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第2章
第38話「瘴気」
「ククッケケケケ……! ヒヒヒッ♪」
ライガは興奮状態まま、ノクスの声も聞こえていないようだった。
「ま、まさか……!?」
ハッとして懐のリンク人形を見ると、そこには黒いシミのようなものが浮かび上がっている。
(あの異形の正体は浄化される前の魂。だからこの結界は、魂の干渉を遮断するよう術を編んだ。結果、瘴気の侵入を防げている。でも、ライガはそれを直に浴びて……)
その時、ノクスは似たような光景を思い出した。そう、レオンだ。巨人を倒すためにグリオールに通常の数倍の魂力を注がれた彼は、まるで獣のように暴れ狂っていた。
「……まずい!!!」
普段から冷静沈着なレオンでさえあの有様だったのなら、血気盛んなライガはどうなるのか――。
「ガルァァアアアアッ!!!」
考える間もなく、ライガが咆哮する。完全に自分を見失っていることは一目瞭然だ。
「ライガ!!」
ノクスの決死の叫びも届かない。爛々と光る瞳で、異形へと飛びかかる。
拳が振り下ろされるたび、異形は形を崩し瘴気となっていった。しかし、倒すごとにライガの動きは荒々しくなり、異様なほどの興奮を帯びていく。
(まずい、このままじゃライガが……いや、それだけじゃない。この瘴気の影響がこれだけで済むとは限らない。下手すれば……!)
ノクスは意を決して結界を飛び出した。瘴気が立ち込める中、まっすぐにライガへと向かう。
「……ライ……ガ、しっかりなさい!」
強く抱きしめると、ライガの体が一瞬びくりと震える。
「……っ!」
ライガの目が揺らぎ、徐々に落ち着きを取り戻していく。
「ノ……ク……ス?」
「まったく……、ゴホッ! 良い子だから、大人しく……うぐっ!」
しかし、ノクスの身体がふらりと揺れた。瘴気の影響で、視界が霞み、呼吸が浅くなる。
「ノクス? おい、ノクス!!」
正気を取り戻したライガは、焦りの表情を浮かべた。
「くそっ……待ってろ!」
ノクスを肩に担ぐと、一気に結界の中へと駆け戻る。
「おい、ノクス……おいってば!」
「う……るさいですね。少し、瘴気に触れただけ……ゲホゲホッ」
「わ……悪い! 俺……、何か、訳分かんなくなって……」
そこへ、新たな異形が次々と現れる。
「なぁおい! 前に戦った時と様子が違うぞ!? 倒したらすぐ消えねぇで、黒いモヤモヤみてぇになってんぞ!」
「恐らく、ここが地上界だからです。あの異形たちが魂だとしたら、霧散して行き場を失っているのかも……」
「魂力って……。全然キラキラしてねぇぞ?」
「浄化されていない魂を壊すと、ああなるようです。この瘴気、天人には猛毒ですね」
「くそっ、めんどくせぇ敵だな!」
ノクスはふらつきながらも出入り口で結界を展開し、瘴気の流出を抑えている。しかし、それでも少しずつ外へ漏れ出していた。
「くっそ! 一匹一匹は大したことねぇのに、数が多すぎる!」
「おいノクス! このままだと結界持たねぇぞ! 何か手はないのか!?」
「わかってます! でも……下手に動けば、もっと状況が悪化する可能性が――」
「じゃあ、どうすりゃ良いんだよ!」
ライガの問いも最もだ。ノクスは部屋をくまなく観察し、結論を出した。
「一見、異形達はあの空間の裂け目から無限に出てきている様に見えますが、その実、あの空間を生み出しているのは転移ゲートと思われます」
「なら、あの装置をぶっ壊せばいいんだな!」
「暴発の恐れがありますから、破壊するのは動力源のみですよ」
ノクスは装置の一ヶ所を指差しながらライガに指示を出す。
「装置の内部構造自体は今も当時と変わっていないはず。であれば、あの赤く点滅している所を壊せば機能停止できます! 良いですか? この瘴気は吸い込まずとも触れているだけで害を及ぼします。なので一撃で壊して、すぐに結界内へ戻ってきなさい!」
「……よっしゃぁ! いっくぜぇえええ!!!」
ライガは拳を固め、地を蹴り、一気に装置へと向かった。
迫り来る異形の群れを蹴散らし、拳で一匹を殴り飛ばし、蹴りで別の異形を吹き飛ばす。何匹押し寄せようとも、ライガの勢いは止まらない。
「邪魔だっつってんだろうが!」
異形の腕を掴み、豪快に投げ飛ばす。道を切り開き、ついに装置の前にたどり着いた。
ノクスは結界内で必死に瘴気を抑えながら、ライガの後ろ姿を見守る。
「ここで終わらせるぞ!」
ライガは拳を固く握り、全身の力を込めた。その拳を一閃、装置に叩きつける。
――バキィィィン!!
