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結
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「はぁぁぁ~~~……やっぱりこうなったか~~……」
ラヴェルとしても決闘での解決だけは避けたかった。
レヴィンは先ほど言った通り、その天井知らずな魔力から放たれる魔法は天災レベル。
その威力は最早天の裁きに等しいほどの力を秘めている。
対してエクレアは同格といってもレヴィンほどの魔力もなければ、その能力も圧倒的大火力を誇るようなものではない。
彼女の能力は『夢』を支配する力であり、現実に自身が支配する『夢』を顕界させる……言い方を変えれば『現実』を彼女の都合よい『夢』へと書き換える能力だ。
そして、エクレアは『神殺し』まで至ったレヴィンと同格。そんな彼女が作り出す『夢』が普通なわけない。
そう……エクレアが作り出す『夢』は邪な夢と書いて『邪夢』っと言わんばかりな世界。“混沌”の力にあふれた“深淵”とほぼ同等の世界だ。そんなものを現実に顕界されたら無事で済むわけがない。
一定の力量を持たないものは顕界された瞬間SAN値直葬となり、戦うまでもなく敗北決定。
仮に直葬は避けられても“狂気”やら“錯乱”の精神系デバフ付与は避けられないから精神集中が必須な魔法をロクに操れなくなるっというか、その魔法が誤作動して自爆する事だってある。
自身のコンディションを最悪にされた上で常に自爆の危険性が孕む魔法を使わざるを得ない事もあって、魔術師からみればエクレアはとても戦い辛い相手なのだ。
(まぁだからといって物理で挑むのが正解ってわけじゃないところは前世同様相変わらずなんだよねぇ。それに、レヴィンも魔術師としてのプライドがあるから不利を承知で魔法主体で攻めるだろうし……はぁぁ~~~)
ラヴェルは弟として兄の性格をよく知っていた。
兄は搦め手のような小細工も使う事は使うが、それより正面から叩き潰す方が大好きな人種。
多少精神への浸食を受けようとも、自爆上等で魔法をバンバン放つだろう。
自分含む周囲の被害お構いなしで天災クラスの禁呪魔法を躊躇なく放つだろうことを見抜いていた。
そして、エクレアも周囲の影響お構いなしで“混沌”の出力を上げる事を見抜いていた。
なにせ彼女が顕界させる夢世界は敵対者どころか世界を支えるであろう自然界のルールにまで浸食する。
わかりやすくいえば、彼女が夢を顕界させれば巻き添え的に近辺で百年に一度レベルな超自然災害ともいうべ局地的天変地異を誘発させてしまうわけだ。
おまけにそういった二次被害は彼女のあずかり知らぬことろで引き起こされるというのだから……
結局のところ、エクレアはレヴィンと違う方向性での歩く天災なのだ。
そんな世界を壊すに足る力を持つ二人が決闘なんか行えば……
「「大丈夫だ、問題ない!!城は壊さないよう、配慮する」」
ラヴェルを気遣ってなんだろうが、どうあがいても気休めとしか思えない言葉を残してたった今生成した壁の穴から外へ飛び出す二人。
背中から熾天使のごとき純白な6枚の羽根(ただし一対だけ漆黒)を展開させたレヴィン。
背中から“深淵”を具現化したかのような禍々しい悪魔の羽を展開させたエクレア。
部外者からみれば『堕天使 VS 悪魔』ともみれる人外同士の激突。天が割れて地が裂けるという世界の終焉を予期されてしまうかのような激突は……
「これのどこか配慮してるんだよぉぉぉぉぉ!!!」
そう突っ込まざるを得ないほどの激しさであった。
そんなわけでラヴェルにできるのはただ神に祈るだけだった。
奇跡が降臨してくれることを願って……
具体的にいえば二人の『神殺し』を達成した戦いに同行していた同格仲間の一人……
属性『善』の極致で対『悪』のエキスパートとされる、二人にとって天敵。
猫十字教会の大司教様が降臨してくれることを願って……
ラヴェルはひたすら、祈っていた。
……………………
結論からいえば、そんな奇跡が起きないまま決着がついた。
宣言通り、城に大した被害を出さないまま決着がついた。
裂けた大地を始めとした周辺の被害もエクレアがス〇ホでなんらかの機関に依頼した事もあって、翌日にはあっさり元通り。
世界は何事もなく平和な時を刻んでいた。
“あぁそうか……あれは夢だったんだ……”
ラヴェルはそう思いながら……
自室にぽっかりと空いた壁の穴からの景色を眺めながら、何事もなく過ごせる今日を感謝するのであった。
なお、決闘の行方は僅差でエクレアの敗北であった。
「約束通り、この本はこのまま異世界本屋で出版させてもらおう。よかったじゃないか、これで有名人になれるぞ」
「くぅぅう……報酬はもう1割でいいから私が居た世界だけは出回らないようにして!!真実が出回ったら私の犠牲が無駄になるから出回るにしても一冊だけ……原本となる一冊だけに限定させて!!」
「その程度ならよかろう。ほら、もってけ」
エクレアとしては非情に不本意であったが、自身の暴露本の出版を条件付きで渋々認めるに至ったようだ。
なお、エクレアが持ち帰った原本は自身が生前大切に育てていたサクラの木の洞の中に入れて封印を施したようだが……
