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時の一族と実
後宮戦争5
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「ねぇねぇ…──今日って白蘭様と陛下が逢瀬を交わされるって噂で聞いたけど…、本当なのかしら?」
「どんなに美しい妃でも目もくれなかった陛下が…一体どうして…───よりにもよって白蘭様を…」
「女官長の柘榴様が亡くなられたからでしょ?。…白蘭様の暴走を止められたのは、あの方だけでしたから…」
「…このまま陛下が白蘭様を正妃になさったら…、後宮は戦争が起きますわね…。」
「当然でしょう……───月下美人の様に、美しく儚げな御方を…───あんな我儘な女狐に盗られたら……」
「朱雀宮の潤朱様は、白蘭様に笑顔で殴打しそうだものね…」
「玄武宮の苧環様は白蘭様の事がお嫌いですからね…───それこそ、息の根を止めてしまいそう…」
「それに、青竜宮の妃は病の床に伏していると噂が……」
「まあ……それって────」
夕餉の刻の後宮は"噂"で溢れ返っていた。
何処から漏洩されたのか、今宵の密会までが白虎宮含め、後宮全体に広まっていたのだ。
……──その様子を、白虎宮の侍女の姿に扮した(勿論、性別も変えて)青龍と赤龍が耳を傾けながら、二人は"ある場所"へと向かっていた。
「…女子と言う性は、どうしてこうも信憑性に欠ける噂がお好きなのでしょうね……」
「っ………」
「さっきから何を不貞腐れているのですか?」
「…てめぇ、おちょくってんのか?───何で俺がこんな格好をしなきゃなんねぇーんだよ」
「…───良く似合ってますけどね……」
「大体俺は…お前とも…───彼奴らとも群れる気はねぇから。」
「…今の龍仙女 は、神美さんですよ?。主を護れなくてどうするんですか?」
「仙女としての自覚がねぇガキを護れってか?。…アイツには荷が重いんだよ…───このまま…、元の世界に戻っちまえば良いんだ」
「……貴方にも…───そんな一面があったんですね。」
「は?」
「彼女は……本来であれば殺される運命の人間でした。でも、龍仙女様は己の使命を放棄してでも、護ろうとしたんです。最初は私も…理解し難かったですよ。本音を言えば、何してくれてんだと……少し恨んでますよ?龍仙女様を…ふふ」
「…笑顔で淡々と言う事か?」
「ですが……、私達はどんな状況に陥っても、この世界を護らねばならない。それが、私達五龍に運命られた足枷…。龍仙女様に護られた生命は……我々にとっても護るべき価値があるに等しい───と…言うとでも思いましたか?。私は…そんなに性格が良い方ではないので」
「だろうな。」
「"利用できるもの"は利用しないと……───もし、白龍が神美さんと交われなければ……私が彼女と交われば良い話───」
(利用……───できんのかね…)
赤龍は、青龍がそこまで器用に相手を利用できるとは思えずにいた。
それは永年共に世界を護ってきた龍同士だからこそ分かるものである。
ピタリ…と一室の前で足を止めた青龍。赤龍は咄嗟に身構えた。
扉越しからでも分かる───邪悪な気配。
「さて…そろそろ本題に入りましょうか……」
「…この気配……」
「僵尸を上回る程の邪悪な気配が…まさかこの白虎宮の妃の部屋から漂っているとは…」
扉に手をかけた瞬間、ガチャリ…と勝手に開いた。
『これはこれは……────"開けてくれて"、どうもありがとう』
「声が───!?……」
ブォンッ!!────と、突風が二人を突き飛ばす。
「痛……ってぇ…!───何だよ!…今の風…それに…」
「…誰も居ない妃の部屋が…何故勝手に───」
青龍は開いた扉から垣間見えた、粉々に割れた鏡を発見する。
その鏡には一枚の御札が貼ってあった。
「何故魔鏡が…──…それに…この、御札は…」
「これって……ババアが持ってた札か?───でも、何で…妃の部屋にこの札が…」
「……やられましたね────チッ……、あの…僵尸…まんまとやってくれたな」
「…口悪…───」
「僵尸は最初から、こうなる事を想定していたとすれば……───…封印を解く為に、仕組んでいた…?」
「まさか……───俺達がこの部屋に入ろうとしたから、封印が解かれたとか言わねぇよな」
「そのまさかですよ……..───では、白虎宮の妃は……もしかして───」
「────そこで何をしているのかしら」
二人が振り返ると、そこには短剣を持った鈴夜が立っていた。
「…白虎宮の妃───"本物"はどちらへ?」
「……仰ってる意味が分かりません。」
「…では単刀直入に──…今日、帝と密会をする妃は……───何者だ?」
「……ふふ……あはははははは!!」
「…おい、何だか此奴…様子が────」
「…完全に…封印は解かれた────お前達と…美豚を殺すッ!!!!」
。
。
"封印"が解かれた同時刻────
「そなたが白蘭か?」
