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第二章 : 夜のしじまのカーテンコール
コンシェルジュとして
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「……それでは、退去手続きを取らせて頂きますので、こちらの書類に記入の上、ご返送ください。お家賃の方は、日割り計算をさせて頂きますので、また後日ご連絡致しますね」
私は笑顔で『今まで通り』を貫いた。
YU-MA(ユウマ)さんも、そんな私の心中を察してくれたのか、落ち着いた態度で応じてくれる。
「部屋に置いてある荷物、殆どないから、これで持って行くね」
彼はキャリーケースを持って自室のある二階へと静かに階段を登って行ったかと思うと、荷物をすぐに詰め終わったのか、エントランスに、ごく僅かな時間で戻って来た。
「じゃあ、環ちゃん。俺、行くね。本当にお世話になりました。こんな形になってしまったけど、俺、ルミエールの皆さんと出会えて本当に良かった」
彼は深々とお辞儀をすると、シャっと音が出そうな位の勢いで背筋を正し、オーバーサイズの黒シャツの裾を両手に持ち、カーテンコールに応える演者のポーズの様におどけると、私に満面の笑みを向ける。
私は思わずプッと吹き出してしまう。
滲んだアイラインがピエロにも似た笑顔と全身黒のワントーンで纏めたお洒落なコーディネートのギャップが凄い。
飾らない笑顔は、ルミエールで見せる何時ものYU-MA(ユウマ)さんのものだっだ。
「佐々木様、ルミエールにお越し頂き誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
「……やっぱり環ちゃんの笑顔、好きだな。んじゃね!」
そう言うと彼はカートの音を立てない様、手でそっと持ち上げて扉を開き、月夜の闇に紛れて行った。
――私は彼を追いかけなかった。
きっと泣いてしまうから……
涙の代わりに、精一杯、深々とお辞儀をする。
静けさを再び取り戻したエントランスから、ヒールの音を響かせない様に階段を登る。
自室へと戻る途中、長谷川様の部屋から少し明かりが漏れているのが見える。
誰かの部屋の明かりがこんなにも温かく感じられたのは、これが初めてだった。
私は笑顔で『今まで通り』を貫いた。
YU-MA(ユウマ)さんも、そんな私の心中を察してくれたのか、落ち着いた態度で応じてくれる。
「部屋に置いてある荷物、殆どないから、これで持って行くね」
彼はキャリーケースを持って自室のある二階へと静かに階段を登って行ったかと思うと、荷物をすぐに詰め終わったのか、エントランスに、ごく僅かな時間で戻って来た。
「じゃあ、環ちゃん。俺、行くね。本当にお世話になりました。こんな形になってしまったけど、俺、ルミエールの皆さんと出会えて本当に良かった」
彼は深々とお辞儀をすると、シャっと音が出そうな位の勢いで背筋を正し、オーバーサイズの黒シャツの裾を両手に持ち、カーテンコールに応える演者のポーズの様におどけると、私に満面の笑みを向ける。
私は思わずプッと吹き出してしまう。
滲んだアイラインがピエロにも似た笑顔と全身黒のワントーンで纏めたお洒落なコーディネートのギャップが凄い。
飾らない笑顔は、ルミエールで見せる何時ものYU-MA(ユウマ)さんのものだっだ。
「佐々木様、ルミエールにお越し頂き誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
「……やっぱり環ちゃんの笑顔、好きだな。んじゃね!」
そう言うと彼はカートの音を立てない様、手でそっと持ち上げて扉を開き、月夜の闇に紛れて行った。
――私は彼を追いかけなかった。
きっと泣いてしまうから……
涙の代わりに、精一杯、深々とお辞儀をする。
静けさを再び取り戻したエントランスから、ヒールの音を響かせない様に階段を登る。
自室へと戻る途中、長谷川様の部屋から少し明かりが漏れているのが見える。
誰かの部屋の明かりがこんなにも温かく感じられたのは、これが初めてだった。
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