『事故で死んだ俺は、異世界で成り上がる ~君ともう一度出会うために~』

こうた

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9話 魂の記憶と、最初の約束

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 空が裂けるようにして始まった、ナオとガル=ヴァロスの激突。
 《断罪の剣》は闇の重圧を切り裂き、ナオの意志がその一閃に宿る。

「――はああっ!!」

 剣撃がガル=ヴァロスの腕をかすめ、黒い羽根が宙を舞った。
 だが、相手の表情は微動だにしない。

「やはり、“鍵”は完全ではない……まだ、覚醒していない」

「何を言ってやがる……!」

「お前の魂はまだ、過去を思い出していない。
 真に“目覚めた継承者”となるには――“あの記憶”を取り戻す必要がある」

 そのときだった。
 空が一瞬、白く染まったかと思うと――リーナの周囲に花弁のような光が舞い始めた。

 それはまるで、時空の結晶。

「リーナ……?」

 彼女の足元から広がった魔法陣が、まるで封印を解くかのように輝く。
 瞳が揺れ、まるで何かを見ているかのように遠くを見つめる。

「……ああ、思い出した……」

 リーナの声が、震えていた。

「私……この丘で、あなたと約束したの……」

 ナオの鼓動が一瞬、止まった気がした。

 その瞬間――彼の脳裏に、走馬灯のように“もう一つの人生”が流れ込んでくる。

 ――それは、かつての世界。
 大陸が戦乱に包まれ、神と災厄が争っていた時代。

 小さな村に生まれた少年と少女。
 少年の名はレオン、少女はセリア。

 貧しい村で、何度も飢え、凍え、祈るようにして生きていたふたり。

「ねえ、レオン……大人になったら、この丘でまた会おうね」

「絶対に、またここで会おう。……そのときは、俺が世界を変えてみせる」

 だが、戦火は村を焼いた。
 レオンは神の騎士団に徴兵され、セリアは“災厄の器”として連れ去られた。

 再会の約束は、果たされることなく――ふたりは死んだ。

「……思い出した……俺は、あの時……!」

 ナオが、いや“レオン”が叫ぶ。

 魂が、過去と現在を繋ぎ始める。

「ナオ……レオン……私は……」

 リーナもまた、セリアの記憶を取り戻していた。
 ふたりの魂は、時を超えてここに再会した。

 その光景に、ガル=ヴァロスは微笑を浮かべる。

「ようやく、“因果”が戻ったか。
 これでお前たちは、“神の継承者”と“災厄の器”として、完全に目覚めた」

「……ガル=ヴァロス、お前の目的は何だ。何がしたい」

「我が目的は“解放”だ。
 神々が築いたこの世界の“境界”を破壊し、すべての魂に自由を――」

 ナオが睨みつける。

「魂の自由? それを言い訳にして、何千の命を奪ってきた……そんなもの、自由じゃない。歪んだ欲望だ」

 ガル=ヴァロスの表情が、わずかに険しくなる。

「……やはり、お前は神の器か。だがそれでも、いつか気づくだろう。
 お前の“転生”こそ、この世界の不安定さの根源だということに」

 そう言い残し、黒翼は虚空へと消えた。

 戦いは終わった。
 しかし――それは、すべての始まりに過ぎなかった。

 風が静かに吹く“約束の丘”で、ナオとリーナは肩を並べる。

「なあ……リーナ、あのときの約束、覚えてるか?」

「……うん。こうして会えて、本当に嬉しい」

「俺も。けど、ここで終わらせない。
 あのとき守れなかった君を――今度こそ、守り抜く」

 リーナが、ふっと笑った。

「……じゃあ、私も誓うよ。ナオと一緒に、未来を選ぶって」

 二人の手が重なる。
 過去を取り戻した二人は、いま、新たな未来へと歩み始めた。
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