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Fifth Contact 笑顔の行方
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浩司に引っ付いていた翔子がふと振り返り、頭数が少ないのに気付いた。
「あれ? 円華さん、新菜さんは?」
丁度真後ろを歩いていた円華に尋ねた。その言葉に振り向いて確認し、
「あ? さあ? 満くんと一緒だろうから大丈夫だろ? なっ」
とウォルターを見上げて同意を求める。
「でしょ」
(ようやくダンパに誘う気になったのかな? さっきあの二人の会話に出て来て、一段と焦ったんだろうなぁ)
ウォルターは微笑し、
「それより俺、腹減った」
と右手でお腹を擦った。
「俺もぉ」
待ってましたとばかりに浩司が同意する。校門での立ち話も長くなったし、昼まではまだ少しあるが小腹が空く頃合だった。
「お好み焼きとか買ってさぁ、屋上で食おーぜ。天気いいし」
「だな」
女子二人に席取りをお願いすると、二人は食料の調達へと、小走りに向かった。ついでに満達も見つけて来る、と言い置いてから。
「ねー円華さぁん。ラストってナンなんでしょうねぇ。浩司くんは『さあなー』っていう返事しかしてくんないし、夕方まで残る気ないって言うしィ」
翔子が鞄を持ち替えた。
「さぁなあ。なんか保は知ってる風だったけど。『要領したのはラストん為』とか何とか言ってたし……。星野原のモンなら知ってんだろ。何ならその辺のヤツ捕まえて訊く?」
パンツとはいえ滅多に着る事のないスーツでパンプスを履いている為、いつもより歩調が遅くなる円華。
「そぉいやー、門で保のこと待ってた子が『他校のもんは無効』だとも言ってたな」
「あ、そー言えばそうですねぇー」
翔子は右手の人差し指を顎に持って行った。
「じゃ後で満くんにでも訊いてみます。浩司くんにあんましつこく訊いたら、最後にゃー怒られそうだし。んな事で嫌われたくもないしね」
と、円華に微笑む。つられて円華の口も綻んだ。
(ほんと翔子の頭ん中は、浩司くん中心で回ってんだもんなぁ~)
慣れないヒールで歩く廊下は滑りやすく、翔子もいつもより歩幅を小さくして屋上へと向かった。
「お待たせーっ」
途中で合流した満と新菜も含めた四人が、屋上へと上って来た。既に席を取ってくれていた円華と翔子のいる丸テーブルへ、それぞれが買って来た食料を並べて行く。
テーブルの上にはパラソルもついていて、秋とはいえ直射日光の当たる屋上では重宝される設備だった。所々に植え込みも有り、そこいらのビア・ガーデン顔負けに整備されているものの、日陰が出来るのはパラソルの下だけである。
これらは園長の趣味であったが、勿論生徒たちにも大好評だ。特に今日のようなイベントの日には、二階にある食堂より賑わっている。
「ワッフル買って来たから、後で食おーな」
胸のつかえが取れてすっきりした様子の満が、喜色満面の笑みを浮かべている。
「わぁーい! ご馳走様ぁっ」
甘い物に目がない翔子が、手を合わせてにこやかに言った。
「あ、そういえばぁー、満くんに訊きたい事あんだ」
割り箸を持って見つめてくる翔子を、満はお好み焼きをつつきながら見返した。
「何? オレに答えられる事なら何でも訊いてよ」
先程新菜にOKしてもらえたからだろうが、やたらと嬉しそうにしている。
「〈ラスト〉って何があんの? あと、〈他校のもんは無効〉つって何?」
パキッと箸を割りながら、翔子が問うた。
ギクッと一瞬体が固くなる浩司とウォルター。あちゃー、と声には出さずに顔を歪めた。
「ファイナルのダンパの事ォ? やっぱ翔子ちゃんも気になってたんだ?」
ペットボトルのお茶を飲んで口の中の物を流し込むと、満はちらりと新菜を見て照れ笑いをした。
「無効、ってのは――んっとぉ、実はこの学園ってさぁ、ファイナルでパートナーに申し込んでOKもらえたら、その二人は公認カップルっていう通説があってさ。んだから、その事じゃねえの? 他校の生徒ならその説は通らないでしょって事で」
話を聴き終えた円華は、
「なーんだ、んな事かぁ」
とウーロン茶を飲み、逆に翔子は、
「えぇっっ!? 他校だと公認カップルにはなれないのォ? んなのヤだぁーっ! 私と浩司くんは特別って事でぇー、ねっ、浩司くんっ」
いやいやと体を揺すりながら隣の浩司を見つめた。
「私、浩司くんならパートナー即OKだから。夕方までに帰るなんて言わないでさぁ~」
祈るように両手を結び、ひたすら見つめる。
