『事故で死んだ俺は、異世界で成り上がる ~君ともう一度出会うために~』

こうた

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5話 魔紋の真実と“幼なじみ”の面影

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 冒険者登録から三日が経った。
 俺はギルドでの簡易任務――街の巡回補助や物資運搬などをこなす傍ら、リーナと共に過ごす時間が少しずつ増えていった。
 訓練の合間、任務の合間、そして……ほんのひとときの静寂の中で。

「……右手の痕、まだ痛む?」

「いや、もう慣れた。痕は消えてないけどな」

 手袋の下に隠している“魔紋”。
 淡く青白く光るその紋様は、今でも時おりうっすらと脈動し、俺の中の“何か”を揺さぶっていた。

「本当に、心当たりはないの?」

「ない。……ただ、時々夢に出てくる。あの紋と同じ形の、“扉”みたいなものが」

「扉?」

「そう。開けちゃいけない、けど……誰かが中にいる気がしてさ。俺の声に応えてくれる“誰か”が」

 リーナは眉をひそめた。

「ナオ。あなたの魔紋――たぶん、“継承型”よ。自分の中に誰かの記憶や力を宿してるタイプ」

「……継承?」

「うん。過去に一度だけ見たことがある。“大戦期”の遺児が、死んだ兄の力を魔紋として受け継いでいた。でも、本人の意思に関係なく暴走することもある。だから監視対象になったのよ、あなたも」

 暴走――
 その言葉に、俺の背中に冷たいものが走る。

「……中にいる“誰か”が暴れ出すってことか」

「まだ確証はないけど、気をつけて。私がそばにいるから、もしものときは……私が止める」

 その声には強い決意があった。
 俺のことを本気で心配してくれているのが伝わる。けど――

 それと同時に、俺はリーナに対して、ある“違和感”を抱き始めていた。

 ある日の夕暮れ、ギルドの掲示板で見かけた小さな依頼――
 「北森の村で起きている子どもたちの行方不明事件」
 低ランク任務だったが、妙に引っかかるものがあり、俺とリーナは参加を申し出た。

 村に着いた夜、行方不明になった子どもたちの家族から話を聞いた後、俺たちは森の外れで野営することになった。

 焚き火の火がパチパチと弾ける音だけが、静かに夜を彩っていた。

「ナオ。……話してもいい?」

「ん?」

「私ね、昔……幼なじみがいたの」

 その言葉に、心臓が跳ねた。

 リーナは炎を見つめながら、遠くを見ていた。

「名前は覚えてないの。でも、いつも笑ってて、ドジで、でも不器用なくらいまっすぐで。私が泣いてると、黙って手を握ってくれた……そういう人だった」

「……それ、夢で見た?」

「ううん。現実。けど、多分この世界じゃない。……別の世界の記憶。なんて、変な話でしょ」

 俺は思わず、彼女の顔をじっと見ていた。
 ――やっぱり、似てる。声も、しぐさも、あの“すみれ”と重なる部分が多すぎる。

 だが決定的に違うのは、彼女の“目”だった。
 このリーナという女性の瞳は、まるで全部を受け入れて生きる覚悟を持っている。

「……もしかして、俺たち、前の世界でも……?」

「……かもしれないね。でも、たとえそうだったとしても、今は“ここ”で生きてる。だから、私はこの世界で、もう一度選びたい」

「選ぶ……?」

「誰と一緒に歩きたいかを」

 そのとき、遠くの森から不意に“悲鳴”が響いた。
 それは明らかに、人間のもの。しかも、子どもの。

「行くぞ!」

「うん!」

 俺たちは剣を手に、森の奥へと駆け出した。

 木々の間を縫うように走ると、小さな祠のような建物が現れた。
 その前に――いた。

 痩せこけた子どもたち。周囲を囲む、異形の魔獣。そしてその中心に――ローブを纏った謎の男。

「“魔力の器”は揃った。あとは、目覚めよ、黒の門よ――!」

 その言葉と同時に、俺の右手の魔紋が、熱く脈動した。

「……お前、何をしようとしてる!?」

「来たか、“継承者”よ。――ならば見せてみよ、お前の力を!」

 男が腕を振ると、周囲の魔獣たちが一斉に襲いかかってきた。

「ナオ、下がって!」

「違う……今は、下がれない!」

 俺は剣を構えた。

 心の奥に響く声があった。

『――思い出せ。お前は、力を受け継いだ“鍵”なのだ』

 ――そうか。俺は、鍵。
 すみれとの約束を果たすため、彼女をもう一度守るため、今――

 “その扉”を開く。
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