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蛍光色の方程式(ブライトリング・ファイアスターター) (5) みちのくのイージス
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■ 秘境田天福ぽっくり69分 UFOスペシャル 収録会場
「はい、やってきました。テンプクぽっくり69分!」
ゲジゲジ眉毛の男が額をテカらせた。
「今日は猿ヶ森から生中継です。それにしてもこの、すごいですね。先生」
レオタード姿のアシスタントが振り返ると、上奈良先進大学謹製のダイポールアンテナがライトアップされている。
「呼んで見せる! ぜーったい現れる! 天福の辞書には天地創造の四文字しかないっ!」
随一の大マジシャン。秘境田天福は腕を振り上げてカウントダウンを始めた。
「いいか? これからユーフォ―が現れーる。 いくぞ、さんんんーー、にいぃいいーー……」
ぐっと溜めて「イチ!」と叫ぶや、虚空に赤い星があらわれた。ふよふよと不規則な軌道を描いている。浜辺が一斉にどよめいた。
高台で黒毛和牛が遠赤外線に焙られている。エバラ焼き肉のたれが滴り落ちてパッと炎上する。
「幸せな人たちね」
異性の客エリスは脳天気なテレビ関係者を遠巻きに笑いのめした。カメラに映らない場所に例の夏希が控えている。モニター機器が刻々と速報値を伝えている。UFO出現の瞬間に視聴率が振り切れた。夏希はおおむね満足そうだ。
「あのUFOは集団の使いなの? それともトリック?」
祥子は量子オペラグラスの倍率をあげた。雲間に漂う未確認飛行物体は弱弱しく消え去った。
「自然由来のものよ。以外に思うでしょうけど、熱中性子線が大気成分を燃やしているの」
異性の客が言うには、宇宙から降り注ぐ放射線が局所的なオーロラを引き起こしている。そして、その線源は太陽フレアによるものでなく、超新星残骸だ。太陽の周囲を超新星爆発のかけらが回っている。直径は数百キロほどで彗星にそっくりなプラズマガスを引きずっている。1979年にちょうどいて座の付近を通過し、地球にWOWシグナルという強力な電波をもたらしている。
「それって地球に衝突しないよね?」
祥子は何となく嫌な予感がした。
「誰と衝突だって?」
二人の間に運転手がフラフラと割り込む。すでに出来上がっており、紅潮しながらも酎ハイを煽る。
「お、おでと衝突しようぜぇ」
彼は祥子に紙コップを差し出す。容赦なくレモンハイがそそがれる、。
「え、ボクは中学……」
「カタいこと言うなよ。なっ?」
祥子が凝固していると、アッシー君は瓶を無理やり祥子の口にねじ込んだ。焼けつくような刺激。「うわぁ。不味い!」 ゲホゲホと咽る祥子。(※註 未成年の飲酒を推奨するものではありません! 時代背景として必要上の演出です)
「もう、その辺にしたら?」
もうもうとふきあげるキャンプファイヤーが大人びた女を照らし出した。
「おっ? 美人のカノジョ? 俺っちと焼肉しない?」
サーファー気取りのアッシーは気さくな態度でナンパに挑む。
「中性子線で焼かれたくなければ枢軸特急に乗りなさい。わたしは異世界逗留者。祥子、帰るわよ」
ハーベルトが祥子に近寄るとアッシーが本性を現した。
「俺はアンタに乗りてぇ!」
背後から女にしがみつく。その刹那、バシッと何かが弾け、黒焦げの頭蓋骨が地面で割れた。
「ハーベルト?!」
祥子の目線は焼死体の周囲にナンパ野郎を探しまわる。
「コイツはとっくに死んでたのよ。エリス。運命の"まえがり”は金輪際しないでちょうだいね」
ハーベルトはやんわりと、物凄い釘をぶっ刺した。「ははは、はい、あははは」
■ 猿ヶ森上空
宇宙に日本晴れという比喩が適切かどうか別として、穏やかな時間が流れていた。
「今のところは、異常はないみたいだけど? あ、そうそう、例のオーロラ? 見たわよ。以上」
望萌はジルバーフォーゲルを巡航モードに切り替えて、遅い夕食をゆったりと楽しんでいた。機内は地上と同じ気圧が保たれており、足を延ばしてリクライニングすることもできる。高高度の機内食といえばショートの原因となるパンくずやしずくの飛び散るスープはご法度であったが、被覆技術が進んで今では地表と同じメニューが味わえる。彼女はポークソテーのアルミパックを破り、スプーンをかき混ぜた。ドロッとした肉汁の旨味が程よく煮込んだ野菜と口の中で溶け合う。
