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【おまけ】音声ドラマ&朗読劇用台本『異世界シナリオ戦記』
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短編小説『異世界シナリオ戦記』の朗読劇&音声ドラマ用の台本バージョンです。
【登場人物】
・あたし……売れない女性脚本家
・アテナ……異世界王国の女戦士
・リリス……異世界の悪の女将軍
・ケンタロウ……ケンタウロスの王子様(※アテナ役が兼任可)
イラストby糺乃樹来さま(https://twitter.com/eGlrxQGzqHMc7Xe)
↓
イラストbyあニキさま(https://twitter.com/akuyaku_niki)
↓
あたしのM(モノローグ)『女戦士アテナは美しくたくましかった。剣を抜くや、異世界のモンスターどもを次々と倒していった』
リリス「アテナ! 今日こそ、決着をつけてやる!」
あたしのM『アテナが視線を向けると、悪の女将軍リリスが立ちはだかっていた。その手には古めかしいハンドガンがあり、銃口はアテナへと向けられていた』
アテナ「リリス……そんなひきょうな手を使っても、お前は私には勝てない」
リリス「寝言は死んでから言え!」
あたしのM『トリガーが引かれ、銃弾が発射された。しかし、アテナはよけることもなく、剣を大きく振りかぶった。弾き返された弾丸は今来たリリスの銃口にすっぽりとはまり、大爆発を起こした』
リリス「今日のところは見逃してやる!」
あたしのM『リリスは捨て台詞を吐くと、さっと姿を消した。アテナは堂々と宣言した』
アテナ「この王国の平和を乱す者はなんびとたりとも、この守護戦士アテナが許さない」
× × ×
あたしのM『……つまらない! 私にはモノ書きの才能がないのか! ああ、どうしよう! しめきりに、間に合わない! 誰かシナリオ書くの手伝って! (冷静になり)えーっと、その前に、景気づけにケーキを食べようかな。あ、これはダジャレじゃないですからね。実は、今日はあたしの記念すべき三〇歳の誕生日なのであります! パチパチパチ! ハピバスデートゥミー、ハピ……あ~~~っ! イチゴのショートケーキ、床に落っことした! もういい! 寝る!』
アテナ「寝るのはまだ早い!」
あたし「どちらさまでしょうか? てゆうか、勝手に人んち、入らないでください! 警察、呼びますよ!」
アテナ「落ち着け。ほら、よく見ろ。異世界王国の守護戦士アテナだ」
あたし「たしかに……そのアマゾネス風のコスチュームは……」
アテナ「おぬしの執筆の手伝いに来てあげたのだ。三〇歳になっても、けがれを知らぬオトメは魔法少女となる。おぬしは魔法を使って、私を呼び寄せた」
あたし「その都市伝説、女性にも当てはまるんですね。とにかく、手伝ってくれるなら、大いに助かります。まずは自己紹介しますね。あたしは一応、新人脚本家でして、今、しめきりを前に焦ってるんです。異世界シナリオコンテストという募集をネットで見かけたんですけど、しめきりはあしたの夜で……」
アテナ「ふむふむ……う~ん、スクロールダウン……おっ、ここまで書いたのか」
あたし「もう、読んでくれてるなんて! どうです? 何かアドバイスを!」
アテナ「この話、ロマンスが足りないな。要はラブ、恋愛要素を入れなきゃ、盛り上がらない。いっそのこと、戦闘シーンもなくしたらいい。白馬の王子様とイチャイチャした、あま~い話がいいんじゃないか。私のキャラなら、まさにツンデレだろ」
あたし「バトルなくしちゃっていいんですか?」
アテナ「正直に言うとな、戦うことに疲れたんだ。体がしんどいんだよ」
あたし「でも、悪の女将軍リリスの出番がなくなってしまいますよ」
アテナ「あんな脇役キャラ、どうでもいい。それより早く、白馬の王子様を出せ!」
あたし「じゃあ、ちょちょいのちょいっと、こんな感じで直してみましたが……」
