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見せかけての幸せ

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王家から、新しい婚約が発表された。

真実の愛に目覚めた

と観劇のような話が行き渡る。

そういう戦略なのだろう。
王族に入るには、爵位はあるが


能力が足りない。
家のような、事務処理能力や商人との繋がりもない。


元婚約者を隣国へ


ていの良いお払い箱だが、この国にもう興味はない。

「あと数年で立て直せると良いわね。」

王が認め、王妃も支援した。国の決定だ。
衰退するのも、仕方がない状況ね。


国が傾くと周辺地域も大変なのに。
国民はわかるとして、政治の中枢が理解していないとは。

まあ、良い人材には来てもらえるように声をかけておきましょう。

「商会をひきあげて、もうこの国に見切りをつけた。」


さよなら。

緩やかな滅びの国で、愛がどれだけ保つのかしら?

幸せな結婚と時間は、その安定した環境で享受できると思うのだけど。
甘いだけでは、すぐに夢は覚めるわ。


「もう少し、甘い時間を過ごしても良いんじゃないかい?」
「大きなお世話です、お父様。」

しばらくは、仕事に打ち込もうと思う私だった。

「まあ。準備はしておこう。」

滅びゆく国へではなく、立ち去る民のために。
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