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千億光年の夜景(ア・バード・ビューズ・ナイト)③
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■ コード1986
藤野祥子が生まれ育った世界は便宜上、コードネームが付与されている。
コード1986世界。
ここでは二つの超大国が互いの陣営を引き連れて主義主張を戦わせている。それはエスカレートして地球を何度も粉砕できるほどの破壊兵器を蓄積した。彼らは双方の頭上に熱核爆弾という剣を吊るしつつ、子分たちの喧嘩を肴に宴席で冷たい酒を浴びせ合っている。希死念慮があるのか生存欲求があるのか優柔不断な世界の狭間をTR-3Bオーロラ強攻偵察機オオガラスが征く。
「こちらオオガラス69。海上に磁気異常を発見。航跡を追います」
連合側は日本国摂津県蜂狩市の沖合で枢軸軍の重巡洋艦を捉えた。ブライトリング世界における海戦を経て両陣営のワールドノイズ除去技術は飛躍的に向上し、異世界の混入物をいち早く探知できる。
巡洋艦ノーザンプトンは遮蔽装置による電磁気的光学迷彩を纏って湾内を突き進む。すれ違う船や港湾のレーダーには映らない。排水量の大きな船が進めば海面がとうぜん落ちくぼむ。それを補うのが光学迷彩だ。船体が覆い隠してしまう筈の光を真っ直ぐに透過させ、隠蔽工作を完成する。
それでも、蜂狩市は国際港湾都市だ。港湾内に大小さまざまな船が行き交っている。ハーベルトは頭が痛くなるような操船を人造人間どもに任せ、望萌と対策を協議した。
波しぶきが、ざあざあと洗う後部甲板
ホムンクルスが白いパーティーテーブルにカップをかちゃりと置いた。留萌は属領英国産のティーバッグを沈めながら、資料を広げた。机の上に容疑者の首が浮かび上がってクルクルと自転しはじめた。
「祥子に接触してきたQCD学者の沼田コヨリって女。かなりの癖者よ」
「知ってる。ファントム・ジェーン・スーの数少ない友人、ていうか何で私の取り巻きが歯向かってくるの~」
ハーベルトはまたしても旧友の裏切りに遭遇し暗澹たる思い。
「辛いかもしれないけど、ぐっとこらえて。話してちょうだい。どんな奴だったの?」
望萌の追及にハーベルトはしばし葛藤した。詳細を語ることは友人を売り渡すに等しい。さりとて回答を拒んで秘密警察にコヨリの身辺事情を探られたくない。天秤にかけて、国益を選んだ。
「幼い頃に両親を暴徒に殺されているの。それも目の前で。いがみ合う社会を解消しようと勉学に励んでいた」
思い出話を交えてハーベルトが語った人物像を整理すると、典型的な真面目人間のようだ。
「どこで歪んだのかねぇ……」
警報音が感傷に浸っているハーベルトを現実に引き戻した。
「ステイツの偵察機が接近中。形式はTR-3B オーロラと識別!」
対空警戒システムがレーダー画像をテーブルに投影した。思わずハーベルトが立ち上がる。
「何でバレたのよ?!」
「日々、改良に励んでいるのは枢軸だけでないのよ。遮蔽装置でワールドノイズに埋もれるやり方は通用しないってこと。他の足を使いましょう」
望萌はせめてコード1986世界の人間だけに不可視であればいいと割り切って、艦を最寄りの埠頭に泊めた。飛鳥埠頭には枢軸特急の最寄駅がある。船を降りた二人は有刺鉄線を潜り抜けて巨大な球形タンクが並ぶコンビナートに侵入した。地場産業である製鉄所が鋼材搬出用に専用線を敷設している。その信号所にTWX666Ωが待っていた。
「また出勤困難者が出たんですか」
ブレーズがやれやれと肩をすくめた。ハーベルトはムッとしながら「鈴の現在地は?」と訊く。機関手は恐る恐る蜂狩山脈の地図を指示した。
