上 下
2 / 3

妹と

しおりを挟む
「婚約破棄よ!」

妹が叫ぶ。良い声だな役者にしても良さそう。

役柄は、“ヒロインをいじめる令嬢”かしら。
今の格好をそのまま衣装にできるほどゴテゴテね。

流行ってないと思うけど。目には楽しいわ。
おっと何か言ってる。

「この人はあたしを選んだの!もうお姉ちゃんの婚約者じゃないわ。」

理論が破綻しているわね。婚約っていうのは契約よ?
それを破棄する事で婚約者じゃなくなるのよ。

この劇に乗ってみましょうか。

「『なぜ、こんな事を?』」

悲しそうにいうのがセオリーだけど、私に無理ね。だってなんの思い入れもないもの。
せめて戸惑っている風に聞こえると良いけど。


「今更ね!彼はあたしを愛してくれてる。皆んなあたしを心配してくれたわ。
お姉ちゃんは嫉妬したのよね?今までもあたしに嫌がらせして!」


脚色が入ったわね。
「いつあたしが嫌がらせしたというの?」

脚本にかかりきりで、顔を合わせたのさえ久しぶりなのに。


「私に欲しいものをお姉ちゃんだけ買ってもらって!贔屓だわっ


「いくらすると思ってるの?」
貴女がドレスを買った分、私は一点ものを買ってもらっただけ。
資料として見たかったし。

「貸してくれたって良いじゃない!?」


「貴女、壊すじゃない。」

「そんなことない。

「くし、鏡、ぬいぐるみに?

本を破いたのは許せなかったわあ。まだ許してないから。」

「そんな小さい頃のこと…」

いいえ、手鏡は最近よ。他でもやってるんじゃない?
周りがヒソヒソしてるわ。



まあ、この舞台では良いシチュエーション(状況)をえらんだわね。

使えるわ!たまには役に立つじゃない?今度に脚本で目玉シーンにしよう!


帰ろうと思ったけど、ひと言伝えておかないと。


「”私が嫉妬して“は絶対修正しておいてよ!

帰った。


しおりを挟む

処理中です...