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マリョクガクエンニュウガク
オハナシ
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廊下の突き当りの部屋、黒い扉を開けた先は、黒い部屋があった。
殆どが黒で埋め尽くされたこの部屋もドアと同じように、不思議と圧迫感なく、過ごしやすいと感じる。
部屋は一切仕切りがなく、部屋の全貌がドアから明らかとなる構造だった。
左奥には2つのベッド、右奥には大きなキッチン、その手前側にゆったりとした椅子2脚とテーブルが置かれていた。
見たところ、トイレやお風呂なんてものはなかった。
現在俺は、椅子に腰を掛けてハルキと対面していた。
「お前、何をしたか分かっているな」
ハルキは怒気を含ませながら、責めてくる。
その圧に、俺は縮こまるしかない
「はい…」
「言ってみろ」
「う…廊下で日本語で叫んだ。」
「ニホンゴ…まぁいい。下にいたときもこの階に着いたすぐも言ったよな、異世界人ってことはバレないようにしろって」
「はい」
そう。さっきドアの前で日本語で叫んだことで異世界人だとバレたかもしれないと怒られている。
一応、あの後すぐに部屋の中に入れられて、誰にも見られてはいないし、ハルキには他に対策案があるらしく、バレる可能性は少ないらしい。
よって、あとは俺をこってり絞り上げるだけなのだ。
いつの間にか下を向いていた顔をそろそろと上げると、ハルキは俺の顔を見てもう懲りたと判断したのか、椅子から立ち上がり、俺の頭を一撫でしてキッチンに向かった。
「まあ分かってくれたら十分だ。茶、飲むか?」
「飲む!」
ハルキは案外すぐに許してくれ、暗い雰囲気を消してくれた。俺もそれに乗っかって返事をする。
それに、さっきの件で聞いておきたいことがあった。
怒られている最中は難しかったが、反省したあとの今ならきっと大丈夫だろう。
キッチンにいるハルキに、声色に注意して聞く。
「それにしても、いかに日本語っていってもさ、この世界にもたくさん言語あるだろ。基本的には、その中の1つって思われるんじゃないのか?」
怒られてからずっと疑問に思っていたことだ。
すぐに日本語を聞いたからといって異世界人に結びつくとは思えない。少数民族といったところだろう。
しかし、その考えはすぐに否定される。
「いや、1つの言語しかない。1つの言語というのも変な感じがするぐらいだ。一応方言みたいなものは存在する。方言わかるか?方言を一言語とするならたくさんあることになる。」
なるほど。本当に1つの言語しかなさそうだ。
「方言はこっちにもあるな。言語同士の違いは、方言程度の違いもあれば、使う文字の種類や発音もすべて異なる違いある。さすがにそこまで違えば方言とはいえないだろ」
ハルキは俺の言葉に一瞬手が止まる。
「それは、住みづらそうだな。」
「まあ確かに」
俺は苦笑してしまった。確かに一言語しかなければ、言語を新たに覚える必要もないし、楽だろうな。
おかげでハルキがあんなに危機感を感じていた理由もわかった。やはり聞いておいてよかった。
そこまで話したところで、ハルキがお茶とお菓子を手にキッチンから出てきた。
「ありがとう」
そういって受け取ったお茶は暖かかった。コップの形は湯呑に近い。取っ手がない円筒状だ。お茶の色は薄い。お湯に近い色。わずかに赤みがかっているのか。
ハルキは椅子に腰掛け、お茶を観察していた俺を怪訝な目で見つつ、普通に飲んでいる。
試しに一口、いや半口。
ちょっと少なすぎてわからなかった。
今度は二口。
「…おいしい」
なんだろう。緑茶とも麦茶とも紅茶とも言えないが、甘みがあってクセもなく、ただ適度なしぶみがある。
これはうまい。
ハルキの顔が怪訝そうな顔から一気に晴れやかになる。
「だろうだろう。この茶は俺の故郷の地で採れた茶だ。上手いんだ。おかわりあるから必要なら言えよ」
その推しの強さは若干引くが、確かにうまい。
一緒においてあったお菓子も勧められるまま食べる。
お菓子はクッキーのような形状で、食感もクッキーだった。味は甘いというより塩気が多く、クラッカーに近い。
「お菓子もうまいな。」
「だろ。」
こいつ、最初のぶっきらぼうとした口調から比べるとキャラ変わりすぎだろ。
