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第2章 シン

脱野宿

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お金を手にしたシンは宿を探すことにする。

(宿、ご飯、宿、ご飯。)

頭の中はそれで一杯である。

確かにスノーのお陰で美味しくご飯を食べることはできていた。しかし、布団で約一月寝れなかった。

少なからず、飢えている部分があった。


せっかく泊まるならスノーも泊まれる良い場所じゃないと困る。

少し悩み、再び街の外を目指すこととなる。


30分くらい経過。



「衛兵さん。オススメの宿ありますか?」

唐突に衛兵に声をかける。

「お金があまりかからなくて、テイムのを泊めて良いのは【サカサカの宿】かな。ご飯は美味しいのは間違いない。ただ、店主が怖いかもしれないけど。」

悩みながら衛兵はそう応える。

「ただ、お金は大丈夫なの?」

そう聞き返すので、
「安心してください。持っていた荷物に売れる品物が残ってたみたいで、それにより数日の滞在は出来そうです。教えてくださりありがとうございました。」

そう言い、お辞儀すると颯爽に向かおうとした。

が、直ぐに引き返し、

「場所を教えてください。」

と衛兵に聞いたのであった。


衛兵は身振り手振りで案内し、それをスノーと一緒に覚える。


衛兵の案内通りに進むと確かに【サカサカの宿】という看板が目に入った。


スノーを入り口の前に待機させ、シンは一人で中に入る。

「すいませーん。部屋空いてますか?」

そう言って声をかけると小さな女の子が出てきた。

小さいと言っても、シンと同じくらいの年齢だと思われるが。

「お母さんやお父さんは一緒じゃないんですか?」

そう小さな女の子に純粋に質問をされる。

確かに普通は5歳の子どもが1人で宿に来ることがおかしい。

どう答えようかと悩んでいると

「ここは宿だから、お金がいるけどあるのかい?」

小さな女の子の後ろからおそらくその子の母親らしき人物が出てきた。

「テイムしている狼の分もお願いします。まずは3泊で、朝と夜のご飯をお願いしたいです。あと、今だけ何か食べれるものがあればいただきたいです。」

「子ども1人と狼1匹なら3泊と食事二食付きで3ゴールドで良いよ。」

3ゴールドなら安い。

「じゃあこれで。」

そう言って4ゴールドを差し出す。

「あいよ。今ご飯は準備するから待ってておくれ。」

そう言って奥に入っていく。

そのお母さんにくっついていく小さな女の子は、
「お母さん。なんでお金を多く受け取ったの?」

そう聞いていた。大きい声なのでシンにもはっきり会話内容が聴こえ放題である。

「お金の支払い方として、定額を払うというのは、お金がないもしくは今後も利用しない可能性が高いということ。少し多く払うというのは、延長する可能性がある。もしくは、面倒ごとが起こるかもしれないって事なのさ。あとは、食事量が多いってのもあるのさ。」

「だから、あの子は多く払ったの?」

お母さんは娘にさらに付け加える。

「宿っていうのはね。一期一会なのさ。たから、来る客には詮索をしないというのが礼儀ってやつなのさ。あの子がどんな事情があるかもしれないが、語らないなら聞く必要もない。察してあげるべきなのさ。」

シンは家で勉強している時にそう習っていたため、わざと多めに払ったのである。

(明日の予定の後どうなるか分からないからね。)


久々の暖かな食事を楽しみ、ゆっくり過ごしながらシンは朝を迎えるのであった。



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