爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

護る為に

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白梨はくり国の宮廷に一人の仙女が舞い降りた。

杏色の美しく長い髪────桃色の煌めく羽衣に仙女の神秘な美しい衣装。
曲線美な身体付きに誰もが魅了されたであろう。
仙女はお転婆にニッコリと笑ったかと思えば思い出したかの如く忙しなく怒り出す。
僵尸きようし達は怯えていた。

「もおおぉーーーっ!!!怒 あたしを置いていくなんて酷いじゃないのよ!!!」

その言葉は呆気に取られていた五龍ウーロンにかけられた。
先に我に返ったのは黄龍ファンロン

「ちょ……っと待ちなさい───アンタ……誰?」

「誰って……神美かみだよっ!?嘘でしょ忘れるとかありえないんですけど!?」

「アタシの知ってる神美かみは……まん丸で…頬も手もぷっくりしてて……──こんな……こんな痩せてないわよッ!!!」

「あっはっはっは!!その"痩せてない"って響き……たまらない快感っっっ」

「へぇ~痩せても"出る"ところは"出る"んだねぇ」

と、いやらしい手付きで胸の膨らみを表現する黒龍ヘイロン神美かみの拳が黒龍ヘイロンの鳩尾に入った。
呻き声を上げながら、ずるずると倒れていく。

「目を覚ました後に、若榴ルオリィちゃんから話を聞いて、一時的だけど体重を減らす事が出来るって言われて……───本当に一時的だからアレだけど、今のあたしは美豚ビトンに秘められた魔力は完全に失われてる。誰かがあたしを食べても、ただの人肉でしかないって……」

神美かみ……そなた、どうして龍仙女ロンシィェンニュの力を?───それに、何故そのような身体に負担がかかりそうな事を……ッ!安直すぎではないか!?何故大人しく待てなかったのだ!!」

白龍パイロン神美かみの肩を思い切り揺さぶり捲し立てる。
普段は温厚で冷静な白龍パイロンとは思えないが、神美かみを心配しているからこその取り乱しである。

「陛下…、落ち着いて下さい。」

青龍チーロンが落ち着かせるように、白龍パイロン神美かみの間に入り、宥めた。
我に返り、「済まない……」と小さく呟いた。

「ご、ごめん……なさい。でも……!!皆だけに辛い思いはさせられないよ!!。元は美豚ビトンの呪いのせいでこんな事になったようなものじゃない!!。だからあたしは!!…───あたしは、ちゃんと責任を取りたい…!」

「責任を取る……───それは、この世界では"命をかける"と同じですが……、貴女…死ぬつもりではないですよね?」

青龍チーロンの冷たい声音に、一瞬───空気が冷たくなる。

「死んで……全てを終わらせようなんて、虫のいい話は許されませんよ」

「…………───あっははは!、死ぬわけないじゃん!。だって、やりたい事いーーーっぱいあるんだよ?───それに、おばあちゃんが……力を与えてくれたから……。」

神美かみは左手の薬指に嵌めていた指輪ロンシュータンに触れる

「この指輪に……が眠ってるんだって……。おばあちゃん、あたしをキョンシーから庇う為に……龍仙女ロンシィェンニュの力……使い果たしちゃったんだって」

目に涙を浮かべ、指輪を固く握りしめる。
神美かみ五龍ウーロンに頭を下げ
「皆の……大切な人を奪って……ごめんなさいッ!!!」

龍仙女ロンシィェンニュ五龍ウーロンにとって、主であり、育ての親でもあり、かけがえのない存在であった─────
その主が生命をかけて護った娘は……

「……あんた、勘違いしてねぇか?」

今まで黙り込んでいた赤龍ホンロンが口を開き、その場で跪いたのだ。
黒龍ヘイロン───黄龍ファンロン──青龍チーロン赤龍ホンロンに続く。
その状況に戸惑う神美かみ───
白龍パイロンはその手を取った

龍仙女ロンシィェンニュはそなたに全てを捧げ──そして、託した。神美かみ……お前が、たった今…我等の龍仙女ロンシィェンニュとなったのだ。」

「あたし…が?───」

「その力……その身に纏っている衣は龍仙女ロンシィェンニュにしか扱えない。それが証拠だ」

そうか……龍仙女ロンシィェンニュ……
"こうする"事で、神美かみ五龍ウーロンに護られ、神力はそなた自身の力……
その身が果てようとも、最期まで護る気なのだな。

ならば私も最善を尽くそう──────

そして──白龍パイロンも跪き、神美かみの手の甲に唇を落とす。

「我々五龍ウーロンは、そなたの物となった」

「そんな……───あたしは……」

龍仙女ロンシィェンニュになった所で、あたしの命は限られている───

皆には口が裂けても言えないけど……
あたしは、そうの実を食べたのだから……

龍仙女ロンシィェンニュの力を手にしたのは───それは青龍チーロンの力、幻眠香げんみんこうから目を覚ました直後の事だった───


「貴女様が嵌めているその指輪には、龍仙女ロンシィェンニュ様の魂が封印されております……」

「たま…しい?」

それは─────死んだってことなの?
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