300年後にある男が偶然手にし、大々的に広められる事態となったのは余談である。
ラヴェルとしても決闘での解決だけは避けたかった。
レヴィンは先ほど言った通り、その天井知らずな魔力から放たれる魔法は天災レベル。
その威力は最早天の裁きに等しいほどの力を秘めている。
対してエクレアは同格といってもレヴィンほどの魔力もなければ、その能力も圧倒的大火力を誇るようなものではない。
彼女の能力は『夢』を支配する力であり、現実に自身が支配する『夢』を顕界させる……言い方を変えれば『現実』を彼女の都合よい『夢』へと書き換える能力だ。
そして、エクレアは『神殺し』まで至ったレヴィンと同格。そんな彼女が作り出す『夢』が普通なわけない。
そう……エクレアが作り出す『夢』は邪な夢と書いて『邪夢』っと言わんばかりな世界。“混沌”の力にあふれた“深淵”とほぼ同等の世界だ。そんなものを現実に顕界されたら無事で済むわけがない。
一定の力量を持たないものは顕界された瞬間SAN値直葬となり、戦うまでもなく敗北決定。
仮に直葬は避けられても“狂気”やら“錯乱”の精神系デバフ付与は避けられないから精神集中が必須な魔法をロクに操れなくなるっというか、その魔法が誤作動して自爆する事だってある。
自身のコンディションを最悪にされた上で常に自爆の危険性が孕む魔法を使わざるを得ない事もあって、魔術師からみればエクレアはとても戦い辛い相手なのだ。
(まぁだからといって物理で挑むのが正解ってわけじゃないところは前世同様相変わらずなんだよねぇ。それに、レヴィンも魔術師としてのプライドがあるから不利を承知で魔法主体で攻めるだろうし……はぁぁ~~~)
ラヴェルは弟として兄の性格をよく知っていた。
兄は搦め手のような小細工も使う事は使うが、それより正面から叩き潰す方が大好きな人種。
多少精神への浸食を受けようとも、自爆上等で魔法をバンバン放つだろう。
自分含む周囲の被害お構いなしで天災クラスの禁呪魔法を躊躇なく放つだろうことを見抜いていた。
そして、エクレアも周囲の影響お構いなしで“混沌”の出力を上げる事を見抜いていた。
なにせ彼女が顕界させる夢世界は敵対者どころか世界を支えるであろう自然界のルールにまで浸食する。
わかりやすくいえば、彼女が夢を顕界させれば巻き添え的に近辺で百年に一度レベルな超自然災害ともいうべ局地的天変地異を誘発させてしまうわけだ。
おまけにそういった二次被害は彼女のあずかり知らぬことろで引き起こされるというのだから……
結局のところ、エクレアはレヴィンと違う方向性での歩く天災なのだ。
そんな世界を壊すに足る力を持つ二人が決闘なんか行えば……
「「大丈夫だ、問題ない!!城は壊さないよう、配慮する」」
ラヴェルを気遣ってなんだろうが、どうあがいても気休めとしか思えない言葉を残してたった今生成した壁の穴から外へ飛び出す二人。
背中から熾天使のごとき純白な6枚の羽根(ただし一対だけ漆黒)を展開させたレヴィン。
背中から“深淵”を具現化したかのような禍々しい悪魔の羽を展開させたエクレア。
部外者からみれば『堕天使 VS 悪魔』ともみれる人外同士の激突。天が割れて地が裂けるという世界の終焉を予期されてしまうかのような激突は……
「これのどこか配慮してるんだよぉぉぉぉぉ!!!」
そう突っ込まざるを得ないほどの激しさであった。
そんなわけでラヴェルにできるのはただ神に祈るだけだった。
奇跡が降臨してくれることを願って……
具体的にいえば二人の『神殺し』を達成した戦いに同行していた同格仲間の一人……
属性『善』の極致で対『悪』のエキスパートとされる、二人にとって天敵。
猫十字教会の大司教様が降臨してくれることを願って……
ラヴェルはひたすら、祈っていた。
……………………
結論からいえば、そんな奇跡が起きないまま決着がついた。
宣言通り、城に大した被害を出さないまま決着がついた。
裂けた大地を始めとした周辺の被害もエクレアがス〇ホでなんらかの機関に依頼した事もあって、翌日にはあっさり元通り。
世界は何事もなく平和な時を刻んでいた。
“あぁそうか……あれは夢だったんだ……”
ラヴェルはそう思いながら……
自室にぽっかりと空いた壁の穴からの景色を眺めながら、何事もなく過ごせる今日を感謝するのであった。
なお、決闘の行方は僅差でエクレアの敗北であった。
「約束通り、この本はこのまま異世界本屋で出版させてもらおう。よかったじゃないか、これで有名人になれるぞ」
「くぅぅう……報酬はもう1割でいいから私が居た世界だけは出回らないようにして!!真実が出回ったら私の犠牲が無駄になるから出回るにしても一冊だけ……原本となる一冊だけに限定させて!!」
「その程度ならよかろう。ほら、もってけ」
エクレアとしては非情に不本意であったが、自身の暴露本の出版を条件付きで渋々認めるに至ったようだ。
なお、エクレアが持ち帰った原本は自身が生前大切に育てていたサクラの木の洞の中に入れて封印を施したようだが……
300年後にある男が偶然手にし、大々的に広められる事態となったのは余談である。
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