飛鳥山登山鉄道の山頂駅が反応している。それが罠である事は明白だ。
「ふ~ん。あたしゃピンと来たね。これは釣りだわ」
ハーベルトは誘いに乗らず、ハウゼル列車長にカルチェラタンを目指すよう指示した。
「どうして陽動だと言えるんですか?」
興味深げな機関手にハーベルトはコヨリの真意を明かした。
「どうせ、この列車が目当てなんでしょう。盗掘したハイパー核の運搬手段が喉から手が出るほど欲しいのね。あの子なら当面は大丈夫よ」
「なるほどね……。とりあえず、エリスの真偽を確かめましょう」
トワイライトエクリプスはもう一人の異世界逗留者である荒井と合流すべく学園を目指した。
■ 蜂狩山脈飛鳥山観光ホテル
その朽ち果てた洋館は廃墟マニアの間で「アスカン」と呼ばれていた。山奥の飛鳥寺参拝客を当て込んで高度成長期に建てられた。その飛鳥寺も放火で焼失し、ホテル自体は超大型台風の直撃を受けて一部倒壊した。そのまま廃業するまでは古い豪華客船の調度品をあしらったロビーや客室が評判を呼んで一年先まで満室だった。今は瀟洒なガラス屋根が割れ、興味本位の不法侵入者に荒らされ放題となっている。
苔むした露天風呂にシーリングファンのブレードが突き刺さっている。ローマ公衆浴場をイメージした柱はひび割れ、湯船の石像には首がない。例によって祥子はツルツル頭に一糸まとわぬ姿で拘束されていた。足元に濃紺やベージュ色のボロ布が散乱している。
「ボクのアンダースイムショーツまで破かなくたっていいじゃないか! ロリコン!!」
小児偏愛者呼ばわりされた尾鷲茂三は沼田に猛然と抗議した。
「こいつを乱暴に扱えばすっ飛んで来ると……」
「ハーベルトは緊張感が足りないようね。ガルム山のラムダ粒子は鉄道連隊の掘削機械でないと掘り出せない。いい取引材料になると思ったんだけどね」
コヨリは逆さ釣りされた祥子のロープをナイフで切った。ハゲ天使がどさりと墜落する。両脚をMの字に開いたまま気絶した。尾鷲が「用済みになった小娘を好きにしていいか」と物欲しげな目で訴えている。
コヨリは無言で彼を平手打ちした。そしてバケツにたまった雨水を頭から浴びせかけた。ケホケホと祥子がせき込む。
「こいつの本領発揮はこれからだよ。お前、アレを呼べるんだろ。あーん?」
泥だらけのスキンヘッドにコヨリが踵を載せた。
「な……んの……こ」
「リンドバーグの壁、すっとぼけるとセキレイ海峡に沈めるよ」
コヨリが顎をしゃくると尾鷲が懐から拳銃を取り出した。その背後に夕日が射す。アスカンは張り出した岩場に聳えており、蜂狩の市街が一望できる。そのやや西側に建設中の橋脚が見える。鶺鴒海峡大橋は本州と四国を結ぶ連絡橋の一つで何兆円という利権が絡んでいる。
「運搬手段が使えないとなれば別の手で掘り出すまでさ。途轍もない手間暇が掛るがね。時間経過なんて異世界逗留者には関係ないのさ」
コヨリの話を聞くにつれ、祥子の自殺願望が高まった。話の内容から察するに死ぬまで奴隷にされそうな雰囲気だ。いっその事この場で死んでやる。両親の安否が気になるが、一緒に滅びるのなら悔いはない。地獄も消滅したようだし、今度こそ霊魂消失したい。幽子情報系に還って、男の子としてやり直したい。異世界とは無縁な一般家庭に生まれたい。
彼女が歯を食いしばると、地面が小刻みに揺れ始めた。
■ ニューローマ・セントラルステーション
