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わたしを倒す旅の四歩。
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騎士の怪我も完治して、再び魔族領目指して旅立ったわたしたち。
色々な村や街を点々とまわりながら、魔物の脅威から人々を救い、最終的には魔王をも倒して人間の敵をうち滅ぼすんだって。
バカみたいで面白いよね。本当に笑っちゃう。
できるわけないのに。
「ねぇタイチョー、うっとおしいから殺していい?」
横を歩くタイチョーを見上げて聞いてみる。
町に来て歩いてたら、後ろからチョロチョロと小さな影がついて来るのだ。
気が散るよー。
「ダメだ」
「えー」
邪魔だから、サクッと殺したいのに。
「儂らの仕事は買い物だ。殺すことじゃない」
「むー」
立ち寄った町で、食糧などの必需品の買い足し係に任命されたの。
けど、こんなうっとおしいのがついて来るなんて聞いてないよ。
「だが、確かに気にはなるな。よし」
タイチョーがニヤリと笑った。
極悪顏だね。ステキ。
「おい、お前ら!儂らに何の用だ」
後ろを振り返り仁王立ちして、問いかける。
タイチョーは体が大きいから威圧感がすごいね。
くっついて来ていたのはガリガリに痩せた小さいコドモ二人だった。
ソレは震えながら、でもタイチョーを睨みながら口を開いた。
「これ買ってください」
骨みたいな手でソイツらが握りしめてたのは、石ころだった。
まるでカビが生えたように、所々に緑や青や赤の色のついた石。
「石なんていらないよ」
甘くないし、食べられないもん。
全く興味が持てないよ。なんでこんなの売っているの。
「魔石か?いや、これは魔石の成り損ないだな」
タイチョーはコドモの手を覗き込んで呟く。
「タイチョー、魔石って何?」
「ん?魔石っていうのは石に魔力が篭ったものだ。自身に魔力がなくても魔法が使えるようになる。こんな風に、石が鮮やかに色付いてるのが特徴だな。だが、これは石の一部しか色付いてないから魔石の成り損ないだな」
ふーん。そんなのもあるんだー。
「これは何に使えるの?」
「何にも使えんな。魔石じゃないから、これに入ってる魔力程度では魔法は使えん」
そんな使えないものなのに売ってるんだ。変なの。
わたし達の会話を聞いて、コドモ達は項垂れる。
「だが、買おう」
タイチョーが堂々と言い放つ。
その言葉にコドモの一人は信じられない表情を浮かべ、一人は嬉しそうに目を輝かせた。
使えないのに、タイチョー買うんだね。
買ってどうするの。
石の代わりに貰った小銭を大事そうに抱えてコドモ達は去って行った。
「それ、どうするの?」
買った小さな石を指差す。
「これか?カーリナなら使い道を知ってるかもしれないからな。あいつに渡すさ」
「魔法使いでも使えなかったら?」
タイチョーは苦笑して、大きな手のひらの中で小石を転がした。
「お守りにでもするさ」
お守りって意味も価値もないもののことだよね。確か。
「というか、ラヒー。お前なんでカーリナのこと魔法使いって呼ぶんだ?フランクもアルのことも名前で呼ばないだろ」
なんでって、
「間違ってないでしょ?」
何かおかしい?
あの女は魔法使いだし騎士も騎士でしょ。ほら、合ってるよ。
「間違っちゃないが、名前で呼んでやれ。カーリナはきっと喜ぶぞ」
「名前だと喜ぶの?」
人間って変。どっちで呼んでも、それが指し示す相手は変わらないのに。
「ああ。前に名前で呼んでくれないってショボくれてたしな。やっぱりまだ打ち解けてくれないのか、とか言って」
「名前だと打ち解けてるの?」
おかしなルールだね。魔族領にはないや、そんなの。
「少なくとも職業で呼ぶよりは親しみが篭っているだろ」
「シタシミ……」
二人並んで歩く。
タイチョーは遠くを見ながら語り、わたしはタイチョーの言葉を小さく繰り返した。
だって知らない単語なんだもん。
「なんだかんだ儂らは城で、この旅に出る前から顔を合わせる機会があった。儂はあいつらがまだラヒーくらいの時から知ってるし、アルとフランクは幼馴染同士だ。それにカーリナが混じることもたまにあった。
だが、ラヒーは違うだろ。ラヒーだけは初対面で参加した。しかもまだ子供だ。だからカーリナは気にしてるんだ」
「ふーん」
相槌を打つけど、タイチョーの台詞は右から左に流れた。
長いよ。シューチューリョクが切れちゃった。わたし、飽きっぽいんだよ。
でも、とにかく。
「名前で呼べばいいんだね!」
人間のルールはよく分からないものだらけだけど、楽しい遊びには決まりが多いのはお約束だよね。
「戻ったら呼んでやれ」
「うん」
この遊びのために、わたし頑張るよー。
そして。
みんなのところに戻って、魔法使いの名前を呼んだら勢い良く抱きついてグリグリされた。