すると、接近警報がけたたましく鳴り響いた。あらぬ方向からレーダー照射を受けている。
「連合?」
望萌はスープをダストパッケージに捨て、シートベルトを締めなおした。
パッシブセンサーを起動。周波数特性を解析。Xバンドレーダーを「真下」から浴びている。
「えええ? 真下ぁ?」
望萌が座る軽金属一枚を隔てた遥か虚空の先は太平洋上である。
ハーベルトは潮風にふわりと浮かぶ殺気を感じた。
「「「何だ。あれは?」」」
ロケ現場がざわめきだした。夜目の利く一部の観衆たちは黒潮がうねる水平線上に人工の光を見出した。もっとも近い語句を当てはめるとすれば、それは。
「カメラが何か異常物体をとらえました。漁り火のように思えます」
アシスタント嬢は肝が据わっている。アドリブでじょうずに間をつなぐ。
「これはポックリしたぁ~。ど~U~FOとだぁ~」 天福は想定外の事象にちゃっかり便乗した。
「UFOなんですね?」
「そうだ。俺が呼んだんだ」
■ 小川原湖線 小田野沢漁港駅
下北半島の太平洋岸に鉄道はない。だが、保線区武装司令部と鉄道連隊が供沢から分岐して小川原湖沿いに線路を敷設していた。
「まさか、イージス艦を運んでくるとは思わなかったわ!」
臨時停車中のTWX666Ωにハーベルトの驚声が響く。
「連合が自ら封印を破るとは予想外でした」
ハウゼル列車長も動揺を隠せないようすだ。技術革新でしのぎを削る枢軸と連邦の間には暗黙の了解があって、禁忌科学という不可触分野を設定している。中でもとりわけイージスシステムやTHAADなど大量破壊の応酬を招く兵器は封印技術として研究自粛という形で闇に葬っている。これはすでに滅亡した時間軸から採取された禁断のテクノロジーだ。電子の針鼠であるイージス艦にはワールドクラスをかき乱すノイズを発するらしく、枢軸も連合も手綱をつける術を持っていない、。
「こういう奇襲もありなんですね。ノイズを逆用して強引に防火壁を突破するとは!」
「感心している場合じゃないでしょう! 列車長。確かに理にかなってるわ。今回は宇宙に目を向ける必要上、イージスは不可欠。そして、てっきり高高度からの侵入を警戒していたわたしたちの裏をかいた」
「閣下。どうりでオオガラスが出てこないわけですよ」
「ドイッチェラント本国から対艦猟兵部隊を呼ぶわ。連絡を……きゃあっ!」
ハーベルトが援軍を要請しようとハンディートーキーを取った瞬間、ダイポールアンテナが爆散した。
「はい、やってきました。テンプクぽっくり69分!」
ゲジゲジ眉毛の男が額をテカらせた。
「今日は猿ヶ森から生中継です。それにしてもこの、すごいですね。先生」
レオタード姿のアシスタントが振り返ると、上奈良先進大学謹製のダイポールアンテナがライトアップされている。
「呼んで見せる! ぜーったい現れる! 天福の辞書には天地創造の四文字しかないっ!」
随一の大マジシャン。秘境田天福は腕を振り上げてカウントダウンを始めた。
「いいか? これからユーフォ―が現れーる。 いくぞ、さんんんーー、にいぃいいーー……」
ぐっと溜めて「イチ!」と叫ぶや、虚空に赤い星があらわれた。ふよふよと不規則な軌道を描いている。浜辺が一斉にどよめいた。
高台で黒毛和牛が遠赤外線に焙られている。エバラ焼き肉のたれが滴り落ちてパッと炎上する。
「幸せな人たちね」
異性の客エリスは脳天気なテレビ関係者を遠巻きに笑いのめした。カメラに映らない場所に例の夏希が控えている。モニター機器が刻々と速報値を伝えている。UFO出現の瞬間に視聴率が振り切れた。夏希はおおむね満足そうだ。
「あのUFOは集団の使いなの? それともトリック?」
祥子は量子オペラグラスの倍率をあげた。雲間に漂う未確認飛行物体は弱弱しく消え去った。
「自然由来のものよ。以外に思うでしょうけど、熱中性子線が大気成分を燃やしているの」
異性の客が言うには、宇宙から降り注ぐ放射線が局所的なオーロラを引き起こしている。そして、その線源は太陽フレアによるものでなく、超新星残骸だ。太陽の周囲を超新星爆発のかけらが回っている。直径は数百キロほどで彗星にそっくりなプラズマガスを引きずっている。1979年にちょうどいて座の付近を通過し、地球にWOWシグナルという強力な電波をもたらしている。
「それって地球に衝突しないよね?」
祥子は何となく嫌な予感がした。
「誰と衝突だって?」
二人の間に運転手がフラフラと割り込む。すでに出来上がっており、紅潮しながらも酎ハイを煽る。
