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第1章
第20話「暗闇の中」
ライガがゆっくりと目を開けた。
その瞳に光が戻った瞬間、ノクスは反射的に飛びついて抱きしめていた。
「ああ! ライガ、ライガぁぁ~!!! 心配しましたよぉ~~!!!」
「おい……っ!??」
巨人が消えた直後、一部の転移ゲートが復活したらしく、応接室にいた自分たちはジルミスの屋敷へと転移していた。
緊張の糸が切れたせいか、ノクスは安堵感に突き動かされ、頬ずりを何度も繰り返してしまう。
「帰ったらまずは手当てをして、あ、お風呂にも入れないと! それから服も……」
「何やってんだ! 離れろ!!!」
頬をつねられ、ようやく我に返る。
「いだっ!? ほっぺをつねらないでください! ずっと心配してたんですよぉっ!?」
「うっせえなぁ! 余計なお世話だ!」
「ま、まぁまぁ二人とも! とにかくまずはライガ君の手当てしないと。あ、≪回復の術≫は得意なのでお手伝いしますよ?」
リアナが割って入り、手当てを申し出てきたが、ノクスは笑顔でやんわりと断った。
「いえいえいえっ! そんな滅相もない!」
そのとき、ライガが「あ? なんだこれ」と下半身に違和感を訴えた。
「はぁ……。まぁでも、今回はライガの機転に大いに助けられましたし……」
「……なぁ! おい、ノクス! こっち向け!」
「はい? どうかしま……」
振り向いたノクスは、そこで固まった。
下着を脱ぎ、堂々と自分に向けてそそり立つライガの男の証――あまりにも直球な光景が飛び込んできたのだ。
「……なぁ、これ! さっきからパンツに収まんねぇんだよ! これ、どうすりゃ良いか教えろ!」
「………………」
頭の中が真っ白になる。
「えっと、魂力を注ぎ過ぎると受肉人形は興奮するって聞いたことが……。あ、あの。私では……それは、治せませ……ひゃうぅぅっ!!!!」
横でリアナが真っ赤になって顔を両手で隠すのが視界の端に映った。
「んぁ、どうした~?」
「うふ……。うふふふ! あろうことか大聖女様の御前で…っ」
冷酷な笑みが自分の口元に浮かぶのを、ノクスは自覚していた。
次の瞬間、ライガのリンク人形を握り、全身を制御する。
「い"……っ!?」
ライガの体はビクンと震え、ノクスに向かって尻を突き出す格好で四つん這いになる。
「おい、ちょ……待て!! 巨人は倒しただろ!?」
「やかましいぃぃぃぃいっ!! お仕置きとして尻叩き300回です!」
――バッチィィィン!!!
音と共に、自分の掌に伝わる感触。
「いっでぇぇえええっ!?」
「この……っ! バカ人形がぁぁぁああっ!!!」
「あだっ!? いだだだぁぁぁああ~~~っ!」
――バッチィィィン!!!
ライガの悲鳴と尻を叩く音は、しばらく屋敷中に響き渡った。
◆◇◆◇
「それじゃ、アタシはレオンを連れて一旦お家に帰るわね~?」
グリオールが気絶しているレオンを担ぎ上げ、皆に手を振って去っていく。
「では、私達もそろそろお暇しましょう。リアナ様、後は宜しくお願い致します」
「ええ、事後処理はこちらで引き受けます。貴方達は、しっかり療養してください」
リアナも笑みを残し、遅れてやってきた調査班の方へ歩いていった。
「…………」
ノクスは隣で立ち止まったライガに気づく。
「おや、ライガ。どうしました? まだ尻が痛いのなら僕が抱っこしてあげ……」
「ちげぇよ! その、気絶してる間に……ちょっと変な夢を見てたんだ」
低く落とした声。その調子に、ノクスは自然と耳を傾けていた。
「……夢? どんな夢だったんです?」
「うーん……暗闇の中に立っててさ。自分の体があるのかもわからねぇ感じで……」
ノクスは目を細める。軽口を叩くときとは違う、深刻な色がライガの表情に差していた。
「で、少し先に……知らない兄ちゃんが居た。後ろ姿しか見えねぇんだけど、ずっと独りで泣いてんだよ。何かを握ってて……ナイフみてぇだった」
嫌な予感が、背筋をゆっくり這い上がってくる。
「そいつ、自分の手首に刃を当てて……切ろうとしてた。でも、刃のほうが折れたり曲がったりしてさ。……それでも何度も、何度も」
語る声が重く沈んでいくたび、ノクスの胸も締め付けられる。
「泣きながら、『誰か俺を殺してくれ』って……。何でか知らねぇけど、その気持ち……わかるような気がした」
ノクスは返す言葉を見つけられなかった。
ただの夢だと笑い飛ばすこともできる。だが――その内容は、危ういまでに現実感を帯びていた。
(……もしや、転生前の記憶が、一時的に……?)
