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断絶の航悔(スーパー・カリフォルジリスティック・エクスピアリ・ドーシャス⑨ クリフォート
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荒れ狂う波に翻弄されるマーサズ・ヴィニャード号。藤野祥子とモントークボーイズは身じろぎせず、じっと枢軸特急を見据えている。
「それで、邪悪の樹はいつ咲くの? おばさん」
バイアーン幻想教団の女司祭マリア・ポーションは年増呼ばわりされてムッとした。まだ自分は二十歳代なのに。
「ぶっ殺すわよ。ま、それも不均衡症候群のあらわれなのだけど」
司祭は祥子の暴言を小娘の戯言と聞き流して、準備に入った。船上のテスラコイルは北米大陸に広がる地球電磁場の脈動を一手に制御している。邪悪の苗木は古くから大地に根付いている。それは大分裂後の地球も受け継がれた。不均衡には様々な形態があるが、ポーションは確実に生命の反転である”スティーヴ・セイヴドウが提唱した三重被覆の樹”を育てることに決めた。
それは無形と虚無と闇で構成される。闇はすでに奥の院と共にある。虚無は目の前にいる。
司祭が祥子の眼をじっとのぞき込むと、相手は深い吐息をした。
「おばさんの言いたいことはわかるよ。ボクは女の子にも男子にもなりきれない。ハーベルトや吹雪先生の事は好きだったけど、大人の女なんだ。恋愛の対象じゃない。モントークの君たちもボクの兄弟だしね。結婚相手でもない……」
「そして、貴女の夫はアドルフ・ヒトラーでもないわ。エーファ」
瞳の奥で憂う女に向かってマリアは断言した。
エーファ・ブラウンはヒトラーとピストル自殺する直前に地下壕内で式を挙げ、婚姻届けに署名した。その際に、うっかり旧姓であるブラウンと書こうとして慌ててBの字を消したといわれる。
「ヒトラーは祖国こそ我が妻と嘯いていたけど、貴女はゲルマン民族でもない。確かにバイエルンの生まれだけど」
マリアは赤い櫛を突き付けた。エーファの髪が絡みついている。
「その櫛は、私の……」
祥子に宿ったヒトラー夫人は言葉を失った。
ドイツ南部バイエルン州にあったヒトラーの山荘「ベルクホーフ」からアメリカのポール・ベア大尉が没収したものだ。
「髪の毛をDNA鑑定したの。エーファ、貴女はユダヤ人よ」
「――……ッ!!?」
祥子の中で二人の男女がせめぎあう、アドルフは妻のユダヤ人疑惑を払拭するべく綿密な調査を重ねて自信たっぷりに否定した……はずだった。
ヒトラーの裏切られた想いとエーファの遺志が激突を繰り返す。もはや、祥子の自我は誰のものでもなかった。
悶え苦しむ少女をマリアは面白おかしく見守った。
「トリヴェールの三番目は……『無形』よっ!」
言い終えぬうちに祥子のセーラー服が裂けた。体操服やレオタードが左右に裂け、脊椎がスクール水着を突き破る。スカートがバリバリと千切れ、ブルマーが両脚の間に落ちると、びっしりと根が生えた。藤野祥子だった肉体は両腕を天に振りかざして、そのまま大樹となった。急速に幹を伸ばし、漆黒の枝が生い茂る。大量の海水を滴らせ、まるで曇龍が首をもたげるように天空を仰ぐ。
邪悪の樹は連合国が建国以前から背負う「闇」、アイデンティティを失った祥子の虚無感、そして、彼女自身が誰でもないという「無形」、三重被覆を糧にして、見事に成長した。
その先端は成層圏を突き破って、衛星軌道にまで達した。
立派な宇宙樹と呼んで遜色がない。
そこから特定外来異生物がわらわらと舞い降りた。獄卒鳥、モーショ・ボー、そして鷹のフィニストがロングビーチめがけて襲い掛かる。
ありとあらゆる対空兵器が火を噴く。アウトカム達は邪悪の樹を庇うように燃え尽きる。
