50 / 190
Second Contact 王様ゲーム
13
しおりを挟む
『榎本』と書かれた表札の前で停止して、浩司とウォルターは二階を見上げた。
つられて女三人もエンジンがかかったままの状態で仰ぎ見ると、道路側の部屋の窓から満が手を振っている。何か言っていたが聞き取れない。恐らく「すぐに行く」とかそんな類の言葉だったのだろう、窓が閉まりじきに玄関から満が駆け出してきた。
「ニーナに乗せてもらえ。承諾済みだから」
ウォルターが新菜の方を指したので、新菜は一旦下りて、
「乗せてくれる?」
と言った。一応男を立てているのだ。
後ろに乗っても平気な人もいるが、やはりどちらかというと自分が乗せてもらう方がプライドが傷付かないだろうと慮ったのだった。
そんなさり気ない心遣いが通じたのか、満は笑顔で頷くとハンドルを握ってシートに腰掛けた。
「満くん、もちっと前に座ってくんないと、後ろ座れない……」
「新菜ちゃんはここっ」
満は太腿の間のシートをポンポンと叩いた。そしてギリギリまで後ろに寄せる。「は?」と目が点になっている新菜の腕を「いいから」と満が引いた。
「先行くわ」
満が場所を知っているからもういいと考えたのか、さっさと浩司が走り出してしまった。
「じゃあ私もぉ」「んじゃーねー」
と翔子、円華も次々と後を追う。
(薄情もんっ)
心の中で愚痴りながらも「早く」と急かす満に根負けして、シートに腰掛けた。後ろから抱きかかえられているようなその体勢にやや緊張しながら、二人は皆の後に続いたのだった。
夏休みというせいもあってか待ち時間が三十分もあり、本当なら二レーン借りたかったのを我慢して一レーンで申し込みした。
六人が順番に投げるだけでも大変なので、更に三組に分かれて勝負することにしたものの、それでもやっぱりある程度は時間が掛かり、一ゲームしかしなかったのに終わった時には時刻は十七時を回っていた。
「ご馳走様っ」
新菜が翔子に礼を言って、紙コップのスポーツ飲料をごくごくと飲み干した。かなり盛り上がって試合したため喉がからからである。
得点ではなくトータルでピンを倒した数が少ないチームが一番多く倒したチームにジュースを奢る、というルールにし、勝利した満と新菜の二人が浩司と翔子に奢ってもらったのだ。
「お前が下手だから……」
はあ、と溜め息をついて浩司が言った。
男子三人のアベレージはいずれも百六十ほどなので、ペアになった者のピンの数がそのまま響いてくるのである。いくら浩司が後投げでスペアにしても、一投目がガターや一ピンでは話にならない。
しかも変なところを残されてスプリットになったりと、いくら得点ではないとしてもコントロールに限界があった。数だから僅差で終わったが、得点はかなり開いていた。
「今日はたまたま調子が悪かったのっ」
必死になって反論しているが、翔子がボウリングが上手ではないことは先輩二人が良く知っている。スコアが70より上になったことはない筈だった。
「その乳が邪魔なんだろーが」
「ああ、ひどぉ。好きででかくなったわけじゃないもんっ。浩司くんはスレンダーな方が好きなのぉ!?」
「知るか。チームメイトに好みが関係あるかっ」
「じゃチーム以外じゃ大きい方がいいって事だよねっ。もっと大きくなるかもしれないし~」
言い合っている割に、結構仲が良さそうな二人。その様子を微笑ましげに眺めながら休憩していた他四人だったが、
「そろそろ俺んち行く?」
というウォルターの声掛けに皆頷いた。程よくお腹も空いてきた頃だ。
「で、買い出しはどうすんの?」
「そりゃやっぱ一番負けのもんでしょ」
新菜と円華が翔子を見たので「ええーっっ」と抗議の声が上がる。
「賭けの払いは済んだんだからチャラ」
と、浩司はすまし顔。
女三人でと言い出した新菜の案は、家の場所を知らないからと満に止められ、結局は揉めるのを嫌った満と新菜が二人で行くことになった。