地獄を脱した連合軍専用列車は合衆国に到着した。大西洋に面したニューローマ。爛熟した人類文明の首都を僭称する街は眠る事を知らない。大きな島を埋め尽くす不夜城のど真ん中にニューローマ中央駅があった。列車の扉が開くとガスマスクの女たちが突入した。ごつい防弾ジャケットに自動小銃を構えているが、下半身は艶やかな素材のミニスカートに剝き出しの太腿。何ともちぐはぐなスタイルである。彼女たちは壁や天井に銃を向け、くまなく車内を捜索した後、危険物が一人しかいないことを確認すると、落ち着いた雰囲気で出て行った。しきりに、清拭完了とか、洗浄完了と言った単語を繰り返している。純色は両脇を警護されて駅を出た。黒塗りの高級車が一台止まっている。そこで純色はおやっと思った。
「私以外の乗員達はどこへ?」
鬼哭たちの姿がみえない。後続車はどこだ。不思議そうに見回す彼女を逆に運転手が訝しんだ。
「乗客はあなた一人だと聞いたが?」
「不死野高美という亡者が地獄から……」
運転手はとつぜん失笑した。「まさか、最後の審判じゃあるまいし!」
それで純色は納得した。いったん熱力学第二法則の底に落ちた者が這い出る術はないのだ。
「それを下すように私は大統領閣下に要請されたのよ」
純色は毅然とした態度で白亜の大統領府に入った。
ユーロポ・アメリカ連合国大統領エフゲニー・ローズバードは予想に反して、うら若き乙女だった。若作りでは成しえない瑞々しい肌を持っている。歳は二十代前半か。人生経験も政治手腕も不足している。
そのような未熟者を有権者が選んだ理由は意表を突いたものだった。通称リンドバーグの壁がもたらす世界滅亡の余波はすさまじく、人間のY染色体に影響を及ぼしている。性別を決定する染色体には女性機能の発達を抑制する機能と男性機能を促進する領域があるが、これらを宇宙から降り注ぐ放射線が逆転させているのだ。
連合軍が男子兵を嬲殺しにしている、とエルフリーデ大総統から聞いていた。純色が恐る恐る述べると、エフゲニーは一蹴した。
「貴女は『リンドバーグの壁』についてどれだけ知っているの?」
純色は科学者らしく即答した。「熱力学第二法則。エントロピー変化が及ぼす不可解な現象」
すると大統領は明確に否定した。「そんな漠然とした不安じゃないわ。喫緊の課題よ」
彼女は執務室の世界地図を振り返った。グレートブリテン島に赤い斜線が入っている。スコットランドと北アイルランドを横断し、大西洋上に及んでいる。イギリスの覇権をめぐって枢軸と連合が火花を散らした結果、ロンドンとダブリンはドイッチェラントの軍門に下った。その結果、スコットランド王国が成立し連合軍が防衛任務にあたっている。フランスはマジノ線を構築して抵抗中だが、枢軸軍は前線をパリ郊外にまで押し込んでいる。大統領が地図をクリックすると北大西洋上に赤い陸塊が浮かび上がった。
「これが壁!? 壁というより島では??」
意外な真相に純色は耳を疑った。息をつく暇もなく画面がワイプする。高波に呑まれる駆逐艦、黒煙を噴いて墜落する爆撃編隊、爆発炎上する装甲車。安っぽい戦争プロパガンダか。でなければ、いったい何が起きたというのか。我慢して見続けると、枢軸軍もひどい目にあっているようだ。隠れた背景事情が見えた。なるほどゲルマニアの街でやたらと若い女将校に出くわすわけだ。
「壁は拡大の一途を辿っています。先月、ロングアイランドの半分が侵蝕されました。補給線は迂回を強いられています。このままでは部隊運用に影響を及ぼすどころか……」
エフゲニーはいったん言葉を置いた。察した純色がその先を継いだ。
「北米大陸全体が『喰われてしまう』んです。ね?」
大統領は頷き、純色に連合版枢軸特急の完成を託した。貴女は運命量子色力学を確立した。地獄ブラックホールの成果は高く評価している。潤沢な資金と最高のスタッフを与えようと約束さえした。
純色は固くハグしあった。耳元でエフゲニーが呟く。
「その前に、ファントム・ジェーン・スーの解凍を急いで」
■ 火災現場
