双子の兄に全てを持って行かれ、家を追い出された俺を待っていたのは……

灰狼〜皐月〜

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139話〜空を照らす炎〜

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「ほ~。こりゃ見事だ」

 予定日の翌日にズレはしたが、祭りは無事開催された。
 組み立てられたやぐらは見事に燃え盛り、祭りを盛り上げる。
 その燃え盛る炎を見ながらロウエンが俺の隣で感心したように呟く。

 その視線の先、広場に組まれたヤグラの周りでは子ども達が踊っている。

「みんな楽しそうだな」

 ロウエンの言葉に首肯で返す。
 見てみればカナト達も楽しそうにしている。

「お前も今ぐらいは肩の力抜いて楽しんだらどうだ?」
「そうもいかないさ。一応俺は領主だからね」
「領主だからこそだ。お前が固い顔してたら、領民は緊張するぞ」
「そういうものなのか?」
「そういうものだ」

 俺の問いに僅かに微笑みながら返すロウエン。

「ま、できるだけ楽しめ。それが領民のためにもなる」
「だらしないって思われないか?」
「親近感が湧くとも言えるな」
「ロウエンにはまだまだ敵わないな」
「あぁ。負けるつもり無いからな」

 ロウエンの言葉に苦笑いと共に頷く。

「分かった分かった。今回は負けておくよ」
「今回も、じゃないのか?」
「あのなぁ……まぁ良いや。次は負けねぇからな」
「おう。楽しみにしているよ」

 俺の言葉にニッと口の端を持ち上げて笑うロウエン。
 そんな彼と別れて俺も祭りを楽しむ事にしたのだった。

 そんな俺に

「久しぶりだな。ハヤテ」

 背後からかけられた声に振り返る。
 そこにいたのは

「レイェスさん。お久しぶりです」

 フリジシア皇国のレイェスさん、その背後にはミラージュさんとカレンさんもいる。

「君の領主就任祝いに来たんだ。遅くなってごめんよ」
「レイェスったら早く行きたくて行きたくて仕方なかったのよね」
「確かに。ここ最近のレイェスは凄かったからね」
「おいおい。そんな事を言いに来たんじゃないだろう?」

 二人の言葉に呆れた様子でに苦笑いするレイェスさん。

「さて、今日は祭りらしいな。私達はここに来るのも初めてだし、案内を頼んで良いかな?」
「えぇ、もちろん。どうぞこちらへ」
「やった♪ お祭りお祭り♪」
「はしゃぐなミラージュ。貴族らしい振る舞いをだな」

 こうして俺は三人を案内。
 その過程で祭りも存分に楽しむのだった。

 ただ、その裏では……





「男はこの場で皆殺せ! 女はまだ殺すな。子どもは連れ帰り、新たな信徒にする!」

 聖勇教会の残党の手によって、カザミ村は燃えていた。
 その炎の勢いは凄まじく、夜空を明るく照らしていた。

 そんな彼らはアル達とも一戦交える事を想定しており、ある秘密兵器を連れて来ていた。
 その秘密兵器というのは

「竜騎兵隊、進め!」

 飛竜に跨った騎士達が、土竜の背に乗った騎士達が村になだれ込む。

 スティラがハヤテ達に話した竜装兵器。
 捕らえた竜に鎧を着け、術で強引に従え、敵を蹂躙する兵器として運用する、聖勇教会の黒い部分。

 その黒い部分から村民を守るために剣を持つアルとラウ。
 未来を見れるアルと結界を得意とするラウ。
 次にどこが攻め込まれるか。
 どこの結界を強化すればいいか。
 二人で連携しながら村民を守り、屋敷に避難させる。
 だが多勢に無勢。
 みるみる押されていく二人。

 目の前で男性が切り殺され、女性と子どもが捕らえられて連れ去られていく。
 なかには抵抗したせいで子の目の前で斬り殺される母親もいた。

 それを助けたくとも手が足りないせいで助けられない二人。

 そんななか、遂に土竜が結界を突き破った。
 土を掘り、岩を砕いて突き進む土竜にとってラウが作る結界も、岩のように固い何か。
 同じように掘り砕き、突き進むだけだった。

 幸い、結界はまだ二重に展開されているので屋敷まではすぐに到達されないだろう。
 だがラウがやられてしまえばその結界は即座に消滅する。
 ラウの体力が無くなっても同じだ。