激しい衝撃音とともに装置にヒビが走る。光が辺り一面に溢れ、異形の動きが一瞬止まる。そして異形の群れが霧散し、裂け目も徐々に消滅していく。空間が平穏を取り戻しつつあった。
「……ライガ! 理性が残っているうちに早く結界内へ!」
「ああ! 分かった!」
ライガが足早に結界へと駆け込んできた。
「ライガ、お見事です! これであとは残った瘴気を何とかすれば……」
「おうよ……。なんとかなったぜ」
――その時だった。
ブシャァアアアアッ!!!
突如、室内に瘴気が充満し始める。
「な……っ!?」
ライガとノクスの目の前で、装置の残骸から黒い瘴気が噴き出していく。まるで意志を持つかのように渦巻き、うねりながら。
「そう簡単に……終わらせてはくれませんか。まったく、運命とやらはとことん僕たちにそっぽ向くのが好きなようですね!」
そして、二人は視界が遮られるほどの濃厚な瘴気に包まれていく――。
ライガは興奮状態まま、ノクスの声も聞こえていないようだった。
「ま、まさか……!?」
ハッとして懐のリンク人形を見ると、そこには黒いシミのようなものが浮かび上がっている。
(あの異形の正体は浄化される前の魂。だからこの結界は、魂の干渉を遮断するよう術を編んだ。結果、瘴気の侵入を防げている。でも、ライガはそれを直に浴びて……)
その時、ノクスは似たような光景を思い出した。そう、レオンだ。巨人を倒すためにグリオールに通常の数倍の魂力を注がれた彼は、まるで獣のように暴れ狂っていた。
「……まずい!!!」
普段から冷静沈着なレオンでさえあの有様だったのなら、血気盛んなライガはどうなるのか――。
「ガルァァアアアアッ!!!」
考える間もなく、ライガが咆哮する。完全に自分を見失っていることは一目瞭然だ。
「ライガ!!」
ノクスの決死の叫びも届かない。爛々と光る瞳で、異形へと飛びかかる。
拳が振り下ろされるたび、異形は形を崩し瘴気となっていった。しかし、倒すごとにライガの動きは荒々しくなり、異様なほどの興奮を帯びていく。
(まずい、このままじゃライガが……いや、それだけじゃない。この瘴気の影響がこれだけで済むとは限らない。下手すれば……!)