「キリがないわ。純色、撤収しましょう」
「待って! 外套効果が持たない」
邨埜純色が枢軸特急の戦線離脱に苦情を訴える。ウンエントリヒ・アハトアハトだけでは防護力場を支えきれない。
「合図をしたら、三つ数える間にセリュック・スラヴァー・ウェディングに潜って! すぐ真下に五百蔵艦隊がいるはず!」
ハーベルトは抜かりない。新しいオモチャを収蔵すべく周到に手はずを整えていた。
カルフォルニア湾には、東太平洋海膨の北端部が入り込み、太平洋プレートが北米プレートを圧迫している。そこに生じる強烈な世界雑音をかいくぐって異世界掘削機が到着した。五百蔵艦隊がロングビーチをQCDフィールドごと圧縮し、異世界水道へ曳航する。
「1、2……」
ハーベルトのカウントダウン終了を待たず、透明な堰が決壊した。マーサズ・ヴィニャードが波にのまれる。
■ 異世界 セリュック・スラヴァー・ウェディング
打って変わって、静謐な空間を異世界列車が並走している。
「邪悪の樹を枯らさないと、この世の終わりよ。もっと速く走れないの?」
ハーベルトは望萌を急かした。
「ロサンゼルス沖のサンアンドレアス大断層はロサンゼルスからメキシコシティに向かって北米西部を斜めに横断しています。コード2047世界にある量子通信ファイバーケーブルの約六割がここを横断しているですよ。ワールドクラスが輻輳して空間軌道が不安定なんです」
ハウゼル列車長がハーベルトのむちゃぶりを遠回しに諫めた。
「海底のメタンハイドレート鉱脈が活発化しています。猶予はありません」
女性機関士のひとりが地殻変動を懸念した。
「だったら、なおさら好都合だわ。メタンガスは火山活動で発生するだけでなく、メタン産生菌によるもののあるの。国立研究所の講演でそれらは地球外生命体だという説を聞いたことがあるわ。メタンガスは木星や土星など宇宙では割とメジャーなの。メタン産生菌がそこを住み家にしていてもおかしくない。ちなみに初期の地球でも君臨していたそうよ」
ハーベルトが思惑の一端を漏らすと、ハウゼルが反応した。
「と、いう事は、エリス。貴女のお仲間でもあるわけね。【集団】は彼らに関して何か言っている?」
「そうねぇ」
いきなり振られてウンエントリヒは沈黙した。しかし、すぐに知見を述べた。
「水素は嫌気性細菌、つまりメタン菌の有機酸を電子供与体とした脱水素反応の産物であるの。わかりやすくいうと、ダイマー能力を阻害する。集団は煙たがっているわ」
それを聞いて、ハーベルトはスカートの中身がまる見えになるほど狂喜した。
「ユーレカ! あなた、本当にペントラペントラ宇宙の友よ。よーし、逝っちゃえー」
彼女はそういうと、大胆不敵にもダイマー聴覚をサンアンドレアス大断層へ振り向けた。
「純色、聞いてる? ロングビーチの咆哮/熱病ネットワークノードをTWXにリンクして。アーネンエルベの量子脳と直結。通訳に任命するわ」
「ちょっ……」
さすがの宇宙人エリスも度肝を抜かれた。ハーベルトは地殻内部の「隣人」に協力を取り付けようというのだ。
「彼らが知性を持っているとは思えないけど……」
「だって集団は厄介者扱いしているんでしょう? 重水素二量体に反応する。だったら、個体ではなく群れとしての知能を獲得している可能性が高いわ」
ハーベルトはそういうと、鮮やかな連弾でキーボードを操り、必要なプログラムを記述した。
◇ ◇ ◇
エフゲニー・ローズバード大統領だったウィグナー結晶体が成層圏に放り上げられ、邪悪の樹の枝に捕らえられた。
「藤野祥子、いや、エーファ・ブラウン。気分はどうかしら?」
人間サイズの燐光が明滅すると、枝に巻き付いた電子流がチロチロと燃え上がる。
