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第3章
第56話「冥界に響く高笑い」
「アハハ! あははははっ! ひゃははははぁっ!!」
ノクスの目前、冥王城の広間にジルミスの高笑いが響き渡った。
高い天井に反響し、その声は広間全体にこだましていく。
「ああ可笑しい! 自分の主人を殺すことにも躊躇しないなんて! やはり異世界人といえど、この程度ですねぇ?」
「あ、あの様子……。そうだ、ライガもあの瘴気に触れたら興奮状態になっていた……」
「そう、憎しみに満ちた浄化前の汚れた魂。そんな残滓を浴びればああなりますよねぇ? ククッ」
薄く笑う口元から覗く歯が、燭台の光を受けて不気味に輝く。
ノクスは眉をひそめ、一歩踏み出す。
「どういうことですか! 興奮状態とはいえ、彼らは何故、こんなことを……っ」
「ククッ。あなた、子供の頃に新しいオモチャを買ってもらった経験は?」
「……は?」
「すぐに箱から出して遊んでみたくなったでしょう? 彼らも同じなのですよ。この世界に召喚され、新しい武器や未知の力を授かった。きっと、早く試してみたい……と、うずうずしていたでしょうね。その危険性を考えもせずに」
ジルミスの声には、純粋な好奇心と悪意が混じっていた。
その両目は、まるで実験動物の動きを観察する研究者のように冷たく光っている。
「それで……。異形達を倒し、相手が居なくなった守護者は天人達を……!?」
「いやぁ、面白いですねぇ? 異世界人はどうしてあんなに欲望に忠実なんでしょう。壊したい、戦いたい、叫びたい、暴れたい、力を誇示したい。そんな思いに囚われている馬鹿ばかり。だから、少しタガを外してやるだけで簡単に狂暴化してしまう。実に滑稽!」
ジルミスはゲラゲラと笑いながら両手を広げ、巨大スクリーンに映る映像へと歩み寄った。
「さぁさ、守護者のみなさん! 自分は最強だと酔いしれて、誰かに力を見せつけて自慢したいでしょう? 思いっきり力を使いたいでしょう? スッキリしたいでしょう? 自分より弱い立場の者を見下して、イキリたいのでしょう? だから暴れなさい、自分の欲望にただただ忠実に!」
画面の向こうで暴れる守護者たちの動きはさらに狂気を帯びていく。
「これが、貴方の目的だったのですか? 守護者達を使って、天界を混乱させることが?」
「ククッ! まさかまさか! これはただの余興ですよ」
「余興……?」
「先ほどの問いに答えましょう。この≪矛盾の壁≫、実は他人の魂力を使って発動していると言ったら?」
「他人の……魂力?」
「ほぅら、居たでしょ? あのバカっぽいのが」
ジルミスの唇が釣り上がる。
「ま、まさか……!?」
「そう、この力は私があの時に召喚していた青年の魂力です! 召喚された彼が媒介の人形から引き剝がされて再び魂に戻った際、その力を吸収したのですよ」
「吸収!? そ、そんなことできる訳……っ」
「出来ますよぉ~? そもそも、あなた方が使っていた受肉用の媒介人形を管理しているのはどこの部署でしたっけぇ~?」
「人形管理課……。今の貴方が居る部署……?」
「そう! だから細工するのは簡単でしたよ。そして、全ての受肉人形には魂が引き剝がされた際のエネルギーが私に集まるように術が施されているのです」
「なん…………っ」
ノクスの背筋に冷たい汗が伝う。
「実際にお見せしましょう。丁度、先ほどの混乱で何体か守護者が消滅したようですし」
ジルミスがゆっくりと頭上に手を掲げる。
その指先に、どこからともなく光の粒子が吸い寄せられてきた。
淡い輝きが渦を描き、やがて眩い球となって脈動を始める。
「ああ……! 良いですねぇ、素晴らしい力だ。なるほど、確かに力に酔いしれる気分も良く分かる!」
「お……、おいっ! ノクス、何かやべぇぞ。あの力、どんどん膨れてるみたいだ」
隣でライガが驚愕の表情を浮かべる。
ノクスは即座に妨害用の術式を発動しようと試みるが、眼前の壁が視線と感覚を遮った。
(……っ! 壁が邪魔で力の集約を阻止出来ない……っ!)
「ククク……。では試してみましょう。貴方のお人形はどこまで主人を守れますかねぇ~?」
ジルミスは楽しげにパチンと指を弾いた。
―――ズンッ!!!
瞬間、床が軋み、全身に見えない重りがのしかかる。
骨まで押し潰されるような圧力に、呼吸すら困難になる。
「……がはっ!? んだ……これぇ……!? 体が動かねぇ……!」
「こ……れは……っ、重力場……! ≪天威圧殺≫……か!?」
「ははははっ! 凄い凄い! 暴動鎮圧用の術まで私一人で使えるなんて!! 素晴らしいですねぇ~!」
(そんなバカな! この術は本来、天人が数十人で使わなければ発動すら出来ないはず……っ! なのに、彼一人で……!)