「何なら今すぐ即行で帰ってもいいぞ」
こうなる事は既に予想していたらしい浩司は、頬をひくつかせながら言った。
「あれ? 円華さん、新菜さんは?」
丁度真後ろを歩いていた円華に尋ねた。その言葉に振り向いて確認し、
「あ? さあ? 満くんと一緒だろうから大丈夫だろ? なっ」
とウォルターを見上げて同意を求める。
「でしょ」
(ようやくダンパに誘う気になったのかな? さっきあの二人の会話に出て来て、一段と焦ったんだろうなぁ)
ウォルターは微笑し、
「それより俺、腹減った」
と右手でお腹を擦った。
「俺もぉ」
待ってましたとばかりに浩司が同意する。校門での立ち話も長くなったし、昼まではまだ少しあるが小腹が空く頃合だった。
「お好み焼きとか買ってさぁ、屋上で食おーぜ。天気いいし」
「だな」
女子二人に席取りをお願いすると、二人は食料の調達へと、小走りに向かった。ついでに満達も見つけて来る、と言い置いてから。
「ねー円華さぁん。ラストってナンなんでしょうねぇ。浩司くんは『さあなー』っていう返事しかしてくんないし、夕方まで残る気ないって言うしィ」
翔子が鞄を持ち替えた。
「さぁなあ。なんか保は知ってる風だったけど。『要領したのはラストん為』とか何とか言ってたし……。星野原のモンなら知ってんだろ。何ならその辺のヤツ捕まえて訊く?」
パンツとはいえ滅多に着る事のないスーツでパンプスを履いている為、いつもより歩調が遅くなる円華。
「そぉいやー、門で保のこと待ってた子が『他校のもんは無効』だとも言ってたな」
「あ、そー言えばそうですねぇー」
翔子は右手の人差し指を顎に持って行った。
「じゃ後で満くんにでも訊いてみます。浩司くんにあんましつこく訊いたら、最後にゃー怒られそうだし。んな事で嫌われたくもないしね」
と、円華に微笑む。つられて円華の口も綻んだ。
(ほんと翔子の頭ん中は、浩司くん中心で回ってんだもんなぁ~)
慣れないヒールで歩く廊下は滑りやすく、翔子もいつもより歩幅を小さくして屋上へと向かった。
「お待たせーっ」
途中で合流した満と新菜も含めた四人が、屋上へと上って来た。既に席を取ってくれていた円華と翔子のいる丸テーブルへ、それぞれが買って来た食料を並べて行く。
テーブルの上にはパラソルもついていて、秋とはいえ直射日光の当たる屋上では重宝される設備だった。所々に植え込みも有り、そこいらのビア・ガーデン顔負けに整備されているものの、日陰が出来るのはパラソルの下だけである。
これらは園長の趣味であったが、勿論生徒たちにも大好評だ。特に今日のようなイベントの日には、二階にある食堂より賑わっている。
「ワッフル買って来たから、後で食おーな」
胸のつかえが取れてすっきりした様子の満が、喜色満面の笑みを浮かべている。
「わぁーい! ご馳走様ぁっ」
甘い物に目がない翔子が、手を合わせてにこやかに言った。
「あ、そういえばぁー、満くんに訊きたい事あんだ」
割り箸を持って見つめてくる翔子を、満はお好み焼きをつつきながら見返した。
「何? オレに答えられる事なら何でも訊いてよ」
先程新菜にOKしてもらえたからだろうが、やたらと嬉しそうにしている。
「〈ラスト〉って何があんの? あと、〈他校のもんは無効〉つって何?」
パキッと箸を割りながら、翔子が問うた。
ギクッと一瞬体が固くなる浩司とウォルター。あちゃー、と声には出さずに顔を歪めた。
「ファイナルのダンパの事ォ? やっぱ翔子ちゃんも気になってたんだ?」
ペットボトルのお茶を飲んで口の中の物を流し込むと、満はちらりと新菜を見て照れ笑いをした。
「無効、ってのは――んっとぉ、実はこの学園ってさぁ、ファイナルでパートナーに申し込んでOKもらえたら、その二人は公認カップルっていう通説があってさ。んだから、その事じゃねえの? 他校の生徒ならその説は通らないでしょって事で」
話を聴き終えた円華は、
「なーんだ、んな事かぁ」
とウーロン茶を飲み、逆に翔子は、
「えぇっっ!? 他校だと公認カップルにはなれないのォ? んなのヤだぁーっ! 私と浩司くんは特別って事でぇー、ねっ、浩司くんっ」
いやいやと体を揺すりながら隣の浩司を見つめた。
「私、浩司くんならパートナー即OKだから。夕方までに帰るなんて言わないでさぁ~」
祈るように両手を結び、ひたすら見つめる。
「何なら今すぐ即行で帰ってもいいぞ」
こうなる事は既に予想していたらしい浩司は、頬をひくつかせながら言った。
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