翼が駆ける獣界譚

黒焔

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王国護りし十三の角

死神の鎌

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城から逃げる道中、迫り来る兵士や迎え討とうとする兵士達を峰打ちで気絶させ廊下や階段を進む中、背後に追ってくる三騎の円卓の騎士を見た桃は絶叫する。
「ちょっと!あの騎士達追いかけてくるじゃん!」
「いいから黙って逃げるぞお嬢!!」
「ダメだ、あの騎士達の兜...多分、私の小道具が効かない何か細工がされてる!」
「.....」
なんとか追っ手を撒こうとするスカイハートだが円卓の騎士達が纏う鎧と兜には魔術が施されており小道具全てが無意味な作戦へと変わる。
そして先程のレオルドの言葉が引っ掛かるのかトフェニスはずっと無言を貫き険しい表情を浮かべているが向かいくる兵士を双剣で気絶させては仲間達の退路を確保している。
「トフェニスさん....」
桃が声を掛ける。
ふと気付いたようにトフェニスは桃の心配そうな顔を見て作り笑顔で「大丈夫、気にしないで下さい」と返した。
ただただ長い廊下を走っているとその先に外へと出られる大きな扉を発見したスカイハートが叫ぶ。
「皆!!あれだ!あそこから逃げられるぞ!!」
それと同時にスカイハートが懐から取り出した煙玉を投げる。
その瞬間、追っ手の円卓の騎士達の「うわっ!」という苦悶の声が響き桃、夜潮、トフェニス、形代状態の雷雅が「え?何したの?」といった顔でスカイハートを見ると彼はニヤニヤしながら円卓の騎士達の方を指差すとそこには白くべったりした物が鎧兜に纏わり付き視界が物理的に遮られて困惑し、果てには少し苛立っている騎士達の姿があった。
「空気中の水分に反応するトリモチ粉の煙玉だよ。暫くは取れないよ!」
「凄いじゃん!スカイハート!」
桃がそう言うと怪盗らしくハッハッハ!と高らかに笑いながらいち早く扉を抜けるがその表情はどこか照れ臭そうな顔をしていたのはコッソリ形代状態で同時に抜けてチラ見をしていた雷雅だけが知るものとなっていた。


その頃、玉座の間では

「城から抜けたか。」
アルースが玉座に座り傍に立つ女魔導師の持つ水晶を見遣る。
彼女はマリアン...アルースの盟友にして彼を騎士王と呼ばれるまでに導いたアオダイショウの獣人にして超常の力を持つ「アルビノ種」である。
「本当にいいのかい?アルース。
キミは勇者達だけでなくアメンルプトすらも敵に回す事になるんだよ?」
「...構わないさ。
もう昇陽からの遣いがやってくる頃合いだ、それに...アメンルプトに潜む真なる闇を今此処で断つには私が悪を演じなくてはならない。」
「ったく、本当に辛い道を進むねぇ。ま、私が導いちゃったんだけど⭐︎」
「はぁ、ホントだよマリアン...でも、頼んだぞ。」
「はいよー!任せておくれ!
困ってる人を導くのは私の得意分野だ!」
底抜けに明るい返事を返してマリアンはその場を去り桃達の後を追うのだった。



追手から何とか逃れて首都であるエクスカリバーを抜けた先、其処は深い森の入り口となっていた。
「森に身を隠す、か...本当に大丈夫?
アルース王の軍勢とは違う心配があったりするけど...まぁ、猛獣くらいなら斬れるけど。」
「へぇ、じゃあお嬢。獣人を斬るのはやっぱり抵抗ある?」
「もちろん。私の剣術は安易に獣人に向けてはいけない...それは師匠、朝凪霧風の教えだから。」
「あー、そりゃ百歩譲って分かる。
でもな...今俺たちが置かれてる状況は安易なモンじゃない。そこも分かってくれねぇか?」
「....分からない...分からないよ!私はただ、世界を見たかっただけ...勇者とかそんなんじゃなくて...さ。」
暫しの沈黙が流れる。
アルースが放った勇者という言葉は桃が受け入れられる程の責務ではない。
それを知りながらも黙っていた夜潮、雷雅もまた沈黙する。
「と、兎に角今は逃げましょう...一国の軍勢を相手取る余裕がないのもまた事実です!」
この状況を打ち砕くようにトフェニスが口を開く。
本来この状況で1番平常心ではいられない彼女の言葉にその場に居た全員が頷いて森の中へと入って行く。

「...トフェニスさん、さっきはありがとう。」
桃がトフェニスに向けて一言感謝を伝える。
「いえ、お気になさらず。
申し上げ難いのですが...そろそろ強制転送されるみたいです。
それまでにあの空気を変えたかったので...」

