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第1章
第18話「あそこへ!」
≪――だから、ほら、あそこだよ!!≫
ライガが指さした先にはバチバチッ! と火花のような音を発しながら一部の空間が歪んでいるのが見えた。
少しだけ空いた穴の先には白い空間が見える。
「―――召喚の間!!!!」
応接室の3人は揃って声を上げた。
「グリオール、貴方言ってましたよね? 召喚の間は、他の術式に影響されないよう外部とは完全に隔離されていると」
ノクスは一縷の望みを得たといった目でグリオールを見る。
グリオールもまた、ニヤリと笑いながら頷いた。
「いけるかもしれないわねぇ? あの空間だったら、巨人の大爆発の規模にも耐えうるかも」
「――リアナ様!!」
ノクスの言葉に、リアナも頷く。
「他に方法もなさそうですね。分かりました、大聖女の特務権限で召喚の間の“使用者”をノクスさんに変更します!」
「ありがとうございます! ただ、問題はどうやってあの体躯を召喚の間まで運ぶか……ですね。今から人数をかき集める余裕もなさそうですし」
「この場面で転移ゲートが使用出来ないのはかなり手痛いわねぇ? たとえ有志を募っても、現場に行けないんじゃ意味無いし。もしかしたら、それすらも見越しての爆発なのかしらぁ?」
≪お、おいっ! あのデカブツ、かなり膨らんできたぞ! ヤベェんじゃねぇか!?≫
画面から聞こえてきたライガの言葉に、3人は視線を送る。
先ほどの巨人は、まるで球体のように膨れ上がり、ドクンドクンと鈍い音を立てながら小刻みに震えていた。
もはや、誰が見ても一目瞭然で臨界点はすぐそこまで迫っていた。
「ライガ、僕の声が聞こえてますね? とにかく貴方はレオン君を抱えて出来るだけ遠くへ離れなさい! 今すぐに!」
しかし、スクリーン越しのライガはニヤリと笑うとパンッと右手の拳を左手の手のひらに当てながら呟く。
≪何言ってんだよ、ノクス! コイツをどうにかするのが俺の役目なんじゃねぇの!?≫
「ちょ……っ!? ライガ? 君こそこんな時に何言ってんですか!??」
≪要するにあのバチバチしてる穴に落とせば良いんだろ? 簡単じゃねーか! へへっ!≫
強がってはいるが、ライガの額には薄っすらと汗が滲み、その体は小さく震えている。
「……し、しかしっ!」
≪いま俺以外にコイツを運べる奴はいねぇんだろ!? だったら俺がやってやる! レオン兄ちゃんに格好悪いとこ見せちまったからな!≫
「あの子は……っ! 本当に僕の言う事を聞かない……!」
ノクスはたまらずライガのリンク人形を操作しようとする。
「待ってください。ノクスさん。ここは、ライガ君に賭けてみましょう!」
「え? いやいやいや! リアナ様まで何を仰っているんですか!」
「で~も! アレが爆発したら結局みんな死んじゃうんでしょ? だったら、アタシは少しでも可能性のある方に全賭けするわよ?」
「う……ぐ……っ!」
≪……なぁ、ノクス!≫
二人に呼応するようにスクリーンからライガの声が聞こえてくる。
≪……俺のこと、信じられねぇか?≫
「ライガ……」
≪……だよな? だって俺、肝心なとこでビビッて動けなくなっちまった。情けねぇったらねぇよ≫
「…………」
≪レオン兄ちゃんがここまで頑張ってくれたんだ。まだ俺に出来ることがあるなら、やらせてくれよ!≫
しばし、ノクスは目をつぶって深く深呼吸する。
そして目を見開くとライガに話しかけた。
「……ライガ、よくお聞きなさい。これから段取りを説明します」
≪お、おうっ!≫
◆◇◆◇
レオンを近くの木陰に運んだライガはその膝元にナイフを置いた。
≪レオン兄ちゃん、俺……今度は絶対ビビらねぇからな≫
ライガは決意を固めた顔で、すぐに巨人に向かって走った。
≪……よし、デカブツの足元に着いた。いつでも良いぞ!≫
その様子を画面越しに確認すると、ノクスは呪文を唱えた。
すると、ライガの手のひらサイズ程だった穴はみるみる大きくなっていく。
≪―――よしっ! ふんぬっ!!!!≫
ライガはそれを確認すると、勢いよく巨人の足を掴んだ。
(ここが、正念場ですね……!)
