十九歳に戻った村の書商は、契約した魔女と共に世界を書き換え、人類の頂点を目指す

kairo_arche

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エピソード18契約都市の初仕事(前編)

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白柱都市の朝は、音で始まる。
鐘でも鳥でもない。
金属が擦れる音、魔力が循環する低い振動、人の足音が幾層にも重なった――都市そのものの鼓動だ。

トレイアウルスは、割り当てられた簡易宿舎の窓から外を見下ろしていた。
白い柱が林立する大通りでは、すでに多くの人々が動き始めている。

「……本当に、街が生きてるみたいだ」

「生きてるというより、回ってる、ね」

背後で、リナがあくび混じりに言った。
昨夜の会合から一夜明け、二人は仮登録者として都市に滞在している。

机の上には、革表紙の薄い冊子。
《白柱都市・仮登録者行動規約》。

トレイアウルスは、すでに三分の一ほど読み進めていた。

「禁止事項が多すぎませんか、これ」
「都市内部での無許可スキル使用禁止。契約文書の複製禁止。情報の持ち出し制限……」

「力で回る都市だもの」
リナは肩をすくめる。
「管理できないものは、嫌う」

そのとき、扉がノックされた。

「仮登録者トレイアウルス。初任務の通達だ」

低く、無機質な声。
扉を開けると、昨日の女騎士が立っていた。
相変わらず鎧姿で、視線は鋭い。

「早いですね」

「都市は、待たない」
彼女は短く言い、封筒を差し出した。
「内容を確認し、同行せよ。監視は付く」

封を切る。
中には、簡潔な依頼文が一枚だけ入っていた。

――下層区画・第三倉庫。
――契約違反の疑い。
――“記録不整合”の確認。

「……記録?」
トレイアウルスの眉がわずかに動く。

女騎士は頷いた。

「倉庫の在庫と、登録記録が一致しない」
「通常なら、商業局が処理する案件だ」

「それを、俺に?」

「君のスキルが、“書”に関わるからだ」

つまり――
試されている。

トレイアウルスは、冊子を閉じ、静かに息を吐いた。

「分かりました。同行します」

リナが、面白そうに目を細める。

「初仕事が監査とは、地味ね」

「でも――」
トレイアウルスは、封筒を握りしめた。
「都市の“ズレ”を見るには、十分です」

下層区画へ向かう途中、街の空気はaが変わった。
白い柱は減り、代わりに古い石壁と、使い込まれた建材が目立つ。

人々の視線も違う。
警戒と、諦めが混じった目。

第三倉庫は、その最奥にあった。

巨大な扉。
そして、その前に立つ、疲れ切った表情の管理人。

「……また調査か」
男は、吐き捨てるように言った。
「記録は合ってる。何度も確認した」

トレイアウルスは、一歩前に出る。

「倉庫の帳簿、見せてください」
「それと――登録水晶も」

管理人の目が、わずかに揺れた。

その瞬間、胸の刻印が、微かに熱を持つ。

――書は、嘘を嫌う。

トレイアウルスは、確信した。

この仕事は、
単なる在庫確認では終わらない。
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