やっぱりか、といった表情で夜潮が溜め息を吐くと雷雅の声が響く。
「トフェニスよ...悔やむな。そして先刻は我らにも非があった。
桃様も申し訳ありません。」
だんまりとしていた桃だったが次の瞬間、ニッと笑いながら言い放つ。
「全くだよ!!
でも、どうなるか分からないけど何とか出来る範囲では何とかしたい。
私が見たいのは綺麗な世界...それを汚すインフェルノはやっぱり許せない。

...私の力がインフェルノ由来だとしてもそれを正しく使ってあの王様を見返してやるから!」
苦笑しながらも拍手をする夜潮、目を輝かせるスカイハートが桃を見る中、遂にその時が来た。
トフェニスを光が包み頭上には魔法陣が展開されカイの声が響く。

「「皆、久しいな...アディンで何があったかは今は聞いている状況ではないから簡潔に伝えよう。
今、我がアメンルプト王国は円卓の騎士モルドムース及びトライノスの襲撃により甚大な被害が出ている。
故にすまないが、トフェニス将軍を一時我がアメンルプト王国に送還する事がタニュエレト女王に命じられた...。
皆との会話がこんな物で申し訳ないが、理解して欲しい。

では、健闘を!!」」
それだけ一方的に伝えると魔法陣が消え去り、同時にトフェニスの姿も瞬時に消える。

「...行っちまったな。」
「うん...。」
「そうだねぇ。」
「だが、追手は諦めるつもりも無し、か。」
雷雅は千里眼を使い先程引き離した円卓の騎士達が森に入って来たのに気付く。
そして騎士の中の1人、ロミーデ・カルノが斧にも似た剣を抜き咆哮を上げると周囲の木々を薙ぎ払う。
空気が静まり返るような間の後、一気に前方の木々が両断される。
それを視認するとヴェリス・ムケイが翼を広げ空中に飛び上がるとバッチリ桃と目が合いしたの2人に「居たぞ。」とだけ伝える。
「見つかった!?」
桃が慌てたように抜刀をすればヴェリスが降りて来て桃に剣を向けるでもなく優しく語りかける。
「...案ずるな。我らに課せられた王命は「追え」だけだ。
命を取れなどとは言われていない。」
桃は戸惑うが後から現れたピノとロミーデが「悪い悪い、やりすぎちまった!でもアレだろ?トリモチを考えたらドローじゃないか?」
スカイハートが再びトリモチ粉爆弾を構えるとピノが止めに入る。
「だーかーらー!今の私達は貴方達の命を取りませんってば!」
もうトリモチは勘弁して欲しいのかピノは必死な様子である。
「し、仕方ないですね~...」


そう言ってスカイハートがトリモチ粉爆弾をしまうと急に空気が重くなる。
そして、死の匂い、死の気配が忍び寄る。

「聞きましたよ...

王命に反する...」

桃、夜潮、スカイハートは身構えるもその声の主が見当たらない。
それと同時に3人の円卓の騎士は突如として表情が恐怖に歪む。
「嘘、だろ...ありゃ噂じゃねぇのか!?」
「私に訊くな!!私だってあんな怪談話...」
「でも、居ます...来ます!」
森の奥から地面を引き摺る金属音...そして続く女性にも男性にも聞こえる不気味な声。

「我らが王への反逆は...
アディン聖獣王国への反逆...

ならば、この私があなた達の死神となりましょう。」

そして灰色の死が姿を現す。
大鎌を引き摺り割れた髑髏面から覗く無機質な眼がその場に居る全員を捉えて名乗りを上げる。
「我が名はDeath Knight。
王の隠れし鎌なれば、騎士を狩る死神。
さぁ、清らかなるアディン聖獣王国の為...永遠の眠りにつきなさい。」
ゆらりと不気味に身体を動かすと前方の地面に鎌の先端を突き刺した。
そしてその鎌は雷雅の依代を貫き桃達を導く者、希望を確実に絶っていた。

「お嬢...どうやらさっきの言葉、試す時が来ちまったみたいだぜ?」
夜潮が桃を見つめ三味線の撥を構える。
「...わかってる。あの3人はともかく、あの骸骨仮面の敵意は凄い....

向かいくるなら討ち倒すまででしてよ?」
桃は深く息を吸うと吐く頃には目が赤く染まり緋色の闘気を湛え口調すらも厳かなものへと変わる。
「覚醒...?」
Death Knightが訝しむように問うと桃は改めて名乗りを上げる。
「私は桃...この身、刃の銘を今より「戴天明王」とします。
死を名乗る悪鬼よ。覚悟!!」
瞬く間にDeath Knightの間合いに入った桃は相手が手に持った大鎌をひと太刀で弾き飛ばした。
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