爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

文字の大きさ
42 / 62
時の一族と実

後宮戦争5

しおりを挟む
「ねぇねぇ…──今日って白蘭ビャクラン様と陛下が逢瀬を交わされるって噂で聞いたけど…、本当なのかしら?」

「どんなに美しい妃でも目もくれなかった陛下が…一体どうして…───よりにもよって白蘭ビャクラン様を…」

女官長にょかんちょう柘榴シィーリオ様が亡くなられたからでしょ?。…白蘭ビャクラン様の暴走を止められたのは、あの方だけでしたから…」

「…このまま陛下が白蘭ビャクラン様を正妃になさったら…、後宮は戦争が起きますわね…。」

「当然でしょう……───月下美人の様に、美しく儚げな御方を…───あんな我儘な女狐に盗られたら……」

「朱雀宮の潤朱ルンシュ様は、白蘭ビャクラン様に笑顔で殴打しそうだものね…」

「玄武宮の苧環ヂュハン様は白蘭ビャクラン様の事がお嫌いですからね…───それこそ、息の根を止めてしまいそう…」

「それに、青竜宮の妃は病の床に伏していると噂が……」

「まあ……それって────」

夕餉ゆうげの刻の後宮は"噂"で溢れ返っていた。
何処から漏洩されたのか、今宵の密会までが白虎宮含め、後宮全体に広まっていたのだ。
……──その様子を、白虎宮の侍女の姿に扮した(勿論、性別も変えて)青龍チーロン赤龍ホンロンが耳を傾けながら、二人は"ある場所"へと向かっていた。
「…女子おなごと言う性は、どうしてこうも信憑性に欠ける噂がお好きなのでしょうね……」

「っ………」

「さっきから何を不貞腐れているのですか?」

「…てめぇ、おちょくってんのか?───何で俺がこんな格好をしなきゃなんねぇーんだよ」

「…───良く似合ってますけどね……」

「大体俺は…お前とも…───彼奴らとも群れる気はねぇから。」

「…今の龍仙女ロンシィェンニュ は、神美かみさんですよ?。主を護れなくてどうするんですか?」

「仙女としての自覚がねぇガキを護れってか?。…アイツには荷が重いんだよ…───このまま…、元の世界に戻っちまえば良いんだ」

「……貴方にも…───そんな一面があったんですね。」

「は?」

「彼女は……本来であれば殺される運命の人間でした。でも、龍仙女ロンシィェンニュ様は己の使命を放棄してでも、護ろうとしたんです。最初は私も…理解し難かったですよ。本音を言えば、何してくれてんだと……少し恨んでますよ?龍仙女ロンシィェンニュ様を…ふふ」

「…笑顔で淡々と言う事か?」

「ですが……、私達はどんな状況に陥っても、この世界を護らねばならない。それが、私達五龍ウーロンに運命られた足枷…。龍仙女ロンシィェンニュ様に護られた生命は……我々にとっても護るべき価値があるに等しい───と…言うとでも思いましたか?。私は…そんなに性格が良い方ではないので」

「だろうな。」

「"利用できるもの"は利用しないと……───もし、白龍パイロン神美かみさんと交われなければ……私が彼女と交われば良い話───」

(利用……───できんのかね…)
赤龍ホンロンは、青龍チーロンがそこまで器用に相手を利用できるとは思えずにいた。
それは永年共に世界を護ってきたロン同士だからこそ分かるものである。
ピタリ…と一室の前で足を止めた青龍チーロン赤龍ホンロンは咄嗟に身構えた。
扉越しからでも分かる───邪悪な気配。

「さて…そろそろ本題に入りましょうか……」

「…この気配……」

僵尸きようしを上回る程の邪悪な気配が…まさかこの白虎宮の妃の部屋から漂っているとは…」

扉に手をかけた瞬間、ガチャリ…と勝手に開いた。

『これはこれは……────"開けてくれて"、どうもありがとう』

「声が───!?……」

ブォンッ!!────と、突風が二人を突き飛ばす。

「痛……ってぇ…!───何だよ!…今の風…それに…」

「…誰も居ない妃の部屋が…何故勝手に───」

青龍チーロンは開いた扉から垣間見えた、粉々に割れた鏡を発見する。
その鏡には一枚の御札が貼ってあった。

「何故魔鏡が…──…それに…この、御札は…」

「これって……ババアが持ってた札か?───でも、何で…妃の部屋にこの札が…」

「……やられましたね────チッ……、あの…僵尸クソ妖怪…まんまとやってくれたな」

「…口悪…───」

僵尸きようしは最初から、こうなる事を想定していたとすれば……───…封印を解く為に、仕組んでいた…?」

「まさか……───俺達がこの部屋に入ろうとしたから、封印が解かれたとか言わねぇよな」

「そのまさかですよ……..───では、白虎宮の妃は……もしかして───」

「────そこで何をしているのかしら」

二人が振り返ると、そこには短剣を持った鈴夜リンイェが立っていた。

「…白虎宮の妃───"本物"はどちらへ?」

「……仰ってる意味が分かりません。」

「…では単刀直入に──…今日、帝と密会をする化け物は……───何者だ?」

「……ふふ……あはははははは!!」

「…おい、何だか此奴…様子が────」

「…完全に…封印は解かれた────お前達と…美豚ビトンを殺すッ!!!!」






"封印"が解かれた同時刻────

「そなたが白蘭ビャクランか?」

「…うわあ~!めっちゃええオ・ト・コ♡」

いよいよ密会が行われようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...