魔法使い、こわい。
だから、しばらく名前は呼ばないことに決めたの。
色々な村や街を点々とまわりながら、魔物の脅威から人々を救い、最終的には魔王をも倒して人間の敵をうち滅ぼすんだって。
バカみたいで面白いよね。本当に笑っちゃう。
できるわけないのに。
「ねぇタイチョー、うっとおしいから殺していい?」
横を歩くタイチョーを見上げて聞いてみる。
町に来て歩いてたら、後ろからチョロチョロと小さな影がついて来るのだ。
気が散るよー。
「ダメだ」
「えー」
邪魔だから、サクッと殺したいのに。
「儂らの仕事は買い物だ。殺すことじゃない」
「むー」
立ち寄った町で、食糧などの必需品の買い足し係に任命されたの。
けど、こんなうっとおしいのがついて来るなんて聞いてないよ。
「だが、確かに気にはなるな。よし」
タイチョーがニヤリと笑った。
極悪顏だね。ステキ。
「おい、お前ら!儂らに何の用だ」
後ろを振り返り仁王立ちして、問いかける。
タイチョーは体が大きいから威圧感がすごいね。
くっついて来ていたのはガリガリに痩せた小さいコドモ二人だった。
ソレは震えながら、でもタイチョーを睨みながら口を開いた。
「これ買ってください」
骨みたいな手でソイツらが握りしめてたのは、石ころだった。
まるでカビが生えたように、所々に緑や青や赤の色のついた石。
「石なんていらないよ」
甘くないし、食べられないもん。
全く興味が持てないよ。なんでこんなの売っているの。
「魔石か?いや、これは魔石の成り損ないだな」
タイチョーはコドモの手を覗き込んで呟く。
「タイチョー、魔石って何?」
「ん?魔石っていうのは石に魔力が篭ったものだ。自身に魔力がなくても魔法が使えるようになる。こんな風に、石が鮮やかに色付いてるのが特徴だな。だが、これは石の一部しか色付いてないから魔石の成り損ないだな」
ふーん。そんなのもあるんだー。
「これは何に使えるの?」
「何にも使えんな。魔石じゃないから、これに入ってる魔力程度では魔法は使えん」
そんな使えないものなのに売ってるんだ。変なの。
わたし達の会話を聞いて、コドモ達は項垂れる。
「だが、買おう」
タイチョーが堂々と言い放つ。
その言葉にコドモの一人は信じられない表情を浮かべ、一人は嬉しそうに目を輝かせた。
使えないのに、タイチョー買うんだね。
買ってどうするの。
石の代わりに貰った小銭を大事そうに抱えてコドモ達は去って行った。
「それ、どうするの?」
買った小さな石を指差す。
「これか?カーリナなら使い道を知ってるかもしれないからな。あいつに渡すさ」
「魔法使いでも使えなかったら?」
タイチョーは苦笑して、大きな手のひらの中で小石を転がした。
「お守りにでもするさ」
お守りって意味も価値もないもののことだよね。確か。
「というか、ラヒー。お前なんでカーリナのこと魔法使いって呼ぶんだ?フランクもアルのことも名前で呼ばないだろ」
なんでって、
「間違ってないでしょ?」
何かおかしい?
あの女は魔法使いだし騎士も騎士でしょ。ほら、合ってるよ。
「間違っちゃないが、名前で呼んでやれ。カーリナはきっと喜ぶぞ」
「名前だと喜ぶの?」
人間って変。どっちで呼んでも、それが指し示す相手は変わらないのに。
「ああ。前に名前で呼んでくれないってショボくれてたしな。やっぱりまだ打ち解けてくれないのか、とか言って」
「名前だと打ち解けてるの?」
おかしなルールだね。魔族領にはないや、そんなの。
「少なくとも職業で呼ぶよりは親しみが篭っているだろ」
「シタシミ……」
二人並んで歩く。
タイチョーは遠くを見ながら語り、わたしはタイチョーの言葉を小さく繰り返した。
だって知らない単語なんだもん。
「なんだかんだ儂らは城で、この旅に出る前から顔を合わせる機会があった。儂はあいつらがまだラヒーくらいの時から知ってるし、アルとフランクは幼馴染同士だ。それにカーリナが混じることもたまにあった。
だが、ラヒーは違うだろ。ラヒーだけは初対面で参加した。しかもまだ子供だ。だからカーリナは気にしてるんだ」
「ふーん」
相槌を打つけど、タイチョーの台詞は右から左に流れた。
長いよ。シューチューリョクが切れちゃった。わたし、飽きっぽいんだよ。
でも、とにかく。
「名前で呼べばいいんだね!」
人間のルールはよく分からないものだらけだけど、楽しい遊びには決まりが多いのはお約束だよね。
「戻ったら呼んでやれ」
「うん」
この遊びのために、わたし頑張るよー。
そして。
みんなのところに戻って、魔法使いの名前を呼んだら勢い良く抱きついてグリグリされた。
魔法使い、こわい。
だから、しばらく名前は呼ばないことに決めたの。
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