ニヤついているのが手に取るようにわかる。
最初のあれは、緊張していただけなのか。ほんとうに不器用なやつだな。
次のお菓子に手を伸ばそうとしたとき、ハルキが姿勢をただし、真剣な顔であやまってきた。
「さっきの話だが、異世界が多言語なら危機感が違うよな。怒ってすまなかった。」
あぁ、さっきの俺が日本語で叫んだ問題まで戻るのか。
確かに多言語だと思っていたから危機感が違うとはいえ、日本語で極力話すべきではないことはわかっていた。
「いや、あれは本当に口が滑っただけだから。ごめん。…俺が言うのもあれだが、もうこの話はやめよう」
「いや、そうだな。やめよう。」
少しの間、微妙な空気になる。
それを破ったのは、ハルキの方だった。
「それはそうと、お前、ケイゴを使えないのか?」
「え、ケイゴ?」
「丁寧な言葉」
あぁ敬語か。母から教えてもらったのはかなり前のことだから、忘れているということもあるが、こんなにスラスラ使えてるから、忘れているわけでもないだろう。
「たぶん、教えられてないな。」
その言葉にハルキは少し険しくなる。
「それは困ったな。ダンさんは気にしないだろうが、他の先生は気にする人もいる。しばらくは孤児だから覚束ないといえばなんとかなるが、そのうち覚えろ」
「わかった」
「それで、あー、あとなにか質問ある?ここで生きてきてどれを知っていて、どれが知らないのかわからないんだ。さっきのドアみたいに。」
若干ニヤついた顔で俺の目を見て問う。
もうドアの話を笑い話にしている。
しかし、一度今まで起きたことを整理する。
異世界があると知ったのは今日の午後。
それからこっちに来たときは、ちょうど黄昏の日没頃。それから男子寮について部屋にいる。窓の外はもう暗かった。
「ドアの話はもうやめろよ。考えてみたけど、魔法があることと学校があること、食べ物がうまいことしか知らないな。」
「それはひどいな。だが、もう暗いし、初日は早めに休んだほうがいい。説明は明日でいいか?」
休む。そうだ。休む場所!
思い出してよかった。
「なぁ、1つだけ確認なんだが、俺の部屋はここであってる?」
ハルキも俺に聞かれ、ようやく気づいたようだ。
「言い忘れてた。そう、ここがお前の部屋で俺の部屋。これからよろしく、相棒」
殆どが黒で埋め尽くされたこの部屋もドアと同じように、不思議と圧迫感なく、過ごしやすいと感じる。
部屋は一切仕切りがなく、部屋の全貌がドアから明らかとなる構造だった。
左奥には2つのベッド、右奥には大きなキッチン、その手前側にゆったりとした椅子2脚とテーブルが置かれていた。
見たところ、トイレやお風呂なんてものはなかった。
現在俺は、椅子に腰を掛けてハルキと対面していた。
「お前、何をしたか分かっているな」
ハルキは怒気を含ませながら、責めてくる。
その圧に、俺は縮こまるしかない
「はい…」
「言ってみろ」
「う…廊下で日本語で叫んだ。」
「ニホンゴ…まぁいい。下にいたときもこの階に着いたすぐも言ったよな、異世界人ってことはバレないようにしろって」
「はい」
そう。さっきドアの前で日本語で叫んだことで異世界人だとバレたかもしれないと怒られている。
一応、あの後すぐに部屋の中に入れられて、誰にも見られてはいないし、ハルキには他に対策案があるらしく、バレる可能性は少ないらしい。
よって、あとは俺をこってり絞り上げるだけなのだ。
いつの間にか下を向いていた顔をそろそろと上げると、ハルキは俺の顔を見てもう懲りたと判断したのか、椅子から立ち上がり、俺の頭を一撫でしてキッチンに向かった。
「まあ分かってくれたら十分だ。茶、飲むか?」
「飲む!」
ハルキは案外すぐに許してくれ、暗い雰囲気を消してくれた。俺もそれに乗っかって返事をする。
それに、さっきの件で聞いておきたいことがあった。
怒られている最中は難しかったが、反省したあとの今ならきっと大丈夫だろう。
キッチンにいるハルキに、声色に注意して聞く。
「それにしても、いかに日本語っていってもさ、この世界にもたくさん言語あるだろ。基本的には、その中の1つって思われるんじゃないのか?」
怒られてからずっと疑問に思っていたことだ。
すぐに日本語を聞いたからといって異世界人に結びつくとは思えない。少数民族といったところだろう。
しかし、その考えはすぐに否定される。
