『事故で死んだ俺は、異世界で成り上がる ~君ともう一度出会うために~』

こうた

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11話 世界を超える者たち

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 天上界の監視者との戦いを経て、ナオの力はさらなる進化を見せ始めていた。

 だが、それと同時に世界の裏側でも、着々と新たな“異変”が進行していた。

 ──南方、砂漠都市《アル・ズィラ》。かつて商人たちの楽園と呼ばれたその都市に、ひとりの青年がいた。

 青年の名はカイン・セレスタ。
 この世界に転生した“もう一人の日本人”だった。

「神に選ばれた?冗談じゃない……俺は俺の力で、この世界の頂点に立つ」

 彼の目には、強烈な執着が宿っていた。
 転生直後、盗賊に襲われ、仲間を失い、すべてを憎んだ。

 この世界の理を、神の支配を、そして自分以外の“転生者”たちを――。

 その心の闇に呼応するように、彼のもとには一冊の黒き書が現れる。
 《大災厄の書(グラン・アポカリプス)》――禁術を集めた禁断の魔導書だった。

「……見せてやるよ、ナオ。
 お前が“異端の勇者”なら、俺は“覇王”になる。神を超える、真の支配者に」

 カインは静かに笑う。そして、黒き魔力を手に新たな力を覚醒させる。

 一方そのころ、王都アストレアでは緊急評議が開かれていた。
 王族・騎士団・魔術師ギルド・神殿……この国を支える主要勢力が一堂に会する。

「――転生者の力が、いまや国の均衡を崩しつつある。結城ナオの台頭、そして新たに確認されたカイン・セレスタ……。放置すれば、いずれ戦乱が起きるぞ!」

 魔術師団の長老が激昂する。
 だが、その場にいた第一王女・エリス=アストレアは静かに答えた。

「ナオ様は、私たちの命を何度も救ってくださった方です。
 “異端”という呼び名に惑わされてはいけません」

「だが、神の監視者が動いたのだ。神に逆らえば、我らも滅ぼされかねん!」

「ならば私は――その神とやらに、問いただしてみせます。
 この世界に、正義はどこにあるのかと」

 エリスの言葉に、一瞬、会場が静まり返る。

 王族の中で最も聡明とされるエリスの決意に、多くの者が息を呑んだ。

 ナオとリーナは今、王都近郊の森にいた。
 天上界との戦いの影響か、《断罪の剣》が一時的に沈黙していたのだ。

「……力を使いすぎたな。しばらくは回復に専念した方がよさそうだ」

「でも、あの天使の人……また来るんでしょ?」

「来るだろうな。次は、“浄化”じゃ済まないかもしれない」

 ナオは空を見上げた。
 その目には、かつてのような迷いはなかった。あるのは、ただ強くなるという意思。

 そのとき、風を切るような音が響く。

 ──ヒュッ……ザシュ!

 一本の黒い矢が、ナオたちの足元を射抜いた。

「っ!? 待ち伏せ!?」

 木の上に姿を現したのは、黒衣をまとった男。
 そしてその隣にいたのは、仮面の少女。

「……見つけたよ、“勇者”」

「お前たちは……?」

「俺は《黒羽の傭兵団》副長、ジーク・クロウ。
 そしてこいつは、転生者を狩るためだけに生きる“復讐の少女”アリア」

 仮面の少女は、ナオにまっすぐ視線を向けた。

「転生者なんて、全員……滅びればいい」

 その言葉とともに、彼女の掌に異形の魔力が集まっていく。

「くるぞ、リーナ!」

「うんっ!」

 再び、戦いが始まろうとしていた――。
 神に抗う者。世界を支配しようとする者。
 そして、転生者を狩る者。

 すべての運命が交差する、“転生者戦争”が静かに幕を開けようとしていた。
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