最弱スキル《回避》で異世界最強になる死にゲーマスターの話

まこる

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決闘

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作戦当日、天気は晴れ。宿屋で目を覚ましたゼニアは出かける支度をした。

服に着替えてアイアンソードを持ち、一旦宿を出ていく。そして、この国で一番目立っているあの城に向かっていった。

城は頑丈な金属製の網目状の門で守られており、その前には門兵がいた。

この王国に来た時の門兵ではないが、門兵という仕事をする者が嫌いになっていたゼニア。少し態度が悪くなってしまったが、門兵に頼んだ。

「この門、開けてくれ」

「許可がないものは入れるわけにはいかんのだ。すまんな」

門兵のくせに謝れるのかと理不尽に思っていると、門の向こう側からある人物の声がした。

「そいつは俺の友人だ。討伐隊志望のな。通してやってくれないか? 」

相変わらず身長の高い男、カシュタだった。門兵にも丁寧に話すので、慕われるのは当然だった。

「そ、そうでしたか。では、どうぞ......」

すると門は重々しく開き、ゼニアは中に入っていった。

「さてゼニア。これからお前を討伐隊の隊長のところまで案内する。やつがどんな対応をするかは、やつの気分次第だ。俺もできる限りのサポートはする」

「はい」

「いい返事だ。じゃあ行くぞ」

鎧についた腰巻きを翻して城の中に入っていくカシュタ。それにゼニアはついて行った。

内装は貴族の住むような感じだった。城に使われている石材は高級感があり、耐久力もあるようだ。廊下には赤い絨毯が敷かれている

やがてカシュタは、あるドアの前で立ち止まった。

「この作戦会議室にやつはいる。行こう」

そのドアを開けると、その部屋の中心には大きなテーブルが置かれており、地図が広がっていて、部屋の一番奥には、机に足を乗っけている男がいた。

テーブルの周りには、防衛隊のものと少し似ている鎧と、赤い布で構成されたものを身に着けた、討伐隊の者たちが数人いた。

「ゴゼル。入隊希望者だぞ」

その言葉を聞くと、ゴゼルと呼ばれた討伐隊の隊長はチラリとカシュタの方を向き、次にその横にいるゼニアに目を移した。

「なんだよカシュタ。お前の目はついに狂ったか? そんな弱っちそうなやつを城に入れるんじゃねーよ。邪魔くせぇ」

人を見た目で判断する人間のクズだが、実力を確かに感じる。

そんなゴゼルをカシュタは咎めた。

「見た目で判断するのはどうかと思うぞ。お前は昔からそうだ」

「ふん。じゃあ、俺が直々にそいつと戦って、実力を測ってやってもいいんだぞ? 」

それを聞くとカシュタは少したじろいだ。そして同時に、ゴゼルの腰に差された、軽く光を纏う剣に視線を移した。

「......お前と戦ったやつは全員死ぬ。若い芽を摘ませるわけにはいかん」

カシュタはどうにかして、ゼニアを討伐隊に入隊させる方法を考えていた。しかし考えれば考えるほど、ゴゼルの澄ました表情に惑わされる。

「まあ、とにかく帰った帰った。俺は今忙しいんだ。来たるべき日に備えてるんでな」

「来たるべき日、だと? 」

ゴゼルは怪しい笑みを浮かべながら言った。

「この国を俺のものにするのさ。いつか国王を玉座から引きずり降ろし、俺がそこに座る。国王になるんだ。民の財産をすべて俺の財産にしてやるんだ。それまで俺を信頼していた民はその時始めて気がつく。『やっぱりあんなやつ信じるんじゃなかった』ってな」