女子寮の周囲には規制線が張られ、警察や消防が忙しく検証を続けている。ハーベルトは例によって荒井に化けて情報収集した。流言飛語を総合すると二階の配電盤から出火したようだ。同じ設備がカルチェラタンの階段ホールにもあり、警察は老朽化による漏電と見ている。
「まぁ、そういう落としどころになるわね」
ハーベルトはコード1986世界の復元力特性に感心した。この異世界はオカルティズムを徹底的に合理化する。フーファイターは光感覚過敏か金星の見間違いだし、心霊写真は現像ミスだし、アブダクションケースは統合失調症が原因だし、ネッシーの尻尾は賞金稼ぎの捏造にしてしまう。
「川端エリスに関して特ダネを掴んだわよ」
野次馬をかき分けて黒縁眼鏡の女が現れた。木陰でベリベリとレディーススーツを破き、セーラー服姿になる。アンダースコートの上に履いていたストッキングも黒スパッツごと脱ぎ捨てる。
「それで望萌。彼女の容態はどうだったの?」
「一酸化炭素中毒で意識不明。俗に言う命に別条なし」
「ふぅん。復活の呪文を入力ってわけにはいかないんだ」
「ブライトリングで死んだエリスは複製よ。本物は在校生。宇宙人集団とは縁もゆかりもなくて、ただのお嬢様」
「それの何処が特ダネ?」
望萌は黙ってブルマの後ろポケットから数枚の写真を取り出した。パンチパーマの男と一緒にホテルを出るエリスがいる。
「実家は指定暴力団溝口組の五代目よ。こいつは彼女の客じゃなくてボディーガード。居場所を転々としている」
「抗争の裏に宇宙人が絡んでいるなんて、三文SFにもならないわ」
溝口組と毒蝮平和会は二年前から激しく対立している。
ハーベルトは頭を抱え込んだ。
「落ち込まないで最後まで聞いて。コード1986のアメリカにはL5協会っていうカルト団体があるの」
「知ってるわ。スマイルメッセージでしょ? ハーバード大学心理学教授が残したシリウス星人からの神託だっけ。人類は知性を宇宙へ拡張すべしとかなんとか」
「そうよ。その趣旨に従ってL5協会はスペースコロニーの概念設計を続けている。スマイルメッセージは別のアプローチも提唱していてね」
望萌は最後の一枚を示した。スマイルメッセージの抄訳が写っている。「変異せよ。そして故郷に凱旋せよ」と結んである。
「ティモシー・リアリー教授はドラッグこそが刷り込みを誘発できると唱えているの。意識の自由を訴えたのよ」
「変異かぁ。まてよ、LSD?!」
ハーベルトは閃いた。溝口組と宇宙人集団がつながった! ヤクザに薬物はつきものだ。
「そうよ。溝口組の収入源。そして、祥子のお父さんは抹香臭いカルトを嫌って科学啓蒙書の読書会を開いていたらしいの」
望萌は新聞記者を装って足で稼いだ情報を洗いざらいぶちまけた。
「このスマイルメッセージってのは強烈ね。あの手この手で宇宙脱出を煽っている」
ハーベルトが手にした写真に脂汗がにじむ。彼女のアクセス権限では伺いしれないが、ハートレー大総統は宇宙の叡智に突破口を求めていると噂に聞く。ヴリル協会とかトゥーレ結社とかいう胡散臭い機関に総統府が肩入れしているともいう。確かに熱力学第二法則の解消を地球外生命体に問うのも方法論の一つだろう。宇宙は広い。
「ハーベルト、あなた、のんびりしすぎよ。沼田は祥子を売り飛ばすかも知れない」
「どこに?」
「決まってるじゃない。L5協会よ。異世界逗留者はいい研究材料よ。事と次第によっちゃ、ハイパー核も抱き合わせ販売するかもね」望萌の指摘にハーベルトは青ざめた。
藤野祥子が生まれ育った世界は便宜上、コードネームが付与されている。
コード1986世界。