ノクスの脳裏に、先刻ライガに伝えた「段取り」が蘇る。
◆◇◆◇
「良いですか? ライガ。これから一時的に召喚の間への穴を最大まで広げます。本来はその時間帯の使用を申請し許可されている者……つまり今はジルミス様以外に操作できない仕組みですが、リアナ様の特務権限で使用者を僕に変更してもらいます」
≪おう! つまり穴が大きくなるんだな!≫
「幸い、召喚直後で空間のチャンネルはまだ繋がったままのようです。つまり今回は使用者の権限を書き換えるだけで、新たに空間を繋げる訳ではない。なので別空間に繋がって他の異形が出てくる可能性はないでしょう」
≪で、俺はその広がった穴に向かって、あのデカブツをゴミ箱ポイすりゃ良いんだろ?≫
「ええ。その後はすぐに空間を閉じればこちら側に被害が及ぶことはありません。召喚の間自体は使用不能になるでしょうが、事態は一刻を争います。とやかく言っていられません!」
≪でも上手く穴に落とせたとして、その後は大丈夫なのか?≫
「ご心配なく、いまの入り口は地面と並行ですが、召喚の間の出口を遥か上空に作れば、巨人はそのまま落下し地面に叩き落とされ、穴が塞ぐまでの間も這い上がっては来れないでしょう」
◆◇◆◇
「――よしっ! 穴が広がりました!」
大穴を見て、ノクスは自分にジルミスの使用者権限が移ったことを確認する。
「でもぉ、これなら入り口も落とし穴みたいに地面に広げることは出来なかったのかしらぁ~? その方が手っ取り早くなぁい?」
「こればかりは、そういう仕様……としか。あの穴は本来、ただの出入り口なんです。家の玄関の入口を地面に設置する人は居ないでしょう?」
「……まぁね。で、この後はどうすんの?」
「ライガは元々、ステータスウィンドウの画面を引っぺがせる程の力を持っています。であれば、その力を底上げすれば……!」
そう言うと、ノクスはライガのリンク人形に自分の魂力を注ぎ始めた。
「……たっぷり注ぎますよ! ライガ、受け取りなさい!」
◆◇◆◇
≪―――よし!! 力が溢れてくるぞ!≫
すると、腕の力が増したのか巨人の体が少しずつ浮き上がっていく。
≪……うぉおおおっ! らぁあああっ!!!≫
ズズッ! ズズズズズ…………!
巨人の体は土埃とともにさらに浮かび上がった。
「す、すごい! あの巨体を持ち上げてる……!」
画面越しにライガの様子を見て、リアナは驚愕する。
「―――いける!!! これならいけますよ、頑張ってライガ君!」
そして拳を握りしめながら歓喜の声を上げた。――と、思ったのも束の間だった。
―――ズンッ!!
再び巨人が地面に落ちる。
≪う……ぐぁ……!!!?≫
途端、ライガの全身から力が抜けたように苦悶の表情を浮かべる。
「はぁ……はぁ……っ!! くそっ、力が……」
ノクスは、疲労困憊になっていた。
すでに大量の汗が額から流れている。
「ノクスさん! 大丈夫ですか!?」
たまらずリアナが声を掛けてきた。
「さ、さすがに……これは……。計算外……! ぐぅ……っ!」
「無理も無いわね。本来、天人ひとりが保有できる魂力量なんてたかが知れてるもの。むしろあんな巨人を一瞬でも持ち上げられただけでも驚きだわぁ?」
「けれど、持ち上がったということは魂力さえ何とかなれば……」
リアナは、グリオールに視線を送る。
「アタシぃ? む~り! もうレオンに魂力注ぎ過ぎちゃってカラッカラ!」
「しかし、今はライガ君だけが頼りなんです。あと少し、魂力があればあの巨人を穴に送ることが出来る……!」
「そうは言ってもねぇ? アタシの作った魂玉なんて、送ってもライガちゃんは絶対吐くでしょ? 生理的に」
「他に、魂力を補充する手段があれば……!」
≪……おいっ! ノクス!!≫
と、スクリーンからライガの声が聞こえてくる。
≪何やってんだ! もっと魂力送ってくれよ!!≫
「やってますよ! でも、もう僕の魂力では……」
≪何言ってんだ? あるだろうが!! 魂力いっぱい!≫
「……な!? いっぱいって……?」
≪……だからっ! お前が今いる場所を思い出せよ! そこ、中央大聖堂なんだろ!? あるじゃねぇか! でっかくてキラキラしたのが!!!≫