アテナ「白馬の王子様って、これ、ケンタウロスじゃないか! 胴体は馬で首から上が人間の上半身という、あの射手座だ……」
あたし「異世界王国の王子という設定です。名前はケンタロウと名づけました」
アテナ「なんで日本人の名前なんだよ! 相手は馬だぞ! これじゃ、イチャイチャできないじゃないか! しかも、セリフはひひ~んだけ!」
あたし「種を超えたラブストーリーってのもありじゃないですか。ファンタジーっぽくて」
アテナ「もういい。私の言うとおりに書け。いいか、ヒロインのアテナがこっちの世界にやってくる話だ」
あたし「つまり、あたしがいる現実世界ですか?」
アテナ「そう。私にとっては、こちらが異世界。ここで人間の男性と恋に落ちる物語を書け」
あたし「はい、はい、はい……っと、こんなふうに書いてみました。どうぞ」
アテナ「何だよ、これは! ドロドロ不倫男、借金ギャンブル男、モラハラDV男、元カレのストーカー男……白馬の王子様を出せと言ってるだろ!」
あたし「石油王の息子なんていかがですか?」
アテナ「おう、知ってるぞ。アラブの王国か。白い装束を着て、ぴったりじゃないか」
あたし「石油と言っても、ど田舎でガソリンスタンドを経営しているおっさんで……ギャーッ! 痛い! 関節技なんて、ひどい!」
アテナ「これはかの有名なロメロスペシャル! 別名、吊り天井固めと呼ばれる難易度の高い技だ! どうだ? ギブか?」
あたし「あの……ただのイチャイチャなんてつまらなくありません? キャラの葛藤もドラマの盛り上がりもなくて」
アテナ「じゃあ、今、おぬしの書いてる異世界バトルの話は、人物の気持ちが描かれているのか? あたしがただ強くて、敵をバッタバッタなぎ倒すだけじゃないか。おぬしが恋愛経験ゼロだから書けないのは分かる。だったら、イマジネーションを駆使しろ。作家だろ? バトルだって、人殺しだって、異世界だって書けるんだ」
あたし「もう時間がないから、とりあえずこの作品では、元の異世界王国に帰って、戦ってもらえませんか?」
アテナ「いやだ! 私は戦うことに愛想が尽きた! おぬしがやらないなら、私自身でやる!」
あたし「待ってください! どこ行くんですか!」
アテナ「イケメン探しの旅に出る! さらばだ!」
× × ×
あたしのM『しめきり当日となり、あたしは執筆をあきらめることにしました。どうせ、選ばれやしませんからね。やっても無駄ですよ……』
リリス「おりゃ~~~っ!」
あたし「またしても現れましたね。今度はリリスさんですか」
リリス「我輩の名前が、よく分かったな」
あたし「黒い透け透けの衣装に、プレートアーマーと呼ばれる鎧(よろい)を装着してて、いかにも悪の女将軍じゃないですか」
リリス「アテナはどこだ!」
あたし「残念ながら、アテナさんは守護戦士を引退し、愛を求めて旅立ちました」
リリス「愛だと? 男まさりでクソまじめのあいつに男なんかできるわけがない」
あたし「そういえば、アテナさんもバージンですもんね。でも、心の底ではさびしかったのかも。いつも一人で戦ってましたから」
リリス「我輩の立場はどうなる? 宿命のライバルがいなければ、物語が終わってしまうぞ!」
あたし「いいじゃないですか。もう、アテナさんに負かされることもないですから。噛ませ犬、卒業ですよ」
リリス「うるさい! 我輩はあいつを倒すことだけを生きがいにしてきた! 我輩の生きる目的が……存在価値が……」
あたし「いちいち、リアクションがオーバーですよ。まあ、リリスはそういうキャラですけど」
リリス「こうなったら、きさまが戦え! あいつの代わりに、我輩と勝負しろ! 来い!」
あたし「あれっ……ここ、どこ?」
リリス「異世界王国だ」
あたし「しかも、あたし、魔法少女のコスプレしてる! いやあ~、さすがに三〇歳のあたしには、この格好はきついです」
リリス「今からきさまは我輩のやられ役。主役は我輩がもらった! モンスターども、かかれ!」
