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痩身・後宮篇
常夏の野望
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ダダダダダ!!!────と、衛兵達の走り回る音が響く。
「賊が宮廷に忍び込んだぞ!!!」
「外の番人は何をしておるのだ!!」
「さっき駆け付けたら失神しておりました…!」
「クソッ……!今は陛下達の身の安全が最優先だ!!!」
ヒュンッ──────
一本の棍棒が衛兵達の鳩尾に命中した。呻き声も上げる暇もなく、衛兵達は次々と倒れていく。
ドサッ……ドサドサッ────
「オホオホオホ……若いもんは威勢がええのぉ……。さて……赤蛇は上手く連れ出せておるか……zzz」
この老人─── 国一番の盗賊集団・ 赤楝蛇の頭を務める八罫……。
とある僧侶に老人の姿に変えられてしまい、以降元の姿に戻る為に、この男も美豚を捜し求めていた。
そして……遂に、この男の望みが叶おうとしているのであった────────
。
。
。
謁見の間にて────
「揃いも揃って腑抜けた面しやがって……──平和ボケとはぁ、いいご身分ですな」
「お前は……赤龍」
「 火龍果国を守護する貴方が…、何故この様な真似を?」
「赤龍……!?」
グッギョルゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!
化物の雄叫び若しくは鼾の様な腹の虫の声にその場に居た者は全員崩れ落ちた。
「ちょっと神美!!この非常事態だってーのに、腹を空かせる馬鹿が何処に居るんだよ!?怒」
「そんなに空腹だったんですか………」
「あはは…、い、いやあ~その……ヤマモモにソックリだったから……つい……」
「誰がだよ!」
「あの赤龍って言う人が───」
ブォンッ!!!────────
それは本当に一瞬であった。
神美の身体が宙に浮き、気付くと視点が満天の星と巨大な満月で埋め尽くされたのだ。
赤い龍──赤龍の背に乗せられ、物凄い勢いで上空を舞う。
「うぎゃあああ!?おちおちおち落ちるーーーっ!?」
しかし神美が振り落とされないように赤龍は姿を人間に再び変えて、神美を担いだ────が……
ドシャリ!!
「っ……痛ってぇ……」
「わああああ!?だ、大丈夫……?」
神美の重さに耐えきれずに地面に滑り転んだヤマモモに似た青年───しかし、神美には怪我をさせないように庇っているように見えたのだ。
恐る恐ると駆け寄ると、むくりと無言で立ち上がるが、鼻血を垂らしながらそのまま再びまた倒れ込んでしまった。
「ヤ、ヤマモモさん!!」
「………次…その名で呼んだら……殺、す」
「ど、どうしよう……だ、誰かーーーーーッ!!!!」
運が悪い事に自分が今現在いる場所が、人気の無い森の中である事に気付いてしまった───
必死に叫ぶと、シャラン……シャラン……と、何かの音が聞こえる。
シャラン───シャラン────
段々と音が大きくなるにつれて、人の気配も感じた。
「やあやあ、お嬢さん!───こんな夜更けにこんな森で、何をしているのかな?」
シャラン!───────
「ええと……この棒って……」
「錫杖のことかい?」
「そう!それそれ!────……って事は……貴方はお坊さん?」
雲に隠れていた月明かりで、僧侶の顔が照らされた。
すると───僧侶とはかけ離れた風貌をしており、黒い眼帯をした隻眼の青年が錫杖を片手に柔らかい笑みを浮かべていた。
「賊が宮廷に忍び込んだぞ!!!」
「外の番人は何をしておるのだ!!」
「さっき駆け付けたら失神しておりました…!」
「クソッ……!今は陛下達の身の安全が最優先だ!!!」
ヒュンッ──────
一本の棍棒が衛兵達の鳩尾に命中した。呻き声も上げる暇もなく、衛兵達は次々と倒れていく。
ドサッ……ドサドサッ────
「オホオホオホ……若いもんは威勢がええのぉ……。さて……赤蛇は上手く連れ出せておるか……zzz」
この老人─── 国一番の盗賊集団・ 赤楝蛇の頭を務める八罫……。
とある僧侶に老人の姿に変えられてしまい、以降元の姿に戻る為に、この男も美豚を捜し求めていた。
そして……遂に、この男の望みが叶おうとしているのであった────────
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謁見の間にて────
「揃いも揃って腑抜けた面しやがって……──平和ボケとはぁ、いいご身分ですな」
「お前は……赤龍」
「 火龍果国を守護する貴方が…、何故この様な真似を?」
「赤龍……!?」
グッギョルゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!
化物の雄叫び若しくは鼾の様な腹の虫の声にその場に居た者は全員崩れ落ちた。
「ちょっと神美!!この非常事態だってーのに、腹を空かせる馬鹿が何処に居るんだよ!?怒」
「そんなに空腹だったんですか………」
「あはは…、い、いやあ~その……ヤマモモにソックリだったから……つい……」
「誰がだよ!」
「あの赤龍って言う人が───」
ブォンッ!!!────────
それは本当に一瞬であった。
神美の身体が宙に浮き、気付くと視点が満天の星と巨大な満月で埋め尽くされたのだ。
赤い龍──赤龍の背に乗せられ、物凄い勢いで上空を舞う。
「うぎゃあああ!?おちおちおち落ちるーーーっ!?」
しかし神美が振り落とされないように赤龍は姿を人間に再び変えて、神美を担いだ────が……
ドシャリ!!
「っ……痛ってぇ……」
「わああああ!?だ、大丈夫……?」
神美の重さに耐えきれずに地面に滑り転んだヤマモモに似た青年───しかし、神美には怪我をさせないように庇っているように見えたのだ。
恐る恐ると駆け寄ると、むくりと無言で立ち上がるが、鼻血を垂らしながらそのまま再びまた倒れ込んでしまった。
「ヤ、ヤマモモさん!!」
「………次…その名で呼んだら……殺、す」
「ど、どうしよう……だ、誰かーーーーーッ!!!!」
運が悪い事に自分が今現在いる場所が、人気の無い森の中である事に気付いてしまった───
必死に叫ぶと、シャラン……シャラン……と、何かの音が聞こえる。
シャラン───シャラン────
段々と音が大きくなるにつれて、人の気配も感じた。
「やあやあ、お嬢さん!───こんな夜更けにこんな森で、何をしているのかな?」
シャラン!───────
「ええと……この棒って……」
「錫杖のことかい?」
「そう!それそれ!────……って事は……貴方はお坊さん?」
雲に隠れていた月明かりで、僧侶の顔が照らされた。
すると───僧侶とはかけ離れた風貌をしており、黒い眼帯をした隻眼の青年が錫杖を片手に柔らかい笑みを浮かべていた。
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