「いや、1つの言語しかない。1つの言語というのも変な感じがするぐらいだ。一応方言みたいなものは存在する。方言わかるか?方言を一言語とするならたくさんあることになる。」
なるほど。本当に1つの言語しかなさそうだ。
「方言はこっちにもあるな。言語同士の違いは、方言程度の違いもあれば、使う文字の種類や発音もすべて異なる違いある。さすがにそこまで違えば方言とはいえないだろ」
ハルキは俺の言葉に一瞬手が止まる。
「それは、住みづらそうだな。」
「まあ確かに」
俺は苦笑してしまった。確かに一言語しかなければ、言語を新たに覚える必要もないし、楽だろうな。
おかげでハルキがあんなに危機感を感じていた理由もわかった。やはり聞いておいてよかった。
そこまで話したところで、ハルキがお茶とお菓子を手にキッチンから出てきた。
「ありがとう」
そういって受け取ったお茶は暖かかった。コップの形は湯呑に近い。取っ手がない円筒状だ。お茶の色は薄い。お湯に近い色。わずかに赤みがかっているのか。
ハルキは椅子に腰掛け、お茶を観察していた俺を怪訝な目で見つつ、普通に飲んでいる。
試しに一口、いや半口。
ちょっと少なすぎてわからなかった。
今度は二口。
「…おいしい」
なんだろう。緑茶とも麦茶とも紅茶とも言えないが、甘みがあってクセもなく、ただ適度なしぶみがある。
これはうまい。
ハルキの顔が怪訝そうな顔から一気に晴れやかになる。
「だろうだろう。この茶は俺の故郷の地で採れた茶だ。上手いんだ。おかわりあるから必要なら言えよ」
その推しの強さは若干引くが、確かにうまい。
一緒においてあったお菓子も勧められるまま食べる。
お菓子はクッキーのような形状で、食感もクッキーだった。味は甘いというより塩気が多く、クラッカーに近い。
「お菓子もうまいな。」
「だろ。」
こいつ、最初のぶっきらぼうとした口調から比べるとキャラ変わりすぎだろ。
ニヤついているのが手に取るようにわかる。
最初のあれは、緊張していただけなのか。ほんとうに不器用なやつだな。
次のお菓子に手を伸ばそうとしたとき、ハルキが姿勢をただし、真剣な顔であやまってきた。
「さっきの話だが、異世界が多言語なら危機感が違うよな。怒ってすまなかった。」
あぁ、さっきの俺が日本語で叫んだ問題まで戻るのか。
確かに多言語だと思っていたから危機感が違うとはいえ、日本語で極力話すべきではないことはわかっていた。
「いや、あれは本当に口が滑っただけだから。ごめん。…俺が言うのもあれだが、もうこの話はやめよう」
「いや、そうだな。やめよう。」
少しの間、微妙な空気になる。
それを破ったのは、ハルキの方だった。
「それはそうと、お前、ケイゴを使えないのか?」
「え、ケイゴ?」
「丁寧な言葉」
あぁ敬語か。母から教えてもらったのはかなり前のことだから、忘れているということもあるが、こんなにスラスラ使えてるから、忘れているわけでもないだろう。
「たぶん、教えられてないな。」
その言葉にハルキは少し険しくなる。
「それは困ったな。ダンさんは気にしないだろうが、他の先生は気にする人もいる。しばらくは孤児だから覚束ないといえばなんとかなるが、そのうち覚えろ」
「わかった」
「それで、あー、あとなにか質問ある?ここで生きてきてどれを知っていて、どれが知らないのかわからないんだ。さっきのドアみたいに。」
若干ニヤついた顔で俺の目を見て問う。
もうドアの話を笑い話にしている。
しかし、一度今まで起きたことを整理する。
異世界があると知ったのは今日の午後。
それからこっちに来たときは、ちょうど黄昏の日没頃。それから男子寮について部屋にいる。窓の外はもう暗かった。
「ドアの話はもうやめろよ。考えてみたけど、魔法があることと学校があること、食べ物がうまいことしか知らないな。」
「それはひどいな。だが、もう暗いし、初日は早めに休んだほうがいい。説明は明日でいいか?」
休む。そうだ。休む場所!
思い出してよかった。
「なぁ、1つだけ確認なんだが、俺の部屋はここであってる?」
ハルキも俺に聞かれ、ようやく気づいたようだ。
「言い忘れてた。そう、ここがお前の部屋で俺の部屋。これからよろしく、相棒」
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