「…うわあ~!めっちゃええオ・ト・コ♡」
いよいよ密会が行われようとしていた。
「どんなに美しい妃でも目もくれなかった陛下が…一体どうして…───よりにもよって白蘭様を…」
「女官長の柘榴様が亡くなられたからでしょ?。…白蘭様の暴走を止められたのは、あの方だけでしたから…」
「…このまま陛下が白蘭様を正妃になさったら…、後宮は戦争が起きますわね…。」
「当然でしょう……───月下美人の様に、美しく儚げな御方を…───あんな我儘な女狐に盗られたら……」
「朱雀宮の潤朱様は、白蘭様に笑顔で殴打しそうだものね…」
「玄武宮の苧環様は白蘭様の事がお嫌いですからね…───それこそ、息の根を止めてしまいそう…」
「それに、青竜宮の妃は病の床に伏していると噂が……」
「まあ……それって────」
夕餉の刻の後宮は"噂"で溢れ返っていた。
何処から漏洩されたのか、今宵の密会までが白虎宮含め、後宮全体に広まっていたのだ。
……──その様子を、白虎宮の侍女の姿に扮した(勿論、性別も変えて)青龍と赤龍が耳を傾けながら、二人は"ある場所"へと向かっていた。
「…女子と言う性は、どうしてこうも信憑性に欠ける噂がお好きなのでしょうね……」
「っ………」
「さっきから何を不貞腐れているのですか?」
「…てめぇ、おちょくってんのか?───何で俺がこんな格好をしなきゃなんねぇーんだよ」
「…───良く似合ってますけどね……」
「大体俺は…お前とも…───彼奴らとも群れる気はねぇから。」
「…今の龍仙女 は、神美さんですよ?。主を護れなくてどうするんですか?」
「仙女としての自覚がねぇガキを護れってか?。…アイツには荷が重いんだよ…───このまま…、元の世界に戻っちまえば良いんだ」
「……貴方にも…───そんな一面があったんですね。」
「は?」
「彼女は……本来であれば殺される運命の人間でした。でも、龍仙女様は己の使命を放棄してでも、護ろうとしたんです。最初は私も…理解し難かったですよ。本音を言えば、何してくれてんだと……少し恨んでますよ?龍仙女様を…ふふ」
「…笑顔で淡々と言う事か?」
「ですが……、私達はどんな状況に陥っても、この世界を護らねばならない。それが、私達五龍に運命られた足枷…。龍仙女様に護られた生命は……我々にとっても護るべき価値があるに等しい───と…言うとでも思いましたか?。私は…そんなに性格が良い方ではないので」
「だろうな。」
「"利用できるもの"は利用しないと……───もし、白龍が神美さんと交われなければ……私が彼女と交われば良い話───」
(利用……───できんのかね…)
赤龍は、青龍がそこまで器用に相手を利用できるとは思えずにいた。
それは永年共に世界を護ってきた龍同士だからこそ分かるものである。
ピタリ…と一室の前で足を止めた青龍。赤龍は咄嗟に身構えた。
扉越しからでも分かる───邪悪な気配。
「さて…そろそろ本題に入りましょうか……」
「…この気配……」
「僵尸を上回る程の邪悪な気配が…まさかこの白虎宮の妃の部屋から漂っているとは…」
扉に手をかけた瞬間、ガチャリ…と勝手に開いた。
『これはこれは……────"開けてくれて"、どうもありがとう』
「声が───!?……」
ブォンッ!!────と、突風が二人を突き飛ばす。
「痛……ってぇ…!───何だよ!…今の風…それに…」
「…誰も居ない妃の部屋が…何故勝手に───」
青龍は開いた扉から垣間見えた、粉々に割れた鏡を発見する。
その鏡には一枚の御札が貼ってあった。
「何故魔鏡が…──…それに…この、御札は…」
「これって……ババアが持ってた札か?───でも、何で…妃の部屋にこの札が…」
「……やられましたね────チッ……、あの…僵尸…まんまとやってくれたな」
「…口悪…───」
「僵尸は最初から、こうなる事を想定していたとすれば……───…封印を解く為に、仕組んでいた…?」
「まさか……───俺達がこの部屋に入ろうとしたから、封印が解かれたとか言わねぇよな」
「そのまさかですよ……..───では、白虎宮の妃は……もしかして───」
「────そこで何をしているのかしら」
二人が振り返ると、そこには短剣を持った鈴夜が立っていた。
「…白虎宮の妃───"本物"はどちらへ?」
「……仰ってる意味が分かりません。」
「…では単刀直入に──…今日、帝と密会をする妃は……───何者だ?」
「……ふふ……あはははははは!!」
「…おい、何だか此奴…様子が────」
「…完全に…封印は解かれた────お前達と…美豚を殺すッ!!!!」
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"封印"が解かれた同時刻────
「そなたが白蘭か?」
「…うわあ~!めっちゃええオ・ト・コ♡」
いよいよ密会が行われようとしていた。
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