星影ちゃんはまだ子供

まこる

文字の大きさ
1 / 6

出会い

しおりを挟む
子どもに好かれる性格なのか彼、織野 夏彦の周りにはいつも子どもがいた。彼自身子供が好きなので、よく遊んでいた。そんな時、いつの間にか彼女はいた。

「じゃあ次は何するか? 」

「鬼ごっこー! 」

子供たちの間で流行っているのか、最近は鬼ごっこばかりである。しかし、1人の女の子は違った。

「もま、まごちょ」

あまり発達していないのか、呂律の回らない口調で何かを喋っていた。

「ん......あ? 」

理解されていないと分かったのか、今度は一生懸命に口をはっきり動かして喋った。

「おま、まごちょ! 」

「ああ、おままごとな」

それを聞いた他の子供たちは、駄々をこね始めた。

「ええー! 鬼ごっこがいいー」

よほど鬼ごっこがいいのだろうか。しかし、こんなに小さな子のお願いを聞き入れない訳にもいかないと夏彦は思った。きっと勇気を出してこの輪の中に入ってきたんだと。

「ほらガキども、年下の子に合わせるもんだろ。な? 」

「うーん、分かった」

1人がそういうと、他の者も口々にそう言い始めた。

「じゃあ、おままごとに決定だ! 」

夏彦は子供たちの遊びに慣れている。的確な指示によって、おままごとの道具は即座に砂場に集まった。

「ここは八百屋さんだな」

「じゃあここはおもちゃ屋さん! 」

砂によって出来ていく町並み。おままごとと提案した子も楽しんでいるようだ。しかし、3秒に1回のペースで、キラキラした目を、夏彦の四白眼に向けるのだ。少し遊びにくかった。

「ハルカー! あ!! いた!! 」

そう叫んで駆け寄ってきたのは、1人の女性であった。その女性は例の女の子を抱き抱えて、遥と名前を呼んだ。

「ダメじゃないはぐれたりしたら......あなたが遊んでてくれたの? 」

「あ、はい......まあ」

女性は、その子供の人数、おままごとの完成度の高さ。それを瞬時に理解し、夏彦がどれ程の実力者かを悟った。そして、ある提案をした。

「ねえきみ。ちょっとバイトしない? 」

「バイト、っすか? 」

「うん。あたしね、旦那共々仕事がバカ忙しいのよ。それでこの子に構ってあげられる時間がなくて、あなたがバイトとしてこの子の面倒見てくれると助かるんだけど」

頼めるかな、と女性は申し訳なさそうな顔をした。夏彦は成績はいいので勉強をする必要はない。友達も多いわけではないので、放課後や休日は確実に暇になるだろう。

「はい、いいっすよ」

「うわぁ助かるぅ! じゃあ早速家、来てもらっていい? 」

「うっす......じゃあお前ら、また今度なー」

その公園から出ていく夏彦。手を振ると子供たちも続けて振ってくれる。とても幸せである。

-高級マンション-

たどり着いたのは、公園からそう遠くない場所に位置する高級なマンションであった。

「す、すげ......」

「ほとんど旦那の稼ぎだけどね」

エレベーターに乗りながら話す。その間にも、遥ちゃんは夏彦の顔を見るのをやめなかった。

「ここが、あたしんちね」

よいしょ、と重い扉を開ける。中は静まっていた。

「ははぁ......」

「中々広いでしょ? でもこんな空間使わないわよ」

女性は抱き抱えていた遥をテーブルの前に座らせた。そして小走りでどこかへ消えていった。

やがて戻り、持ってきたのは子供向け美少女アニメのキャラクターが使う、オモチャのステッキであった。

「説明書どっかにやっちゃってね。動かし方は分かんないんだけど、テキトーに持たせて遊ばせてあげて」

そういって女性は、キッチンへと向かった。そのまま夕飯の準備をしていると、突如としてリビングに音が鳴り響いた。

「な、何事!? 」

リビングにいたのは、音の出ているステッキを持った夏彦。そしてそれを見て目をキラキラ光らせている遥であった。

「いや、勘で動かしてたらわかって......結構音でかいっすね」

ここを押すんだよ、と遥に説明する夏彦。遥はステッキを振って、呂律の回らない口調で呪文を唱えた。おそらくアニメの攻撃方法なのだろう。夏彦はノリよく、敵がやられる声をだしながら後ろに倒れた。

「ていー! 」

「うぎゃー! 負けたー! 」

キャッキャと笑う遥を見て、夏彦も幸せであった。一方それを見ていた遥の母、星影 美月は、夏彦のベテランっぷりに感服していた。

-数時間後-

「いやー今日はありがとね。助かっちゃったわ」

玄関先で礼を言われる夏彦。彼自身、遥とごっこ遊びをするのは楽しかったので、なんともいえない心持ちだった。

「いやいやそんな」

「あっこれ、約束のバイト代ね」

渡された封筒には『バイト代よん♡』と書かれていた。中には、中学生には多いぐらいの金額が入っていた。

「ええ! こんなに? 」

「そんぐらいお世話になっちゃったってこと。また頼みたい時はメールするね。それじゃ」

扉を閉めようとすると、奥の部屋からドタドタと足音が聞こえてきた。遥のものだ。ボロボロに泣いていて、叫んでいる。

「おにぃぢゃぁーーん!! おにーぢゃぁぁーーん!! 」

「やば! また今度もお願いね! 」

美月は急いで扉を閉めた。扉からはギリギリ叫び声が聞こえ、ドンドンと扉を叩く音もした。

「我慢しろよハルカちゃん。また今度くるからな」

それからというもの、遥の人生に夏彦は必要不可欠のものとなった。時には泊まり込み、時には共にお出かけ。そうして遥は、夏彦という3人目の親の子守りの元、スクスクと育っていった。

そして、時は流れる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...