「世界システムって清々しいよね。ボクはもう自分が誰であるか、そんな事はどうでもいいんだ。テスラの発明はちっぽけなボクを地球規模に拡大してくれる。ボクが男だろうが女だろうが些細な問題点に過ぎないよ。ボクは彼であり彼女であるんだ」
光に満ち溢れた枝にX-33が接近した。
「アメリカ皇帝ジョアンナ・ノートン七世閣下をお連れしました」
皇帝専用機コスミック・プライムが機動バーニャを吹かしてエフゲニーとランデブーする。
「改めてこんにちわ。藤野祥子。貴女がハーベルトと最初に病院で会った夜の事を覚えていますか?」
七世の唐突な質問に祥子は警戒した。枝がビクッとしなる。
「何だよ。コイツ」
「恐れるものは何もありません。自分の無知以外は……。知恵の枝葉を伸ばして、答えを求めてみなさい」
祥子は記憶の糸をたどるように電子流を引き寄せた。
「あなたは……」
「気づきましたか? 私は未来像の一人です。エーファ。アルフレッドから生前にゲルマン民族の最終目的を聞いているでしょう」
電流が揺らめいてエーファ・ブラウンの彫像を形作る。
「人類進化の究極は神の模倣です。人類は二極化する。神同然に進化した超人ユーパーメンシュと機械のように愚直な被支配者層に分裂する。ゲルマン民族の目標は前者であると」
「ご名答。祥子は邪悪の樹、貴女は世界システムと接続し、地球規模の頭脳となりました。知恵の樹です。あとは……」
アメリカ皇帝ジョアンナ・ノートンは不満げにつぶやいた。熱力学第二法則を打ち破るブレイクスルーの最後の一本。
生命の樹が足りない。それはユダヤ人であるエーファも曽祖父からその存在を聞かされていた。代々伝わるユダヤの奥義。カバラの主幹だ。
「生命の樹、それが必要なのです。貴女の一番よく知っている人が、その近くに滞在しています」
アメリカ皇帝ジョアンナ・ノートン七世が最後の苗木を育てるべく、行動に出た。
邪悪の樹はその真意を電子流からくみ取って、激しく動揺した。
「先生、荒井先生を殺してでも、手に入れろだって?」
荒れ狂う波に翻弄されるマーサズ・ヴィニャード号。藤野祥子とモントークボーイズは身じろぎせず、じっと枢軸特急を見据えている。
「それで、邪悪の樹はいつ咲くの? おばさん」
バイアーン幻想教団の女司祭マリア・ポーションは年増呼ばわりされてムッとした。まだ自分は二十歳代なのに。
「ぶっ殺すわよ。ま、それも不均衡症候群のあらわれなのだけど」
司祭は祥子の暴言を小娘の戯言と聞き流して、準備に入った。船上のテスラコイルは北米大陸に広がる地球電磁場の脈動を一手に制御している。邪悪の苗木は古くから大地に根付いている。それは大分裂後の地球も受け継がれた。不均衡には様々な形態があるが、ポーションは確実に生命の反転である”スティーヴ・セイヴドウが提唱した三重被覆の樹”を育てることに決めた。
それは無形と虚無と闇で構成される。闇はすでに奥の院と共にある。虚無は目の前にいる。
司祭が祥子の眼をじっとのぞき込むと、相手は深い吐息をした。
「おばさんの言いたいことはわかるよ。ボクは女の子にも男子にもなりきれない。ハーベルトや吹雪先生の事は好きだったけど、大人の女なんだ。恋愛の対象じゃない。モントークの君たちもボクの兄弟だしね。結婚相手でもない……」
「そして、貴女の夫はアドルフ・ヒトラーでもないわ。エーファ」
瞳の奥で憂う女に向かってマリアは断言した。
エーファ・ブラウンはヒトラーとピストル自殺する直前に地下壕内で式を挙げ、婚姻届けに署名した。その際に、うっかり旧姓であるブラウンと書こうとして慌ててBの字を消したといわれる。
「ヒトラーは祖国こそ我が妻と嘯いていたけど、貴女はゲルマン民族でもない。確かにバイエルンの生まれだけど」
マリアは赤い櫛を突き付けた。エーファの髪が絡みついている。