ここでは二つの超大国が互いの陣営を引き連れて主義主張を戦わせている。それはエスカレートして地球を何度も粉砕できるほどの破壊兵器を蓄積した。彼らは双方の頭上に熱核爆弾という剣を吊るしつつ、子分たちの喧嘩を肴に宴席で冷たい酒を浴びせ合っている。希死念慮があるのか生存欲求があるのか優柔不断な世界の狭間をTR-3Bオーロラ強攻偵察機オオガラスが征く。
「こちらオオガラス69。海上に磁気異常を発見。航跡を追います」
連合側は日本国摂津県蜂狩市の沖合で枢軸軍の重巡洋艦を捉えた。ブライトリング世界における海戦を経て両陣営のワールドノイズ除去技術は飛躍的に向上し、異世界の混入物をいち早く探知できる。
巡洋艦ノーザンプトンは遮蔽装置による電磁気的光学迷彩を纏って湾内を突き進む。すれ違う船や港湾のレーダーには映らない。排水量の大きな船が進めば海面がとうぜん落ちくぼむ。それを補うのが光学迷彩だ。船体が覆い隠してしまう筈の光を真っ直ぐに透過させ、隠蔽工作を完成する。
それでも、蜂狩市は国際港湾都市だ。港湾内に大小さまざまな船が行き交っている。ハーベルトは頭が痛くなるような操船を人造人間どもに任せ、望萌と対策を協議した。
波しぶきが、ざあざあと洗う後部甲板
ホムンクルスが白いパーティーテーブルにカップをかちゃりと置いた。留萌は属領英国産のティーバッグを沈めながら、資料を広げた。机の上に容疑者の首が浮かび上がってクルクルと自転しはじめた。
「祥子に接触してきたQCD学者の沼田コヨリって女。かなりの癖者よ」
「知ってる。ファントム・ジェーン・スーの数少ない友人、ていうか何で私の取り巻きが歯向かってくるの~」
ハーベルトはまたしても旧友の裏切りに遭遇し暗澹たる思い。
「辛いかもしれないけど、ぐっとこらえて。話してちょうだい。どんな奴だったの?」
望萌の追及にハーベルトはしばし葛藤した。詳細を語ることは友人を売り渡すに等しい。さりとて回答を拒んで秘密警察にコヨリの身辺事情を探られたくない。天秤にかけて、国益を選んだ。
「幼い頃に両親を暴徒に殺されているの。それも目の前で。いがみ合う社会を解消しようと勉学に励んでいた」
思い出話を交えてハーベルトが語った人物像を整理すると、典型的な真面目人間のようだ。
「どこで歪んだのかねぇ……」
警報音が感傷に浸っているハーベルトを現実に引き戻した。
「ステイツの偵察機が接近中。形式はTR-3B オーロラと識別!」
対空警戒システムがレーダー画像をテーブルに投影した。思わずハーベルトが立ち上がる。
「何でバレたのよ?!」
「日々、改良に励んでいるのは枢軸だけでないのよ。遮蔽装置でワールドノイズに埋もれるやり方は通用しないってこと。他の足を使いましょう」
望萌はせめてコード1986世界の人間だけに不可視であればいいと割り切って、艦を最寄りの埠頭に泊めた。飛鳥埠頭には枢軸特急の最寄駅がある。船を降りた二人は有刺鉄線を潜り抜けて巨大な球形タンクが並ぶコンビナートに侵入した。地場産業である製鉄所が鋼材搬出用に専用線を敷設している。その信号所にTWX666Ωが待っていた。
「また出勤困難者が出たんですか」
ブレーズがやれやれと肩をすくめた。ハーベルトはムッとしながら「鈴の現在地は?」と訊く。機関手は恐る恐る蜂狩山脈の地図を指示した。
飛鳥山登山鉄道の山頂駅が反応している。それが罠である事は明白だ。
「ふ~ん。あたしゃピンと来たね。これは釣りだわ」
ハーベルトは誘いに乗らず、ハウゼル列車長にカルチェラタンを目指すよう指示した。
「どうして陽動だと言えるんですか?」
興味深げな機関手にハーベルトはコヨリの真意を明かした。
「どうせ、この列車が目当てなんでしょう。盗掘したハイパー核の運搬手段が喉から手が出るほど欲しいのね。あの子なら当面は大丈夫よ」
「なるほどね……。とりあえず、エリスの真偽を確かめましょう」
