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第2章
第31話「もう独りじゃない」
「レオン……くん?」
突然の出来事に理解が追いつかない。ただ、自分より背の高いレオンの腕に抱きしめられていることだけは確かだった。
鍛え抜かれた体に包まれると、体温と筋肉の圧がじわりと迫ってくる。それなのに、どこか柔らかい温もりが心に染みていくのを感じた。
「きっと、これは運命だったんだ。ライガは……きっと救われてる。アイツはもう独りじゃない」
感謝を込めたような声でそう言いながら、レオンはしばらくノクスを抱きしめ続けた。
逞しい筋肉は強靭でありながらしなやかで、不思議と優しさを感じさせる。腕の力が背中にぐっと回され、守られているような感覚が胸の奥に広がる。
(いや、ちょっと待って。これ……!!!)
レオンの体に包まれながら、ノクスの思考は一気に暴走する。
(色気半端ねぇえぇええ~~~っ!!! 何これ!? これがレオン君の匂い!? いやもうこれフェロモン!? スッゲェ良い匂いムンムンなんですけどぉぉおおおっ!!)
顔がすっぽり収まる胸板は、膨らみを帯びた柔らかな曲線を描いている。その優しく包み込まれる感覚に、ノクスの理性は削られていく。
「れ……れお……ぉぶっ!」
鼻をかすめるのは、ほのかな男らしさを感じさせる香り。硬さとしなやかさが絶妙に混じり合い、思考は混乱の極みに達した。
体温、筋肉の硬さ、そして優しさが一体となり、何もかも受け入れてくれるような包容力に、力が抜けていく。
「……あ、すみません!」
レオンは、自分の胸に顔を埋めているノクスの息遣いが熱く荒くなっていくのに気付き、慌てて腕を緩めた。
「俺、つい……っ! あの、でもっ、本当に嬉しかったんです! ライガを認めてくれる人が居てくれるんだって。だから、これからも……っ」
そう続けようと顔を上げた瞬間――。
「えへっ♪ えへへぇえっ♪ あはっ!デュフフフ♪ んはっ♡(K.O.)」
そこにあったのは、白目に鼻血とヨダレを垂らし、幸せそうに気絶しているノクスの顔だった。
「……っ!?」
レオンは困惑した様子で固まり、冷や汗を浮かべた。
◆◇◆◇
「うぅぅ……すみません、僕としたことが……っ」
正気を取り戻したノクスは、鼻に布を詰め、レオンが用意してくれた冷たいタオルを額に当てながら眉を下げた。
「……い、いえ。それより大丈夫ですか?」
レオンは心配そうに隣に腰かけ、何度もこちらの様子を確かめる。その声音は気遣っているように聞こえた。
ノクスは小さく微笑み、タオルを握り直した。
「ま、まぁ……ともかく! ライガは僕が責任をもって面倒みます。これでもあの子の主人ですからね!」
誇らしげに言ったつもりだったが、レオンは黙ったまま視線を向けてくるだけだった。
「それにね、何だかんだで楽しいんですよ。あの子」
不器用でぶっきらぼうな言動が脳裏に浮かび、自然と口元が緩む。
「たの……しい……」
レオンが小さく反芻するようにつぶやいた。
「あの子は僕のことなんて認めてくれてないでしょうけれど、それでも良いんです。頼りなくても、逃げることはしませんよ」
言い終えたとき、レオンは拳を握りしめて俯いた。何かを噛みしめているように見える。
「逃げない……か。そうか、俺は……逃げていたんだな」
「……レオン君?」
問いかけると、レオンはふっと息を吐き、拳を緩めた。
月明かりが窓から差し込み、横顔を幻想的に照らす。やがてレオンは立ち上がり、ノクスの前で片膝をついた。
「……ノクス様」
まっすぐ見上げる視線には、先ほどまでの迷いが消えたように感じられた。
「どうかライガを……よろしくお願いします」
ノクスの手を取り、手の甲に唇を寄せた。その所作は物語の勇者のように凛々しく、思わず見入ってしまう。
月光に照らされたその瞳に、優しさと覚悟を同時に感じた瞬間――。
ポンッ! ブシャァアアアアッ!!!(K.O.)
ノクスの鼻に詰めていた布が吹き飛び、滝のような鼻血が流れ出した。
「…………ッッ!?」
レオンはまたも固まり、冷や汗を浮かべた。
◆◇◆◇
翌朝、扉が勢いよく開いた。
「おっはぁ~♪ グリオールちゃん、帰ってきましたぁ~! ごめんねぇ~? ノクス。うちのレオンが迷惑かけてなかっ……」
部屋に踏み込んできた瞬間、その目を大きく見開くグリオールの顔。
レオンにしがみつくノクスとライガ――そんな光景だったからだ。
「やだぁぁっ!! 行っちゃやだぁぁあっ!!! レオンくぅぅぅうん~~!! 行がないでぇぇええっ!!!」
ノクスは鼻水を垂らしながらレオンの脇腹にしがみつき、ライガは足にしがみついている。
「俺……俺ぇ……っ! レオン兄ちゃんのお嫁さんになるんだぁあああっ!!!」
「……ちょっと、アンタ。こいつらに一体何したの!?」
グリオールが鋭い視線をレオンに向けた。
「えっと……あの。ご、ご奉仕……を……っ」
レオンは棒立ちのまま、しどろもどろに答える。
「……アンタ、ほんっといい加減にしなさいよ!? このバカ!」
「…………ッ」
怒声が飛び、レオンは顔を真っ赤にして固まった。
突然の出来事に理解が追いつかない。ただ、自分より背の高いレオンの腕に抱きしめられていることだけは確かだった。
鍛え抜かれた体に包まれると、体温と筋肉の圧がじわりと迫ってくる。それなのに、どこか柔らかい温もりが心に染みていくのを感じた。
「きっと、これは運命だったんだ。ライガは……きっと救われてる。アイツはもう独りじゃない」
感謝を込めたような声でそう言いながら、レオンはしばらくノクスを抱きしめ続けた。
逞しい筋肉は強靭でありながらしなやかで、不思議と優しさを感じさせる。腕の力が背中にぐっと回され、守られているような感覚が胸の奥に広がる。
(いや、ちょっと待って。これ……!!!)
