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異世界転生ー私は騎士になりますー
21 緊急事態
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舞台を離れれば途端に人がまばらになった、社交に積極的な面々はダンスの曲が流れている間中心地を離れない。よって、この壁際周辺にいるのは……。
「ふん。私とお兄様の区別がつかない方が悪いのよ。婚約出来なかったのは私の所為じゃないわ」
「何ですって!」
「酷い……」
うわぁ早速からまれてる。
舞台からかなり離れていてカーテンで区切られた休憩スペースの近くで、レイチェルがアティナ様シェリー様と喧嘩していた。絡まれてるなんてもんじゃない、がっつりレイチェルも応戦しちゃっている。
私はとりあえずカーテンの影から様子を見ることにした。
レイチェルが一方的に責められて怯えているならともかく、これではただの同い年の女の子同士の口喧嘩。しかも会話の流れからしてウィルの婚約に関する苦情だ。現婚約者の私が出ていけば火に油どころか、ガソリンを注ぎ込むようなものだろう。
「何故、あれ以来何度も打診している私達でも、別のご令嬢でもなく、つい最近になってたった一度打診があっただけのヴィラント侯爵家令嬢のクロウツィア様がいきなり婚約者になっているのです?」
アティナの質問は尤もだと思う。ウィルの口ぶりだと婚約が決まった今でも打診が続く程の状態で、一度は婚約者になりかけたアティナやシェリーを押しのけて、私が婚約者に決まったのは不思議だ。
そこまで剣聖の娘というのは良い条件なのだろうか?
「そんなこと知らないわ!」
レイチェルの返事にカクっとなってしまう。知らんのかいって関西風にツッコミを入れたくなった。
「でも、あんた達なんかよりもよっぽどお兄様にふさわしい婚約者だと言えるわね。一目で私とお兄様を見分けたわ!」
「!?」
驚いてカーテンから少し顔を出して見てしまった。レイチェルがすっごいドヤ顔を決めている、まるで二人を見分けるのが婚約者として認める条件だとでも言いたげだ。
絶対そんなのじゃないと思うけどね! どう寛大な目で見ても悪意が篭りすぎていた。
まぁ一目でというのは大げさだけどね。違和感は感じていたけれど最初の時点ではレイチェルの存在を知らなかったから別人だと言う確証が持てなかったし。
「ではレイチェル様はこのままクロウツィア様が婚約者で良いとおっしゃるの?」
アティナ様が何かを抑え込むような振るえた声で問いかけた。こちら側からアティナ様もシェリー様も顔が見えないけれど好意的な雰囲気ではないのは確かだ。
「それは……」
「何を話してますの?」
声をかけたのは数人の令嬢や子息を取り巻きのように従えた美少女だった。少女といっても私達よりも少し年上のようだ。
真っ白なドレスを身に纏っている初々しいレイチェル達と並ぶと、大胆に胸元の開いたピンクに黒レースのドレスを身に纏った彼女は物凄い存在感を放っている。
凄ぇ……何カップあるんだあれ。
「メイリア様!」
アティナ様のおかげで正体が分かった。3人目のウィルの元婚約者候補、メイリア・ゲッフェン侯爵令嬢のようだ。
もしも、彼女とウィルの婚約が成立していたら、美女と美少女(男)という妖しいカップルが成立していたところだったのか。なんだか惜しかった気もする。
元の三人にメイリア様とその下僕達のおかげで途端に周囲が鮨詰め状態になってしまった。これではレイチェルの姿が見えない。
「一人の女性に対し二人で詰め寄るなんて、恥ずかしい真似をするものではありませんわ。まぁ、このままでは私も同じことをすることになってしまいますので、失礼するわね」
確かに、二対一を責めておきながら、多対二で糾弾するのはおかしな話だ。と思って彼らを見送ったら、メイリア様ご一行が離れた時レイチェルの姿が無くなっていた。さりげなく彼女を逃がしたのかと思って周囲を見回したけれどレイチェル様の姿が見えない。
憤慨してアティナ様シェリー様が去っていったので無人となった場所に出ていってみたけれど、レイチェルの姿はやはり無い。
「まさかと思うけど……」
私は彼女達が居た場所より更に奥の壁により、カーテンをどけた。
そこには扉が一枚だけあり、中はワイヤーがぶら下がった空間だった。見取り図によると地下のワインセラーに通じる手動の昇降機の為の空間だった筈。昇降機の為のハンドルを回してみようとしても、ぐっと抵抗があって簡単には回らない。これはかなり不自然だ。ダンスが終われば歓談に入るので、ワインの乗せられたワゴンは会場内で待機している。昇降機の中は空になっていないとおかしいのだ。
「緊急事態ってところだねぇ」
「ふん。私とお兄様の区別がつかない方が悪いのよ。婚約出来なかったのは私の所為じゃないわ」
「何ですって!」
「酷い……」
うわぁ早速からまれてる。
舞台からかなり離れていてカーテンで区切られた休憩スペースの近くで、レイチェルがアティナ様シェリー様と喧嘩していた。絡まれてるなんてもんじゃない、がっつりレイチェルも応戦しちゃっている。
私はとりあえずカーテンの影から様子を見ることにした。
レイチェルが一方的に責められて怯えているならともかく、これではただの同い年の女の子同士の口喧嘩。しかも会話の流れからしてウィルの婚約に関する苦情だ。現婚約者の私が出ていけば火に油どころか、ガソリンを注ぎ込むようなものだろう。
「何故、あれ以来何度も打診している私達でも、別のご令嬢でもなく、つい最近になってたった一度打診があっただけのヴィラント侯爵家令嬢のクロウツィア様がいきなり婚約者になっているのです?」
アティナの質問は尤もだと思う。ウィルの口ぶりだと婚約が決まった今でも打診が続く程の状態で、一度は婚約者になりかけたアティナやシェリーを押しのけて、私が婚約者に決まったのは不思議だ。
そこまで剣聖の娘というのは良い条件なのだろうか?
「そんなこと知らないわ!」
レイチェルの返事にカクっとなってしまう。知らんのかいって関西風にツッコミを入れたくなった。
「でも、あんた達なんかよりもよっぽどお兄様にふさわしい婚約者だと言えるわね。一目で私とお兄様を見分けたわ!」
「!?」
驚いてカーテンから少し顔を出して見てしまった。レイチェルがすっごいドヤ顔を決めている、まるで二人を見分けるのが婚約者として認める条件だとでも言いたげだ。
絶対そんなのじゃないと思うけどね! どう寛大な目で見ても悪意が篭りすぎていた。
まぁ一目でというのは大げさだけどね。違和感は感じていたけれど最初の時点ではレイチェルの存在を知らなかったから別人だと言う確証が持てなかったし。
「ではレイチェル様はこのままクロウツィア様が婚約者で良いとおっしゃるの?」
アティナ様が何かを抑え込むような振るえた声で問いかけた。こちら側からアティナ様もシェリー様も顔が見えないけれど好意的な雰囲気ではないのは確かだ。
「それは……」
「何を話してますの?」
声をかけたのは数人の令嬢や子息を取り巻きのように従えた美少女だった。少女といっても私達よりも少し年上のようだ。
真っ白なドレスを身に纏っている初々しいレイチェル達と並ぶと、大胆に胸元の開いたピンクに黒レースのドレスを身に纏った彼女は物凄い存在感を放っている。
凄ぇ……何カップあるんだあれ。
「メイリア様!」
アティナ様のおかげで正体が分かった。3人目のウィルの元婚約者候補、メイリア・ゲッフェン侯爵令嬢のようだ。
もしも、彼女とウィルの婚約が成立していたら、美女と美少女(男)という妖しいカップルが成立していたところだったのか。なんだか惜しかった気もする。
元の三人にメイリア様とその下僕達のおかげで途端に周囲が鮨詰め状態になってしまった。これではレイチェルの姿が見えない。
「一人の女性に対し二人で詰め寄るなんて、恥ずかしい真似をするものではありませんわ。まぁ、このままでは私も同じことをすることになってしまいますので、失礼するわね」
確かに、二対一を責めておきながら、多対二で糾弾するのはおかしな話だ。と思って彼らを見送ったら、メイリア様ご一行が離れた時レイチェルの姿が無くなっていた。さりげなく彼女を逃がしたのかと思って周囲を見回したけれどレイチェル様の姿が見えない。
憤慨してアティナ様シェリー様が去っていったので無人となった場所に出ていってみたけれど、レイチェルの姿はやはり無い。
「まさかと思うけど……」
私は彼女達が居た場所より更に奥の壁により、カーテンをどけた。
そこには扉が一枚だけあり、中はワイヤーがぶら下がった空間だった。見取り図によると地下のワインセラーに通じる手動の昇降機の為の空間だった筈。昇降機の為のハンドルを回してみようとしても、ぐっと抵抗があって簡単には回らない。これはかなり不自然だ。ダンスが終われば歓談に入るので、ワインの乗せられたワゴンは会場内で待機している。昇降機の中は空になっていないとおかしいのだ。
「緊急事態ってところだねぇ」
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