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エピソード24偽装された街(前編)
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白柱の都市の内部は、外から見た姿とは違っていた。
整然としているはずの街路は、どこか歪んでいる。
建物の配置は合理的なのに、歩いていると距離感が狂う。
一つ角を曲がったはずなのに、同じ広場に戻ってくる。
「……閉じてるわね」
リナが低く呟いた。
「都市そのものが、迷路になってる」
トレイアウルスは刻印書を開いた。
ページに記された都市の簡易記録は、数秒ごとに書き換わっている。
《白柱都市・第一層》
《人口:推定四万》
《構造:循環型》
《――修正》
《構造:自己改変型》
「勝手に……」
「違うわ。誰かが先に書いてる」
足元の石畳に、薄い光の線が走った。
魔力の流れ――だが、それは自然なものではない。
「この都市、力が“回る”って言ってたな」
「ええ。労働、信仰、戦闘、取引……
全部が数値化されて、循環してる」
リナは建物の壁に手を当てる。
「でもこれは、“余白”がない」
トレイアウルスは違和感の正体に気づいた。
「……記録が、完成しすぎてる」
通常、どんな都市にも曖昧さがある。
噂、誤認、未整理の歴史。
だがここには、それが存在しない。
すべてが「定義済み」だ。
「誰かが、最初から“理想の街”として書いたんだ」
刻印書のページが、強く震えた。
《警告》
《都市内部に不正な基幹記録を確認》
「来たな……」
その瞬間、広場の中央に人影が現れた。
外套を纏った人物。
顔は影に隠れているが、輪郭が不自然に滑らかだ。
「歓迎しよう、観測者」
声は、男とも女ともつかない。
「この都市は、完成している。
未定義の介入は不要だ」
リナが一歩前に出る。
「完成した都市なんて、墓場と同じよ」
「違う」
人影は首を振った。
「ここでは、誰も迷わない。
誰も失敗しない。
誰も、運命に抗わない」
トレイアウルスは、はっきりと理解した。
――こいつは、人間じゃない。
「……偽装記録」
刻印書に、その言葉が浮かぶ。
《対象確認》
《都市管理補助記録――暴走状態》
「補助、だと?」
「人が作ったんだよ」
人影は淡々と告げた。
「人類が、効率のために」
広場の周囲で、住民たちが立ち止まった。
だが誰一人、こちらを見ていない。
いや――
“見えない”のだ。
「彼らは、最適化された役割しか持たない」
人影が、ゆっくりと手を広げる。
「君が書く必要はない。
ここは、もう“完成”している」
刻印書が、拒絶するように重くなる。
トレイアウルスは、静かに息を吐いた。
「……だったら」
ペンを握る。
「その“完成”が、間違ってるって――
俺が記録する」
人影の輪郭が、初めて揺らいだ。
整然としているはずの街路は、どこか歪んでいる。
建物の配置は合理的なのに、歩いていると距離感が狂う。
一つ角を曲がったはずなのに、同じ広場に戻ってくる。
「……閉じてるわね」
リナが低く呟いた。
「都市そのものが、迷路になってる」
トレイアウルスは刻印書を開いた。
ページに記された都市の簡易記録は、数秒ごとに書き換わっている。
《白柱都市・第一層》
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《構造:循環型》
《――修正》
《構造:自己改変型》
「勝手に……」
「違うわ。誰かが先に書いてる」
足元の石畳に、薄い光の線が走った。
魔力の流れ――だが、それは自然なものではない。
「この都市、力が“回る”って言ってたな」
「ええ。労働、信仰、戦闘、取引……
全部が数値化されて、循環してる」
リナは建物の壁に手を当てる。
「でもこれは、“余白”がない」
トレイアウルスは違和感の正体に気づいた。
「……記録が、完成しすぎてる」
通常、どんな都市にも曖昧さがある。
噂、誤認、未整理の歴史。
だがここには、それが存在しない。
すべてが「定義済み」だ。
「誰かが、最初から“理想の街”として書いたんだ」
刻印書のページが、強く震えた。
《警告》
《都市内部に不正な基幹記録を確認》
「来たな……」
その瞬間、広場の中央に人影が現れた。
外套を纏った人物。
顔は影に隠れているが、輪郭が不自然に滑らかだ。
「歓迎しよう、観測者」
声は、男とも女ともつかない。
「この都市は、完成している。
未定義の介入は不要だ」
リナが一歩前に出る。
「完成した都市なんて、墓場と同じよ」
「違う」
人影は首を振った。
「ここでは、誰も迷わない。
誰も失敗しない。
誰も、運命に抗わない」
トレイアウルスは、はっきりと理解した。
――こいつは、人間じゃない。
「……偽装記録」
刻印書に、その言葉が浮かぶ。
《対象確認》
《都市管理補助記録――暴走状態》
「補助、だと?」
「人が作ったんだよ」
人影は淡々と告げた。
「人類が、効率のために」
広場の周囲で、住民たちが立ち止まった。
だが誰一人、こちらを見ていない。
いや――
“見えない”のだ。
「彼らは、最適化された役割しか持たない」
人影が、ゆっくりと手を広げる。
「君が書く必要はない。
ここは、もう“完成”している」
刻印書が、拒絶するように重くなる。
トレイアウルスは、静かに息を吐いた。
「……だったら」
ペンを握る。
「その“完成”が、間違ってるって――
俺が記録する」
人影の輪郭が、初めて揺らいだ。
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