トワイライトエクリプスはもう一人の異世界逗留者である荒井と合流すべく学園を目指した。
■ 蜂狩山脈飛鳥山観光ホテル
その朽ち果てた洋館は廃墟マニアの間で「アスカン」と呼ばれていた。山奥の飛鳥寺参拝客を当て込んで高度成長期に建てられた。その飛鳥寺も放火で焼失し、ホテル自体は超大型台風の直撃を受けて一部倒壊した。そのまま廃業するまでは古い豪華客船の調度品をあしらったロビーや客室が評判を呼んで一年先まで満室だった。今は瀟洒なガラス屋根が割れ、興味本位の不法侵入者に荒らされ放題となっている。
苔むした露天風呂にシーリングファンのブレードが突き刺さっている。ローマ公衆浴場をイメージした柱はひび割れ、湯船の石像には首がない。例によって祥子はツルツル頭に一糸まとわぬ姿で拘束されていた。足元に濃紺やベージュ色のボロ布が散乱している。
「ボクのアンダースイムショーツまで破かなくたっていいじゃないか! ロリコン!!」
小児偏愛者呼ばわりされた尾鷲茂三は沼田に猛然と抗議した。
「こいつを乱暴に扱えばすっ飛んで来ると……」
「ハーベルトは緊張感が足りないようね。ガルム山のラムダ粒子は鉄道連隊の掘削機械でないと掘り出せない。いい取引材料になると思ったんだけどね」
コヨリは逆さ釣りされた祥子のロープをナイフで切った。ハゲ天使がどさりと墜落する。両脚をMの字に開いたまま気絶した。尾鷲が「用済みになった小娘を好きにしていいか」と物欲しげな目で訴えている。
コヨリは無言で彼を平手打ちした。そしてバケツにたまった雨水を頭から浴びせかけた。ケホケホと祥子がせき込む。
「こいつの本領発揮はこれからだよ。お前、アレを呼べるんだろ。あーん?」
泥だらけのスキンヘッドにコヨリが踵を載せた。
「な……んの……こ」
「リンドバーグの壁、すっとぼけるとセキレイ海峡に沈めるよ」
コヨリが顎をしゃくると尾鷲が懐から拳銃を取り出した。その背後に夕日が射す。アスカンは張り出した岩場に聳えており、蜂狩の市街が一望できる。そのやや西側に建設中の橋脚が見える。鶺鴒海峡大橋は本州と四国を結ぶ連絡橋の一つで何兆円という利権が絡んでいる。
「運搬手段が使えないとなれば別の手で掘り出すまでさ。途轍もない手間暇が掛るがね。時間経過なんて異世界逗留者には関係ないのさ」
コヨリの話を聞くにつれ、祥子の自殺願望が高まった。話の内容から察するに死ぬまで奴隷にされそうな雰囲気だ。いっその事この場で死んでやる。両親の安否が気になるが、一緒に滅びるのなら悔いはない。地獄も消滅したようだし、今度こそ霊魂消失したい。幽子情報系に還って、男の子としてやり直したい。異世界とは無縁な一般家庭に生まれたい。
彼女が歯を食いしばると、地面が小刻みに揺れ始めた。
■ ニューローマ・セントラルステーション
地獄を脱した連合軍専用列車は合衆国に到着した。大西洋に面したニューローマ。爛熟した人類文明の首都を僭称する街は眠る事を知らない。大きな島を埋め尽くす不夜城のど真ん中にニューローマ中央駅があった。列車の扉が開くとガスマスクの女たちが突入した。ごつい防弾ジャケットに自動小銃を構えているが、下半身は艶やかな素材のミニスカートに剝き出しの太腿。何ともちぐはぐなスタイルである。彼女たちは壁や天井に銃を向け、くまなく車内を捜索した後、危険物が一人しかいないことを確認すると、落ち着いた雰囲気で出て行った。しきりに、清拭完了とか、洗浄完了と言った単語を繰り返している。純色は両脇を警護されて駅を出た。黒塗りの高級車が一台止まっている。そこで純色はおやっと思った。
「私以外の乗員達はどこへ?」
鬼哭たちの姿がみえない。後続車はどこだ。不思議そうに見回す彼女を逆に運転手が訝しんだ。
