62 / 62
時の一族と実
君は美しい
しおりを挟む
翌朝の事だった。
梅琳が部屋を訪ねてきたので、内心神美は焦ったが、わざわざ着替えの服を持ってきてくれたので、どうしても琳瞳の言っていたことが信じられない。
(梅琳ちゃんが…アレを使った薬に頼ろうとするなんて……──どうか勘違いであって欲しい…)
「神美さんの衣、少し汚れてたから洗濯させてもらうね。乾くまで、この衣で申し訳ないけど着ててもらってもいいかな?」
梅琳から手渡された衣服は、漢服という上下で分かれている着物だった。勿論この様な服は来た事がないので、着付けてもらうしかない。
然し、梅琳は足が悪い為、手伝うのは少し厳しいとの事だった。
(制服が乾くまでの辛抱だけど…、流石に下着姿でいるのも抵抗あるよねぇ…)
「後は末っ子…と言っても血は繋がってないけども、鈴鈴しか女の子いないからなぁ…。まだ5歳だし…あの子もまだちゃんと着れなくてね…」
鈴鈴とは、青龍が学び舎で引き取った、最年少の身寄りのない幼い女の子だ。
恥ずかしそうにしては、ずっと琳瞳の後ろに隠れていたが、何故か赤龍に物凄く懐いていた。
赤龍も満更でもない顔をしていたなと…思い出し笑いをする神美。
コンコン───
「失礼致します────」
凛とした鈴の音の様な美しい声が、外から響いた。戸が開けられ、そこには女神のような…美しい黒髪の女性が立っていた。梅琳が小首を傾げる。
「あれ…貴女は」
「お初にお目にかかります…───私は、白月と申します。其方の女性のお召し替えの手伝いに参りました。青龍……様からのお達しで御座いますので…御安心ください。」
「わーー!!助かるーー!!、この服の着方分からなかったから」
「先生のお知り合いの方なら…心配ありませんね。すみません、この通り足が不自由なもので…ご迷惑おかけしますがよろしくお願いいたします。」
「…───大変失礼とは存じますが、貴女の足は…練習を積み重ねれば、徐々に歩けるとお聞きしましたが…」
白月と名乗った美しい女性は、部屋から出ようとした梅琳を呼び止める。
少しだけ、眉間に皺寄せる梅琳
「……前まではそうだったんですけど、"新しい薬"と"治療法"が出来たので…───足が生まれ変わるんです。今の状態じゃ……歩けるようになっても…弟や皆に迷惑をかけてしまうから───」
「……そうですか、大変失礼致しました。」
「いえ……お気になさらず」
木の車椅子を器用に動かしながら、梅琳は部屋を後にした。
(新しい薬と治療法…って、もしかして───)
琳瞳が言っていた…例の"アレ"なのか……。
梅琳の口に……嗚呼…なんて如何わしい!!。なんとしてでも阻止せねばらない。そもそも、そんな怪しげな薬で、足が治るわけがない……
「…ふふ、表情が険しいですよ。神美────」
「……!?な、なんであたしの名前を…」
「貴女の事は…何でも知っています。…でも、唯一分からないのは……貴女の心───」
「っ…」
艶めかしく潤いのある瞳に吸い込まれそうになってしまった。
何故か分からない防衛反応で、咄嗟に下着姿だった事を思い出し、胸元を両手で隠そうとしたが、白月にそれを阻止されてしまい、そのまま寝台にへと押し倒されてしまった。
「何故…隠すの?───」
「…だ…だって!!白月さんが綺麗すぎるし…───細くて……美人だから…。あたし、太ってるから恥ずかしくて……」
「ふくよかな事の何がいけないの?───貴女は…こんなにも美しいのに」
唇を撫でられ、そっとそのまま首筋に伝う────
(…っ…あれ、この…香り────)
神美の身体がこそばゆく悶える中、白月から白檀の香りが微かに拡がる。
(知ってる……この香り───)
「お前は……そのままで良い───健康や……の事もあるが……私は…」
「小龍……なの?」
白月は目を細め「そうだ…」と呟いた。
「…なっ、なんでそんなウルトラ超絶美人お姉様…というよりかは女神様に!?」
「…あまり、この姿は好きじゃない。…この見た目でしか、私を愛さない者も沢山いるからだ。」
「そんな……、小龍はどんな姿でも…小龍だよ。優しくて強い心は変わらない」
「…私はそのまま、お前にその言葉を返す。……姿形に囚われてはいけない。神美、お前は美しい…───人間の弱さや強さで飾らなくとも……───お前の心は誰よりも美しいのだ。」
それを忘れるな────と、美しい女人……龍はそう言った。
目に映るもので判断されてしまう世界だから───仕方がないのかもしれない
でも……
「あたしの中身を見てくれて…ありがとう」
だからあたしは好きになったんだ
貴方に……こんなにも強く惹かれてしまうんだ
「…後、私が青龍の妻役をやる。だから……」
「えっっ、でも……大騒ぎになるんじゃ……(色んな意味で)」
白龍は有無を言わせずだった。然し…神美の心は何故か喜びで満ちている。