「その櫛は、私の……」
祥子に宿ったヒトラー夫人は言葉を失った。
ドイツ南部バイエルン州にあったヒトラーの山荘「ベルクホーフ」からアメリカのポール・ベア大尉が没収したものだ。
「髪の毛をDNA鑑定したの。エーファ、貴女はユダヤ人よ」
「――……ッ!!?」
祥子の中で二人の男女がせめぎあう、アドルフは妻のユダヤ人疑惑を払拭するべく綿密な調査を重ねて自信たっぷりに否定した……はずだった。
ヒトラーの裏切られた想いとエーファの遺志が激突を繰り返す。もはや、祥子の自我は誰のものでもなかった。
悶え苦しむ少女をマリアは面白おかしく見守った。
「トリヴェールの三番目は……『無形』よっ!」
言い終えぬうちに祥子のセーラー服が裂けた。体操服やレオタードが左右に裂け、脊椎がスクール水着を突き破る。スカートがバリバリと千切れ、ブルマーが両脚の間に落ちると、びっしりと根が生えた。藤野祥子だった肉体は両腕を天に振りかざして、そのまま大樹となった。急速に幹を伸ばし、漆黒の枝が生い茂る。大量の海水を滴らせ、まるで曇龍が首をもたげるように天空を仰ぐ。
邪悪の樹は連合国が建国以前から背負う「闇」、アイデンティティを失った祥子の虚無感、そして、彼女自身が誰でもないという「無形」、三重被覆を糧にして、見事に成長した。
その先端は成層圏を突き破って、衛星軌道にまで達した。
立派な宇宙樹と呼んで遜色がない。
そこから特定外来異生物がわらわらと舞い降りた。獄卒鳥、モーショ・ボー、そして鷹のフィニストがロングビーチめがけて襲い掛かる。
ありとあらゆる対空兵器が火を噴く。アウトカム達は邪悪の樹を庇うように燃え尽きる。
「キリがないわ。純色、撤収しましょう」
「待って! 外套効果が持たない」
邨埜純色が枢軸特急の戦線離脱に苦情を訴える。ウンエントリヒ・アハトアハトだけでは防護力場を支えきれない。
「合図をしたら、三つ数える間にセリュック・スラヴァー・ウェディングに潜って! すぐ真下に五百蔵艦隊がいるはず!」
ハーベルトは抜かりない。新しいオモチャを収蔵すべく周到に手はずを整えていた。
カルフォルニア湾には、東太平洋海膨の北端部が入り込み、太平洋プレートが北米プレートを圧迫している。そこに生じる強烈な世界雑音をかいくぐって異世界掘削機が到着した。五百蔵艦隊がロングビーチをQCDフィールドごと圧縮し、異世界水道へ曳航する。
「1、2……」
ハーベルトのカウントダウン終了を待たず、透明な堰が決壊した。マーサズ・ヴィニャードが波にのまれる。
■ 異世界 セリュック・スラヴァー・ウェディング
打って変わって、静謐な空間を異世界列車が並走している。
「邪悪の樹を枯らさないと、この世の終わりよ。もっと速く走れないの?」
ハーベルトは望萌を急かした。
「ロサンゼルス沖のサンアンドレアス大断層はロサンゼルスからメキシコシティに向かって北米西部を斜めに横断しています。コード2047世界にある量子通信ファイバーケーブルの約六割がここを横断しているですよ。ワールドクラスが輻輳して空間軌道が不安定なんです」
ハウゼル列車長がハーベルトのむちゃぶりを遠回しに諫めた。
「海底のメタンハイドレート鉱脈が活発化しています。猶予はありません」
女性機関士のひとりが地殻変動を懸念した。
「だったら、なおさら好都合だわ。メタンガスは火山活動で発生するだけでなく、メタン産生菌によるもののあるの。国立研究所の講演でそれらは地球外生命体だという説を聞いたことがあるわ。メタンガスは木星や土星など宇宙では割とメジャーなの。メタン産生菌がそこを住み家にしていてもおかしくない。ちなみに初期の地球でも君臨していたそうよ」
ハーベルトが思惑の一端を漏らすと、ハウゼルが反応した。
