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1章 異世界転生してすぐ爆走!?
7 街の市場でモグモグ
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「おぉ、どれも美味しそう!」
「じゃんじゃん食べてね」
あれからルーシェさんに連れて来られたのは冒険者ギルドからほど近い市場エリア。普通に食材を売っているお店もあれば、屋台みたいなのも沢山あってとても賑やかな場所だった。
今居るのはその中央広場。ここではフードコートのように屋台で買ったものを飲食できるテーブルや椅子が設置されているのだ。
テーブルの上に所狭しと広がる料理の載ったお皿やジュースの入ったカップ。
ルーシェさんはここがおすすめ、ここも美味しいあれも良いと持てる限り買い込んではアシュ兄のアイテム袋に放り込んで持ってきたのだ。アシュ兄の皮袋をこんなことで早速活用するとは思わなかった。
「いただきます!」
私が手を合わせるとルーシェさんに不思議そうにされたので、うちで伝わる食前の作法だと伝えた。この世界ではあまりそういうのは無いようだ。
「そうなのね、じゃぁ私も、いただきます!」
屋台の品物は基本的にお肉やお魚を焼いた串焼きが多い。塩だけで焼いてあるものや、原料不明な調味料でタレ漬けして焼いたものもある。ちょっと辛いが甘みも感じる謎の香辛料がまぶしてある物もあり、飽きない。お肉自体も何のお肉なのか分からないのが多い。傾向として、香辛料が沢山まぶされたものや味が濃いもの程少し固かったりクセというか独特の風味があるが、それが絶妙にマッチしている。一応ルーシェさんがこれは何それは何と教えてくれているが覚えられそうになかった。基本ダンジョンで取れるモンスターの肉らしい。魚は川で捕れたもので、名前は違ってたけど味は鮎っぽい。
あと何か分からないけど黄色と赤のマーブルなジュース。甘酸っぱくて美味しいしコックリしているかと思えば意外とスッキリとした後味。
洋風なおでんみたいなのまであった。こちらはコンソメスープのような琥珀色のスープの中に、知らない野菜がゴロゴロと入っている。食べてみると本当にコンソメ味、でも香辛料がぴりっとしてアクセントが効いている。
主食はナンのようなピザのような薄く焼かれた固めのパン。コレにも蜂蜜でもメープルシロップでもない何かの甘いシロップが塗られている。一つで結構お腹に溜まる感じだ。
メシマズ異世界だったらどうしようかと思ったけど、普通にどれも食べられるので一安心だ。
料理チートなんて出来ないしね、元の世界では台所にすら立ったこと無いもの。
多すぎるかと思ったけど、全部ジュースやパン以外はルーシェさんと半分こだったのでなんとか食べられている。
「でも、良いんですか? アシュ兄のお金なのに」
「いいのよいいのよぉ、これ位必要経費だわ。これだけ買っても小金貨一枚にだって届かないしね」
確かにここの屋台の食べ物は基本的に銅貨三枚前後程度で、あまり高くはない。一番高いものでも銀貨一枚。銅貨1枚で100円、銀貨1枚で500円という感覚で覚えているのだけれど、全て合わせても3000円もしていないと思われた。
「ーーそれで、冒険者規定とか軽い一般常識は把握出来たかしら」
「多分。また聞くかもしれないけど」
「大丈夫よ。毎日顔を合わせることになるんだからいつでも聞いてちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
食べながら広場の中央の時計を見上げると、もうすぐ3時になろうとしていた。
呼び方の違いはあれど時計の見方や時間間隔は共通のようなので分かりやすい。
この世界で時計は高級品で、個人で所有しているのは貴族のみ。庶民は街の要所に設置された時計や、教会が鳴らす鐘で時間を把握しているらしい。
街に設置されている時計は、この中央広場、教会、各種ギルド本部だけ。(冒険者ギルド以外に錬金術ギルドとか、商業ギルドとか色々あるらしい)
教会の鐘は、朝一の鐘は朝6時、一時間ごとに鐘の数が増えていって、六の鐘でリセット。お昼の12時になると昼一の鐘として夕方6時まで鳴るらしい。
ほとんどのお店は朝三の鐘頃から始まって昼六の鐘で閉店する。宿の受付も昼六の鐘で締め切り。なので今日の用事も昼六の鐘までに済まさないといけない。
「さて、そろそろお腹一杯になったわね。お皿を返却しに行きましょ」
屋台のお皿はプラスチックとかではないので、購入した屋台へと要返却。もし置き去りにすると通報されることもあるのだとか。
ちょっと面倒だなぁと思いながらお皿を重ねて持ち上げようとすると、急に少年が立ちふさがってきたので驚いた。
私と背丈はさほど変わらない位だが、顔立ちはあどけなさが残っているので、結構年下なのではないだろうか。
「やあ、ボクはトルセ。食器を返してきましょうか!」
「え、急に何……」
「あら、じゃぁお願いするわねトルセ。はいこれで」
「ありがとうございます!」
急になんだと断ろうとしたら、ルーシェさんに横から遮られた。彼女が銅貨を1枚差し出すと少年は嬉しそうに受け取り食器を重ねて持ち去っていった。
疑問を顔に載せてルーシェさんを見上げると、返って来たのは苦笑だった。
「彼は孤児院の子ね。あーやって色んな人に声を掛けているのよ」
トルセの様子を観察していると、食器を返しながら色んな人に声を掛けている。応じる人達は皆笑顔で、ルーシェさんのように小銭を渡している人もいるようだ。
「孤児院ってそんなに生活が苦しいんですか? アシュ兄は暮らしぶりは悪くないって言ってたけど見せかけだけだったとか?」
「そんなことないわ。寄付も沢山集まるし、衣食住はしっかりしてるようよ。私の友達にも何人か孤児院出身のこがいるけれど悪い話は聞かないわね」
ルーシェさんに頷きつつ、先ほど彼女と対話していた子供へと視線を送る。痩せている様子も無く、薄汚れている事もない。
普通ならあれ位の子供が働きに出る必要は無さそうに見える。
「じゃぁあの子がしているのはお小遣い稼ぎ?」
「お小遣いというと語弊があるわね、将来のための資金稼ぎ兼顔繋ぎといったところかしら。15才になったら孤児院を出ないといけないから、仕事も見つからないまま無一文で追い出されたら大変でしょう?」
「確かに……」
孤児の環境は悪くないとはいっても就職に不利という問題はどうしてもつきまとう、世相として縁故採用が優先されがちなので、雇ってもらえるかどうかは信頼関係を築けているかどうかにかかってくる。なので幼いうちから愛想を振りまいて人脈を広げる努力をしているのだそうだ。
いくら読み書き計算が出来るというアピールポイントがあっても、幼い頃から人柄を知っている親戚の子供を教育するほうが安心と考える商人の方が多いから。
そういう話を聞くと、アイテムボックスも無く、俊足も無いままアシュ兄に拾われていたらと思うと怖くなった。私はそのまま孤児院に入れられていただろう。読み書きが出来ないという大変不利な状態では、彼のような人脈作りをするよりも勉強が先になるだろう。でも私はもう14才。15才になるまで一年も無い。それに、学校でも友達が多い方ではなかった私が、孤児院にだって馴染めるかわからないのに彼のように街で知らない人に声をかけまくるなんて無理だ。
不意に私の目の前に手が現れ、ぱしんと軽く打ち鳴らした。
はっとして見上げると、ルーシェさんが優しい笑顔で見下ろしていた。
「だから、孤児院の子を見かけたらなるべく優しくしてあげてね。そして余裕があったら助けてあげて。貴方はもうこの街の立派な冒険者なんだから」
「そうですね、アシュ兄に助けてもらった分頑張って還元します」
「その意気よ。じゃぁ、お買い物済ませましょうか。もうすぐ昼3の鐘が鳴るから急がなくちゃ」
そこからはルーシェさんの案内で、冒険者活動に必要な物品を揃えていくことになった。
「じゃんじゃん食べてね」
あれからルーシェさんに連れて来られたのは冒険者ギルドからほど近い市場エリア。普通に食材を売っているお店もあれば、屋台みたいなのも沢山あってとても賑やかな場所だった。
今居るのはその中央広場。ここではフードコートのように屋台で買ったものを飲食できるテーブルや椅子が設置されているのだ。
テーブルの上に所狭しと広がる料理の載ったお皿やジュースの入ったカップ。
ルーシェさんはここがおすすめ、ここも美味しいあれも良いと持てる限り買い込んではアシュ兄のアイテム袋に放り込んで持ってきたのだ。アシュ兄の皮袋をこんなことで早速活用するとは思わなかった。
「いただきます!」
私が手を合わせるとルーシェさんに不思議そうにされたので、うちで伝わる食前の作法だと伝えた。この世界ではあまりそういうのは無いようだ。
「そうなのね、じゃぁ私も、いただきます!」
屋台の品物は基本的にお肉やお魚を焼いた串焼きが多い。塩だけで焼いてあるものや、原料不明な調味料でタレ漬けして焼いたものもある。ちょっと辛いが甘みも感じる謎の香辛料がまぶしてある物もあり、飽きない。お肉自体も何のお肉なのか分からないのが多い。傾向として、香辛料が沢山まぶされたものや味が濃いもの程少し固かったりクセというか独特の風味があるが、それが絶妙にマッチしている。一応ルーシェさんがこれは何それは何と教えてくれているが覚えられそうになかった。基本ダンジョンで取れるモンスターの肉らしい。魚は川で捕れたもので、名前は違ってたけど味は鮎っぽい。
あと何か分からないけど黄色と赤のマーブルなジュース。甘酸っぱくて美味しいしコックリしているかと思えば意外とスッキリとした後味。
洋風なおでんみたいなのまであった。こちらはコンソメスープのような琥珀色のスープの中に、知らない野菜がゴロゴロと入っている。食べてみると本当にコンソメ味、でも香辛料がぴりっとしてアクセントが効いている。
主食はナンのようなピザのような薄く焼かれた固めのパン。コレにも蜂蜜でもメープルシロップでもない何かの甘いシロップが塗られている。一つで結構お腹に溜まる感じだ。
メシマズ異世界だったらどうしようかと思ったけど、普通にどれも食べられるので一安心だ。
料理チートなんて出来ないしね、元の世界では台所にすら立ったこと無いもの。
多すぎるかと思ったけど、全部ジュースやパン以外はルーシェさんと半分こだったのでなんとか食べられている。
「でも、良いんですか? アシュ兄のお金なのに」
「いいのよいいのよぉ、これ位必要経費だわ。これだけ買っても小金貨一枚にだって届かないしね」
確かにここの屋台の食べ物は基本的に銅貨三枚前後程度で、あまり高くはない。一番高いものでも銀貨一枚。銅貨1枚で100円、銀貨1枚で500円という感覚で覚えているのだけれど、全て合わせても3000円もしていないと思われた。
「ーーそれで、冒険者規定とか軽い一般常識は把握出来たかしら」
「多分。また聞くかもしれないけど」
「大丈夫よ。毎日顔を合わせることになるんだからいつでも聞いてちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
食べながら広場の中央の時計を見上げると、もうすぐ3時になろうとしていた。
呼び方の違いはあれど時計の見方や時間間隔は共通のようなので分かりやすい。
この世界で時計は高級品で、個人で所有しているのは貴族のみ。庶民は街の要所に設置された時計や、教会が鳴らす鐘で時間を把握しているらしい。
街に設置されている時計は、この中央広場、教会、各種ギルド本部だけ。(冒険者ギルド以外に錬金術ギルドとか、商業ギルドとか色々あるらしい)
教会の鐘は、朝一の鐘は朝6時、一時間ごとに鐘の数が増えていって、六の鐘でリセット。お昼の12時になると昼一の鐘として夕方6時まで鳴るらしい。
ほとんどのお店は朝三の鐘頃から始まって昼六の鐘で閉店する。宿の受付も昼六の鐘で締め切り。なので今日の用事も昼六の鐘までに済まさないといけない。
「さて、そろそろお腹一杯になったわね。お皿を返却しに行きましょ」
屋台のお皿はプラスチックとかではないので、購入した屋台へと要返却。もし置き去りにすると通報されることもあるのだとか。
ちょっと面倒だなぁと思いながらお皿を重ねて持ち上げようとすると、急に少年が立ちふさがってきたので驚いた。
私と背丈はさほど変わらない位だが、顔立ちはあどけなさが残っているので、結構年下なのではないだろうか。
「やあ、ボクはトルセ。食器を返してきましょうか!」
「え、急に何……」
「あら、じゃぁお願いするわねトルセ。はいこれで」
「ありがとうございます!」
急になんだと断ろうとしたら、ルーシェさんに横から遮られた。彼女が銅貨を1枚差し出すと少年は嬉しそうに受け取り食器を重ねて持ち去っていった。
疑問を顔に載せてルーシェさんを見上げると、返って来たのは苦笑だった。
「彼は孤児院の子ね。あーやって色んな人に声を掛けているのよ」
トルセの様子を観察していると、食器を返しながら色んな人に声を掛けている。応じる人達は皆笑顔で、ルーシェさんのように小銭を渡している人もいるようだ。
「孤児院ってそんなに生活が苦しいんですか? アシュ兄は暮らしぶりは悪くないって言ってたけど見せかけだけだったとか?」
「そんなことないわ。寄付も沢山集まるし、衣食住はしっかりしてるようよ。私の友達にも何人か孤児院出身のこがいるけれど悪い話は聞かないわね」
ルーシェさんに頷きつつ、先ほど彼女と対話していた子供へと視線を送る。痩せている様子も無く、薄汚れている事もない。
普通ならあれ位の子供が働きに出る必要は無さそうに見える。
「じゃぁあの子がしているのはお小遣い稼ぎ?」
「お小遣いというと語弊があるわね、将来のための資金稼ぎ兼顔繋ぎといったところかしら。15才になったら孤児院を出ないといけないから、仕事も見つからないまま無一文で追い出されたら大変でしょう?」
「確かに……」
孤児の環境は悪くないとはいっても就職に不利という問題はどうしてもつきまとう、世相として縁故採用が優先されがちなので、雇ってもらえるかどうかは信頼関係を築けているかどうかにかかってくる。なので幼いうちから愛想を振りまいて人脈を広げる努力をしているのだそうだ。
いくら読み書き計算が出来るというアピールポイントがあっても、幼い頃から人柄を知っている親戚の子供を教育するほうが安心と考える商人の方が多いから。
そういう話を聞くと、アイテムボックスも無く、俊足も無いままアシュ兄に拾われていたらと思うと怖くなった。私はそのまま孤児院に入れられていただろう。読み書きが出来ないという大変不利な状態では、彼のような人脈作りをするよりも勉強が先になるだろう。でも私はもう14才。15才になるまで一年も無い。それに、学校でも友達が多い方ではなかった私が、孤児院にだって馴染めるかわからないのに彼のように街で知らない人に声をかけまくるなんて無理だ。
不意に私の目の前に手が現れ、ぱしんと軽く打ち鳴らした。
はっとして見上げると、ルーシェさんが優しい笑顔で見下ろしていた。
「だから、孤児院の子を見かけたらなるべく優しくしてあげてね。そして余裕があったら助けてあげて。貴方はもうこの街の立派な冒険者なんだから」
「そうですね、アシュ兄に助けてもらった分頑張って還元します」
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