「でっかくて……?」
「キラキラぁ……? そういえば、ライガちゃん。どこかで同じセリフ言ってたような……」
その瞬間、ハッと何かを思い出した。
「……浄化処置!!!」
ライガが指さした先にはバチバチッ! と火花のような音を発しながら一部の空間が歪んでいるのが見えた。
少しだけ空いた穴の先には白い空間が見える。
「―――召喚の間!!!!」
応接室の3人は揃って声を上げた。
「グリオール、貴方言ってましたよね? 召喚の間は、他の術式に影響されないよう外部とは完全に隔離されていると」
ノクスは一縷の望みを得たといった目でグリオールを見る。
グリオールもまた、ニヤリと笑いながら頷いた。
「いけるかもしれないわねぇ? あの空間だったら、巨人の大爆発の規模にも耐えうるかも」
「――リアナ様!!」
ノクスの言葉に、リアナも頷く。
「他に方法もなさそうですね。分かりました、大聖女の特務権限で召喚の間の“使用者”をノクスさんに変更します!」
「ありがとうございます! ただ、問題はどうやってあの体躯を召喚の間まで運ぶか……ですね。今から人数をかき集める余裕もなさそうですし」
「この場面で転移ゲートが使用出来ないのはかなり手痛いわねぇ? たとえ有志を募っても、現場に行けないんじゃ意味無いし。もしかしたら、それすらも見越しての爆発なのかしらぁ?」
≪お、おいっ! あのデカブツ、かなり膨らんできたぞ! ヤベェんじゃねぇか!?≫
画面から聞こえてきたライガの言葉に、3人は視線を送る。
先ほどの巨人は、まるで球体のように膨れ上がり、ドクンドクンと鈍い音を立てながら小刻みに震えていた。
もはや、誰が見ても一目瞭然で臨界点はすぐそこまで迫っていた。
「ライガ、僕の声が聞こえてますね? とにかく貴方はレオン君を抱えて出来るだけ遠くへ離れなさい! 今すぐに!」
しかし、スクリーン越しのライガはニヤリと笑うとパンッと右手の拳を左手の手のひらに当てながら呟く。
≪何言ってんだよ、ノクス! コイツをどうにかするのが俺の役目なんじゃねぇの!?≫
「ちょ……っ!? ライガ? 君こそこんな時に何言ってんですか!??」
≪要するにあのバチバチしてる穴に落とせば良いんだろ? 簡単じゃねーか! へへっ!≫
強がってはいるが、ライガの額には薄っすらと汗が滲み、その体は小さく震えている。
「……し、しかしっ!」
≪いま俺以外にコイツを運べる奴はいねぇんだろ!? だったら俺がやってやる! レオン兄ちゃんに格好悪いとこ見せちまったからな!≫
「あの子は……っ! 本当に僕の言う事を聞かない……!」
ノクスはたまらずライガのリンク人形を操作しようとする。
「待ってください。ノクスさん。ここは、ライガ君に賭けてみましょう!」
「え? いやいやいや! リアナ様まで何を仰っているんですか!」
「で~も! アレが爆発したら結局みんな死んじゃうんでしょ? だったら、アタシは少しでも可能性のある方に全賭けするわよ?」
「う……ぐ……っ!」
≪……なぁ、ノクス!≫
二人に呼応するようにスクリーンからライガの声が聞こえてくる。
≪……俺のこと、信じられねぇか?≫
「ライガ……」
≪……だよな? だって俺、肝心なとこでビビッて動けなくなっちまった。情けねぇったらねぇよ≫
「…………」
≪レオン兄ちゃんがここまで頑張ってくれたんだ。まだ俺に出来ることがあるなら、やらせてくれよ!≫
しばし、ノクスは目をつぶって深く深呼吸する。
そして目を見開くとライガに話しかけた。
「……ライガ、よくお聞きなさい。これから段取りを説明します」
≪お、おうっ!≫
◆◇◆◇
レオンを近くの木陰に運んだライガはその膝元にナイフを置いた。
≪レオン兄ちゃん、俺……今度は絶対ビビらねぇからな≫
ライガは決意を固めた顔で、すぐに巨人に向かって走った。
≪……よし、デカブツの足元に着いた。いつでも良いぞ!≫
その様子を画面越しに確認すると、ノクスは呪文を唱えた。
すると、ライガの手のひらサイズ程だった穴はみるみる大きくなっていく。
≪―――よしっ! ふんぬっ!!!!≫
ライガはそれを確認すると、勢いよく巨人の足を掴んだ。
(ここが、正念場ですね……!)