梅琳が部屋を訪ねてきたので、内心神美は焦ったが、わざわざ着替えの服を持ってきてくれたので、どうしても琳瞳の言っていたことが信じられない。
(梅琳ちゃんが…アレを使った薬に頼ろうとするなんて……──どうか勘違いであって欲しい…)
「神美さんの衣、少し汚れてたから洗濯させてもらうね。乾くまで、この衣で申し訳ないけど着ててもらってもいいかな?」
梅琳から手渡された衣服は、漢服という上下で分かれている着物だった。勿論この様な服は来た事がないので、着付けてもらうしかない。
然し、梅琳は足が悪い為、手伝うのは少し厳しいとの事だった。
(制服が乾くまでの辛抱だけど…、流石に下着姿でいるのも抵抗あるよねぇ…)
「後は末っ子…と言っても血は繋がってないけども、鈴鈴しか女の子いないからなぁ…。まだ5歳だし…あの子もまだちゃんと着れなくてね…」
鈴鈴とは、青龍が学び舎で引き取った、最年少の身寄りのない幼い女の子だ。
恥ずかしそうにしては、ずっと琳瞳の後ろに隠れていたが、何故か赤龍に物凄く懐いていた。
赤龍も満更でもない顔をしていたなと…思い出し笑いをする神美。
コンコン───
「失礼致します────」
凛とした鈴の音の様な美しい声が、外から響いた。戸が開けられ、そこには女神のような…美しい黒髪の女性が立っていた。梅琳が小首を傾げる。
「あれ…貴女は」
「お初にお目にかかります…───私は、白月と申します。其方の女性のお召し替えの手伝いに参りました。青龍……様からのお達しで御座いますので…御安心ください。」
「わーー!!助かるーー!!、この服の着方分からなかったから」
「先生のお知り合いの方なら…心配ありませんね。すみません、この通り足が不自由なもので…ご迷惑おかけしますがよろしくお願いいたします。」
「…───大変失礼とは存じますが、貴女の足は…練習を積み重ねれば、徐々に歩けるとお聞きしましたが…」
白月と名乗った美しい女性は、部屋から出ようとした梅琳を呼び止める。
少しだけ、眉間に皺寄せる梅琳
「……前まではそうだったんですけど、"新しい薬"と"治療法"が出来たので…───足が生まれ変わるんです。今の状態じゃ……歩けるようになっても…弟や皆に迷惑をかけてしまうから───」
「……そうですか、大変失礼致しました。」
「いえ……お気になさらず」
木の車椅子を器用に動かしながら、梅琳は部屋を後にした。
(新しい薬と治療法…って、もしかして───)
琳瞳が言っていた…例の"アレ"なのか……。
梅琳の口に……嗚呼…なんて如何わしい!!。なんとしてでも阻止せねばらない。そもそも、そんな怪しげな薬で、足が治るわけがない……
「…ふふ、表情が険しいですよ。神美────」
「……!?な、なんであたしの名前を…」
「貴女の事は…何でも知っています。…でも、唯一分からないのは……貴女の心───」
「っ…」
艶めかしく潤いのある瞳に吸い込まれそうになってしまった。
何故か分からない防衛反応で、咄嗟に下着姿だった事を思い出し、胸元を両手で隠そうとしたが、白月にそれを阻止されてしまい、そのまま寝台にへと押し倒されてしまった。
「何故…隠すの?───」
「…だ…だって!!白月さんが綺麗すぎるし…───細くて……美人だから…。あたし、太ってるから恥ずかしくて……」
「ふくよかな事の何がいけないの?───貴女は…こんなにも美しいのに」
唇を撫でられ、そっとそのまま首筋に伝う────
(…っ…あれ、この…香り────)
神美の身体がこそばゆく悶える中、白月から白檀の香りが微かに拡がる。
(知ってる……この香り───)
「お前は……そのままで良い───健康や……の事もあるが……私は…」
「小龍……なの?」
白月は目を細め「そうだ…」と呟いた。
「…なっ、なんでそんなウルトラ超絶美人お姉様…というよりかは女神様に!?」
「…あまり、この姿は好きじゃない。…この見た目でしか、私を愛さない者も沢山いるからだ。」
「そんな……、小龍はどんな姿でも…小龍だよ。優しくて強い心は変わらない」
「…私はそのまま、お前にその言葉を返す。……姿形に囚われてはいけない。神美、お前は美しい…───人間の弱さや強さで飾らなくとも……───お前の心は誰よりも美しいのだ。」
それを忘れるな────と、美しい女人……龍はそう言った。
目に映るもので判断されてしまう世界だから───仕方がないのかもしれない
でも……
「あたしの中身を見てくれて…ありがとう」
だからあたしは好きになったんだ
貴方に……こんなにも強く惹かれてしまうんだ
「…後、私が青龍の妻役をやる。だから……」
「えっっ、でも……大騒ぎになるんじゃ……(色んな意味で)」
白龍は有無を言わせずだった。然し…神美の心は何故か喜びで満ちている。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる