VMW部

もちぃ

文字の大きさ
3 / 9

イメージ

しおりを挟む
軽く準備運動。手と足をグッと伸ばす。これをしないからといって怪我をするわけではないが、ルーティーンとしてやっている。よし、準備おっけーだ。

頭の中にガスコンロをイメージする。ガスが魔力で、ガスコンロが僕、火が魔法だ。コンロの取手を左にひねりきり、コンロに火をつける。

目の前の大木に手をかざす。その手のひらに魔力が集中していくのを感じる。このまま魔法を放つと暴発をしてしまう。コンロを右にひねり、弱火にする。

「『ウィンド』」

詠唱。手のひらの魔力が強風という魔法に姿を変え放たれる。その風によりあおられた木の葉がゆっくりと落ちてくる。

「『スト・ウィンド』」

今度はコンロを左にひねり、強火。

先ほどよりも強く、かまいたちのような鋭い風を創り出す。狙いを定め放ったそれは落ちていく木の葉一つ一つを鋭く二つに切断する。

魔法を使うこと自体は簡単だ。攻撃の対象を決め、攻撃をするという意思を持てば魔法が放たれる。しかし、魔法の威力の調整…弱くしたり、強くしたりするのはかなり繊細な技術が必要で、僕も習得するのにかなり時間を有した。

そんな僕が編み出した技が、イメージ。頭の中でガスコンロをイメージし、そこで火力の調整をすることによって狙い通りの威力の魔法を扱うことができるようになった。

なぜガスコンロかというと、僕がこのことを閃いたのが自宅で鍋パーティーをしている時だったからだ。そりゃ僕だってもっとかっこいいのをイメージしたかったよ。車のアクセルとか。なんだよガスコンロって。庶民かよ。

…庶民だったわ僕。

「っし、いい感じ。『リプレイス・ファイア』」

『中山大志 男性 16歳 
属性魔法 炎
MP 24/100
HP 100/100 
状態異常 なし
身体の損傷 なし』      

ステータスが更新される。2段目の属性魔法が風から炎へ変わっていることが分かるだろう。先ほどの詠唱は属性を変更するときのものだ。しかし、ステータスのMPを見ればわかるように、この魔法は大量のMPを消費するため、実際の戦闘ではほとんど使用されない。

ちなみに、MPはHPと違い、時間経過で回復していくため、完全にMPが枯れることはない。しかし、魔法の使い過ぎには注意だ。

「まぁ、今日は試合ってわけじゃないから大量に使うけどね!『MP補充』からの『ファイア』!」

実際の試合では使えない、練習専用の技であるMPの補充をし、なおもひらひらと舞っている木の葉を焼き尽くす。しかし、イメージが上手くいかず、魔法の勢いが強かったのか、炎は木から木へと移って広がっていく。調子に乗ってスーパーカーのアクセルをイメージし魔力の調整を試みてしまった。僕庶民なのに。

このままでは大火事だ。仮想空間とはいえ山火事を起こすわけにはいかない。

「やばい!?『MP補充』!『リプレイス・アイス』!そして『スト・アイス』!」

属性を氷に変更し、広範囲にわたって氷魔法を唱える。一瞬で冷気が立ち上り、広がった炎をも覆い尽くす1つの氷山が出来上がる。なんとか大惨事は避けられた。ほっと一息。

「『リプレイス・サンダー』」

属性を雷に変え、氷山から少し遠ざかる。さらにMPを全快させる。

「最大火力だっ。『スト・サンダー』!」

バチバチと音を立てながら目にも止まらない速さで雷が駆け巡る。雷は氷山を貫通し、氷山にはポッカリと大きな穴が空いた。

「ふぅ、やっぱ属性間の相性って大きいよなぁ。」

VMWは炎、風、雷、氷の四つの属性を扱うことができるが、それぞれ相性の良い属性、相性の悪い属性がある。その相性はかなり大きく、相性の悪い相手にはよっぽどのことがない限り1 vs 1では勝てないという。

炎は風に強く、風は雷に強く、雷は氷に強く、氷は炎に強い、4すくみとなっている。

「ふふふ、ここまで完璧に魔法を使えるとは、やっぱり僕は最強だ!あっはっは!はーっはっは…虚しい。」

結局、今日も一人でVMW。いや、楽しいよ?現実世界では決して味わうことのできない、魔法を扱う、という楽しさがある。楽しいんだけど、やっぱり1人は虚しい。

柊星高校VMW部。未だに公式戦はおろか、練習試合すら未経験。そんな事実から目を背けるように、今日も僕は1人悲しく仮想世界を堪能する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...