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Third Contact すれ違いの純情
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そうしている間に走らなかった新菜と円華もやって来て、物凄くドキドキする心臓をなんとか押さえつけながら満が「いらっしゃい」と言った。
白地に紺の菖蒲柄の綿紅梅を着付けた新菜は、髪も夜会巻きにして赤い簪で留めている。満面の笑顔で迎えられた新菜は、笑いを噛み殺して団扇で口元を隠しながら「どーも」とお辞儀した。
(み、満くんてば……可愛いっ! すっげー可愛い……)
絶対に口には出来なくて、ぷくくと漏れそうになる笑いを必死で堪えているのだ。
ただでさえ大きい瞳でくりくりと見つめられるのだから堪らない。思わず頭を撫でたくなってしまうなんて、大の男に言えたものではない。
「なに?」
はてなマークを飛ばしながら、満が団扇を指で摘んで除けようとする。
「駄目だって」と言いながら新菜は口元を隠し続けた。
「ねー、何ってばっ」
クルリと回り込んで、満が横から覗き込んだ。
キラリと耳元で光る物に「あ」と声を上げてまた笑顔全開になった。間違えようもない、シルバーのピアス。
「やっぱ似合うよ、それ」
「……そっかな」
「うん。勿論浴衣も。すっげー大人っぽいのに、可愛い。オレ今すげ―幸せ」
目の前でそんなことを言われて、新菜は言葉を失った。
これが保だったら「チープな幸せで結構ですこと」とでも言ってしまえる歯の浮くような台詞なのだが、満が言うと本当に心の底から幸せそうで、反応に困ってしまうのだ。
結果的に、二人とも照れ笑いに変わり、どちらからともなく視線を逸らせた。
新菜より一歩後ろに居た円華がぶつぶつ言いながら背中を小突いた。
「なぁによー。見たことないピアスだと思ったら、やっぱり満くんからもらったんじゃんっ」
円華は白地に彼岸花の柄で、紫の半幅帯を文庫の片平流しにしている。
新菜も赤の半幅帯をきりりと文庫に締め、二人とも割とシックに着こなしているのが余計に大人っぽく見せているようだ。
新菜は円華の指摘には無視を決め込むことにしたようで、
「さっ、行こ行こー!! ヨーヨー釣りしよっ」
とスタスタ商店街に向かって歩き出してしまった。
白地に紺の菖蒲柄の綿紅梅を着付けた新菜は、髪も夜会巻きにして赤い簪で留めている。満面の笑顔で迎えられた新菜は、笑いを噛み殺して団扇で口元を隠しながら「どーも」とお辞儀した。
(み、満くんてば……可愛いっ! すっげー可愛い……)
絶対に口には出来なくて、ぷくくと漏れそうになる笑いを必死で堪えているのだ。
ただでさえ大きい瞳でくりくりと見つめられるのだから堪らない。思わず頭を撫でたくなってしまうなんて、大の男に言えたものではない。
「なに?」
はてなマークを飛ばしながら、満が団扇を指で摘んで除けようとする。
「駄目だって」と言いながら新菜は口元を隠し続けた。
「ねー、何ってばっ」
クルリと回り込んで、満が横から覗き込んだ。
キラリと耳元で光る物に「あ」と声を上げてまた笑顔全開になった。間違えようもない、シルバーのピアス。
「やっぱ似合うよ、それ」
「……そっかな」
「うん。勿論浴衣も。すっげー大人っぽいのに、可愛い。オレ今すげ―幸せ」
目の前でそんなことを言われて、新菜は言葉を失った。
これが保だったら「チープな幸せで結構ですこと」とでも言ってしまえる歯の浮くような台詞なのだが、満が言うと本当に心の底から幸せそうで、反応に困ってしまうのだ。
結果的に、二人とも照れ笑いに変わり、どちらからともなく視線を逸らせた。
新菜より一歩後ろに居た円華がぶつぶつ言いながら背中を小突いた。
「なぁによー。見たことないピアスだと思ったら、やっぱり満くんからもらったんじゃんっ」
円華は白地に彼岸花の柄で、紫の半幅帯を文庫の片平流しにしている。
新菜も赤の半幅帯をきりりと文庫に締め、二人とも割とシックに着こなしているのが余計に大人っぽく見せているようだ。
新菜は円華の指摘には無視を決め込むことにしたようで、
「さっ、行こ行こー!! ヨーヨー釣りしよっ」
とスタスタ商店街に向かって歩き出してしまった。
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