あたし「ちょっと待って! バケモノ、怖い! 無理無理無理! いやっ! 来ないでったら! ええいっ!」
リリス「おおっ、モンスターを吹っ飛ばすとは!」
あたし「えっ……いつのまに、槍なんて持ってるの?」
リリス「槍じゃない。巨大な万年筆だぞ」
あたし「で、デカっ!」
リリス「さすが、物書き。ペンは剣より強し……か。だが、銃には勝てないだろ? これできさまの心臓をブチ抜いてやる」
あたし「降参! 降参します! 武器も捨てましたし、両手バンザ~イ!」
リリス「手こずらせやがって。こうしてやる!」
あたし「え~~~っ! 磔(はりつけ)じゃないですか! ほどいてください! こんなの、マニアが喜びそうな展開ですよ!」
リリス「フッ、フッ、フッ。さてと、これは何か、お分かりかな?」
あたし「ムチですよね、ムチ! いやいやいや、あたし、そういう趣味ないです! それにこのシナリオコンテスト、全年齢対象じゃないんですか? こんな描写、ダメ!」
リリス「きさまは一生、我輩のしもべだ。ほ~ら、どこからピシャリと叩こうかな?」
あたし「なんで、そんな嬉しそうな笑顔なんですか! ホント、勘弁して! 誰か助けて!」
ケンタロウ「ひひ~ん!」
リリス「馬のいななき……何だ、あれは! ケンタウロスか!」
あたし「ケンタロウさんです!」
リリス「またがっているのは、アテナじゃないか!」
アテナ「リリス、申し訳ないが、主役はこのアテナだ!」
リリス「今ごろ来ても遅い! この銃弾でもくらえ! バ~ン!」
アテナ「あっ、ケンタロウ、死ぬな!」
あたし「あっさり、帰らぬ馬となってしまいましたね……」
アテナ「リリスめ、許さん!」
リリス「アテナ、やっと目を覚ましたようだな! きさまに愛は似合わん! いざ勝負! はあっ! とうっ! やあっ!」
アテナ「リリス、なかなかやるな! 今度はこちらの攻撃だ! えいっ! ほうっ! しゃーっ!」
リリス「アテナ、いきなりこんなことを言うのもなんだが、きさまが本当に愛しているのは、この我輩だ!」
アテナ「リリス、何を言う! 私はおぬしのことなど……もしや、おぬしこそ私に惚れているのではないか!」
リリス「待て待て待て! どうなっているのだ、この展開……ヘンじゃないか!」
アテナ「見ろ! 作家先生があそこでノートパソコンで執筆しているぞ!」
リリス「いつのまに、自由の身に……。おい、勝手に書き換えるな!」
あたし「あたし、気づいたのよ! 二人はお互いに愛し合っているの! じゃなきゃ、こんなに毎回毎回、戦えないでしょ! どっちか片方がいなくなったら、さびしいじゃない!」
アテナ「ありえん! 私はこんな悪の女将軍なんか……」
リリス「同じく! 我輩は正義を倒すことこそが……」
あたし「いいから二人とも戦い続けて! こんな美しいラブシーン、最高じゃない!」
リリス「クソ! 作者の思うつぼだ。アテナ、どうする?」
アテナ「作者とは、まさに神なんだな。世界を作り、人物をあやつる。分かった。作家先生さんよ。私たちは戦い続ける。その代わり、いい作品にしてくれよ」
あたし「オッケー!」
× × ×
あたしのM『こうしてあたしが書いた『異世界シナリオ戦記』はエンドマークをむかえ、ぎりぎり提出に間に合った。結果はどうなるか分からない。それでもあたしは書き続けるだろう。全能の神として、物語をつむいでいくのだ。とりあえず、寝よう』
アテナ「作家先生!」
リリス「急いで、したくしろ!」
あたし「アテナ! リリス! なんで、いるの!」
アテナ「ケンタロウの弟、ミノタウロスのミノタロウが新国王に即位したんだが、悪政をしいて、暴ぎゃくのかぎりを尽くしている」
リリス「きさまも今から一緒に来て、戦ってもらうぞ」
あたし「ミノタウロスってことは、人間の体に牛の頭ですか……」
アテナ「ほら、ノートパソコンだ。最強の武器だろ?」
リリス「さあ、異世界へ行くぞ!」
あたし「まだまだ物語は続きそうですね!」
(終)
【登場人物】
