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その後

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「叶えようか?」


都合の良い幻聴が聞こえる。でも、確かに出て行きたい。
このまま夜会に出て、お見合いをしてを繰り返す日々の先?

結婚して子供ができて。
それを私が歩む道とするのか。

貴族の令嬢の道にそれ以外などない
私のやる事に応援すると言葉があっても、それは趣味の範囲でと
それより先に行く事はないようにと暗に言われている。

「作品に集中したい」

その理由でお茶会を断ることもできないし
興味のない話が続くだけで

私の話など求められていないの。

「そんなに難しいことなの?」

作りたいものを作る。それを売って、また作る。
そうして生きていたいのに。


拙い私の作品を手に握り込む。
ぎゅっと気持ちを抑え込んで顔をあげると。

誰でしょうか。
男性がいた。しまった!会話が成立していたのはこの人が存在していたからで
今は私に会話の答えを待っている。

逡巡、会話に戻るために聞いてみた。

「対価は?」

タダでなんて言ったら、即逃げよう。
ただのナンパだし、危ない人だ。


「アナタの作品が見たい。」


とりあえず、自己紹介から始めたこの人は
隣の国の美術商らしい。



芸術に恋した芸術家がいた
そのパトロンに美術商の男がいる。


珍しいことじゃないが、作者は誰か明かされていないらしい。


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