三銃士レストラン

平野ポタージュ

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伝説のレストラン

料理ができない

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料理音痴と言ったけど、本当は誰よりも得意と胸を張って言える────あたしの唯一の取り柄。

でもそれは………、とある事件をきっかけに……




『日下部さんが、私のレシピを盗作したんです!!』

ヒソヒソ
"えー!?日下部さんが!?"

ヒソヒソ
"嘘……信じらんない"

ヒソヒソ
"真面目そうなのに意外と悪どい事するんだねぇ……"

ヒソヒソ
"じゃあ今までの料理も全部……────


「違う!!あたしは盗作なんてしてない!!」

『日下部さん───じゃあその証拠は何処にあるの?』


あたしの料理はあたしにしか作れない。
同じ料理でも、作り手が違うだけで
味と雰囲気は全然違うのだから

『盗作の料理じゃなぁ~?』

『パクリで美味いって言われて嬉しいのか?』

『すげぇ根性してるな』

それ以来、あたしは"料理"が出来なくなってしまった───────

出来ないんじゃない、辞めてやったのよ

本当は卵かけご飯以上のハイスペック料理なんておちゃのこさいさいだけど……

『ごめんね……、ひまわり───』

あの時の"親友"の顔が、脳にこびり付いて離れない。
嘘つきで、貪欲で、ずる賢くて……
平気で自分の幸せの為ならば、人を利用出来る女。
そして何がタチが悪いって、被害者面する所よね……

親友の一声で、あたしは一気に悪者になってしまった。彼女の影響力は凄いのだ。

勿論そこからの学校生活は楽しいもんじゃなくて、うっかりワサビを口にしてしまったかのような泣く泣くの毎日を過ごしていた。


もう………思い出したくもない

蓋をした───悲しくて腹立たしい過去は、こんな世界に迷い込んだお陰で、中途半端に開いていたのかもしれない

だからといって、食べる事は嫌いじゃないし

料理をする事も本当は──────

「ッ!……う……、嫌な事思い出しちゃった」

「卵と白米…北の方から取り寄せた、出汁を存分に使用した醤油になります。」

スイがテーブルの上に材料を丁寧に並べる。
ほかほかの白米から幸せの香りがする……

卵を割ろうと手に取ると、あの時の記憶がフラッシュバックして手が震えた。

「───ごめんなさい!!…っやっぱりあたしにはできない!!」

あれ……目から涙が……
駄目だ……駄目だ!!あたし……まだ……

「帰ります……」

「は?、お前何言って…」

「帰ります!!」

「何処へ帰るのです?」

「自分の居た世界です!!───あたし、もう料理はしないって決めたの!! 」

「……──それは、君の本心なのかい?」

「…貴方たちみたいに…、恵まれた環境で料理を作っている人達には……あたしの気持ちなんか分かりませんよ!!」

「あ"あ"!?恵まれた環境だ!?───勝手に決めつけてんじゃねェよッ!!!」

エンの怒声で我に返るひまわり。
なんて心にもないことを言ってしまったのだろう…と、後悔をした。

「…ごめん…なさい───」

無意識に店の外へと飛び出し、そのまま森に向かって走り出していった。

ポタ───ポタ……

「やだぁ~!雨!?」

「今日降るなんて聞いてなぁーい!」

窓の外を見ると雨が降り始め、スイは女性客全員に傘を持たせて帰るように促す。

「えぇ~!?スイ様の紅茶飲みたいのにぃ!」

「そうですよぉ~!」

「ふふ、今日はもうお帰り下さい。雨が、酷くなる前に……」

言葉は柔らかい口調だが、眼差しはとても冷酷な物だ。
でもそれに気付いているのは、ソウとエンくらいだろう……───
渋々帰って行く女性客を丁寧に見送りながら、スイは、ポツリと吐露をする。

「思い過ごし……だったのでしょうか」

「……あんな奴……──例えスパイスの持ち主だったとしても、こっちから御免だぜ!!」

「………彼女から────」

「はい?」

「料理が好きって気持ちと……──それ同等のトラウマを感じられた……。過去に……何かあったんだろうね」

「……エン───ちゃんとレディに謝罪して下さいね」

「なっっっ!!?何でオレだけが悪いみたいな空気感になってんだよ!?」

「貴方の怒声が、彼女の心にとどめを刺したのです。本当に、短気ですね……───もう少し冷静さを保てないのですか?」

「う、うるせェ!!!怒」

「とりあえず、彼女を迎えに行ってくるよ」

「気を付けて下さいね、今日の森は……ご機嫌斜めの様子ですよ」

「あはは、僕は"森と仲が良い"から大丈夫だよ?──それじゃあ、行ってくる」

緑色の傘を差し、ソウはひまわりを追いかけ
森へと向かった。

「……不味いですね」

「何がだよ?」

「エン、かお分かりですか?」

「な、何周目ったって………」

「雨が……だと、仰ってるんですよ」

「それって……」

「今回、もし彼女が女神でなかったら、私達は完全にお終いです。」

「……潮時って言いたいのかよ」

「……ですが、まだ諦めてはいません……」

本降りとなった雨を窓から眺めながら、スイは手を組んで祈る

(どうか……)


今度こそを止められますように……
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