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伝説のレストラン
魚が食べれない少年4
しおりを挟む「……で、あちらの隅でこちらをじとりとした目で見ているあの変質者はなんですか?」
店の隅っこでスイをじとりと睨み付けるというか……───今にも泣き出してしまいそうな……。そんな視線を送るのはボラさんだ。
きっと、魚料理を食すと言ったスイに対しての怒りの視線であろう。
「え、えーと……───ボラさん!そんな所でジメジメしないで!キノコ生えて来ちゃうから!(あ、でも…使えそうかもこのキノコ…)」
「総長!!どうして貴方はそんなに強情なのですかッ!!!」
「ほお……、私をそんな風に思ってたのか?──ボラ……」
「アッ……────そんな風に見つめられたら……って!!イカンイカン!!。…俺は、貴方が……心配なのです。また…あんな辛い目にあってしまうんじゃないかって……」
「…ボラ───私に情けをかけているようでしたら、それは必要無い。素晴らしい魚料理を、あんな穢らわしい過去のせいで台無しにするのは……勿体ないと思いませんか?」
「で、でも!!」
「私は死にません───…少なくとも、魚ではね」
「スイ、総長……」
「今度こそは……」
「ってな訳で、作ってみようか!!」
「鱈が手に入ったからこれを使ってみようか」
ソウが冷蔵庫から、予め捌いておいた鱈を取り出す。
「ええ!?鱈の旬って、冬だよね?。今は梅雨だから……この世界は6月とかだと思うけど…」
「マナ国には"四季の海"っていうのがあってね、そこには、春夏秋冬それぞれ旬の魚が生息しているんだ。ちゃんとその季節にあった海温が4つに仕切られているから、いつでも季節の魚が獲れるんだよ」
「なんと!!じゃあ、秋刀魚とか……太刀魚とかも食べ放題!?じゅるり…」
「ふふっ……、貴女なら、あの海に入り浸りでしょうね」
「釣った魚とかその場で丸かじりしそうだしな!」
「そ、そんな事しないって!!ちゃんと焼くもの!!───とにかく!アクアパッツァ作るよ!」
鱈のアクアパッツァの作り方
フライパンにオリーブオイルとニンニクのみじん切りを入れて、予め捌いておいた鱈を両面塩コショウした物を焼いていく!
ジューと芳ばしい香りがしてくるね…!
鱈を引っくり返して、両面焼いていくよ!
事前に砂抜きしたアサリとプチトマト(半分カットにした物)マッシュルーム(しめじでも美味しい!)ピーマン・パプリカなどを入れて、白ワインとお水を入れて10分煮込んでいくよ!
「良い匂い~!!」
お皿に盛って、最後に刻みバジルとパセリを満遍なく散らして
「美味しくなーれ、美味しくなーれ……」
女神のスパイスをかけたら
「完成!愛情たっぷりっ鱈のアクアパッツァよ!」
「うん…、良い香りですね…。ニンニクの芳ばしい香り……───食欲をそそります」
「ひまわり、また腕を上げたね~。ニンニクもちゃんとみじん切り出来てるし…野菜も食べやすい大きさに切れてる」
偉い偉いと、ソウはひまわりの頭を撫でる。
「でも、魚はまだ捌けないし……──ソウとエンジが手伝ってくれて助かったよ!」
「ま、お安い御用だぜ」
「スイ、ボラさんも……食べてみてくれるかな?」
「お、俺もですか?!」
テーブルに2皿盛り付けたアクアパッツァを置く。スイが"隣に座れ"と椅子をトントンと叩いた。渋々……いや、ご主人様に構って貰えるような大型犬のように、ボラさんは隣にドスンと座る。
「いただきます……」
2人にとってトラウマと言っていい、出来れば二度と口にはしたくはなかったであろう料理が、今目の前に並んでいる。
先行はボラさんが、大胆にフォーク一刺しで鱈を口に運んだ。
「!────……お、美味しい!」
ニンニクの風味……魚の出汁が、優しく舌先に溶けて……
「舌を抱擁されているような……なんて言うんでしょうか……物凄く幸せです…」
「ほ、ホントに!?」
「はい……。スイ総長……、これが…本当のアクアパッツァです…!」
「……本当の…」
ナイフとフォークを使って、食べやすい大きさにカットしようとするが、スイの手は微かに震えていた。ひまわりはその手をそっと優しく両手で掴み
「大丈夫だよ。魚はね、とっても美味しいんだよ。」
「はい……」
ひまわりはスイの鱈を食べやすい大きさにカットして、フォークに刺す。
それを、スイの口許に近付けて……
「はい、口開けて」
「なっ……!?───」
「いいから!食べさせてあげる」
「そ、そんな事して頂かなくても……」
「ちょっと!!俺の総長に何してくれてんですかッ!!?」
「俺の……総長?───」
「そうか……ボラくんはスイの事が好きだったんだね!」
アクアパッツァ─────
どんどん塗り替えられていく過去の記憶
ぱくり
と、口に入れられた鱈の白身部分には、ニンニクとオリーブオイルのマリアージュが舌先で踊り狂い、塩コショウで味付けをした上での鱈の旨味が全身に拡がった。
「ね?───美味しいでしょ?」
本来、母親という者は
このような愛に満ちた眼差しを向けてくれるのでしょうか?
今目の前で笑う女性は、向日葵の花のように
優しく、力強い意志と希望に溢れていた
「美味しいです」
「そ、総長が……───魚を…食べた?」
「ボラ、これで分かってくれるか?。私は……、私のように犠牲になって生まれてきた者達が……この国の人々が平和に生きれる世界を作りたい。それに必要なのは、食戦争だ」
「……ッ───総長……俺は、俺は───!!」
三銃士のスイではなく、殺水アクアパッツァの総長のスイとして生きようとした────
それは父と母に直ぐに知られ、国の兵士を態々連れて、私を捕らえに来た。
その時にボラ……お前は必死に、私を守ろうとしてくれたな
「ありがとう───お前が居たから、三銃士として向き合えた。感謝している」
「総長……ッ」
ボラの大粒の涙を、スイは指先で救う。
(さよなら……───哀しみを与えた過去)
こうして、スイは魚を食べれるようになりました。暫くのランチメニューは魚料理で、他の皆が魚恐怖症になりかけるくらい……
「うん…、美味ですね…」
(でも、いつもクールな彼が幸そうに笑っているのだから……まあ、いっか)
「ひまわりさん」
「なに────」
チュ──────と、頬に温かい物が触れた。
それは本当に一瞬……一瞬すぎて……
「ふふっ、貴女って…案外間抜け面なんですね───」
頬を抑えて、ワナワナと震える。
そう……だって──────
(ほっぺに……キス……された?)
魚が食べれない少年 終
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