「けれど、こんな高等術式……魂力の消費量も半端ない筈です! 例え数人分の異世界人の力を吸収したとして、すぐにエンストしますよ!?」
「ククッ! そうですねぇ? さすがにこんなに連発したら長くは持たない……と、思うでしょ??」
「……!? ま、まだ何か……奥の手を隠しているのですか!?」
「奥の手ねぇ? いえいえ、私は別に何もしませんよ? ただ、協力してくださる方達が居るだけです」
そう言いながら、ジルミスはゆっくりとスクリーンを指差した――……。
ノクスの目前、冥王城の広間にジルミスの高笑いが響き渡った。
高い天井に反響し、その声は広間全体にこだましていく。
「ああ可笑しい! 自分の主人を殺すことにも躊躇しないなんて! やはり異世界人といえど、この程度ですねぇ?」
「あ、あの様子……。そうだ、ライガもあの瘴気に触れたら興奮状態になっていた……」
「そう、憎しみに満ちた浄化前の汚れた魂。そんな残滓を浴びればああなりますよねぇ? ククッ」
薄く笑う口元から覗く歯が、燭台の光を受けて不気味に輝く。
ノクスは眉をひそめ、一歩踏み出す。
「どういうことですか! 興奮状態とはいえ、彼らは何故、こんなことを……っ」
「ククッ。あなた、子供の頃に新しいオモチャを買ってもらった経験は?」
「……は?」
「すぐに箱から出して遊んでみたくなったでしょう? 彼らも同じなのですよ。この世界に召喚され、新しい武器や未知の力を授かった。きっと、早く試してみたい……と、うずうずしていたでしょうね。その危険性を考えもせずに」
ジルミスの声には、純粋な好奇心と悪意が混じっていた。
その両目は、まるで実験動物の動きを観察する研究者のように冷たく光っている。
「それで……。異形達を倒し、相手が居なくなった守護者は天人達を……!?」
「いやぁ、面白いですねぇ? 異世界人はどうしてあんなに欲望に忠実なんでしょう。壊したい、戦いたい、叫びたい、暴れたい、力を誇示したい。そんな思いに囚われている馬鹿ばかり。だから、少しタガを外してやるだけで簡単に狂暴化してしまう。実に滑稽!」
ジルミスはゲラゲラと笑いながら両手を広げ、巨大スクリーンに映る映像へと歩み寄った。
「さぁさ、守護者のみなさん! 自分は最強だと酔いしれて、誰かに力を見せつけて自慢したいでしょう? 思いっきり力を使いたいでしょう? スッキリしたいでしょう? 自分より弱い立場の者を見下して、イキリたいのでしょう? だから暴れなさい、自分の欲望にただただ忠実に!」
画面の向こうで暴れる守護者たちの動きはさらに狂気を帯びていく。
「これが、貴方の目的だったのですか? 守護者達を使って、天界を混乱させることが?」
「ククッ! まさかまさか! これはただの余興ですよ」
「余興……?」
「先ほどの問いに答えましょう。この≪矛盾の壁≫、実は他人の魂力を使って発動していると言ったら?」
「他人の……魂力?」
「ほぅら、居たでしょ? あのバカっぽいのが」
ジルミスの唇が釣り上がる。
「ま、まさか……!?」
「そう、この力は私があの時に召喚していた青年の魂力です! 召喚された彼が媒介の人形から引き剝がされて再び魂に戻った際、その力を吸収したのですよ」
「吸収!? そ、そんなことできる訳……っ」
「出来ますよぉ~? そもそも、あなた方が使っていた受肉用の媒介人形を管理しているのはどこの部署でしたっけぇ~?」
「人形管理課……。今の貴方が居る部署……?」
「そう! だから細工するのは簡単でしたよ。そして、全ての受肉人形には魂が引き剝がされた際のエネルギーが私に集まるように術が施されているのです」
「なん…………っ」
ノクスの背筋に冷たい汗が伝う。
「実際にお見せしましょう。丁度、先ほどの混乱で何体か守護者が消滅したようですし」
ジルミスがゆっくりと頭上に手を掲げる。
その指先に、どこからともなく光の粒子が吸い寄せられてきた。
淡い輝きが渦を描き、やがて眩い球となって脈動を始める。
「ああ……! 良いですねぇ、素晴らしい力だ。なるほど、確かに力に酔いしれる気分も良く分かる!」
「お……、おいっ! ノクス、何かやべぇぞ。あの力、どんどん膨れてるみたいだ」
隣でライガが驚愕の表情を浮かべる。
ノクスは即座に妨害用の術式を発動しようと試みるが、眼前の壁が視線と感覚を遮った。
(……っ! 壁が邪魔で力の集約を阻止出来ない……っ!)
「ククク……。では試してみましょう。貴方のお人形はどこまで主人を守れますかねぇ~?」
ジルミスは楽しげにパチンと指を弾いた。
―――ズンッ!!!
瞬間、床が軋み、全身に見えない重りがのしかかる。
骨まで押し潰されるような圧力に、呼吸すら困難になる。
「……がはっ!? んだ……これぇ……!? 体が動かねぇ……!」
「こ……れは……っ、重力場……! ≪天威圧殺≫……か!?」
「ははははっ! 凄い凄い! 暴動鎮圧用の術まで私一人で使えるなんて!! 素晴らしいですねぇ~!」
(そんなバカな! この術は本来、天人が数十人で使わなければ発動すら出来ないはず……っ! なのに、彼一人で……!)
「けれど、こんな高等術式……魂力の消費量も半端ない筈です! 例え数人分の異世界人の力を吸収したとして、すぐにエンストしますよ!?」
「ククッ! そうですねぇ? さすがにこんなに連発したら長くは持たない……と、思うでしょ??」
「……!? ま、まだ何か……奥の手を隠しているのですか!?」
「奥の手ねぇ? いえいえ、私は別に何もしませんよ? ただ、協力してくださる方達が居るだけです」
そう言いながら、ジルミスはゆっくりとスクリーンを指差した――……。
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