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時の一族と実
九尾は龍に憧れた
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「ったく…、何で俺が薪拾いなんか────」
と、言いつつも素直に拾う赤龍だった。
風で周りの草木が揺れると、パキン……と───小枝が折れる音がした。
「………そこにいるのは誰だ」
赤龍は拾った薪の一本を後ろに素早く投げる。
すると────
ゴンッ!!
「キュ…ッ!!」
「……"キュ"?」
鈍い音に謎の鳴き声……恐る恐る振り返ると、小さな白い小狐が額にたんこぶを作って倒れていた。
(九の尻尾……)
「……ミャウ!」
「お前……九尾の狐か?」
一応威嚇をしながら小狐は体毛から炎を生み出し、巨大な狐へと変化する。九尾の尻尾は炎の様に揺れ、額には赤い紋が印されていた。
「ミャ……─────ガウッ!!!!」
「…此処は妖狐の森っつーわけか……。」
周囲からは薄気味悪い笑い声と、狐と妖の混ざった気が赤龍の神経を逆撫でた。
《コーコッコッコッコッ……───愚かな赤い龍よ……、まんまとワタシ達の罠に引っかかりよってさ…》
《手始めに、先ずはお前を喰らってやる》
《安心しろ……仲間も直ぐに、お前の元に送ってやるさ…》
「あ…?…誰が仲間だ────」
シャランッ……
それはまるで生きた赤い蛇のような鎖と生きた鎌鼬のような鎖鎌が妖狐達を一瞬で捕らえた。
「で?……テメェ等の目的はなんだ?」
宙ぶらりん状態の妖狐は、キュイキュイとご立腹の様子で鼻を鳴らす。
《くぅっっ!!……は、離せ!!無礼なッ!!》
《これ、用無しッ!!この赤龍を喰い殺せ!!》
用無しと言われた狐は恐らくこの白い狐の事。
「……ミャ……」
(この狐……───九尾の割には力が安定してねぇな……。)
《此奴を喰い殺せたら、お前もワタシ達と同じように天狐にしてやろう……》
《用無しのお前には願ってもない事だろう?》
白い狐は何故か目を輝かせ、元の小狐の姿に戻ると喉を鳴らして赤龍の足下に擦り寄る。
妖狐達の声は聞こえていない……のではなく、聞く耳を持たず状態だった。
「な、なんだお前……」
「ミャーウ……ゴロゴロ…────」
《クッ……!!この出来損ないの九尾が!!!》
「出来損ないはテメェ等だろうが……クソ妖狐がよ」
《た、頼む……ワタシ達を殺すのだけはやめてくれ……ッ!!》
《か、仮にも五龍だろ!?貴様…》
「だからなんだ?───…テメェ等みてぇな自分本位なクソ狐が、生きてる価値があんのか?。この九尾の妖力を吸い取って天狐になるつもりだったんだろ」
《な……なにを…─────》
「テメェ等は、九尾でもなければ天狐にすらなれねぇ───悪霊に取り憑かれた妖狐だ。」
《なっ……!!》
「安心しろ……この鎖鎌で締め付けて、燃やしてやるよ────」
《ヒッッ!!!!や、やめろおぉぉぉぉッ!!!!》
みょーん────ブラブラ……
赤龍の目の前に、糸でぶら下がった螅が落ちる。螅は赤龍の鼻にピトッ……と張り付き────
ドサッ……──────
悲鳴も上げずに気絶してしまった。
妖狐達は鎖鎌から解放され、そのまま忙しなく逃げて行く。
「キュゥ……?──ミャウ……!」
ぽつんと取り残された白い小狐は、赤龍の鼻に張り付いた螅をはむはむと食べてしまい、そのまま赤龍の鼻を舐める。
何をしても起きない事に不安を抱いた小狐は、再び九尾の姿に変化し、己の背中に気絶した赤龍を乗せて走り出した。
青龍が拾って来いと言っていた薪も乗せて……
と、言いつつも素直に拾う赤龍だった。
風で周りの草木が揺れると、パキン……と───小枝が折れる音がした。
「………そこにいるのは誰だ」
赤龍は拾った薪の一本を後ろに素早く投げる。
すると────
ゴンッ!!
