殖罪

本谷紺

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はじめに

導入

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 あなたは夢を見ている。

 ひどく暗い。ほんのわずかな視界の揺らめきだけが、あなたの瞼が開いていることを証明している。

 声が聞こえた。

 細く掠れた、幼い少女の声。

 あなたの意識は、途切れ途切れの言葉をかろうじて拾い上げる。

 さむい。

 くらい。

 さみしい。

 ねぇ。

 おねがい。

 あなたは気付く。声は、あなたへと語りかけている。

 おねがい。わたし、てんごくにいきたい。

 たすけて。

 視界がゆらめく。どこか遠くから届くほんのわずかな光が、あなたの眼前におぼろな輪郭を浮かび上がらせる。

 あなたの前に静かに揺蕩うそれは――人間の頭蓋骨だった。



 あなたは目を覚ます。
 そこはリビングルームだった。
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