ノクスは意を決して結界を飛び出した。瘴気が立ち込める中、まっすぐにライガへと向かう。
「……ライ……ガ、しっかりなさい!」
強く抱きしめると、ライガの体が一瞬びくりと震える。
「……っ!」
ライガの目が揺らぎ、徐々に落ち着きを取り戻していく。
「ノ……ク……ス?」
「まったく……、ゴホッ! 良い子だから、大人しく……うぐっ!」
しかし、ノクスの身体がふらりと揺れた。瘴気の影響で、視界が霞み、呼吸が浅くなる。
「ノクス? おい、ノクス!!」
正気を取り戻したライガは、焦りの表情を浮かべた。
「くそっ……待ってろ!」
ノクスを肩に担ぐと、一気に結界の中へと駆け戻る。
「おい、ノクス……おいってば!」
「う……るさいですね。少し、瘴気に触れただけ……ゲホゲホッ」
「わ……悪い! 俺……、何か、訳分かんなくなって……」
そこへ、新たな異形が次々と現れる。
「なぁおい! 前に戦った時と様子が違うぞ!? 倒したらすぐ消えねぇで、黒いモヤモヤみてぇになってんぞ!」
「恐らく、ここが地上界だからです。あの異形たちが魂だとしたら、霧散して行き場を失っているのかも……」
「魂力って……。全然キラキラしてねぇぞ?」
「浄化されていない魂を壊すと、ああなるようです。この瘴気、天人には猛毒ですね」
「くそっ、めんどくせぇ敵だな!」
ノクスはふらつきながらも出入り口で結界を展開し、瘴気の流出を抑えている。しかし、それでも少しずつ外へ漏れ出していた。
「くっそ! 一匹一匹は大したことねぇのに、数が多すぎる!」
「おいノクス! このままだと結界持たねぇぞ! 何か手はないのか!?」
「わかってます! でも……下手に動けば、もっと状況が悪化する可能性が――」
「じゃあ、どうすりゃ良いんだよ!」
ライガの問いも最もだ。ノクスは部屋をくまなく観察し、結論を出した。
「一見、異形達はあの空間の裂け目から無限に出てきている様に見えますが、その実、あの空間を生み出しているのは転移ゲートと思われます」
「なら、あの装置をぶっ壊せばいいんだな!」
「暴発の恐れがありますから、破壊するのは動力源のみですよ」
ノクスは装置の一ヶ所を指差しながらライガに指示を出す。
「装置の内部構造自体は今も当時と変わっていないはず。であれば、あの赤く点滅している所を壊せば機能停止できます! 良いですか? この瘴気は吸い込まずとも触れているだけで害を及ぼします。なので一撃で壊して、すぐに結界内へ戻ってきなさい!」
「……よっしゃぁ! いっくぜぇえええ!!!」
ライガは拳を固め、地を蹴り、一気に装置へと向かった。
迫り来る異形の群れを蹴散らし、拳で一匹を殴り飛ばし、蹴りで別の異形を吹き飛ばす。何匹押し寄せようとも、ライガの勢いは止まらない。
「邪魔だっつってんだろうが!」
異形の腕を掴み、豪快に投げ飛ばす。道を切り開き、ついに装置の前にたどり着いた。
ノクスは結界内で必死に瘴気を抑えながら、ライガの後ろ姿を見守る。
「ここで終わらせるぞ!」
ライガは拳を固く握り、全身の力を込めた。その拳を一閃、装置に叩きつける。
――バキィィィン!!
激しい衝撃音とともに装置にヒビが走る。光が辺り一面に溢れ、異形の動きが一瞬止まる。そして異形の群れが霧散し、裂け目も徐々に消滅していく。空間が平穏を取り戻しつつあった。
「……ライガ! 理性が残っているうちに早く結界内へ!」
「ああ! 分かった!」
ライガが足早に結界へと駆け込んできた。
「ライガ、お見事です! これであとは残った瘴気を何とかすれば……」
「おうよ……。なんとかなったぜ」
――その時だった。
ブシャァアアアアッ!!!
突如、室内に瘴気が充満し始める。
「な……っ!?」
ライガとノクスの目の前で、装置の残骸から黒い瘴気が噴き出していく。まるで意志を持つかのように渦巻き、うねりながら。
「そう簡単に……終わらせてはくれませんか。まったく、運命とやらはとことん僕たちにそっぽ向くのが好きなようですね!」
そして、二人は視界が遮られるほどの濃厚な瘴気に包まれていく――。
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