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第7章『インターネッ卜の終わり(終)』
しおりを挟む1:『1:30』(1時半)という文字列を変えた瞬間のことだった。突然モニターが激しく揺れたと同時ぐらいに強い風のような物に襲われた気がしたが何も起こらない。「気のせい……だよな」と首を傾げる。2:20の表示に変わった。私はまたエンターキーを押した。
2:00という数字が表れると同時に激しいノイズの嵐に見舞われた。耳をつんざく甲高い音が室内に鳴り響く。私は驚いて身を縮こまらせたが音は一向に治まらないどころかますますひどくなるばかりである。
どうしたらいいのだろう。
私は慌ててキーボードを叩いた。
3:10という文字列に変えた直後、今度は雷が落ちたかと思われるほどの衝撃と振動が襲ってきたので慌てて手を止めた。
4:11と変えるが効果なし。
4:25と変えた直後、視界を何かに覆われたかのように真っ暗になったので両手を前に出すが何の手応えも無い。そして停電が起こったかのごとくパソコンの画面がブラックアウトしたので急いでマウスを操作する。画面右上の時刻表示は『1:00』(午前零時ではなく正午のことらしい)に変わり、『END』という黒い文字が画面中央に浮かび上がった。
そこで動画を停止すると「どうでしたか?」と尋ねる声が聞こえた。
「何か、気づいたことがありましたか?」私は顔を上げた。「私は一体、何をしたんですか!?」「えっと……」男の口元が小さく歪む。「私は何の答えを見つければいいんですか!?」私は言った。男は少しだけ黙った後、言った。「もう分かっていますよね?あとは全て、貴方次第ですよ」男は席を立つ。
私は慌てて立ち上がると男を呼び止めようとした。
「ま、待ってください!私は……!?私には、あなたに伝えないといけないことがたくさんあって!」男は無言のまま私を振り返る。
私は言葉を飲み込むと、代わりにこう言った。
「さようなら」「ああ、お幸せにね、お兄さん!」
男は私に背中を向けたまま小さく手を振り歩き出した。私はその背中に向かって叫ぶ。
「私は、まだ、英雄じゃなかった!でも必ず戻って来るから!!約束します!!だからどうか、私の動画を観て下さい!!お願いです!!私は、あなたの作った『ネトゲ廃人』の主人公とは違うんだ!!英雄じゃないから!!本当の私はもっと弱虫で!!情けなくて!!格好悪くて!!それでいて臆病な人間なんですよ!!」
男は振り返らない。
やがてその姿が見えなくなった。
私はその場に立ち尽くしていた。
いつの間にか涙が溢れてきて頬を流れる。
拭っても拭っても止まらなかった。
「どうして」
呟きは嗚咽に変わる。
「どうして」
問いかけても誰も返事をしてくれない。
「こんなことに」
胸の奥が痛い。
「なったんだ」
息苦しくて立っていられない。
私は膝を抱えて床に座り込んだ。
「何なんだ」
私は顔を上げるとパソコンの画面を見つめた。
そこには、3:15と映し出されていた。
この数字の意味を知る者などいないだろう。
これは、私と男しか知らない秘密の暗号なのだから。
「私はまだ、終わってなんかいなかった」
そうだ、私は生きている。
生きてここにいるじゃないか。
ならば、終わらせるわけにはいかない。
この世界はまだ続いているのだから。
たとえ英雄になれなくても。
私はここで生きることを選択してみせる。
『インターネットが終わるまで、あと4時間12分。そして』
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