「お、おでと衝突しようぜぇ」
彼は祥子に紙コップを差し出す。容赦なくレモンハイがそそがれる、。
「え、ボクは中学……」
「カタいこと言うなよ。なっ?」
祥子が凝固していると、アッシー君は瓶を無理やり祥子の口にねじ込んだ。焼けつくような刺激。「うわぁ。不味い!」 ゲホゲホと咽る祥子。(※註 未成年の飲酒を推奨するものではありません! 時代背景として必要上の演出です)
「もう、その辺にしたら?」
もうもうとふきあげるキャンプファイヤーが大人びた女を照らし出した。
「おっ? 美人のカノジョ? 俺っちと焼肉しない?」
サーファー気取りのアッシーは気さくな態度でナンパに挑む。
「中性子線で焼かれたくなければ枢軸特急に乗りなさい。わたしは異世界逗留者。祥子、帰るわよ」
ハーベルトが祥子に近寄るとアッシーが本性を現した。
「俺はアンタに乗りてぇ!」
背後から女にしがみつく。その刹那、バシッと何かが弾け、黒焦げの頭蓋骨が地面で割れた。
「ハーベルト?!」
祥子の目線は焼死体の周囲にナンパ野郎を探しまわる。
「コイツはとっくに死んでたのよ。エリス。運命の"まえがり”は金輪際しないでちょうだいね」
ハーベルトはやんわりと、物凄い釘をぶっ刺した。「ははは、はい、あははは」
■ 猿ヶ森上空
宇宙に日本晴れという比喩が適切かどうか別として、穏やかな時間が流れていた。
「今のところは、異常はないみたいだけど? あ、そうそう、例のオーロラ? 見たわよ。以上」
望萌はジルバーフォーゲルを巡航モードに切り替えて、遅い夕食をゆったりと楽しんでいた。機内は地上と同じ気圧が保たれており、足を延ばしてリクライニングすることもできる。高高度の機内食といえばショートの原因となるパンくずやしずくの飛び散るスープはご法度であったが、被覆技術が進んで今では地表と同じメニューが味わえる。彼女はポークソテーのアルミパックを破り、スプーンをかき混ぜた。ドロッとした肉汁の旨味が程よく煮込んだ野菜と口の中で溶け合う。
すると、接近警報がけたたましく鳴り響いた。あらぬ方向からレーダー照射を受けている。
「連合?」
望萌はスープをダストパッケージに捨て、シートベルトを締めなおした。
パッシブセンサーを起動。周波数特性を解析。Xバンドレーダーを「真下」から浴びている。
「えええ? 真下ぁ?」
望萌が座る軽金属一枚を隔てた遥か虚空の先は太平洋上である。
ハーベルトは潮風にふわりと浮かぶ殺気を感じた。
「「「何だ。あれは?」」」
ロケ現場がざわめきだした。夜目の利く一部の観衆たちは黒潮がうねる水平線上に人工の光を見出した。もっとも近い語句を当てはめるとすれば、それは。
「カメラが何か異常物体をとらえました。漁り火のように思えます」
アシスタント嬢は肝が据わっている。アドリブでじょうずに間をつなぐ。
「これはポックリしたぁ~。ど~U~FOとだぁ~」 天福は想定外の事象にちゃっかり便乗した。
「UFOなんですね?」
「そうだ。俺が呼んだんだ」
■ 小川原湖線 小田野沢漁港駅
下北半島の太平洋岸に鉄道はない。だが、保線区武装司令部と鉄道連隊が供沢から分岐して小川原湖沿いに線路を敷設していた。
「まさか、イージス艦を運んでくるとは思わなかったわ!」
臨時停車中のTWX666Ωにハーベルトの驚声が響く。
「連合が自ら封印を破るとは予想外でした」
ハウゼル列車長も動揺を隠せないようすだ。技術革新でしのぎを削る枢軸と連邦の間には暗黙の了解があって、禁忌科学という不可触分野を設定している。中でもとりわけイージスシステムやTHAADなど大量破壊の応酬を招く兵器は封印技術として研究自粛という形で闇に葬っている。これはすでに滅亡した時間軸から採取された禁断のテクノロジーだ。電子の針鼠であるイージス艦にはワールドクラスをかき乱すノイズを発するらしく、枢軸も連合も手綱をつける術を持っていない、。
「こういう奇襲もありなんですね。ノイズを逆用して強引に防火壁を突破するとは!」
「感心している場合じゃないでしょう! 列車長。確かに理にかなってるわ。今回は宇宙に目を向ける必要上、イージスは不可欠。そして、てっきり高高度からの侵入を警戒していたわたしたちの裏をかいた」
「閣下。どうりでオオガラスが出てこないわけですよ」
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