・あたし……売れない女性脚本家
・アテナ……異世界王国の女戦士
・リリス……異世界の悪の女将軍
・ケンタロウ……ケンタウロスの王子様(※アテナ役が兼任可)
イラストby糺乃樹来さま(https://twitter.com/eGlrxQGzqHMc7Xe)
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イラストbyあニキさま(https://twitter.com/akuyaku_niki)
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あたしのM(モノローグ)『女戦士アテナは美しくたくましかった。剣を抜くや、異世界のモンスターどもを次々と倒していった』
リリス「アテナ! 今日こそ、決着をつけてやる!」
あたしのM『アテナが視線を向けると、悪の女将軍リリスが立ちはだかっていた。その手には古めかしいハンドガンがあり、銃口はアテナへと向けられていた』
アテナ「リリス……そんなひきょうな手を使っても、お前は私には勝てない」
リリス「寝言は死んでから言え!」
あたしのM『トリガーが引かれ、銃弾が発射された。しかし、アテナはよけることもなく、剣を大きく振りかぶった。弾き返された弾丸は今来たリリスの銃口にすっぽりとはまり、大爆発を起こした』
リリス「今日のところは見逃してやる!」
あたしのM『リリスは捨て台詞を吐くと、さっと姿を消した。アテナは堂々と宣言した』
アテナ「この王国の平和を乱す者はなんびとたりとも、この守護戦士アテナが許さない」
× × ×
あたしのM『……つまらない! 私にはモノ書きの才能がないのか! ああ、どうしよう! しめきりに、間に合わない! 誰かシナリオ書くの手伝って! (冷静になり)えーっと、その前に、景気づけにケーキを食べようかな。あ、これはダジャレじゃないですからね。実は、今日はあたしの記念すべき三〇歳の誕生日なのであります! パチパチパチ! ハピバスデートゥミー、ハピ……あ~~~っ! イチゴのショートケーキ、床に落っことした! もういい! 寝る!』
アテナ「寝るのはまだ早い!」
あたし「どちらさまでしょうか? てゆうか、勝手に人んち、入らないでください! 警察、呼びますよ!」
アテナ「落ち着け。ほら、よく見ろ。異世界王国の守護戦士アテナだ」
あたし「たしかに……そのアマゾネス風のコスチュームは……」
アテナ「おぬしの執筆の手伝いに来てあげたのだ。三〇歳になっても、けがれを知らぬオトメは魔法少女となる。おぬしは魔法を使って、私を呼び寄せた」
あたし「その都市伝説、女性にも当てはまるんですね。とにかく、手伝ってくれるなら、大いに助かります。まずは自己紹介しますね。あたしは一応、新人脚本家でして、今、しめきりを前に焦ってるんです。異世界シナリオコンテストという募集をネットで見かけたんですけど、しめきりはあしたの夜で……」
アテナ「ふむふむ……う~ん、スクロールダウン……おっ、ここまで書いたのか」
あたし「もう、読んでくれてるなんて! どうです? 何かアドバイスを!」
アテナ「この話、ロマンスが足りないな。要はラブ、恋愛要素を入れなきゃ、盛り上がらない。いっそのこと、戦闘シーンもなくしたらいい。白馬の王子様とイチャイチャした、あま~い話がいいんじゃないか。私のキャラなら、まさにツンデレだろ」
あたし「バトルなくしちゃっていいんですか?」
アテナ「正直に言うとな、戦うことに疲れたんだ。体がしんどいんだよ」
あたし「でも、悪の女将軍リリスの出番がなくなってしまいますよ」
アテナ「あんな脇役キャラ、どうでもいい。それより早く、白馬の王子様を出せ!」
あたし「じゃあ、ちょちょいのちょいっと、こんな感じで直してみましたが……」
アテナ「白馬の王子様って、これ、ケンタウロスじゃないか! 胴体は馬で首から上が人間の上半身という、あの射手座だ……」