ノクスの脳裏に、先刻ライガに伝えた「段取り」が蘇る。
◆◇◆◇
「良いですか? ライガ。これから一時的に召喚の間への穴を最大まで広げます。本来はその時間帯の使用を申請し許可されている者……つまり今はジルミス様以外に操作できない仕組みですが、リアナ様の特務権限で使用者を僕に変更してもらいます」
≪おう! つまり穴が大きくなるんだな!≫
「幸い、召喚直後で空間のチャンネルはまだ繋がったままのようです。つまり今回は使用者の権限を書き換えるだけで、新たに空間を繋げる訳ではない。なので別空間に繋がって他の異形が出てくる可能性はないでしょう」
≪で、俺はその広がった穴に向かって、あのデカブツをゴミ箱ポイすりゃ良いんだろ?≫
「ええ。その後はすぐに空間を閉じればこちら側に被害が及ぶことはありません。召喚の間自体は使用不能になるでしょうが、事態は一刻を争います。とやかく言っていられません!」
≪でも上手く穴に落とせたとして、その後は大丈夫なのか?≫
「ご心配なく、いまの入り口は地面と並行ですが、召喚の間の出口を遥か上空に作れば、巨人はそのまま落下し地面に叩き落とされ、穴が塞ぐまでの間も這い上がっては来れないでしょう」
◆◇◆◇
「――よしっ! 穴が広がりました!」
大穴を見て、ノクスは自分にジルミスの使用者権限が移ったことを確認する。
「でもぉ、これなら入り口も落とし穴みたいに地面に広げることは出来なかったのかしらぁ~? その方が手っ取り早くなぁい?」
「こればかりは、そういう仕様……としか。あの穴は本来、ただの出入り口なんです。家の玄関の入口を地面に設置する人は居ないでしょう?」
「……まぁね。で、この後はどうすんの?」
「ライガは元々、ステータスウィンドウの画面を引っぺがせる程の力を持っています。であれば、その力を底上げすれば……!」
そう言うと、ノクスはライガのリンク人形に自分の魂力を注ぎ始めた。
「……たっぷり注ぎますよ! ライガ、受け取りなさい!」
◆◇◆◇
≪―――よし!! 力が溢れてくるぞ!≫
すると、腕の力が増したのか巨人の体が少しずつ浮き上がっていく。
≪……うぉおおおっ! らぁあああっ!!!≫
ズズッ! ズズズズズ…………!
巨人の体は土埃とともにさらに浮かび上がった。
「す、すごい! あの巨体を持ち上げてる……!」
画面越しにライガの様子を見て、リアナは驚愕する。
「―――いける!!! これならいけますよ、頑張ってライガ君!」
そして拳を握りしめながら歓喜の声を上げた。――と、思ったのも束の間だった。
―――ズンッ!!
再び巨人が地面に落ちる。
≪う……ぐぁ……!!!?≫
途端、ライガの全身から力が抜けたように苦悶の表情を浮かべる。
「はぁ……はぁ……っ!! くそっ、力が……」
ノクスは、疲労困憊になっていた。
すでに大量の汗が額から流れている。
「ノクスさん! 大丈夫ですか!?」
たまらずリアナが声を掛けてきた。
「さ、さすがに……これは……。計算外……! ぐぅ……っ!」
「無理も無いわね。本来、天人ひとりが保有できる魂力量なんてたかが知れてるもの。むしろあんな巨人を一瞬でも持ち上げられただけでも驚きだわぁ?」
「けれど、持ち上がったということは魂力さえ何とかなれば……」
リアナは、グリオールに視線を送る。
「アタシぃ? む~り! もうレオンに魂力注ぎ過ぎちゃってカラッカラ!」
「しかし、今はライガ君だけが頼りなんです。あと少し、魂力があればあの巨人を穴に送ることが出来る……!」
「そうは言ってもねぇ? アタシの作った魂玉なんて、送ってもライガちゃんは絶対吐くでしょ? 生理的に」
「他に、魂力を補充する手段があれば……!」
≪……おいっ! ノクス!!≫
と、スクリーンからライガの声が聞こえてくる。
≪何やってんだ! もっと魂力送ってくれよ!!≫
「やってますよ! でも、もう僕の魂力では……」
≪何言ってんだ? あるだろうが!! 魂力いっぱい!≫
「……な!? いっぱいって……?」
≪……だからっ! お前が今いる場所を思い出せよ! そこ、中央大聖堂なんだろ!? あるじゃねぇか! でっかくてキラキラしたのが!!!≫
「でっかくて……?」
「キラキラぁ……? そういえば、ライガちゃん。どこかで同じセリフ言ってたような……」
その瞬間、ハッと何かを思い出した。
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