レオンの体に包まれながら、ノクスの思考は一気に暴走する。
(色気半端ねぇえぇええ~~~っ!!! 何これ!? これがレオン君の匂い!? いやもうこれフェロモン!? スッゲェ良い匂いムンムンなんですけどぉぉおおおっ!!)
顔がすっぽり収まる胸板は、膨らみを帯びた柔らかな曲線を描いている。その優しく包み込まれる感覚に、ノクスの理性は削られていく。
「れ……れお……ぉぶっ!」
鼻をかすめるのは、ほのかな男らしさを感じさせる香り。硬さとしなやかさが絶妙に混じり合い、思考は混乱の極みに達した。
体温、筋肉の硬さ、そして優しさが一体となり、何もかも受け入れてくれるような包容力に、力が抜けていく。
「……あ、すみません!」
レオンは、自分の胸に顔を埋めているノクスの息遣いが熱く荒くなっていくのに気付き、慌てて腕を緩めた。
「俺、つい……っ! あの、でもっ、本当に嬉しかったんです! ライガを認めてくれる人が居てくれるんだって。だから、これからも……っ」
そう続けようと顔を上げた瞬間――。
「えへっ♪ えへへぇえっ♪ あはっ!デュフフフ♪ んはっ♡(K.O.)」
そこにあったのは、白目に鼻血とヨダレを垂らし、幸せそうに気絶しているノクスの顔だった。
「……っ!?」
レオンは困惑した様子で固まり、冷や汗を浮かべた。
◆◇◆◇
「うぅぅ……すみません、僕としたことが……っ」
正気を取り戻したノクスは、鼻に布を詰め、レオンが用意してくれた冷たいタオルを額に当てながら眉を下げた。
「……い、いえ。それより大丈夫ですか?」
レオンは心配そうに隣に腰かけ、何度もこちらの様子を確かめる。その声音は気遣っているように聞こえた。
ノクスは小さく微笑み、タオルを握り直した。
「ま、まぁ……ともかく! ライガは僕が責任をもって面倒みます。これでもあの子の主人ですからね!」
誇らしげに言ったつもりだったが、レオンは黙ったまま視線を向けてくるだけだった。
「それにね、何だかんだで楽しいんですよ。あの子」
不器用でぶっきらぼうな言動が脳裏に浮かび、自然と口元が緩む。
「たの……しい……」
レオンが小さく反芻するようにつぶやいた。
「あの子は僕のことなんて認めてくれてないでしょうけれど、それでも良いんです。頼りなくても、逃げることはしませんよ」
言い終えたとき、レオンは拳を握りしめて俯いた。何かを噛みしめているように見える。
「逃げない……か。そうか、俺は……逃げていたんだな」
「……レオン君?」
問いかけると、レオンはふっと息を吐き、拳を緩めた。
月明かりが窓から差し込み、横顔を幻想的に照らす。やがてレオンは立ち上がり、ノクスの前で片膝をついた。
「……ノクス様」
まっすぐ見上げる視線には、先ほどまでの迷いが消えたように感じられた。
「どうかライガを……よろしくお願いします」
ノクスの手を取り、手の甲に唇を寄せた。その所作は物語の勇者のように凛々しく、思わず見入ってしまう。
月光に照らされたその瞳に、優しさと覚悟を同時に感じた瞬間――。
ポンッ! ブシャァアアアアッ!!!(K.O.)
ノクスの鼻に詰めていた布が吹き飛び、滝のような鼻血が流れ出した。
「…………ッッ!?」
レオンはまたも固まり、冷や汗を浮かべた。
◆◇◆◇
翌朝、扉が勢いよく開いた。
「おっはぁ~♪ グリオールちゃん、帰ってきましたぁ~! ごめんねぇ~? ノクス。うちのレオンが迷惑かけてなかっ……」
部屋に踏み込んできた瞬間、その目を大きく見開くグリオールの顔。
レオンにしがみつくノクスとライガ――そんな光景だったからだ。
「やだぁぁっ!! 行っちゃやだぁぁあっ!!! レオンくぅぅぅうん~~!! 行がないでぇぇええっ!!!」
ノクスは鼻水を垂らしながらレオンの脇腹にしがみつき、ライガは足にしがみついている。
「俺……俺ぇ……っ! レオン兄ちゃんのお嫁さんになるんだぁあああっ!!!」
「……ちょっと、アンタ。こいつらに一体何したの!?」
グリオールが鋭い視線をレオンに向けた。
「えっと……あの。ご、ご奉仕……を……っ」
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