猫魔んま

まこる

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出会い

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僕の名前は摩度 猫子マタビ ニャンコ。名前の漢字で誤解されるけど、男です。
中学生なんですけど、結構いじめられてましてですね。まあ仕方ないと思いながら生活してたんです。

そしたらある日、事件が起きたんです。

「......」

いつも通り下を向きながら家に向かっていると、何かの鳴き声が聞こえてきた。耳を澄ませると、それは猫の鳴き声だった。

放っておけず、鳴き声から周囲を捜してみた。すると、排水溝から声がするのが分かった。

金属製の排水溝を非力なりに持ち上げ、中を覗いた。中にいたのは、泥だらけの猫だった。

「うわぁ、大丈夫かい? こんなに汚れて......」

幸い家は近くだったし、猫が嫌がる様子もないので、このまま両親が出張でしばらくいない家に帰り、洗ってやることにした。

-自宅-

風呂に連れていき、シャワーの温度を確認してから、優しく撫でながら泥を落としてやった。

「水......大丈夫なのかな? 」

普通嫌がるものだと思っていたが、むしろ目を細めて、気持ちよくなっているといったような様子だった。

洗っていて気付いたのだが、とても綺麗な毛並みだ。真っ白のような。白銀のような。それに、両目の色が違うようにもみえた。

「ふう、よし」

タオルの上に乗せ、わしゃわしゃと拭いてやった。ドライヤーもかけて、毛並みを戻した。

すると、今まで生きてきた人生15年間。その中で、一番驚きの出来事が起こった。

「ふう、気持ちよかったぁ。ありがとうございます! 」

「うぎゃあ!! 猫が......猫が喋った!! 」

口をパクパクと動かしながら、人間の言葉を喋っている。それにしても、声優のように可愛い声だった。

「私も、いつ喋ろうか悩んでいたんです。衰弱していたし......でも、こうしてちゃんとお礼が言えました! 」

「は、はあ」

摩度は、いつの間にか正座になって、その猫の話を聞いていた。

「改めて」

猫は綺麗に座り直した。

「私の名前はモキ。猫魔にゃんまと呼ばれる一族の一人......じゃなくて一匹です。助けて下さってありがとうございます。お礼に何かしたいのですが、何かさせてはもらえませんでしょうか? 」

なんてことだ。猫が目の前でお礼をすると言っている。摩度は名前で分かる通り、無類の猫好きだ。願いは決まっていた。

「あの、家にいてくれませんか? 」

「へ? そんなのでいいんですか? 」

「いいんです!! もっというなら」

摩度は合掌し、猫に頭を下げた。

「耳をモフモフした後に、体中わしゃわしゃして、締めに肉球をぷにぷにさせてもらえませんか? 」

「い、いいですけど......」

摩度、人間ではあるが、猫の表情を今、読み取ることができた。この顔は、後ろめたいような顔だった。

「な、なにか問題が? 」

「いえ、ないです......はい。精一杯頑張ります」

気になりはしたが、こんなに可愛くて健気で、しかも喋ることができる究極な家族がいたらと思うと、そういった考えはどこかに吹っ飛んでしまった。
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