 だからと言って、二人に退くという選択肢はなかった。

 民を守るのが騎士の務め。
 たとえ己が命が尽きる事となろうとも、目の前で家を焼かれた民が逃げてくるのであれば、彼らを外敵から守るのが役目だと。
 彼らは心に決めて剣を握る。
 魔術を放って土竜をひっくり返し、剣を振るって飛竜の翼を斬る。

 もう何匹屠っただろうか。
 もう何人退けただろうか。

 疲労で膝が震える。
 愛用の剣を重く感じる。

 もう限界だった。
 ただでさえ消耗の激しい未来視、集中力の必要となる結界展開。
 それを使いながらの戦闘が簡単なはずがなかった。

 二枚目の結界に土竜が突っ込み、ヒビが入る。
 余力の少ないラウが展開した結界はすでに脆く、強度が明らかに低下していた。

「っ、このままじゃ!」

 逃げて来た人達を守れないと思ったラウが叫ぶ。
 が、それを聞いてアルは

「いや、時は稼いだ!」

 まるで、ここから逆転だと言うように返す。

「稼いだって、いったいどういう」

 どういう意味だ、とラウが尋ねた時だった。

「オラァ! 騎士だったら正々堂々戦えやぁ!!」
「高そうな鎧だなぁ。全部奪って売り飛ばしてやるぜ!」
「トカゲに乗らねぇと戦えねぇのか! この腰抜けがぁ!!」

 エルード村にいるはずの元野盗達がカザミ村に現れ、村を襲っていた騎士達に襲いかかったのだ。
 実は、運良くカザミ村から逃げ出した者がエルード村まで走り、事情を話して助けを求めたのだ。
 その話を聞くなり彼らは立ち上がり、カザミ村まで来てくれたのだ。

 そしてその手には野盗時代の名残か、愛用の斧や棍棒か握られている。
 中には石槍や木刀のような物を手に騎士達に襲いかかる者もいる。

 そして彼らを率いるのは

「俺達に第二の人生をくれた人の故郷……守れずして男じゃねぇ!!」

 元騎士のリーダー。
 肩に乗せるように斧を担ぎ、部下達に指示と言えない指示を出す。
 その内容はただ一つ。

「ここから先、誰一人としてやらせんじゃねぇぞ!!」

 村民を守れ。
 ただそれだけだった。

 その言葉に声を合わせて応じる部下達。

 そこから夜のカザミ村で、聖勇教会残党と元野盗達による乱戦が繰り広げられた。





「酷い有様だな」
「いや、酷いなんて言葉じゃ表せないレベルだよ」

 翌朝、聖勇教会の残党を退けたアル達は村の状況を確認していた。
 村の家の大半は焼かれ、残った家も無事とはいかなかった。

「怪我人は屋敷で手当てをさせているが……人も物資も足りないな」
「俺はすぐに城へ向かうよ。助けを呼んでこないとな」
「頼んだぞラウ」
「あぁ。すぐに戻るよ」

 そう言ってアルと別れるラウ。

「アルさん。悪かったな……俺達がもう少し早く来れれば」
「いや。来てくれてとても助かったよ。だからそんな顔をしないでくれ」
「……すまねぇ」

 アルの言葉に、元野盗リーダーは俯く。
 村では無事だった男性と元野盗達が瓦礫を片付けたり、遺体を弔ったりしている。
 それを見てからもう一度アルは口を開く。

「……いや、貴方達がいなければもっと多くの人が死んでいた。その中には私の妻や子もいたかもしれない。それを貴方達が守ったんです。本当に、ありがとうございました」

 そう言って頭を下げる。

「いや、アンタ達が持ちこたえてくれたからだ。村の人を守ったのは、アンタらだよ」

 それを見て元野盗リーダーはアルの肩に手を置く。

「ありがとうございます。そう言っていただけると、胸が軽くなります……」

 元野盗リーダーの言葉に頭を上げ、表情を緩めるアル。
 だがその時だった。

「アルさん、少し良いですか」

 遺体を弔う作業をしていた男性がアルを呼びに来たのだ。
 何か問題があったのだろうかと思い、元野盗リーダーと共に彼について行くアル。
 彼が連れて行かれた先にあったのは……

「彼女が……」
「……これは」

 見せられたのは一人の女性の遺体。
 だがそれは

「確かハヤテさんとカラトさんの」
「はい。二人の」

 ハヤテとカラトの母親だった。
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