魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記

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血統

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 もう破れかぶれだ。俺は逆切れする。

「カリアス、おまえ、大公家の名誉を侮辱する気か。人のことを偽物呼ばわりするとは。
 ファリアスの家では公子は偽物といっても許されるのか?我が家を侮辱して、どちらが呪われるかやってみるか?
 ああ、でもそんな勇気はないよな。お前の家門はただの猫だよな。ニャーニャー鳴いてミルクでもねだってろ」

「なんだと。鳥頭のくせに。いいよ、受けて立つよ。家門の名に懸けて……」
 挑みかかられて、カリアスもかっときたようだ。飛び出そうとするのを周りが抑える。

「やめろ、カリアス」
 第二王子が手を挙げた。
「家門同士で争うのはよせ。デリンもファリアスも王権を支える重要な家門だ。そうだろう? ロー?」

 第二王子は俺を無視してあえてもう一人のローレンスに話しかけた。
 後ろのほうにいたローは顔を赤くして下を向いた。

「原因が何であれ、儀式は失敗だった。それは認めなければならない」

「失敗したというが、何が起こったのだ? フェリクス。私のきいたところでは何も問題は起きなかったということだったが」

「そう、何もおきなかったのですよ。兄上」
 金髪の王子は黒髪の王子をにらみつける。
「本来なら、塔に上れば守護獣があらわれ、王座に座るものを祝福する。そういう話でしたよね。
 でも何も起きなかった。精霊も、宝珠もない。
 私を含め、公家のものたちがみな塔にある王座の岩に座った。でも、誰一人として精霊の祝福を得ることができなかったのです。現れる気配すらなかった。
 座ることを拒絶したハートマットを除いて、儀式に参加していなかったのは二人、そこのデリンと兄上だけです」

 俺は第一王子のほうをちらりと見た。

「これが呪いのせいでなければなんなのですか? それともなんですか? あなたか、デリンに王の資格があると?兄上」

「違う。フェリクス。私は故意に行かなかったわけではない。本当に行けなかったのだ。何者かが、私たちを妨害したのだ……」

「妨害?妨害したのはどちらです?私は塔に一番乗りしました。それは王の資格があるということ、違いますか」

「お前の継承権に文句をつけるつもりはない。ただ、私たちは本当に洞窟に送られたのだ」

 話がかみ合っていなかった。ほとんどみな、俺たちの話を信じていない。

「兄上、そんなに私が王位につくのがおいやですか?」

「なにをいっているんだ? 私はただ……」

「そこの臆病者と手を組んで、わざと儀式に参加せず、あまつさえ私の忠実なるものたちの手で洞窟に閉じ込められたなどと嘘を……」

「アーサー様が嘘をついていると、そういわれるのか?」
 ハートマットが気色ばむ。
 かちゃりと金属音がした。

「やめろ」
 アーサー王子が制止をした。
「フェリクス。私は精霊に誓って本当のことをいっている。案内の神官が私を奇妙な場所へ閉じ込めたのだ。たぶん、ラークも同じ神官に案内されたのだろう。そうだな」

 俺はうなずく。

「ラーク、お前は……」

 初めて第二王子が俺を見た。薄い青い瞳が俺に向けられる。

 目が合った。目を合わせたくなかったが、そらすのもしゃくだった。
 王子の目が細められる。

「おまえ、ラークじゃないな」
 一言一言区切っていわれた。
「お前は違う。ラークだったら、あの子だったら、私と目を合わせるようなことはしない。こうして挑むようなことは絶対にない」

 なぜなのかわからないけれど、それを聞いて俺の中の怒りが沸き起こった。

「あなたの知る、ラークが偽物だっただけだろ。僕は僕だ。記憶がなくても、それは変わりがない。貴方の中のラークは幻だ。そうあってほしいと思っていただけじゃないのか?」
 俺は胸の石を握りしめる。
「あなたが僕のことを知らないだけだ」

 取り巻きの殺気を感じる。俺の体は戦闘の間合いを図り始めた。

「いい加減にしないか」
 第一王子が割って入る。
「ここは礼拝堂だぞ。争うのはやめろ」

「その通りです」
 部屋に入ってきたのはあのいけ好かない神官だった。後ろに校長先生も控えている。
 どれだけ俺にとって苦手な人物をそろえるつもりなんだろう。

「ここで争っても何にもなりません。今回の儀式の顛末については話を聞いています。失敗だというものもいますが、それは違います。いいですか、これは失敗ではありません」
 ざわつく生徒たちに神官は繰り返した。
「過去にも似たような事例はあります。今回の結果は残念でした。終わると思っていた儀式が終わらなかった。だからといって失敗というわけではない。まだ、時間はあります」

「しかし、誰かが儀式をないがしろにして呪いを振りまいているとしたら、それは……」

 神官はそういいだした生徒を冷たい目で睨んだ。

「この儀式は聖なるもの。呪いなど発生するはずもない。以前こういったのを忘れたのですか。

 一つ、これは神聖な儀式であること。仲間を集めなさい。仲間とのきずなを深め、精霊の恵みに感謝をささげなさい。

 一つ、すべての儀式は愛の教えに基づくものであること。儀式は優劣を競ったり、利益を得たりするものではありません。純粋な気持ちで精霊と向き合わなければなりません」

 神官はそういってから居合わせた生徒たちの顔をぐるりと見た。

「王位うんぬんはこの儀式の付属にすぎない。この儀式の最大の目的は、偉大なる精霊、国を守る守護獣を呼び出すこと。それを思い出しなさい。
 繰り返しますが、王権に関することは二次的な問題に過ぎない」

「し、しかし、身分を偽って儀式に参加しようとするのは精霊の御心に反する行為ですよね」
 第二王子の取り巻きの一人が声を張り上げる。
「そうした行為をすれば、呪われ……すみませんでした」
 神官に一にらみされて生徒は黙る。

「今回何の問題もなかったと神殿は把握しています」
 校長先生が神官に代わって生徒に説明する。
「学園もそうです。なかったと。ですよね」

 大神官はうなずく。
 今度は第一王子側から抗議の声が上がりかけた。これも、神官の冷たい視線で静かになる。

「血統の証明をしたいのならば、今度おこなわれる公子会で確かめればよいこと。偽物か本物か、その時に明らかになるでしょう。
 いいですか、次の儀式は休み明け、それまで、仲間を増やし互いのきずなを深めあうように。以上」

 そういいきって、神官たちは部屋を出ていく。

 第二王子は燃えるような眼でそれを見ていたが、立ち上がると俺のほうを一顧もせずに同じ扉から出て行った。取り巻きたちが慌てて、その後を追う。

「覚えてろよ」
「公子会が楽しみだな」
 捨て台詞を投げかけられた。

 彼らが出て行ってから、第一王子とその取り巻きが部屋を去った。
 第一王子は心配そうに俺を見たので、俺は深々と頭を下げた。

 残ったのはイーサンだけだった。

「ラーク……面倒なことになったな」

「うん。どうしよう。俺……なぁ。ところで、公子会って何?」

「……そこか。君の心配するところはそこか」
 イーサンはがっくりと頭を下げた。
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