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冥福を祈る者

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「あの女を好きだったのを隠してたのにね?」

黒いドレス。喪に服しているのだろうベールで目元は見えない。

「王子様も酷いよねえ、あの女をエスコートしようとしたらバッサリ!でしょ?」

話し方は幼いが、妹と同年代のレディだろうか。
命令通り森に捨てられた私を、わざわざ見に来たのか?

「恋は盲目っていうのも、行き過ぎだし。」

出血で、朦朧としている私は何もできない。いや、今までもできなかった。


王太子は変わってしまった。私がお止めできる最期の時だったかもしれない。
ただ斬りつけられただけの私の死では、何も変わらないだろう。

「あの女の騎士に、貴方はもったいないし。」

最期の後悔は、騎士として死ねない事だろうか。まだ明るい女の声が続いている。


「交換しましょ、そう死にましょう?」

そして暗闇が私を包み込んだ。
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