「と、いう事は、エリス。貴女のお仲間でもあるわけね。【集団】は彼らに関して何か言っている?」
「そうねぇ」
いきなり振られてウンエントリヒは沈黙した。しかし、すぐに知見を述べた。
「水素は嫌気性細菌、つまりメタン菌の有機酸を電子供与体とした脱水素反応の産物であるの。わかりやすくいうと、ダイマー能力を阻害する。集団は煙たがっているわ」
それを聞いて、ハーベルトはスカートの中身がまる見えになるほど狂喜した。
「ユーレカ! あなた、本当にペントラペントラ宇宙の友よ。よーし、逝っちゃえー」
彼女はそういうと、大胆不敵にもダイマー聴覚をサンアンドレアス大断層へ振り向けた。
「純色、聞いてる? ロングビーチの咆哮/熱病ネットワークノードをTWXにリンクして。アーネンエルベの量子脳と直結。通訳に任命するわ」
「ちょっ……」
さすがの宇宙人エリスも度肝を抜かれた。ハーベルトは地殻内部の「隣人」に協力を取り付けようというのだ。
「彼らが知性を持っているとは思えないけど……」
「だって集団は厄介者扱いしているんでしょう? 重水素二量体に反応する。だったら、個体ではなく群れとしての知能を獲得している可能性が高いわ」
ハーベルトはそういうと、鮮やかな連弾でキーボードを操り、必要なプログラムを記述した。
◇ ◇ ◇
エフゲニー・ローズバード大統領だったウィグナー結晶体が成層圏に放り上げられ、邪悪の樹の枝に捕らえられた。
「藤野祥子、いや、エーファ・ブラウン。気分はどうかしら?」
人間サイズの燐光が明滅すると、枝に巻き付いた電子流がチロチロと燃え上がる。
「世界システムって清々しいよね。ボクはもう自分が誰であるか、そんな事はどうでもいいんだ。テスラの発明はちっぽけなボクを地球規模に拡大してくれる。ボクが男だろうが女だろうが些細な問題点に過ぎないよ。ボクは彼であり彼女であるんだ」
光に満ち溢れた枝にX-33が接近した。
「アメリカ皇帝ジョアンナ・ノートン七世閣下をお連れしました」
皇帝専用機コスミック・プライムが機動バーニャを吹かしてエフゲニーとランデブーする。
「改めてこんにちわ。藤野祥子。貴女がハーベルトと最初に病院で会った夜の事を覚えていますか?」
七世の唐突な質問に祥子は警戒した。枝がビクッとしなる。
「何だよ。コイツ」
「恐れるものは何もありません。自分の無知以外は……。知恵の枝葉を伸ばして、答えを求めてみなさい」
祥子は記憶の糸をたどるように電子流を引き寄せた。
「あなたは……」
「気づきましたか? 私は未来像の一人です。エーファ。アルフレッドから生前にゲルマン民族の最終目的を聞いているでしょう」
電流が揺らめいてエーファ・ブラウンの彫像を形作る。
「人類進化の究極は神の模倣です。人類は二極化する。神同然に進化した超人ユーパーメンシュと機械のように愚直な被支配者層に分裂する。ゲルマン民族の目標は前者であると」
「ご名答。祥子は邪悪の樹、貴女は世界システムと接続し、地球規模の頭脳となりました。知恵の樹です。あとは……」
アメリカ皇帝ジョアンナ・ノートンは不満げにつぶやいた。熱力学第二法則を打ち破るブレイクスルーの最後の一本。
生命の樹が足りない。それはユダヤ人であるエーファも曽祖父からその存在を聞かされていた。代々伝わるユダヤの奥義。カバラの主幹だ。
「生命の樹、それが必要なのです。貴女の一番よく知っている人が、その近くに滞在しています」
アメリカ皇帝ジョアンナ・ノートン七世が最後の苗木を育てるべく、行動に出た。
邪悪の樹はその真意を電子流からくみ取って、激しく動揺した。
「先生、荒井先生を殺してでも、手に入れろだって?」
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