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時の一族と実
けせらせら
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「"お嬢様"が覚醒しかけております……。」
「流石!!、我が娘だなぁ~…。」
惡神五凶と蚩尤が自由の身となった今、蚩尤は久しぶりの外界に出る為の力を蓄えていた。封印されていた廟で────
「いや……そうなったら不味いでしょう?───」
「───……あの子はどうかな?、ほら…五凶の」
「窮奇ですか?…───」
「そうそう!それそれ……」
「手こずってるようなので、私が行って参ります。」
「え~、それは彼にとって身にならないよ?。自分の尻は自分で拭かせなくちゃね~!なーんちゃってっ」
「ふざけてる場合ですか───…もしお嬢様が龍仙女の力を完全に使えるようになり、再び封印などされてみなさい…。蚩尤様の野望は打ち砕かれますよ。…そうなれば、貴方様は実の娘に封印され……生まれ変わる事もできないまま、暗い鳥籠の中で生きていくことしかできないのですよ……」
「……それは、嫌だな……。娘に逢えないのも……───彼女に逢えないのも……」
「……蚩尤様は、お嬢様と奥様がいらっしゃれば、満足なのですか?」
「………そうだねぇ───僕にとってはかけがえのない存在となったから…。神から普通の人間ってのもやってみたいなぁ~って、最近は思うようになってるよ。」
「………そうですか。」
「?……何を不貞腐れているんだい、 渾沌」
「不貞腐れてなどおりません。」
憎悪の感情と蚩尤を想う感情の狭間で 渾沌は苛まれる。
蚩尤の実の娘ではあるが、 渾沌は神美を憎んでいた。
自分の愛した神が人間を愛し、尚且つその人間と神の血が入った子供が誕生していたからだ……
(死んでしまえば良いのに────)
そう願ってしまうのはいけない事なのか?───
私が一番最初に……
「気を付けて行くんだよ、 渾沌」
目を細めて、機嫌良く手を振る蚩尤に 渾沌は胸を抑えた。
(私が一番……貴方を愛しているのですよ───)
己が纏っていた黒い布を剥ぎ取り、その正体は白い鍛えられた裸体に天使の様な羽根が背中から生えていた。首から上は存在はしていなかったが、人間の顔の形に近い霊気が代わりとして存在していた。 渾沌が今まで喰らってきた人間の顔が記録されて存在しているのだ。
(……あの娘を喰らうことができたら……私の顔はあの娘になれるのだろうか…)
嫉妬の感情は時に全ての判断を狂わす。
。
。
「あーあ、身動き取れないし…地味に熱いし…参ったなあ……───」
羽衣に伝う仙女の炎は、窮奇を燃やそうとするが、力が安定していないのか、押さえつけるだけで精一杯の様子だ。
「う、嘘ーー!?あんな燃えてるのに何ともないの!?」
「アンタの力が安定していないのもあるが……、それにしても…何もんだ彼奴────」
「───私の部下が、御迷惑をお掛けしましたね…」
パァンッ!!!───と、何かが弾ける音と、一瞬で窮奇を包んでいた炎が鎮火される。
ゴロン───……と、神美目の前には、窮奇の頭部が転がり、首から上がない白い妖怪が目に入る。
「い……っ!!」
「仙女、目瞑れ…───」
「……おや───私とした事が、勢い余って引っぱたいてしまいました。何…御安心下さい、彼は惡神五凶ですから…───こんな事で死にはしませんよ───」
(惡神五凶…!?)
「お嬢様、いずれまたこの渾沌がお迎えに上がります……───貴女様を必ず」
殺してやる─────
渾沌から神美は殺意を感じ取った。窮奇の頭部と身体は宙に浮き、渾沌と共に消えてしまった。
そのタイミングで、九尾の狐は妖狐を食いちぎって退治していたのだ。
(あっちもこっちも……グロテスク……)
「キュゥ~」と、口の周りに血液が付いた状態で擦り寄る九尾に一瞬戸惑ったが、頭を撫でて抱き締める。何よりも今は皆が無事だった事が……─────
「って……皆、無事!?!?」
「この九尾のおかげで助かった…」
「この子凄いねぇ~、オレたちの毒も勝手に吸い取って、吸収した物を力にしてたけど…」
「それが、本来の九尾の狐の力でもあるのです。…でも、この九尾は特別なようですが…」
「で、神美がどうして龍仙女の姿になってるの?」
「…あたしにもよく分からないけど…───赤龍のおかげかも!」
「……知らねぇ───」
「五龍との心が結び付くと、龍仙女の力が発動するのかもしれないな…」
「誰がどいつと結びついたって?───んな覚えはねぇよ。」
「赤龍……────照れなくても、…もう隠さなくてもよい。…少しずつでも構わない、私達を……信じてはくれぬか?」
白龍の言葉に、煩わしいと思う感情の中に、ほんの少しの"喜び"を感じた事を認めたくない赤龍だった。
そして────九尾の狐は「花千楽」と名付けられ、神美達と共に痩身と惡神五凶封じの旅に加わったのだった。
「ところで、何で花千楽って名付けたんだ?」
「あたしの世界で、ケセラセラって言葉があって意味が「なるようになるさ」って───」