あたし「異世界王国の王子という設定です。名前はケンタロウと名づけました」
アテナ「なんで日本人の名前なんだよ! 相手は馬だぞ! これじゃ、イチャイチャできないじゃないか! しかも、セリフはひひ~んだけ!」
あたし「種を超えたラブストーリーってのもありじゃないですか。ファンタジーっぽくて」
アテナ「もういい。私の言うとおりに書け。いいか、ヒロインのアテナがこっちの世界にやってくる話だ」
あたし「つまり、あたしがいる現実世界ですか?」
アテナ「そう。私にとっては、こちらが異世界。ここで人間の男性と恋に落ちる物語を書け」
あたし「はい、はい、はい……っと、こんなふうに書いてみました。どうぞ」
アテナ「何だよ、これは! ドロドロ不倫男、借金ギャンブル男、モラハラDV男、元カレのストーカー男……白馬の王子様を出せと言ってるだろ!」
あたし「石油王の息子なんていかがですか?」
アテナ「おう、知ってるぞ。アラブの王国か。白い装束を着て、ぴったりじゃないか」
あたし「石油と言っても、ど田舎でガソリンスタンドを経営しているおっさんで……ギャーッ! 痛い! 関節技なんて、ひどい!」
アテナ「これはかの有名なロメロスペシャル! 別名、吊り天井固めと呼ばれる難易度の高い技だ! どうだ? ギブか?」
あたし「あの……ただのイチャイチャなんてつまらなくありません? キャラの葛藤もドラマの盛り上がりもなくて」
アテナ「じゃあ、今、おぬしの書いてる異世界バトルの話は、人物の気持ちが描かれているのか? あたしがただ強くて、敵をバッタバッタなぎ倒すだけじゃないか。おぬしが恋愛経験ゼロだから書けないのは分かる。だったら、イマジネーションを駆使しろ。作家だろ? バトルだって、人殺しだって、異世界だって書けるんだ」
あたし「もう時間がないから、とりあえずこの作品では、元の異世界王国に帰って、戦ってもらえませんか?」
アテナ「いやだ! 私は戦うことに愛想が尽きた! おぬしがやらないなら、私自身でやる!」
あたし「待ってください! どこ行くんですか!」
アテナ「イケメン探しの旅に出る! さらばだ!」
× × ×
あたしのM『しめきり当日となり、あたしは執筆をあきらめることにしました。どうせ、選ばれやしませんからね。やっても無駄ですよ……』
リリス「おりゃ~~~っ!」
あたし「またしても現れましたね。今度はリリスさんですか」
リリス「我輩の名前が、よく分かったな」
あたし「黒い透け透けの衣装に、プレートアーマーと呼ばれる鎧(よろい)を装着してて、いかにも悪の女将軍じゃないですか」
リリス「アテナはどこだ!」
あたし「残念ながら、アテナさんは守護戦士を引退し、愛を求めて旅立ちました」
リリス「愛だと? 男まさりでクソまじめのあいつに男なんかできるわけがない」
あたし「そういえば、アテナさんもバージンですもんね。でも、心の底ではさびしかったのかも。いつも一人で戦ってましたから」
リリス「我輩の立場はどうなる? 宿命のライバルがいなければ、物語が終わってしまうぞ!」
あたし「いいじゃないですか。もう、アテナさんに負かされることもないですから。噛ませ犬、卒業ですよ」
リリス「うるさい! 我輩はあいつを倒すことだけを生きがいにしてきた! 我輩の生きる目的が……存在価値が……」
あたし「いちいち、リアクションがオーバーですよ。まあ、リリスはそういうキャラですけど」
リリス「こうなったら、きさまが戦え! あいつの代わりに、我輩と勝負しろ! 来い!」
あたし「あれっ……ここ、どこ?」
リリス「異世界王国だ」
あたし「しかも、あたし、魔法少女のコスプレしてる! いやあ~、さすがに三〇歳のあたしには、この格好はきついです」
リリス「今からきさまは我輩のやられ役。主役は我輩がもらった! モンスターども、かかれ!」
あたし「ちょっと待って! バケモノ、怖い! 無理無理無理! いやっ! 来ないでったら! ええいっ!」
リリス「おおっ、モンスターを吹っ飛ばすとは!」
あたし「えっ……いつのまに、槍なんて持ってるの?」
リリス「槍じゃない。巨大な万年筆だぞ」
あたし「で、デカっ!」
リリス「さすが、物書き。ペンは剣より強し……か。だが、銃には勝てないだろ? これできさまの心臓をブチ抜いてやる」
あたし「降参! 降参します! 武器も捨てましたし、両手バンザ~イ!」
リリス「手こずらせやがって。こうしてやる!」
あたし「え~~~っ! 磔(はりつけ)じゃないですか! ほどいてください! こんなの、マニアが喜びそうな展開ですよ!」
リリス「フッ、フッ、フッ。さてと、これは何か、お分かりかな?」
あたし「ムチですよね、ムチ! いやいやいや、あたし、そういう趣味ないです! それにこのシナリオコンテスト、全年齢対象じゃないんですか? こんな描写、ダメ!」
リリス「きさまは一生、我輩のしもべだ。ほ~ら、どこからピシャリと叩こうかな?」
あたし「なんで、そんな嬉しそうな笑顔なんですか! ホント、勘弁して! 誰か助けて!」
ケンタロウ「ひひ~ん!」
リリス「馬のいななき……何だ、あれは! ケンタウロスか!」
あたし「ケンタロウさんです!」
リリス「またがっているのは、アテナじゃないか!」
アテナ「リリス、申し訳ないが、主役はこのアテナだ!」
リリス「今ごろ来ても遅い! この銃弾でもくらえ! バ~ン!」
アテナ「あっ、ケンタロウ、死ぬな!」
あたし「あっさり、帰らぬ馬となってしまいましたね……」
アテナ「リリスめ、許さん!」
リリス「アテナ、やっと目を覚ましたようだな! きさまに愛は似合わん! いざ勝負! はあっ! とうっ! やあっ!」
アテナ「リリス、なかなかやるな! 今度はこちらの攻撃だ! えいっ! ほうっ! しゃーっ!」
リリス「アテナ、いきなりこんなことを言うのもなんだが、きさまが本当に愛しているのは、この我輩だ!」
アテナ「リリス、何を言う! 私はおぬしのことなど……もしや、おぬしこそ私に惚れているのではないか!」
リリス「待て待て待て! どうなっているのだ、この展開……ヘンじゃないか!」
アテナ「見ろ! 作家先生があそこでノートパソコンで執筆しているぞ!」
リリス「いつのまに、自由の身に……。おい、勝手に書き換えるな!」
あたし「あたし、気づいたのよ! 二人はお互いに愛し合っているの! じゃなきゃ、こんなに毎回毎回、戦えないでしょ! どっちか片方がいなくなったら、さびしいじゃない!」
アテナ「ありえん! 私はこんな悪の女将軍なんか……」
リリス「同じく! 我輩は正義を倒すことこそが……」
あたし「いいから二人とも戦い続けて! こんな美しいラブシーン、最高じゃない!」
リリス「クソ! 作者の思うつぼだ。アテナ、どうする?」
アテナ「作者とは、まさに神なんだな。世界を作り、人物をあやつる。分かった。作家先生さんよ。私たちは戦い続ける。その代わり、いい作品にしてくれよ」
あたし「オッケー!」
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あたしのM『こうしてあたしが書いた『異世界シナリオ戦記』はエンドマークをむかえ、ぎりぎり提出に間に合った。結果はどうなるか分からない。それでもあたしは書き続けるだろう。全能の神として、物語をつむいでいくのだ。とりあえず、寝よう』
アテナ「作家先生!」
リリス「急いで、したくしろ!」
あたし「アテナ! リリス! なんで、いるの!」
アテナ「ケンタロウの弟、ミノタウロスのミノタロウが新国王に即位したんだが、悪政をしいて、暴ぎゃくのかぎりを尽くしている」
リリス「きさまも今から一緒に来て、戦ってもらうぞ」
あたし「ミノタウロスってことは、人間の体に牛の頭ですか……」
アテナ「ほら、ノートパソコンだ。最強の武器だろ?」
リリス「さあ、異世界へ行くぞ!」
あたし「まだまだ物語は続きそうですね!」
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