。触ったら起きちゃうかなぁ)
ちらりとウォルターを見遣るとぽーっと遥か遠くを眺めている様子。
(駄目だぁ、我慢できんっ。いいよねっ。えーいっ)
つつぅ、と何も羽織っていない浩司の胸に指を這わせた。
「んっ……」
浩司は僅かに首を振った。嫌がっているときの素振りだったが、手を止めてじっとしているとまたすぐに寝息を立て始めたので一安心する。
(可愛いーーっっ!!)
もう我慢が出来なくなった翔子は、調子に乗って脇腹や腰の辺りにも指で触れて、何だか知らないが色々と確認してご満悦だ。
「やめっ」
突如がしっと手首を掴まれたかと思うと、ぐっと引っ張られた。
形勢は逆転し、あっという間に翔子はシートの上に仰向けになり、その上に両手を押さえつけている浩司の影が落ちてきた。
「お・ま・え・なぁ……。安眠妨害だっつーの!!」
寝入りばなを起こされれば誰でもそうなるように、浩司は大変に不機嫌そうだった。しかも半分目が据わっている。
そんな顔すらも怖いよりカッコイイと判断してしまうらしく、翔子は笑み崩れていた。
「いやん。なんかこの体勢ってエッチぃ~」
「なに? そぉんなにエッチなことして欲しいわけ?」
普段なら絶対に言うはずのない台詞だった。
それを十分知っているウォルターはおやと思ったが、この状況を楽しんでいるらしく敢えて声は掛けない。それどころかまるでそ知らぬ風に視線は海に向けたままだった。
「やんっ。さっきから態度で示してるのにぃ」
完全に冗談だと思っているのか、翔子は軽く受け答えしている。出会ったときのシャイっぷりから見て、浩司は見てくれは良いけれど女性経験に疎いと判断しているらしい。
聞き耳頭巾のウォルターは、心中で首を振る。
(おいおい、あれはマジで意識飛んでるって。浩司の寝起きの悪さってハンパじゃないからなぁ。素面だったら今そんな体勢とってないって。
確かに浩司は『女の子』苦手だけど、それは会話とか付き合いが苦手なだけであって……。
でも面白いからほっとくけどな)
すうっと浩司が身を屈めた。
「人前に出られないような恥ずかしい体にしてやるよ」
ぼそりと翔子の耳元に囁き声が落ちる。
(あ……やっぱ、いい声だぁ……。)
言葉の意味よりもその声にとろりと溶かされ、放心状態に陥る翔子。その首筋に浩司が舌を這わせた。
「ん……」
そのまま軽く歯を立てて吸い上げる。
「あっ、やっ……」
あれよあれよと言う間に、首から鎖骨にかけてキスマークのオンパレードが出来上がってしまった。
「一週間くらいは消えないぜ?」
満足した浩司はにやりと不敵に笑い、そのままコロンと横に転がった。
あっという間に聞こえ始めた寝息を耳にしながら、ほてり始めた体を持て余して翔子は呆然としていた。
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