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英雄令嬢と、新たなる自由
しおりを挟むリリアが王都に持ち帰ったポーションは、瞬く間に奇跡を起こした。
そのポーションを飲んだ人々は、みるみるうちに体力を回復し、衰弱していた者たちも数日のうちに病から回復していった。王都に再び活気が戻り、人々は「追放された公爵令嬢が、国を救ってくれた!」と口々にアメリアを称賛した。
そして、その知らせは当然、レオンハルト王太子の元にも届いていた。
彼はすぐにアメリアの元へと向かい、深々と頭を下げた。
「アメリア様、この度は本当に申し訳ございませんでした。私は、あなたという宝石の価値を全く理解していませんでした。どうか、もう一度、私のそばに戻っていただけませんか?」
彼の言葉は真摯なものだった。リリアもまた、私の手を握り、涙ながらに訴える。
「アメリア様、どうか、殿下をお許しください! そして、この国を……!」
私は二人の言葉を静かに聞いていた。
ふむ、やはりこの展開か。想定内。
せっかく手に入れた自由を、こんなところで手放すわけにはいかない。
私は、にこやかに微笑み、王太子に語りかけた。
「レオンハルト殿下。お言葉はありがたく拝聴いたしました。しかし、わたくしはもう、殿下の婚約者に戻るつもりはございません」
王太子は愕然とした表情で私を見つめた。
「なぜです? あなたは、あれほどまでにこの国を想って……」
「誤解です、殿下。わたくしはただ、自分の研究を続けたかっただけ。それに、わたくしの能力は、貴族の義務や社交に縛られるようなものではございません」
私はそう言って、さらに続けた。
「わたくしは、このまま、自由に研究を続けたいのです。ですので、殿下には、わたくしが気ままに研究できる場所と、資金をご提供いただきたい。それが、わたくしが王都を救った褒美でございます」
私の大胆な要求に、王太子は言葉を失った。
しかし、その場に居合わせたリリアが、興奮した様子で叫んだ。
「ああ、なんと崇高な……! 自分の地位や名誉のためではなく、ただ研究を続けるために! アメリア様は、なんて気高い方なのでしょう!」
リリアの言葉に、王太子もハッとした。
そうだ。彼女は、地位や名誉などには興味がない。ただただ、自らの知を追求したいだけなのだ。
なんと清く、尊い行いだろうか。
「……承知いたしました。アメリア様。あなたのご要望、すべてお受けしましょう。宮廷に、あなたのための研究施設を建設します。あなたは、もはや誰の指図も受けず、ただ、ご自身の研究に没頭なさればよいのです」
こうして、私は悪役令嬢としての断罪イベントを逆手に取り、見事に「宮廷付きの錬金術師」という、誰にも干渉されない、好きなだけ研究ができる自由な身分を手に入れた。
「やれやれ、これでようやく、心ゆくまで実験に没頭できるわ」
私は心の中で勝利のガッツポーズをした。
そして、周りの人々は今日も、勘違いしたまま、私を崇拝し続けている。
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