「乗客はあなた一人だと聞いたが?」
「不死野高美という亡者が地獄から……」
運転手はとつぜん失笑した。「まさか、最後の審判じゃあるまいし!」
それで純色は納得した。いったん熱力学第二法則の底に落ちた者が這い出る術はないのだ。
「それを下すように私は大統領閣下に要請されたのよ」
純色は毅然とした態度で白亜の大統領府に入った。
ユーロポ・アメリカ連合国大統領エフゲニー・ローズバードは予想に反して、うら若き乙女だった。若作りでは成しえない瑞々しい肌を持っている。歳は二十代前半か。人生経験も政治手腕も不足している。
そのような未熟者を有権者が選んだ理由は意表を突いたものだった。通称リンドバーグの壁がもたらす世界滅亡の余波はすさまじく、人間のY染色体に影響を及ぼしている。性別を決定する染色体には女性機能の発達を抑制する機能と男性機能を促進する領域があるが、これらを宇宙から降り注ぐ放射線が逆転させているのだ。
連合軍が男子兵を嬲殺しにしている、とエルフリーデ大総統から聞いていた。純色が恐る恐る述べると、エフゲニーは一蹴した。
「貴女は『リンドバーグの壁』についてどれだけ知っているの?」
純色は科学者らしく即答した。「熱力学第二法則。エントロピー変化が及ぼす不可解な現象」
すると大統領は明確に否定した。「そんな漠然とした不安じゃないわ。喫緊の課題よ」
彼女は執務室の世界地図を振り返った。グレートブリテン島に赤い斜線が入っている。スコットランドと北アイルランドを横断し、大西洋上に及んでいる。イギリスの覇権をめぐって枢軸と連合が火花を散らした結果、ロンドンとダブリンはドイッチェラントの軍門に下った。その結果、スコットランド王国が成立し連合軍が防衛任務にあたっている。フランスはマジノ線を構築して抵抗中だが、枢軸軍は前線をパリ郊外にまで押し込んでいる。大統領が地図をクリックすると北大西洋上に赤い陸塊が浮かび上がった。
「これが壁!? 壁というより島では??」
意外な真相に純色は耳を疑った。息をつく暇もなく画面がワイプする。高波に呑まれる駆逐艦、黒煙を噴いて墜落する爆撃編隊、爆発炎上する装甲車。安っぽい戦争プロパガンダか。でなければ、いったい何が起きたというのか。我慢して見続けると、枢軸軍もひどい目にあっているようだ。隠れた背景事情が見えた。なるほどゲルマニアの街でやたらと若い女将校に出くわすわけだ。
「壁は拡大の一途を辿っています。先月、ロングアイランドの半分が侵蝕されました。補給線は迂回を強いられています。このままでは部隊運用に影響を及ぼすどころか……」
エフゲニーはいったん言葉を置いた。察した純色がその先を継いだ。
「北米大陸全体が『喰われてしまう』んです。ね?」
大統領は頷き、純色に連合版枢軸特急の完成を託した。貴女は運命量子色力学を確立した。地獄ブラックホールの成果は高く評価している。潤沢な資金と最高のスタッフを与えようと約束さえした。
純色は固くハグしあった。耳元でエフゲニーが呟く。
「その前に、ファントム・ジェーン・スーの解凍を急いで」
■ 火災現場
女子寮の周囲には規制線が張られ、警察や消防が忙しく検証を続けている。ハーベルトは例によって荒井に化けて情報収集した。流言飛語を総合すると二階の配電盤から出火したようだ。同じ設備がカルチェラタンの階段ホールにもあり、警察は老朽化による漏電と見ている。
「まぁ、そういう落としどころになるわね」
ハーベルトはコード1986世界の復元力特性に感心した。この異世界はオカルティズムを徹底的に合理化する。フーファイターは光感覚過敏か金星の見間違いだし、心霊写真は現像ミスだし、アブダクションケースは統合失調症が原因だし、ネッシーの尻尾は賞金稼ぎの捏造にしてしまう。
