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出会い
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子どもに好かれる性格なのか彼、織野 夏彦の周りにはいつも子どもがいた。彼自身子供が好きなので、よく遊んでいた。そんな時、いつの間にか彼女はいた。
「じゃあ次は何するか? 」
「鬼ごっこー! 」
子供たちの間で流行っているのか、最近は鬼ごっこばかりである。しかし、1人の女の子は違った。
「もま、まごちょ」
あまり発達していないのか、呂律の回らない口調で何かを喋っていた。
「ん......あ? 」
理解されていないと分かったのか、今度は一生懸命に口をはっきり動かして喋った。
「おま、まごちょ! 」
「ああ、おままごとな」
それを聞いた他の子供たちは、駄々をこね始めた。
「ええー! 鬼ごっこがいいー」
よほど鬼ごっこがいいのだろうか。しかし、こんなに小さな子のお願いを聞き入れない訳にもいかないと夏彦は思った。きっと勇気を出してこの輪の中に入ってきたんだと。
「ほらガキども、年下の子に合わせるもんだろ。な? 」
「うーん、分かった」
1人がそういうと、他の者も口々にそう言い始めた。
「じゃあ、おままごとに決定だ! 」
夏彦は子供たちの遊びに慣れている。的確な指示によって、おままごとの道具は即座に砂場に集まった。
「ここは八百屋さんだな」
「じゃあここはおもちゃ屋さん! 」
砂によって出来ていく町並み。おままごとと提案した子も楽しんでいるようだ。しかし、3秒に1回のペースで、キラキラした目を、夏彦の四白眼に向けるのだ。少し遊びにくかった。
「ハルカー! あ!! いた!! 」
そう叫んで駆け寄ってきたのは、1人の女性であった。その女性は例の女の子を抱き抱えて、遥と名前を呼んだ。
「ダメじゃないはぐれたりしたら......あなたが遊んでてくれたの? 」
「あ、はい......まあ」
女性は、その子供の人数、おままごとの完成度の高さ。それを瞬時に理解し、夏彦がどれ程の実力者かを悟った。そして、ある提案をした。
「ねえきみ。ちょっとバイトしない? 」
「バイト、っすか? 」
「うん。あたしね、旦那共々仕事がバカ忙しいのよ。それでこの子に構ってあげられる時間がなくて、あなたがバイトとしてこの子の面倒見てくれると助かるんだけど」
頼めるかな、と女性は申し訳なさそうな顔をした。夏彦は成績はいいので勉強をする必要はない。友達も多いわけではないので、放課後や休日は確実に暇になるだろう。
「はい、いいっすよ」
「うわぁ助かるぅ! じゃあ早速家、来てもらっていい? 」
「うっす......じゃあお前ら、また今度なー」
その公園から出ていく夏彦。手を振ると子供たちも続けて振ってくれる。とても幸せである。
-高級マンション-
たどり着いたのは、公園からそう遠くない場所に位置する高級なマンションであった。
「す、すげ......」
「ほとんど旦那の稼ぎだけどね」
エレベーターに乗りながら話す。その間にも、遥ちゃんは夏彦の顔を見るのをやめなかった。
「ここが、あたしんちね」
よいしょ、と重い扉を開ける。中は静まっていた。
「ははぁ......」
「中々広いでしょ? でもこんな空間使わないわよ」
女性は抱き抱えていた遥をテーブルの前に座らせた。そして小走りでどこかへ消えていった。
やがて戻り、持ってきたのは子供向け美少女アニメのキャラクターが使う、オモチャのステッキであった。
「説明書どっかにやっちゃってね。動かし方は分かんないんだけど、テキトーに持たせて遊ばせてあげて」
そういって女性は、キッチンへと向かった。そのまま夕飯の準備をしていると、突如としてリビングに音が鳴り響いた。
「な、何事!? 」
リビングにいたのは、音の出ているステッキを持った夏彦。そしてそれを見て目をキラキラ光らせている遥であった。
「いや、勘で動かしてたらわかって......結構音でかいっすね」
ここを押すんだよ、と遥に説明する夏彦。遥はステッキを振って、呂律の回らない口調で呪文を唱えた。おそらくアニメの攻撃方法なのだろう。夏彦はノリよく、敵がやられる声をだしながら後ろに倒れた。
「ていー! 」
「うぎゃー! 負けたー! 」
キャッキャと笑う遥を見て、夏彦も幸せであった。一方それを見ていた遥の母、星影 美月は、夏彦のベテランっぷりに感服していた。
-数時間後-
「いやー今日はありがとね。助かっちゃったわ」
玄関先で礼を言われる夏彦。彼自身、遥とごっこ遊びをするのは楽しかったので、なんともいえない心持ちだった。
「いやいやそんな」
「あっこれ、約束のバイト代ね」
渡された封筒には『バイト代よん♡』と書かれていた。中には、中学生には多いぐらいの金額が入っていた。
「ええ! こんなに? 」
「そんぐらいお世話になっちゃったってこと。また頼みたい時はメールするね。それじゃ」
扉を閉めようとすると、奥の部屋からドタドタと足音が聞こえてきた。遥のものだ。ボロボロに泣いていて、叫んでいる。
「おにぃぢゃぁーーん!! おにーぢゃぁぁーーん!! 」
「やば! また今度もお願いね! 」
美月は急いで扉を閉めた。扉からはギリギリ叫び声が聞こえ、ドンドンと扉を叩く音もした。
「我慢しろよハルカちゃん。また今度くるからな」
それからというもの、遥の人生に夏彦は必要不可欠のものとなった。時には泊まり込み、時には共にお出かけ。そうして遥は、夏彦という3人目の親の子守りの元、スクスクと育っていった。
そして、時は流れる。
「じゃあ次は何するか? 」
「鬼ごっこー! 」
子供たちの間で流行っているのか、最近は鬼ごっこばかりである。しかし、1人の女の子は違った。
「もま、まごちょ」
あまり発達していないのか、呂律の回らない口調で何かを喋っていた。
「ん......あ? 」
理解されていないと分かったのか、今度は一生懸命に口をはっきり動かして喋った。
「おま、まごちょ! 」
「ああ、おままごとな」
それを聞いた他の子供たちは、駄々をこね始めた。
「ええー! 鬼ごっこがいいー」
よほど鬼ごっこがいいのだろうか。しかし、こんなに小さな子のお願いを聞き入れない訳にもいかないと夏彦は思った。きっと勇気を出してこの輪の中に入ってきたんだと。
「ほらガキども、年下の子に合わせるもんだろ。な? 」
「うーん、分かった」
1人がそういうと、他の者も口々にそう言い始めた。
「じゃあ、おままごとに決定だ! 」
夏彦は子供たちの遊びに慣れている。的確な指示によって、おままごとの道具は即座に砂場に集まった。
「ここは八百屋さんだな」
「じゃあここはおもちゃ屋さん! 」
砂によって出来ていく町並み。おままごとと提案した子も楽しんでいるようだ。しかし、3秒に1回のペースで、キラキラした目を、夏彦の四白眼に向けるのだ。少し遊びにくかった。
「ハルカー! あ!! いた!! 」
そう叫んで駆け寄ってきたのは、1人の女性であった。その女性は例の女の子を抱き抱えて、遥と名前を呼んだ。
「ダメじゃないはぐれたりしたら......あなたが遊んでてくれたの? 」
「あ、はい......まあ」
女性は、その子供の人数、おままごとの完成度の高さ。それを瞬時に理解し、夏彦がどれ程の実力者かを悟った。そして、ある提案をした。
「ねえきみ。ちょっとバイトしない? 」
「バイト、っすか? 」
「うん。あたしね、旦那共々仕事がバカ忙しいのよ。それでこの子に構ってあげられる時間がなくて、あなたがバイトとしてこの子の面倒見てくれると助かるんだけど」
頼めるかな、と女性は申し訳なさそうな顔をした。夏彦は成績はいいので勉強をする必要はない。友達も多いわけではないので、放課後や休日は確実に暇になるだろう。
「はい、いいっすよ」
「うわぁ助かるぅ! じゃあ早速家、来てもらっていい? 」
「うっす......じゃあお前ら、また今度なー」
その公園から出ていく夏彦。手を振ると子供たちも続けて振ってくれる。とても幸せである。
-高級マンション-
たどり着いたのは、公園からそう遠くない場所に位置する高級なマンションであった。
「す、すげ......」
「ほとんど旦那の稼ぎだけどね」
エレベーターに乗りながら話す。その間にも、遥ちゃんは夏彦の顔を見るのをやめなかった。
「ここが、あたしんちね」
よいしょ、と重い扉を開ける。中は静まっていた。
「ははぁ......」
「中々広いでしょ? でもこんな空間使わないわよ」
女性は抱き抱えていた遥をテーブルの前に座らせた。そして小走りでどこかへ消えていった。
やがて戻り、持ってきたのは子供向け美少女アニメのキャラクターが使う、オモチャのステッキであった。
「説明書どっかにやっちゃってね。動かし方は分かんないんだけど、テキトーに持たせて遊ばせてあげて」
そういって女性は、キッチンへと向かった。そのまま夕飯の準備をしていると、突如としてリビングに音が鳴り響いた。
「な、何事!? 」
リビングにいたのは、音の出ているステッキを持った夏彦。そしてそれを見て目をキラキラ光らせている遥であった。
「いや、勘で動かしてたらわかって......結構音でかいっすね」
ここを押すんだよ、と遥に説明する夏彦。遥はステッキを振って、呂律の回らない口調で呪文を唱えた。おそらくアニメの攻撃方法なのだろう。夏彦はノリよく、敵がやられる声をだしながら後ろに倒れた。
「ていー! 」
「うぎゃー! 負けたー! 」
キャッキャと笑う遥を見て、夏彦も幸せであった。一方それを見ていた遥の母、星影 美月は、夏彦のベテランっぷりに感服していた。
-数時間後-
「いやー今日はありがとね。助かっちゃったわ」
玄関先で礼を言われる夏彦。彼自身、遥とごっこ遊びをするのは楽しかったので、なんともいえない心持ちだった。
「いやいやそんな」
「あっこれ、約束のバイト代ね」
渡された封筒には『バイト代よん♡』と書かれていた。中には、中学生には多いぐらいの金額が入っていた。
「ええ! こんなに? 」
「そんぐらいお世話になっちゃったってこと。また頼みたい時はメールするね。それじゃ」
扉を閉めようとすると、奥の部屋からドタドタと足音が聞こえてきた。遥のものだ。ボロボロに泣いていて、叫んでいる。
「おにぃぢゃぁーーん!! おにーぢゃぁぁーーん!! 」
「やば! また今度もお願いね! 」
美月は急いで扉を閉めた。扉からはギリギリ叫び声が聞こえ、ドンドンと扉を叩く音もした。
「我慢しろよハルカちゃん。また今度くるからな」
それからというもの、遥の人生に夏彦は必要不可欠のものとなった。時には泊まり込み、時には共にお出かけ。そうして遥は、夏彦という3人目の親の子守りの元、スクスクと育っていった。
そして、時は流れる。
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