「キュゥ~~っ!」
何が待ち受けているか分からない────
でも、なるようになる───よね……
「流石!!、我が娘だなぁ~…。」
惡神五凶と蚩尤が自由の身となった今、蚩尤は久しぶりの外界に出る為の力を蓄えていた。封印されていた廟で────
「いや……そうなったら不味いでしょう?───」
「───……あの子はどうかな?、ほら…五凶の」
「窮奇ですか?…───」
「そうそう!それそれ……」
「手こずってるようなので、私が行って参ります。」
「え~、それは彼にとって身にならないよ?。自分の尻は自分で拭かせなくちゃね~!なーんちゃってっ」
「ふざけてる場合ですか───…もしお嬢様が龍仙女の力を完全に使えるようになり、再び封印などされてみなさい…。蚩尤様の野望は打ち砕かれますよ。…そうなれば、貴方様は実の娘に封印され……生まれ変わる事もできないまま、暗い鳥籠の中で生きていくことしかできないのですよ……」
「……それは、嫌だな……。娘に逢えないのも……───彼女に逢えないのも……」
「……蚩尤様は、お嬢様と奥様がいらっしゃれば、満足なのですか?」
「………そうだねぇ───僕にとってはかけがえのない存在となったから…。神から普通の人間ってのもやってみたいなぁ~って、最近は思うようになってるよ。」
「………そうですか。」
「?……何を不貞腐れているんだい、 渾沌」
「不貞腐れてなどおりません。」
憎悪の感情と蚩尤を想う感情の狭間で 渾沌は苛まれる。
蚩尤の実の娘ではあるが、 渾沌は神美を憎んでいた。
自分の愛した神が人間を愛し、尚且つその人間と神の血が入った子供が誕生していたからだ……
(死んでしまえば良いのに────)
そう願ってしまうのはいけない事なのか?───
私が一番最初に……
「気を付けて行くんだよ、 渾沌」
目を細めて、機嫌良く手を振る蚩尤に 渾沌は胸を抑えた。
(私が一番……貴方を愛しているのですよ───)
己が纏っていた黒い布を剥ぎ取り、その正体は白い鍛えられた裸体に天使の様な羽根が背中から生えていた。首から上は存在はしていなかったが、人間の顔の形に近い霊気が代わりとして存在していた。 渾沌が今まで喰らってきた人間の顔が記録されて存在しているのだ。
(……あの娘を喰らうことができたら……私の顔はあの娘になれるのだろうか…)
嫉妬の感情は時に全ての判断を狂わす。
。
。
「あーあ、身動き取れないし…地味に熱いし…参ったなあ……───」
羽衣に伝う仙女の炎は、窮奇を燃やそうとするが、力が安定していないのか、押さえつけるだけで精一杯の様子だ。
「う、嘘ーー!?あんな燃えてるのに何ともないの!?」
「アンタの力が安定していないのもあるが……、それにしても…何もんだ彼奴────」
「───私の部下が、御迷惑をお掛けしましたね…」
パァンッ!!!───と、何かが弾ける音と、一瞬で窮奇を包んでいた炎が鎮火される。
ゴロン───……と、神美目の前には、窮奇の頭部が転がり、首から上がない白い妖怪が目に入る。
「い……っ!!」
「仙女、目瞑れ…───」
「……おや───私とした事が、勢い余って引っぱたいてしまいました。何…御安心下さい、彼は惡神五凶ですから…───こんな事で死にはしませんよ───」
(惡神五凶…!?)
「お嬢様、いずれまたこの渾沌がお迎えに上がります……───貴女様を必ず」
殺してやる─────
渾沌から神美は殺意を感じ取った。窮奇の頭部と身体は宙に浮き、渾沌と共に消えてしまった。
そのタイミングで、九尾の狐は妖狐を食いちぎって退治していたのだ。
(あっちもこっちも……グロテスク……)
「キュゥ~」と、口の周りに血液が付いた状態で擦り寄る九尾に一瞬戸惑ったが、頭を撫でて抱き締める。何よりも今は皆が無事だった事が……─────
「って……皆、無事!?!?」
「この九尾のおかげで助かった…」
「この子凄いねぇ~、オレたちの毒も勝手に吸い取って、吸収した物を力にしてたけど…」
「それが、本来の九尾の狐の力でもあるのです。…でも、この九尾は特別なようですが…」
「で、神美がどうして龍仙女の姿になってるの?」
「…あたしにもよく分からないけど…───赤龍のおかげかも!」
「……知らねぇ───」
「五龍との心が結び付くと、龍仙女の力が発動するのかもしれないな…」
「誰がどいつと結びついたって?───んな覚えはねぇよ。」
「赤龍……────照れなくても、…もう隠さなくてもよい。…少しずつでも構わない、私達を……信じてはくれぬか?」
白龍の言葉に、煩わしいと思う感情の中に、ほんの少しの"喜び"を感じた事を認めたくない赤龍だった。
そして────九尾の狐は「花千楽」と名付けられ、神美達と共に痩身と惡神五凶封じの旅に加わったのだった。
「ところで、何で花千楽って名付けたんだ?」
「あたしの世界で、ケセラセラって言葉があって意味が「なるようになるさ」って───」
「キュゥ~~っ!」
何が待ち受けているか分からない────
でも、なるようになる───よね……
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