「川端エリスに関して特ダネを掴んだわよ」
野次馬をかき分けて黒縁眼鏡の女が現れた。木陰でベリベリとレディーススーツを破き、セーラー服姿になる。アンダースコートの上に履いていたストッキングも黒スパッツごと脱ぎ捨てる。
「それで望萌。彼女の容態はどうだったの?」
「一酸化炭素中毒で意識不明。俗に言う命に別条なし」
「ふぅん。復活の呪文を入力ってわけにはいかないんだ」
「ブライトリングで死んだエリスは複製よ。本物は在校生。宇宙人集団とは縁もゆかりもなくて、ただのお嬢様」
「それの何処が特ダネ?」
望萌は黙ってブルマの後ろポケットから数枚の写真を取り出した。パンチパーマの男と一緒にホテルを出るエリスがいる。
「実家は指定暴力団溝口組の五代目よ。こいつは彼女の客じゃなくてボディーガード。居場所を転々としている」
「抗争の裏に宇宙人が絡んでいるなんて、三文SFにもならないわ」
溝口組と毒蝮平和会は二年前から激しく対立している。
ハーベルトは頭を抱え込んだ。
「落ち込まないで最後まで聞いて。コード1986のアメリカにはL5協会っていうカルト団体があるの」
「知ってるわ。スマイルメッセージでしょ? ハーバード大学心理学教授が残したシリウス星人からの神託だっけ。人類は知性を宇宙へ拡張すべしとかなんとか」
「そうよ。その趣旨に従ってL5協会はスペースコロニーの概念設計を続けている。スマイルメッセージは別のアプローチも提唱していてね」
望萌は最後の一枚を示した。スマイルメッセージの抄訳が写っている。「変異せよ。そして故郷に凱旋せよ」と結んである。
「ティモシー・リアリー教授はドラッグこそが刷り込みを誘発できると唱えているの。意識の自由を訴えたのよ」
「変異かぁ。まてよ、LSD?!」
ハーベルトは閃いた。溝口組と宇宙人集団がつながった! ヤクザに薬物はつきものだ。
「そうよ。溝口組の収入源。そして、祥子のお父さんは抹香臭いカルトを嫌って科学啓蒙書の読書会を開いていたらしいの」
望萌は新聞記者を装って足で稼いだ情報を洗いざらいぶちまけた。
「このスマイルメッセージってのは強烈ね。あの手この手で宇宙脱出を煽っている」
ハーベルトが手にした写真に脂汗がにじむ。彼女のアクセス権限では伺いしれないが、ハートレー大総統は宇宙の叡智に突破口を求めていると噂に聞く。ヴリル協会とかトゥーレ結社とかいう胡散臭い機関に総統府が肩入れしているともいう。確かに熱力学第二法則の解消を地球外生命体に問うのも方法論の一つだろう。宇宙は広い。
「ハーベルト、あなた、のんびりしすぎよ。沼田は祥子を売り飛ばすかも知れない」
「どこに?」
「決まってるじゃない。L5協会よ。異世界逗留者はいい研究材料よ。事と次第によっちゃ、ハイパー核も抱き合わせ販売するかもね」望萌の指摘にハーベルトは青ざめた。
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ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。
人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。
二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。
『月のトカゲを探す者』第一部(全三部)。
(表紙絵/山碕田鶴)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
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