「キュ…ッ!!」
「……"キュ"?」
鈍い音に謎の鳴き声……恐る恐る振り返ると、小さな白い小狐が額にたんこぶを作って倒れていた。
(九の尻尾……)
「……ミャウ!」
「お前……九尾の狐か?」
一応威嚇をしながら小狐は体毛から炎を生み出し、巨大な狐へと変化する。九尾の尻尾は炎の様に揺れ、額には赤い紋が印されていた。
「ミャ……─────ガウッ!!!!」
「…此処は妖狐の森っつーわけか……。」
周囲からは薄気味悪い笑い声と、狐と妖の混ざった気が赤龍の神経を逆撫でた。
《コーコッコッコッコッ……───愚かな赤い龍よ……、まんまとワタシ達の罠に引っかかりよってさ…》
《手始めに、先ずはお前を喰らってやる》
《安心しろ……仲間も直ぐに、お前の元に送ってやるさ…》
「あ…?…誰が仲間だ────」
シャランッ……
それはまるで生きた赤い蛇のような鎖と生きた鎌鼬のような鎖鎌が妖狐達を一瞬で捕らえた。
「で?……テメェ等の目的はなんだ?」
宙ぶらりん状態の妖狐は、キュイキュイとご立腹の様子で鼻を鳴らす。
《くぅっっ!!……は、離せ!!無礼なッ!!》
《これ、用無しッ!!この赤龍を喰い殺せ!!》
用無しと言われた狐は恐らくこの白い狐の事。
「……ミャ……」
(この狐……───九尾の割には力が安定してねぇな……。)
《此奴を喰い殺せたら、お前もワタシ達と同じように天狐にしてやろう……》
《用無しのお前には願ってもない事だろう?》
白い狐は何故か目を輝かせ、元の小狐の姿に戻ると喉を鳴らして赤龍の足下に擦り寄る。
妖狐達の声は聞こえていない……のではなく、聞く耳を持たず状態だった。
「な、なんだお前……」
「ミャーウ……ゴロゴロ…────」
《クッ……!!この出来損ないの九尾が!!!》
「出来損ないはテメェ等だろうが……クソ妖狐がよ」
《た、頼む……ワタシ達を殺すのだけはやめてくれ……ッ!!》
《か、仮にも五龍だろ!?貴様…》
「だからなんだ?───…テメェ等みてぇな自分本位なクソ狐が、生きてる価値があんのか?。この九尾の妖力を吸い取って天狐になるつもりだったんだろ」
《な……なにを…─────》
「テメェ等は、九尾でもなければ天狐にすらなれねぇ───悪霊に取り憑かれた妖狐だ。」
《なっ……!!》
「安心しろ……この鎖鎌で締め付けて、燃やしてやるよ────」
《ヒッッ!!!!や、やめろおぉぉぉぉッ!!!!》
みょーん────ブラブラ……
赤龍の目の前に、糸でぶら下がった螅が落ちる。螅は赤龍の鼻にピトッ……と張り付き────
ドサッ……──────
悲鳴も上げずに気絶してしまった。
妖狐達は鎖鎌から解放され、そのまま忙しなく逃げて行く。
「キュゥ……?──ミャウ……!」
ぽつんと取り残された白い小狐は、赤龍の鼻に張り付いた螅をはむはむと食べてしまい、そのまま赤龍の鼻を舐める。
何をしても起きない事に不安を抱いた小狐は、再び九尾の姿に変化し、己の背中に気絶した赤龍を乗せて走り出した。
青龍が拾って来いと言っていた薪も乗せて……
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