思考の奥底で仮説が芽生えるが、確証はない。
「ま、どーせ夢だしな! あ~腹減った!」
急に明るい声へと戻るライガ。その無邪気さが、さっきの話を余計に胸へ残す。
「仕方ない。今日は頑張ってくれましたし……夕飯は沢山お肉料理を振舞ってあげましょう」
「やった! お前のそういうとこ、俺は好きだぞ♪」
(まったく、この野生児は……! まぁ、悪い気分ではないかな)
屈託のない笑顔を見せるライガに、ノクスは思わずクスッと笑ってしまうのだった。
その瞳に光が戻った瞬間、ノクスは反射的に飛びついて抱きしめていた。
「ああ! ライガ、ライガぁぁ~!!! 心配しましたよぉ~~!!!」
「おい……っ!??」
巨人が消えた直後、一部の転移ゲートが復活したらしく、応接室にいた自分たちはジルミスの屋敷へと転移していた。
緊張の糸が切れたせいか、ノクスは安堵感に突き動かされ、頬ずりを何度も繰り返してしまう。
「帰ったらまずは手当てをして、あ、お風呂にも入れないと! それから服も……」
「何やってんだ! 離れろ!!!」
頬をつねられ、ようやく我に返る。
「いだっ!? ほっぺをつねらないでください! ずっと心配してたんですよぉっ!?」
「うっせえなぁ! 余計なお世話だ!」
「ま、まぁまぁ二人とも! とにかくまずはライガ君の手当てしないと。あ、≪回復の術≫は得意なのでお手伝いしますよ?」
リアナが割って入り、手当てを申し出てきたが、ノクスは笑顔でやんわりと断った。
「いえいえいえっ! そんな滅相もない!」
そのとき、ライガが「あ? なんだこれ」と下半身に違和感を訴えた。
「はぁ……。まぁでも、今回はライガの機転に大いに助けられましたし……」
「……なぁ! おい、ノクス! こっち向け!」
「はい? どうかしま……」
振り向いたノクスは、そこで固まった。
下着を脱ぎ、堂々と自分に向けてそそり立つライガの男の証――あまりにも直球な光景が飛び込んできたのだ。
「……なぁ、これ! さっきからパンツに収まんねぇんだよ! これ、どうすりゃ良いか教えろ!」
「………………」
頭の中が真っ白になる。
「えっと、魂力を注ぎ過ぎると受肉人形は興奮するって聞いたことが……。あ、あの。私では……それは、治せませ……ひゃうぅぅっ!!!!」
横でリアナが真っ赤になって顔を両手で隠すのが視界の端に映った。
「んぁ、どうした~?」
「うふ……。うふふふ! あろうことか大聖女様の御前で…っ」
冷酷な笑みが自分の口元に浮かぶのを、ノクスは自覚していた。
次の瞬間、ライガのリンク人形を握り、全身を制御する。
「い"……っ!?」
ライガの体はビクンと震え、ノクスに向かって尻を突き出す格好で四つん這いになる。
「おい、ちょ……待て!! 巨人は倒しただろ!?」
「やかましいぃぃぃぃいっ!! お仕置きとして尻叩き300回です!」
――バッチィィィン!!!
音と共に、自分の掌に伝わる感触。
「いっでぇぇえええっ!?」
「この……っ! バカ人形がぁぁぁああっ!!!」
「あだっ!? いだだだぁぁぁああ~~~っ!」
――バッチィィィン!!!
ライガの悲鳴と尻を叩く音は、しばらく屋敷中に響き渡った。
◆◇◆◇
「それじゃ、アタシはレオンを連れて一旦お家に帰るわね~?」
グリオールが気絶しているレオンを担ぎ上げ、皆に手を振って去っていく。
「では、私達もそろそろお暇しましょう。リアナ様、後は宜しくお願い致します」
「ええ、事後処理はこちらで引き受けます。貴方達は、しっかり療養してください」
リアナも笑みを残し、遅れてやってきた調査班の方へ歩いていった。
「…………」
ノクスは隣で立ち止まったライガに気づく。
「おや、ライガ。どうしました? まだ尻が痛いのなら僕が抱っこしてあげ……」
「ちげぇよ! その、気絶してる間に……ちょっと変な夢を見てたんだ」
低く落とした声。その調子に、ノクスは自然と耳を傾けていた。
「……夢? どんな夢だったんです?」
「うーん……暗闇の中に立っててさ。自分の体があるのかもわからねぇ感じで……」
ノクスは目を細める。軽口を叩くときとは違う、深刻な色がライガの表情に差していた。
「で、少し先に……知らない兄ちゃんが居た。後ろ姿しか見えねぇんだけど、ずっと独りで泣いてんだよ。何かを握ってて……ナイフみてぇだった」
嫌な予感が、背筋をゆっくり這い上がってくる。
「そいつ、自分の手首に刃を当てて……切ろうとしてた。でも、刃のほうが折れたり曲がったりしてさ。……それでも何度も、何度も」
語る声が重く沈んでいくたび、ノクスの胸も締め付けられる。
「泣きながら、『誰か俺を殺してくれ』って……。何でか知らねぇけど、その気持ち……わかるような気がした」
ノクスは返す言葉を見つけられなかった。
ただの夢だと笑い飛ばすこともできる。だが――その内容は、危ういまでに現実感を帯びていた。
(……もしや、転生前の記憶が、一時的に……?)
思考の奥底で仮説が芽生えるが、確証はない。
「ま、どーせ夢だしな! あ~腹減った!」
急に明るい声へと戻るライガ。その無邪気さが、さっきの話を余計に胸へ残す。
「仕方ない。今日は頑張ってくれましたし……夕飯は沢山お肉料理を振舞ってあげましょう」
「やった! お前のそういうとこ、俺は好きだぞ♪」
(まったく、この野生児は……! まぁ、悪い気分ではないかな)
屈託のない笑顔を見せるライガに、ノクスは思わずクスッと笑ってしまうのだった。
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