つられて女三人もエンジンがかかったままの状態で仰ぎ見ると、道路側の部屋の窓から満が手を振っている。何か言っていたが聞き取れない。恐らく「すぐに行く」とかそんな類の言葉だったのだろう、窓が閉まりじきに玄関から満が駆け出してきた。
「ニーナに乗せてもらえ。承諾済みだから」
ウォルターが新菜の方を指したので、新菜は一旦下りて、
「乗せてくれる?」
と言った。一応男を立てているのだ。
後ろに乗っても平気な人もいるが、やはりどちらかというと自分が乗せてもらう方がプライドが傷付かないだろうと慮ったのだった。
そんなさり気ない心遣いが通じたのか、満は笑顔で頷くとハンドルを握ってシートに腰掛けた。
「満くん、もちっと前に座ってくんないと、後ろ座れない……」
「新菜ちゃんはここっ」
満は太腿の間のシートをポンポンと叩いた。そしてギリギリまで後ろに寄せる。「は?」と目が点になっている新菜の腕を「いいから」と満が引いた。
「先行くわ」
満が場所を知っているからもういいと考えたのか、さっさと浩司が走り出してしまった。
「じゃあ私もぉ」「んじゃーねー」
と翔子、円華も次々と後を追う。
(薄情もんっ)
心の中で愚痴りながらも「早く」と急かす満に根負けして、シートに腰掛けた。後ろから抱きかかえられているようなその体勢にやや緊張しながら、二人は皆の後に続いたのだった。
夏休みというせいもあってか待ち時間が三十分もあり、本当なら二レーン借りたかったのを我慢して一レーンで申し込みした。
六人が順番に投げるだけでも大変なので、更に三組に分かれて勝負することにしたものの、それでもやっぱりある程度は時間が掛かり、一ゲームしかしなかったのに終わった時には時刻は十七時を回っていた。
「ご馳走様っ」
新菜が翔子に礼を言って、紙コップのスポーツ飲料をごくごくと飲み干した。かなり盛り上がって試合したため喉がからからである。
得点ではなくトータルでピンを倒した数が少ないチームが一番多く倒したチームにジュースを奢る、というルールにし、勝利した満と新菜の二人が浩司と翔子に奢ってもらったのだ。
「お前が下手だから……」
はあ、と溜め息をついて浩司が言った。
男子三人のアベレージはいずれも百六十ほどなので、ペアになった者のピンの数がそのまま響いてくるのである。いくら浩司が後投げでスペアにしても、一投目がガターや一ピンでは話にならない。
しかも変なところを残されてスプリットになったりと、いくら得点ではないとしてもコントロールに限界があった。数だから僅差で終わったが、得点はかなり開いていた。
「今日はたまたま調子が悪かったのっ」
必死になって反論しているが、翔子がボウリングが上手ではないことは先輩二人が良く知っている。スコアが70より上になったことはない筈だった。
「その乳が邪魔なんだろーが」
「ああ、ひどぉ。好きででかくなったわけじゃないもんっ。浩司くんはスレンダーな方が好きなのぉ!?」
「知るか。チームメイトに好みが関係あるかっ」
「じゃチーム以外じゃ大きい方がいいって事だよねっ。もっと大きくなるかもしれないし~」
言い合っている割に、結構仲が良さそうな二人。その様子を微笑ましげに眺めながら休憩していた他四人だったが、
「そろそろ俺んち行く?」
というウォルターの声掛けに皆頷いた。程よくお腹も空いてきた頃だ。
「で、買い出しはどうすんの?」
「そりゃやっぱ一番負けのもんでしょ」
新菜と円華が翔子を見たので「ええーっっ」と抗議の声が上がる。
「賭けの払いは済んだんだからチャラ」
と、浩司はすまし顔。
女三人でと言い出した新菜の案は、家の場所を知らないからと満に止められ、結局は揉めるのを嫌った満と新菜が二人で行くことになった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる