魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記

文字の大きさ
19 / 82

喧嘩

しおりを挟む
 よくある話だ。
 大事な人を人質にして、敵を呼び出すという方法。

 やってくれるじゃないか。
 リーフは相手が考えているほど俺と関係のある人物ではないが、釣られてみようかと思うほどの知り合いだ。ご招待にはぜひとも応じないと。

 デキウス先輩というのがどんなやつなのか、知らない。けれど、周りの反応からして少しくらい暴力をふるっても大丈夫そうな人物みたいだ。

 しかし、集会の部屋は非常にわかりにくいところにあった。すでに俺が探索済みの範囲を外れていたので、建物の配置すらわからない。あやうく、全く違う場所に行くところだった。

 途中で本屋のローレンスに出会って、(無理やり)場所を教えてもらえたから、なんとかたどり着けたけれど。

 扉の前に立っていたのは、明らかに素行がよくなさそうな生徒だった。私服を着て、ジャラジャラとこれ見よがしに装飾品をつけて、俺と戦うことなど想定もしてないだらしなさだ。

「おや、ラーク。来たのか。かわいこちゃん」
 彼はいやらしい笑いを浮かべて、扉を開けてくれた。
「どうぞ、どうぞ、みんな、お待ちかねだよ」

 御親切にどうも。

 その部屋はもともと古い教室だったようだ。古い椅子がいくつも並べられて、そこに何人かの生徒が座っていた。その中心に教壇の成れの果てが残っている。リーフはそれにもたれかかるように座り込んでいた。顔を上げた彼の顔に鼻血が付いていた。

「ローレンスさん? 駄目です」
 リーフは俺に警告した。
「来たら、駄目」

「うるさいんだよ。平民が」
 リーフの隣に立っていた男がリーフをけった。

「やぁ、ラーク。よく来たね。まさか、臆病者のお前がここまで来るとは思ってもいなかったよ」
 呻くリーフを見て楽しそうにしているこいつがデキウスだろうか。

「なぁ、俺たちと楽しく遊ぼう……」

 無防備に後ろから近付いてきた男に思い切り頭突きを食らわせる。もう一人には肘打ちを。

「な」
 驚いて動きを止めた男にそばにあった椅子をたたきつけてやった。

 これで、3人。

 椅子の足はちょうどいい長さの棒になった。俺はそれを何度かふって様子を確かめる。

「リーフ、ごめんね。ちょっと下がっていてくれる?」
 俺は目を見開いてこちらを見ているリーフに笑いかけた。

「ラーク、てめえ」
 周りで笑いながら見ていた奴らが血相を変えて立ち上がった。

 数が多いな。冷静に俺は判断する。でも、数だけだ。

 魔道学園という場所柄、魔法や結界の類を使われると厄介だと思っていたけれど、そんなものを使えそうな人はいない。楽勝とはいかないが、なんとかなりそうだ。

「ラーク」
扉のところから叫んだのはイーサンだった。慌てて駆けつけてきたのか、息を切らせている。

「やぁ、相棒。これを使えよ」

 俺は手にした椅子の足をイーサンに投げた。そして、絡んでくる上級生を蹴った。イーサンもわけがわからないながら、うまく足を使って殴りかかる相手を避けている。

「何だ、これは?」

「武器」

「武器?」
 イーサンはそういいながらも見事にそれで相手の脳天をたたいている。さすが武門の生まれだけはある。

 俺も、新しい武器が欲しい。他の椅子の足のかけらを見つけたが、長さが足りなかった。

「この野郎」
 大柄な生徒が飾りで下げていた剣を抜いた。儀礼用とはいえ刃がついている。
 町で買ったあの短剣があったらなぁ。あの切れ味を試す絶好の機会だったのに。

「ローレンス、危ない!」
 叫んだのはリーフだ。

「おっと」
 俺は落ちていた分厚い本で剣を止めた。相手の剣は途中で止まった。なまくらでよかった。

「刃物は反則だろ」
 相手の懐に飛び込んで、腕をひねる。簡単に刃物は落ちた。使ったこともない癖に剣を抜くんじゃないよ。

「怪我させるなよ」
 ものすごい悲鳴にイーサンが警告する。

「相手が先に絡んできたんだよ。不可抗力だ」
 俺は陽気にいいかえす。

「リーフ!」
 そこへ本屋のローレンスが飛び込んできた。
 目の前で繰り広げられている乱闘に口をあんぐり、立ち止まっている。

「兄さん」
「おい、これは一体……」
「くそ、平民が……」

 ローレンスが殴られている。かわいそうに。彼は関係ないのに。しかし、怒ったローレンスもやり返していた。なかなかいい拳だ。彼は加勢しなくても大丈夫そうだ。

 それよりも。

「おい、行くぞ」
 俺はリーフの手をつかんで立たせた。
 リーフのほうが心配だ。早く、逃がしたほうがいい。

「え? ちょっと待って」
 彼は慌てて床に散らばった本を集め始める。
 あ?さっき盾に使った本はリーフの本だったのか。

「行けよ。さっさと」
 俺は一緒に本を拾い集めて、リーフに渡した。

「いいんですか?」
「あと、これ」眼鏡も返す。

「ラーク、さん」

 椅子が降ってきた。危ない、危ない。

「リーフ」
 何とか弟のもとに這ってきた本屋が弟を抱きしめる。

「さっさといけ。邪魔」

 後ろから何かで殴り掛かられた。床に伏せて、その何かをかわす。

「危ないだろ。おい、待てよ」

 本屋の兄弟に追いすがろうとする野暮な奴の襟首をつかんで引き戻した。

「相手はこっち」

 高笑いしたい気持ちだった。最近いろいろと溜まっていたから発散したかったんだ。

 そのとき、扉の向こうにちらりとドネイ先生の姿が見えた。
 先生は扉の前で立ち止まって、目を閉じた。手が印を結ぶ。

 うわぁ。
 嫌な予感がした。

 俺はつかんでいた相手を突き放して教壇の裏に滑り込んだ。

 次の瞬間、光が狭い部屋を照らし出した。目を硬くつむって、光を防ごうとしたけれど、目の裏にチカチカと光が残った。

 魔法だ。厄介な……

「これは、何事ですか」
 目つぶしを食らった生徒たちはふらふらと頭を振っている。

「いったい」
 そろそろと、教壇の陰から覗くと先生と目が合った。
「ラーク……一体ここで何を……」

 うん、なんと言い訳しよう。俺は頭の中でいろいろな理由を考えた。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

転生聖賢者は、悪女に迷った婚約者の王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 全五話です。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

処理中です...