36 / 110
<模索 編>
朝食の前に
セリはするりと食堂に入り、水瓶を満たす。水汲みの手間は水の魔石で問題なくできるが量が貯められるのには時間がかかる。水魔法で片手間にすぐできるものだった。世間一般に比べればかなりの練度だがそれを認める者はいない。
“水の魔石より便利”程度だった。
小ぶりのナイフを手に取り、慣れた手つきで積んである野菜の皮剥きを始めた。下働きの仕事であるが人を雇っていないため、手伝いに入る。今は冒険者の手伝いも居なかった。
黙々と作業するため、会話が交わされる事もなく、人数の増えた食事を作る料理しているコック姿。
しかしセリに声がかけられた。
「ん?何でいるんだ。」
それに、気づいたのはバリスだった。視線があったものの頷き、作業に戻る。
「いやいや、おまっ…え、貴族の子がやる事じゃねえぞ?」
そう言っても、首を傾げただけで作業に戻る。あった野菜を全部剥いてしまった。それから朝食だ。
「って、体調は?もう良いのか」
「うん、ここで食べる。」
食堂に移動するセリの様子が、慣れた様子で自然な動きだった。食事を出すバリスが流れるように前の席に座り、話を聞く体勢になる。
「食欲はあるな?」
咀嚼していたため、頷いて答えるセリ。
その様子に何か飲み込めないような態度のバリスだが、仕切り直すように言った。
「おはよーございます。」
「お早う」
朝の挨拶からだった。
「野菜の皮剥き、いつもやってたのか?」
「やれる時には」
「次からは、そのままのにしといてくれ。新入りの仕事だし、手伝いの冒険者もいる。雇い主にやらせるのも、な。」
「刃物使う練習なの。まだ火も使えないし。」
「昼終わった後なら手伝うぞ?」
「じゃあ、クッキー作りたい!」
「ああ、良いが材料は…」
「用意しとく!黒胡麻の甘さ控えめのやつねっ」
「それは良いが。ダンマリだったのがよく喋るな、さっきまで眠かったのか?」
「キッチンは私語禁止」
「そっか。まあ料理人の城だからな」
会話もないくらいなんだろうか?ひと言もなく、顔を上げるでもないのが常であったらしい。
関係性が遠いと思ったが、俺とは話はした。セリだけ?
(なんかこの家って、この嬢ちゃんに冷たくないか?)
最初、坊ちゃんだと思って貴族の家の子だと知った。普通に考えて後継者で大事にされてるんじゃって思った。
女の子だと後継者扱いされないって感じじゃないし、そもそも当主がいないのはよく存続してんな。
結論大変そうと同情的に見ている。
「体調は大丈夫なんだな?」
お付きのメイドもなく。自分の事はする様子。
ちょっとほっとけない感じがしたので、出来るだけ構おうとバリスは決めたのだった。
“水の魔石より便利”程度だった。
小ぶりのナイフを手に取り、慣れた手つきで積んである野菜の皮剥きを始めた。下働きの仕事であるが人を雇っていないため、手伝いに入る。今は冒険者の手伝いも居なかった。
黙々と作業するため、会話が交わされる事もなく、人数の増えた食事を作る料理しているコック姿。
しかしセリに声がかけられた。
「ん?何でいるんだ。」
それに、気づいたのはバリスだった。視線があったものの頷き、作業に戻る。
「いやいや、おまっ…え、貴族の子がやる事じゃねえぞ?」
そう言っても、首を傾げただけで作業に戻る。あった野菜を全部剥いてしまった。それから朝食だ。
「って、体調は?もう良いのか」
「うん、ここで食べる。」
食堂に移動するセリの様子が、慣れた様子で自然な動きだった。食事を出すバリスが流れるように前の席に座り、話を聞く体勢になる。
「食欲はあるな?」
咀嚼していたため、頷いて答えるセリ。
その様子に何か飲み込めないような態度のバリスだが、仕切り直すように言った。
「おはよーございます。」
「お早う」
朝の挨拶からだった。
「野菜の皮剥き、いつもやってたのか?」
「やれる時には」
「次からは、そのままのにしといてくれ。新入りの仕事だし、手伝いの冒険者もいる。雇い主にやらせるのも、な。」
「刃物使う練習なの。まだ火も使えないし。」
「昼終わった後なら手伝うぞ?」
「じゃあ、クッキー作りたい!」
「ああ、良いが材料は…」
「用意しとく!黒胡麻の甘さ控えめのやつねっ」
「それは良いが。ダンマリだったのがよく喋るな、さっきまで眠かったのか?」
「キッチンは私語禁止」
「そっか。まあ料理人の城だからな」
会話もないくらいなんだろうか?ひと言もなく、顔を上げるでもないのが常であったらしい。
関係性が遠いと思ったが、俺とは話はした。セリだけ?
(なんかこの家って、この嬢ちゃんに冷たくないか?)
最初、坊ちゃんだと思って貴族の家の子だと知った。普通に考えて後継者で大事にされてるんじゃって思った。
女の子だと後継者扱いされないって感じじゃないし、そもそも当主がいないのはよく存続してんな。
結論大変そうと同情的に見ている。
「体調は大丈夫なんだな?」
お付きのメイドもなく。自分の事はする様子。
ちょっとほっとけない感じがしたので、出来るだけ構おうとバリスは決めたのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
虚無の器と呼ばれた私が、神々の力で奪われた運命を取り戻す
タマ マコト
ファンタジー
名門侯爵家の令嬢リュシエンヌは、“魔力ゼロ”と判定されたことで家族にも婚約者である王太子にも見放され、王都の夜会で公開の婚約破棄を突きつけられる。だがそれは単なる個人の冷酷さではなく、神殿と王家が結託し「異質な存在」を排除するために仕組んだ儀式だった。謹慎処分として隔離された旧離宮で、彼女は過去に同じように消された“測定不能者”の記録と、改竄された神託の痕跡に辿り着く。そこで初めて、自分が無能なのではなく“都合が悪い存在”だったと知る。絶望の底で彼女は、七柱の神と対峙し、力と引き換えに大きな代償を伴う契約を提示される。リュシエンヌは逃げることをやめ、「奪われた運命を取り戻す」と自ら選び、物語が動き出す。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。