そんな邪悪な作戦を話している間も、ゴゼルは非常に楽しそうな顔をしていた。

「民が気づいたときにはもう遅い。俺がこの国を統治すれば、民は俺の所有物だ。男は強制労働。女は俺の奴隷だ。顔がいいやつは全員俺の妻にしてやってもいいなぁ」

極悪。ゴゼルという男を表すにはこれが適切だった。

そんな中、ゼニアが口を開いた。

「あんたに勝てば、俺の入隊を認めてくれるんだな? 」

カシュタはその発言に驚いてゼニアの方を振り返った。ゴゼルは眉をピクリと動かし、ゼニアの方に目だけを向けた。

「俺に勝つ、だと? 」

「俺が負けたら、俺のことを殺しても構わないぜ」

「ゼニア! 」

カシュタはゼニアを制止しようとしたが、ゴゼルが椅子から立ち上がった。乗り気になったのだ。

「いいだろう。俺が直々に相手をしてやる。勝てたら約束通り、入隊を許可してやるよ」

「ああ」

討伐隊の者たちはクスクスと笑っていた。あまりにも無鉄砲で世間知らずなゼニアを嘲笑っているのだ。

ゴゼルはそのままゼニアたちのいるドアの付近まで歩いてきた。

「今から闘技場を貸し切ってくる。俺が統治する新たな国の幕開けだな」

するとゴゼルは部屋から出ていった。それのすぐ後にゼニアたちも部屋を出た。そして廊下で話す。

「何を考えているんだゼニア! ゴゼルの実力も知らないで! 」

「大丈夫ですよ。勝ってみせます! 勝って討伐隊に入って、あいつの策略を阻止します!! 」

「......」

カシュタは心配でならなかった。自分が見つけた芽を、同期に踏み潰されてしまう。せっかく芽吹きかけていたのに。

しかし、ゼニアの自信に満ちた表情が、カシュタの心情に少々の変化をもたらした。

「......殺されそうになったらすぐにギブアップを宣言するんだ。ゴゼルがやめなくても、俺が助けに入る」

だから、と言いカシュタは続けた。

「絶対に、勝ってこい」

カシュタの真っ直ぐな目に、ゼニアも応えた。

「はい!! 」

アイアンソードに手を置き、闘技場に併設された控え室へと向かうゼニア。そこで用意されていた軽い設計の鎧を身にまとった。

控え室で少しの時間待っていると、闘技場からゴゼルの声が聞こえてきた。

「おい、バカな入隊希望者! 聞こえるか!? お前が俺に勝つなんざ無理な話だが、運がお前に味方して勝った場合、お前に二級隊士の称号をくれてやるよ! 」

ゼニアはそのセリフを聞き、少し緊張していた。

(二級隊士か......普通は三級からなんだろうけど、いきなり二級にするのはそれだけ、あいつにはかなり自信があるってことだ)

しかしゼニアには、勝たねばならない理由があった。会ったばかりの自分を信じてくれたカシュタ。故郷の村にいるガルタやパネや、母親のカザラ。ジガル。そして

父親。

「......よし! 」

ゼニアは満を持して立ち上がり、選手入場口に向かった。

そこにはカシュタがおり、後輩を激励する意味を込めて、ゼニアの胸をドンと叩いた。

二人は無言だった。しかし、言葉などなくとも通ずるものがあった。

闘技場にはすでに準備万端のゴゼルがいた。

「おう、待ちくたびれたぜ」

「......」

「じゃあ、始めようか」

ゴゼルが観客席の方に合図を送ると、太鼓の音が闘技場に鳴り響いた。それと同時にゴゼルの部下の声で、戦いの火蓋が切って落とされた。

「始めッ!! 」

ゴゼルはついに自身の腰に差した剣を抜いた。鞘に入っていても分かるほど光っていた剣は、その刀身を外に出した時、更に淡く光り輝いた。

「俺の相棒である、聖剣《エラメル》。こいつは俺の魔力を流すことで力を発揮する」

ゴゼルはその聖剣を構えた。

「こいつには他の剣にはない特殊な能力があってな。こいつは、魔力を流し始めてから3回光る。その3回目に剣を振り下ろすことで、一撃必殺の光波を放つんだ。俺はこの技でここまで楽に成り上がったのさ」

(......ん? )

「この技でお前も沈めてやるぜ」

(なんか......)

ゴゼルは剣に魔力を流し始めた。

「はぁあああッ!! 」

(この技......)

1、2、3回光る。

「おりゃあああああッ!! 」

ゴゼルは満を持して剣を振り下ろした。すると剣は地面を削りながら進む光波を放ち、ゼニアを殺しにかかった。

「ゼニアッ!! 」

選手出入口で待機していたカシュタは、ゼニアに向かって思い切り走った。しかし、少し遅かった。ゼニアは光波に飲み込まれ、見えなくなってしまった。いきなりあの技を使うとは思っておらず、助けるタイミングが遅くなってしまったのだ。

ゴゼルの聖剣から放たれた技。かつてそれを避けた者はおらず、対峙すれば必ず死ぬ。

彼がいるから、低級な魔族は迂闊に王国に手を出すことができず、結果的に平和につながっている。しかし自分が悪事をするにあたって障害となる人間も殺しているため、隊の人間からは恐れられている。

しかし表向きは情報操作や本人のうわべの顔があって、民想いの心優しく正義感に溢れた人物ということになっている。

「フフフ、ハハハハッ! カシュタ! やはり俺の勝ちだ!! 俺に挑んだあいつの愚かさが招いたことだ。悪く思うなよ! 」

カシュタは膝をついて絶望した。

守れなかった。光波で起きたあの土埃の中に、若い芽の体は残っているのだろうか。いや、あれだけの威力だったのだ。部位の一つも残っていないだろう。

「......クソッ!! 」

「フフ、さて、無駄なことに魔力を使ってしまったな。今日は早く帰るとするか」

闘技場に背を向け、選手出入口に向かっていくゴゼル。自分の部下たちが歓声をあげるはずが、少しざわついている。

「......どうした。俺を褒め称えるんじゃないのか? 」

部下はゴゼルなんかより、に注目していた。

「チッ......おい! 俺への歓声は......ッ!! 」

ゴゼルが振り返るとそこには、今自分が殺したはずの生意気な若者、ゼニアが土まみれになりながら立っていた。

そして、アイアンソードを構えながら少しの笑みをこぼして言った。

「避けやすすぎるぞ。お前の技!! 」

「な、なんだと......? 」

ゴゼルはだんだんとイラつき始めていたが、ゼニアはお構い無しにゴゼルの難点を次々と指摘する。

「攻撃の来るタイミングは丸わかり。光波だって、見切れるほど遅い。何より、その技を説明してしまったお前は、マヌケだッ! 」

ゼニアはアイアンソードの切っ先をゴゼルに向けて挑発した。

「て、テメェこの......」

するとゴゼルは、徐々に顔にピクピクと血管を浮き上がらせ、ついにブチギレた。

「く......クソ......クソがッ!! クソガキッ!! クソガキこの野郎ッ!!! 」

先ほどまでエリート隊長だったゴゼルは豹変し、剣を構えながら急にゼニアに向かって突進をしてきた。

「俺は最強だ! 最強なんだッ! 俺の技を避けられるやつなんて、この世にいちゃいけねぇんだッ!! 」

ゼニアは迎え撃つためにより深く構えたが、その前にカシュタが二人の間に降り立った。そして自身の得物であるハルバードでゴゼルの剣を弾き飛ばした。そしてゴゼルにハルバードを突きつけ、言い放った。

「勘違いをして思い上がるなよ。強いのは聖剣だ。お前じゃないッ!! 」

するとゴゼルは、意味がわからないほどの怒りを溜め、闘技場の地面である砂を握りしめ、叫びながらカシュタに投げつけ始めた。

「ドゥァッ! グアァッ!! ダァアッ!!! 」

見ていられないほど惨めで、浅はかで、往生際の悪い男の姿だった。

それを見てカシュタの後ろからゼニアが出てきて、ゴゼルの前に立った。そして

「うおおおおおらぁああああああッ!! 」

ゴゼルの顔面に思い切り拳をかました。ゴゼルは後方に吹っ飛んで、鼻血を出しながら意識を失った。

カシュタは、そんなゼニアの肩に手を置いて言った。

「ゼニア。君の勝ちだ」

その時、ゼニアの視界は明るく晴れた。転生してきて抱えていた不安が、一気に解消されたような気持ちだった。

ゴゼルをこらしめることによって、この国はより良い方向へ進んでいくだろう。しかしゼニアはまだ知らない。ゴゼルという人物がどれだけ多くの人々に信仰されていたのかを。
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